インタビュー

キヤノン最高画質・高速AFの両立を目指した「RF85mm F1.2 L USM」

名レンズ85mm F1.2の矜持をRFの高画質で

RF85mm F1.2 L USM

EOS R、EOS RPと矢継ぎ早にリリースされるキヤノンRFマウントのミラーレスカメラだが、RFマウント対応の交換レンズもまた、徐々に充実を見せている。

6月20日に発売されたRF85mm F1.2 L USMもそのひとつ。F1.2クラスの大口径レンズを早くも投入したキヤノンの真意と、RFマウントが実現したパフォーマンスを企画・開発関係者に聞いた。(聞き手:杉本利彦、写真:編集部)

河合海至氏(イメージコミュニケーション事業本部 ICB光学事業部)、水間章氏(イメージコミュニケーション事業本部 ICB光学開発センター)、遠藤宏志氏(イメージコミュニケーション事業本部 ICB光学開発センター 主幹)
左から、川波昭博氏(イメージコミュニケーション事業本部 ICB光学開発センター主幹)、浅野幸太氏(イメージコミュニケーション事業本部 ICB光学開発センター主任研究員)、鳥居重宏氏(イメージコミュニケーション事業本部 ICB光学開発センター)

特徴・コンセプト・マーケティング

——昨年発売されたRF50mm F1.2 L USMは、実際に使うと一目瞭然ですが、絞り開放からほぼ完璧に近い描写を実現している点で、個人的には史上最高の50mmレンズと評価しています。しかし、今回のRF85mm F1.2 L USMはそのさらに上を行くかもしれない高画質を実現していると感じました。このレンズで実現しようとした描写性。どのようなレンズを作りたかったかというところからお聞かせください。

河合:目指したのはRFマウントの高い設計自由度を活かし、キヤノンの持てる光学技術を惜しみなく投入した、圧倒的な光学性能をもつポートレートレンズです。RFマウントにより光学設計の自由度が拡大したことで「高画質、ハイスペック、コンパクト」という大きく分けて3つの魅力が実現できるようになりました。製品ごとに3つの優先度を変えており、このレンズの場合は特に高画質にウエイトを置いて開発しました。その点ではRF50mm F1.2 L USMと同様の思想で設計したレンズです。

狙いは、EFマウントの85mmレンズ3機種をはじめ、過去のキヤノンの85mmレンズに対しても、一番となる最高レベルの光学性能を実現し、プロの厳しい目で評価しても十分納得できる高画質の実現を目標としました。例えば、従来機種の場合、「F1.2絞り開放は解像力がやや不満なので少し絞って使う」とうかがうこともありましたが、今回は絞り開放から存分に解像力を楽しめる設計を目指しました。

——MTF図を見ますと、10本/mmのラインが画面周辺部まで1.0付近にあり、30本/mmもメリジオナルのラインは画面周辺部まで0.9付近にあります。これほどの性能は、現時点で存在する85mmレンズの中でも他を大きく引き離して最高の位置にあると思います。まるで絞りF8の画質を絞りF1.2開放で実現しているイメージですね。このような優れた描写性を実現できた技術背景は?

MTF曲線

水間:一番大きな要因は、やはりRFマウントの大口径・ショートバックフォーカスにより、設計の自由度が大幅に向上したことが挙げられます。それに加えて、キヤノンがこれまで培ってきた光学技術であるBR光学素子、UDレンズを用いることで軸上色収差・倍率色収差を極限まで抑えました。さらに研削非球面レンズを最適な位置に配置することで球面収差を効果的に抑えたほか、光学系の自由度が上がったことでサジタルフレアも極限まで抑えることが可能になり、今回のような高性能化を実現しています。

——EF85mm F1.2L II USMはシャープネスという点ではRF 85mmにかないませんが、味のある描写という意味ではこれも別の魅力があります。例えば、女性ポートレートでは、あまりシャープネスが高くない方が被写体には喜ばれるという側面もあります。一方で、最近の撮影者の好みとしては、シャープネスは高い方が良いとするユーザーが多い。こうしたレンズの味とされる部分に関して、RF85mm F1.2 L USMの設計ではどのような方向性で設計されましたか?

