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「中判カメラに迫る階調・解像」を訴求するソニーα7R IV

α9に次ぐ新モンスター機 動画撮影時の瞳AFも

左から大島正昭氏、小笠原啓克氏。新しく発表されたα7R IVを手に。

ソニーは7月17日、都内にてミラーレスカメラ「α7R IV」の発表会を開催した。製品の基本的なスペックは既報のとおりだが、発表会では今後の事業ビジョンなどの提示もあった。実機の写真とともに会場の模様をお伝えしていきたい。

“新しいモンスター”として

発表会にあたり、ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ株式会社 デジタルイメージング本部 第1ビジネスユニット 担当部長の大島正昭氏が登壇し、第四世代となる「α7R IV」を披露した。

大島正昭氏(ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ株式会社 デジタルイメージング本部 第1ビジネスユニット 担当部長)。

大島氏はミラーレスカメラの新しい基準として「レンズ・画質・スピード・バッテリーライフ・小型軽量」の5つの要素を基本性能として提示し、スポーツや報道写真における撮影体験に変化を与えたとするα9に次ぐ製品としてα7R IVを発表。これを“新しいモンスターとなる商品”として位置づけた。

縦位置グリップVG-C4EM(9月6日発売)を装着した状態のα7R IV。

現在のミラーレス市場について言及した大島氏は、金額ベースでみてもミラーレスカメラ市場は世界レベルで伸長を示しており成長を続けているとコメントした。

つづけて、2019年はレンズ交換式のカメラ市場およびフルサイズセンサー搭載カメラの双方で、ミラーレスカメラが一眼レフカメラのシェアを超えたと発表した。

この状況について、カメラのデジタル化以来の大きな構造転換が起こっているという大島氏。市場に対するソニーのポジションとして、フルサイズミラーレスカメラで他社に先行する技術などをもとに、先に示された5つの基本性能とAI技術などにより顧客基盤を拡大、撮影体験も変えていく、と今後の姿勢を示した。

α7R IVの進化ポイントとは

ソニーマーケティング株式会社 プロダクツビジネス本部 デジタルイメージングビジネス部 統括部長の小笠原啓克氏は、市場におけるミラーレスカメラの構成比が65%を超えていることに言及し、カメラはもとよりレンズの販売も伸長していると、同社カメラ事業の販売推移についてコメントした。

小笠原啓克氏(ソニーマーケティング株式会社 プロダクツビジネス本部 デジタルイメージングビジネス部 統括部長)。

つづけて、α7R IVの特徴について“中判カメラにせまる階調と解像を実現した”と、センサーの高画素化・ダイナミックレンジの広さを第4世代目のα7Rにおいて達成したアドバンテージとして強調した。

小笠原氏が強調したα7R IVのポイントは、センサー・スピード・AF・動画撮影・音の進化・プロ機能の強化の各点。

まず本モデルで新たに採用された有効約6,100万画素裏面照射型CMOSセンサー(35mmフルサイズ相当)は、APS-Cにクロップして撮影しても約2,600万画素で使用できること、またこの時、325点の像面位相差AFセンサーがサイズ領域をカバーするとして、画質・AFの両面での使い勝手を強調した。

次に、スピード。高画素化しながらもα7R IIIと比較して約1.5倍に大容量化したバッファメモリーにより約68枚の連続撮影が可能とコメント。AF/AE追従でも約10コマ/秒の連写が可能となっている(α7R IIIの連写可能枚数は最高約10コマ/秒[Hi+時])と説明した。

α7R IVは記録メディアとして、α7R IIIから引き続きSDメモリカードを採用している。会場にいた説明員によれば、デュアルスロットの双方がUHS-IIに対応しているため、画素数自体は増えているものの、α7R IIIとほぼ同じ感覚で撮影できるとのことだった。

AFについては、α9、α7 III、α7R III、α6400などと同じくリアルタイム瞳AFや動物瞳AFに引き続き対応している。α7R IVならではの特徴としては、動画撮影中でも瞳を検出し追従するようになった点があげられる。

動画撮影機能は、画素加算なしで4K記録が可能になった。ほかにもS-Log3やHLG(Hybrid Log-Gamma)への対応などがポイントとしてあげられた。

この動画機能の強化とあわせて、マイクの新製品も登場した。これまでアナログ入力によりカメラ内でデジタル変換で記録していた音声記録に対して、完全デジタルによるクリアな音声記録が可能になると説明した。

