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ニコン、“D6を上回る信頼性”のミラーレス・フラッグシップ機「Z 9」。70万円

4軸チルト式モニター、3D-トラッキング、最長125分の8K動画機能など搭載 メカシャッター非搭載

ニコンは10月28日、ミラーレスカメラ「Z 9」を2021年内に発売すると発表した。価格はオープン。店頭予想価格は税込70万円前後。

ニコンのミラーレスカメラとして初めてフラッグシップ機に位置付けられるモデル。有効約4,571万画素(総画素数5,237万画素)の積層型ニコンFXフォーマットCMOSセンサー(35.9×23.9mm)を搭載し、3,000万画素以上のミラーレスカメラで世界最速というスキャンレートによりローリングシャッター歪みを極限まで抑制。“メカシャッターの要らない構造”を実現したとしている。

ストロボはFP発光を使わずに1/250秒(GN減少)または1/200秒以下で同調。本体前面に10ピンターミナルを備えている。起動時間はZ 7IIの約1.0秒に対し、約0.4秒に短縮したという。

AFと連写、表示飛びのないEVF「Real-Live Viewfinder」

AFアルゴリズムは、ディープラーニング技術を用いて開発した被写体検出が可能。検出できるのはミラーレスカメラで世界最多という9種類で、人物(顔、瞳、頭部、胴体)、犬、猫、鳥(それぞれ頭部、瞳、全身)、車、バイク、自転車、列車、飛行機(全体、先頭部、コックピット)。ゴーグルやサングラス越し、顔が逆さまの状態でも瞳を検出するほか、顔を見失うシーンでも頭部や胴体を検出してピントを合わせ続けるという。同社ミラーレスカメラで初めて「3D-トラッキング」を搭載している。AF演算は120回/秒。

ファインダー(EVF)は「Real-Live Viewfinder」の名前で訴求。表示解像度は約369万ドット。一眼レフカメラでのミラーアップによる像消失がないだけでなく、メカシャッターを使わない他社の既存ミラーレスカメラと比較しても、連写の開始/終了時における同一画像のリピートやワープ(表示飛び)がない点を強調している。

Real-Live Viewfinderは、前述の積層型CMOSセンサーから出力したデュアルストリームデータ(ファインダー用のライブビューデータと、記録用の静止画画像データ)を新開発エンジンのEXPEED 7で個別処理することで実現しているという。この「デュアルストリーム技術」は、ほかにも高性能AF、約120コマ/秒の「ハイスピードフレームキャプチャ+」、8K UHD/30p内部記録、4K UHD/120pなどを支えているという。

ハイスピードフレームキャプチャ+は、JPEG(NORMAL画質。約1,100万画素)限定ながらAF/AE追従で約120コマ/秒の静止画撮影が行える機能。カメラ上では同モードを[C120]と記載している。また、同様に約30コマ/秒で4,500万画素の静止画記録が可能な[C30]も用意している。

通常の連写は、高効率RAWまたはJPEG FINE(L)の設定時に、約20コマ/秒で1,000コマ以上の連続撮影が行えるという。CFexpress Type Bの高速書き込みにより実現しており、同社ではこの連続撮影性能のスペック表記について「ProGrade Digital COBALT 1700R 325GBを使用した場合」と注記している。

動画機能:長時間内部記録や電子式手ブレ補正

ミラーレスカメラで世界最長という、125分の8K UHD/30p内部記録に対応。「被写体未検出時のAF駆動」をオフにすれば、被写体が一時的に隠れてしまうシーンでもピント位置を維持したまま撮影できるという。AF速度のアルゴリズムも進化し、ゆっくり動く被写体、速く動く被写体のどちらにもスムーズに追従するとしている。

また、4K UHD/120pのハイフレームレート撮影も最長125分の連続記録に対応。8Kオーバーサンプリングによるフルフレーム撮影ができる(30p以下での撮影時)ほか、レンズ焦点距離の約2.3倍相当の画角となるサイズも設定可能。

手ブレ補正は、ボディ内VR、シンクロVR(対応レンズのVRと協調)のほかに、電子手ブレ補正も利用可能。EXPEED 7エンジンの採用で性能が大幅に進化したという。使用時は画角が1.25倍クロップとなる。

4軸チルト式モニターなど各部仕様。「D6を上回る信頼性」

背面モニターは、横位置撮影時に上90度・下43度、縦位置撮影時に上90度・下23度傾けられる「縦横4軸チルト式画像モニター」としている。タッチパネル式で、表示スペックは3.2型・約210万ドット。縦位置撮影時は、露出設定などの表示も縦位置用に切り替わる。

また、暗い場所での撮影に向けて、ボタンイルミネーションと、目の負担を軽減するという「赤色画面表示」も搭載している。「スターライトビュー」をONにすると、撮影画面が明るくなり、AFの低輝度限界も-8.5EV(F1.2レンズ・ISO 100)に拡張されるという。

信頼性の面では、D6同等の高い防塵・防滴性能、優れた堅牢性だけでなく、高い放熱効率の実現や、電源オフ時にイメージセンサーを保護するというVRロック機構を搭載。メカシャッターを非搭載としたことで、シャッター耐久や、シャッター幕の摩耗によるダスト発生も気にする必要がないという。

レンズ交換時のセンサーダスト付着に対しては、センサー表面の導電コートでダスト付着を軽減したほか、設定により電源オフに連動して動作する「センサーシールド」を搭載。センサーシールドはフォーカルプレーンシャッターの羽根のように分割収納されている。

センサーシールドを閉じたところ

シャッター速度は1/32,000秒〜30秒(撮影モードMで900秒まで)。感度はISO 64-25600(拡張でISO 32相当までの減感、ISO 102400相当までの増感が可能)。

「サイレントモード」は、メカシャッター非搭載のZ 9でより静かな撮影を行うための機能。設定することでVRロック音、メニュー操作音を抑制するという。

バッテリーはEN-EL18dを同梱(EN-EL18c/EN-EL18b/EN-EL18a/EN-EL18も条件付きで使用可能)。撮影可能枚数は最高約700コマ(CIPA規格準拠。EVF時)、連続撮影時は約5,310コマ(同社試験条件)の静止画撮影と、約170分の動画撮影が可能だという。USB Type-C端子を通じて、モバイルバッテリーやパソコンからのUSB給電も可能としている。

通信機能は、Wi-Fi機能(2.4GHz/5GHz)、1000BASE-Tの有線LAN、Bluetoothに対応。GPSによる位置情報機能も備える。5Gスマートフォン経由で画像をFTPサーバーなどに転送できる「NX MobileAir」アプリや、NX Studioと連携するテザー撮影用ソフト「NX Tether」も用意している。

記録メディアはCFexpress Type Bのダブルカードスロット。

外形寸法は約149×149.5×90.5mm。重量は約1,340g(バッテリー、メモリーカード込み)、約1,160g(本体のみ)。一眼レフカメラの「D6」と比べて約20%の小型化としている。

本誌:鈴木誠