河合:お客様の声を聞くと、EF85mm F1.2L II USMの独特の描写が好きだというお客様もいれば、2017年に発売した手ブレ補正付きのEF85mm F1.4L IS USMが暗いところでも手ブレなく撮影できて便利だというお客様もいます。いろいろなタイプの85mmレンズがある中で、今回はEOS Rシステムだからこそ実現できるレンズを出したいという思いが私たちの中にありました。そのため、EOS Rシステムだからできる「高画質の追求」をまずは最初に実現しました。

例えばウエディングの撮影シーンでは、白いウエディングドレスにベールを纏うことが基本ですが、今までのレンズは絞り開放ではマゼンタや緑の滲みが見られました。しかし、RF85mm F1.2 L USMでは絞り開放から大事な日の純白のドレスを真っ白のままに撮影できます。目に見えるシーンをそのままの姿で写せる描写性が現代のお客様のニーズに一致すると考え、このような設計の方向性を採用しています。

作例:RF85mm F1.2 L USM
EOS R / 1/250秒 / F1.2 / ISO 100

——EFレンズとRFレンズの基本的な設計方針・目標とする画質の基準に違いはありますか?

水間:キヤノンにおいてレンズの光学部分の設計思想は昔から変わっていません。点は点に、線は線に、四角は四角に写す。要は収差を限りなくゼロにすることです。社内では「収差に取り過ぎなし」とも言われています。

85mm F1.2レンズは、その時代のフラッグシップレンズとして、今も昔も変わりなく、常にクラス最高の性能を目指して設計してきました。しかし、昔よりも設計シミュレーションツールが高機能・高精度化していること、高屈折率な新ガラスや特殊光学素子などの選択可能なガラスが増えたこと、ガラスの加工技術が大幅に進化したこと、などが高性能なレンズを実現できた要因と考えています。

遠藤:また、今回の機種で採用するBR光学素子など、使用できる材料がかなり進化している点も高性能を支える技術的なポイントです。

——ボケ味に対する考え方はEF85mm F1.2L II USMの時代とRF85mm F1.2 L USMで異なりますか?

水間:基本的には変わっていません。二線ボケのない綺麗なボケを目指しています。

なぜいま85mm F1.2なのか

——RFレンズとしては5本目ということで、単焦点の85mmレンズとしては早めのリリースになったかと思います。優先順位が高くなった理由はありますか?

河合:85mmは、被写体と適度なコミュニケーションが取れる約3mの距離でバストアップが撮影できる点や、顔の形も遠近感がつきすぎず自然な形で表現できる点で、ポートレート撮影に必須のレンズであると考えています。

加えて、EOS Rシステムでは新たに瞳AFを実現しています。瞳AFとのマッチングを考えた時、85mm F1.2レンズと瞳AFの組み合わせによって快適なポートレート撮影を楽しんでもらいたいという思いがあり、なるべく早く商品化したいと考え、このタイミングの発売となりました。また、単焦点レンズでは50mmの次に85mmに人気があることもあり、優先順位が高くなりました。

——キヤノンさんの初代85mm F1.2は、FDレンズ時代の1976年発売の「FD85mm F1.2 S.S.C. アスフェリカル」で、その後New FD化と、EFレンズ化(AF化)を経ましたが、基本的な描写性は現在までの間(約43年間)変わらなかったと思います。長年キヤノンの看板レンズの一つであったことも優先順位が高くなった理由になりますか?

キヤノン歴代の85mm F1.2

遠藤:FD時代はまだ私も入社していませんので詳しくはわかりませんが(一同笑)、研削非球面レンズを採用するなど当時の最高技術を投入することで、中望遠レンズとしてF1.2の大口径を初めて実現したレンズであり、お客様から非常に高い評価をいただいたと聞いています。私は1989年発売のEF85mm F1.2L USMの設計を担当しましたが、New FD85mm F1.2Lの高い基本性能を維持しながらAF化するのが課題でした。

今回の場合もEOS Rシステムであるからこそ実現できる高画質を示すのに最適なレンズであったから、優先順位が高くなった面もあると言えますね。

——フィルター径が82mmということで、EF85mm F1.2L II USMの72mmよりもふたまわりほど大きく、加えて全長も伸びています。EOS R/EOS RPの小型軽量路線とは正反対にRFレンズはみな巨大化しています。小さなボディに対して巨大なレンズというアンバランスについてどうお考えですか?

EOS Rに装着

河合:EFマウントで今回のRF85mm F1.2 L USMと同じ性能を出そうとするとさらに太くなり、全長も長くなります。RFマウントが大口径・ショートバックフォーカスであるからこそ、このサイズにまとめることができたと考えています。もちろん、「コンパクトなレンズはまだか」という声もいただいており、よりコンパクトなレンズも引き続き検討しています。

——これくらい大きくなるならF1.1とか、F1.0とか少しでも口径が上がっていれば納得できるし、注目度もさらに高くなったかと思います。さらなる大口径は検討されましたか?