説明員によれば、マイク自体に信号変換機能を収めているため、ノイズなどがのらないピュアな音が収録できるようになるとのことだった。

マイクは「ショットガンマイクロホン」の名称で、小型ボディながら鋭い指向性を実現した製品だと発表された。カメラには、マルチインターフェースシューを介して接続する。

マイクは、背面側に操作スイッチとダイヤル類が集中している。8つのマイクユニットが搭載さている。このほか、防振機構を搭載しており、振動によるノイズも低減できるという。

カメラにヘッドホンを接続することでモニタリング収録も可能だ。

また、同じくデジタル信号処理回路と、防振構造などをとりいれたXLRアダプターキットも展開する。こちらは、様々な撮影現場や音声収録に対応するオーティオ調節機能を搭載したモデルとなっている。

またこのアダプターは、2チャンネルまでのマイク・ライン入力が可能となっており、撮影意図やマイクの性質に合わせて録音レベルなどをそれぞれ独立して設定が可能となっているという。

【2019年7月18日修正】XLRアダプターキットに関する説明と写真の配置を一部あらためました。お詫びして訂正申しあげます。

さいごに、プロ向けとして訴求する機能について。α7R IVでは、プロに信頼されるツールとして操作性・堅牢性に配慮したという小笠原氏。576万ドットとなったファインダーやUHS-II対応のデュアルメディアスロットはもとより、ワイヤレステザー撮影への対応や、シンクロターミナルの搭載などといった基本性能とともに、グリップやボタンの押下レベルに至るまで調整を施したと説明した。

左側面には、HDMI端子やUSB Type-Cポートなどがある。端子カバーが蓋式のしっかりと開くタイプとなった点も本モデルの変更点だ。説明員によれば、防塵防滴性もしっかり確保した構造になっているとのことだった。

背面側を見ると、ボタンやダイヤル類の配置はα7 IIIなどと同じだが、マルチセレクターも突起が増えており、すべりづらく操作しやすいものとなっていた。

背面モニターはチルト式で変わらず。

グリップ部は、微妙な指がかりやボタンの配置調整が施されたという。

縦位置グリップVG-C4EM(9月6日発売)も本体と同じ感覚で使えるようにと、感触が同じになるように調整を施しているとのことだった。

縦位置グリップのバッテリー取り付け部はトレー式となっている。使用するバッテリーの個数は2個だ。

光学式5軸ボディ内手ブレ補正ユニットは、α7R IIIと同じく5.5段の補正効果となっている。数字上では特に進化がないようにみられるポイントだが、シャッターユニットのダンパーとモーターを調整して振動を抑制、ブレーキの効きを一新しているという。

実機にてシャッターをきったところ、シャッターショックはもとより音自体も抑えられたものとなっており、「コトコト」といったシャッター音となっていた。

メイン基板。映像エンジンBIONZ自体はα9と同じものを採用しているが、α7R IVの高い画素数とダイナミックレンジを支えるため最適化が施されているという。

このほか高画素機ならではの機能も。複数の画像を撮影・合成して高い解像を得る「ピクセルシフトマルチ撮影」を搭載。約2億4,080万画素(19,008×12,672ピクセル)の画像記録が可能になっているという。

会場には、この機能を用いてプリントされた作例が展示されていた。前に立った人物と比べても、かなりの大判出力が可能となっていることがわかる。

フルフレームで培った技術でミラーレス市場を牽引

会場からはAマウントの継続に関する質問があった。これについては、Aマウントもソニーの大切な資産だと強調した大島氏は、今後もシステムの強化について訴求していくとコメントした。

また通常モデルが第3世代に、高画素モデルがこのほど第4第世代となったα7シリーズの中にあって、しばらく更新がとまっているα7Sシリーズに関する状況を尋ねる質問も。これについてはユーザーからの声を十分にうけとっていると大島氏。開発は進めており、待っているユーザーに対して期待を超えるものとして発表したいと述べた。

各社から35mm判フルサイズセンサーを搭載したカメラが出揃ってきた状況については、今後もソニーでしか実現できない撮影性能を他社に先駆けて提供していくと力強い発表があった今回の発表会。α7R IVについては、中判カメラに迫る高画質として訴求し、この画質をフルサイズで実現したとして訴求していく考えが示された。

本誌:宮澤孝周