河合:私もF1.0の魅力はあると考えていますが、このレンズよりもさらに大きく重くなってしまい、取り回しのしにくいレンズになってしまうことも考慮し、最終的に従来と同じF1.2を選択しました。

RF85mm F1.2 L USM DSについて

——バリエーションモデルのRF85mm F1.2 L USM DSを開発された理由は?

RF85mm F1.2 L USM DS

河合:ポートレート撮影の表現の幅をより広げたいという思いから商品化しました。具体的な違いは、例えば夜景を背景にしたポートレートの作例がわかりやすいと思います。背景の点光源のボケ部分は、人によって、いわゆる玉ボケの部分をうるさいと感じる方もいると思います。そこで、ボケのエッジを柔らかくすることで新しいボケ表現によるポートレート撮影ができるのではないかと考え、開発を進めています。85mmである理由は、85mm F1.2のレンズはポートレート撮影で、ボケを生かした作品が多いため、まずこの焦点距離で商品化しようと考えました。

——DSとは何を意味しますか?

河合:Defocus Smoothingの略称です。まさに「ぼけを滑らかにする」という効果から命名しました。

——DSユニットとは、わかりやすく言えばアポダイゼーションフィルターと同じでしょうか?

河合:アポダイゼーションの学術的意味を紐解くと、本来は光の回折を除去する仕組みで、顕微鏡などで使われていた技術です。一方、現在は瞳に透過率分布をつけてボケをなだらかにすることを広義の意味でアポダイゼーションと呼んでいるところがあります。今回の技術も広義の意味ではアポダイゼーションということもできますが、キヤノン独自の技術という意味でDefocus Smoothingという技術を打ち出そうとしています。

——キヤノン独自の技術とはどういうところですか?

河合:キヤノンはコーティング技術により「ぼけを滑らかにする」という効果を実現しています。コーティングのメリットは平面だけでなく曲面にもコーティングをできるため、新たに透過率分布をつけたレンズやフィルターを追加する必要がなくなる点が大きな違いです。

——ということはコーティングを施した薄いガラスを光学系に入れているのではないのですか?

河合:はい、その通りです。光学系の一部に透過率分布をつけたコーティングをしています。

作例:RF85mm F1.2 L USM
作例:RF85mm F1.2 L USM DS

——既存のレンズの一部に透過率分布をつけたコーティングをしているというのは新しい発想ですね。ところで、アポダイゼーションフィルターを入れると、レンズ周辺部分を通る光が少なくなって球面収差をはじめ諸収差が抑えられると思いますが、さらにシャープなレンズになるのでしょうか?

水間:ごくわずかかもしれませんが、その通りです。

——それは期待が膨らみますね。RF85mm F1.2 L USM DSの発売が遅れている理由は?

河合:2本とも、2019年内の発売として今年2月に開発発表を行っており、特に遅れているということはありません。できるだけお客様に早く製品をお届けしたいという思いがあり、通常版を先にリリースしました。DSモデルも2019年内に発売できるよう開発を進めています。

——お値段はだいぶ上がりそうですね?

河合:価格については現段階では詳しくお答えすることはできませんが、RF85mm F1.2 L USMに比べて15%前後、価格が高くなる予定です。

レンズ構成について

——レンズ構成の特徴をお願いします。

水間:大きく分けると、まず前側の2枚のレンズが第1レンズ群で固定群となっており、3枚目からBR光学素子の入ったBRレンズまでが第2レンズ群のフォーカス群になります。そして、その後ろから最後までが第3レンズ群で固定群を構成しています。

レンズ構成図

水間:特徴としては、まずUDレンズとBRレンズを採用し、軸上色収差と倍率色収差を大幅に補正しています。それ以外にも、この10年間で開発された色収差補正に効果的な硝材を多く採用しており、これらとBRレンズの効果を合わせることで、高度な色収差補正を実現しています。研削非球面レンズにも、これらの硝子を採用しており、大口径レンズで発生しやすい軸上色収差を極限まで補正することができました。

また、第3レンズ群はRFレンズの特徴でもある補正レンズ群です。こうした補正レンズ群を入れることで、像面湾曲やサジタルフレアを大幅に改善することができます。

遠藤:また、ガラスモールド非球面レンズではなく、研削非球面レンズを使用する理由は、ガラスモールド非球面レンズでは製造上の理由で採用可能な硝材が限られることに対して、研削非球面レンズでは選択の自由度が広がり、色収差補正に最適な硝材を使用できるからです。

——1枚目と2枚目のレンズが接合レンズになっていますが、中望遠単焦点レンズとしては珍しい構成ですね。この接合レンズはパワーとしては正なのでしょうか? どういった働きをしていますか?

水間:パワーは正になります。この部分に正のパワーを持たせることで光束を収束する作用を持たせ、その後のフォーカスレンズ群を小型化させる働きを持たせています。

ちなみに、フォーカスタイプは、インナーフォーカス方式です。撮影距離による収差変動を抑えることができるほかに、フォーカスレンズ群を軽量化して、AF速度を高速化できるので、このフォーカスタイプを採用しています。

——3枚目からBR光学素子の入った接合レンズまでがガウス変形型のマスターレンズに見えます。マスターレンズ部分がフォーカスレンズにもなっているようですが、フォーカスレンズとしてはかなり大型ですね。こうした構成にしている理由は?

水間:F1.2クラスの大口径レンズになると、どうしても撮影距離による収差変動が大きくなってきます。フォーカス変動を抑制するためには、「ガウスタイプのような、もともと収差変動の少ないレンズ群全体をフォーカスレンズ群として動かす方法」か、「インナーフォーカス方式を採用して、内部で収差変動をキャンセルする方法」のどちらかを用いる場合が多いですが、今回は、そのどちらの方法も活用しています。

つまり、収差補正されたガウス変形型のマスターレンズをフォーカスレンズ群としながら、さらにインナーフォーカス方式を採用して、内部で残存の収差変動をキャンセルすることで、全体として撮影距離による収差変動を最小限に抑制しています。また、フォーカスレンズ群の軽量化も目的の一つです。

——このレンズの場合、撮影距離による収差変動は実際にはどの程度でしょうか?

水間:無限遠から約2mまで、収差変動はほとんどありません。約1mから至近端の0.85mにかけては若干球面収差が増えますが、従来に比べて大幅に改善しており、ほとんど気にならないレベルです。

——BR光学素子を使用したレンズはEF35mm F1.4L II USMに次いで2本目と思いますが、あらためてBR光学素子はどんな働きをするか教えてください。

水間:BR光学素子は可視波長域のうち短波長側、青色側の波長の屈折率が高い特殊分散特性を有する光学素子です。このような特殊な光学素子を用いることで、色収差を非常に高い水準まで抑制できます。

——結果的には意外にBR光学素子を採用するレンズが少ないように感じますが理由はありますか?

河合:コスト面と性能のバランスを見極めながら採用するかどうかを決めています。今回は高いレベルの色収差補正を行うためにはBR光学素子が必要ということで採用しました。

——後ろから2枚目の凹レンズの比較的湾曲の大きい曲面にASC(Air Sphere Coating)が施されていますが、ASCは垂直に近い入射光に効果があるということで、従来は比較的湾曲の少ないレンズへの採用が多かったと思います。湾曲が大きい場合でも効果があるのでしょうか?

水間:今回のレンズでゴーストの発生する光路をシミュレーションした場合、後ろから2枚目のレンズの面に対して垂直に入射する光の成分が原因になっていることがわかりました。そこで、この面にASCを採用しています。

ASCの概念図

——なるほどASCを施した面の前のレンズから入射する光束が、曲面に対してほぼ垂直に入ってくるということですね。

水間:その通りです。ほぼ正反射で戻っていくような光路のため、ASCがコーティングとして最適です。仮に少しでも角度がついて反射するのであれば、ASCでは苦しくなってくるので、その場合はSWC(Subwavelength Structure Coating)の方が効果的です。

——実際の逆光時のフレア特性はどうなっていますか?

レンズのコーティングを適材適所に配置したことに加え、レンズやメカのフレア成分をシミュレーションで確認しています。従来のEF85mm F1.2L II USMよりフレア成分を取り除き、比較しても改善しています。

ボケについて

——EF85mm F1.2L II USMは巷での愛称が「ボケマスター」と呼ばれるほど、ボケが大きいことで有名でした。これに対して、RF85mm F1.2 L USM では、どのようなボケを目指して設計されましたか?

水間:考え方は基本的には変えておらず、滑らかで綺麗なボケを目指して設計しています。

遠藤:それに輪郭が綺麗なボケを目指したという面もありますね。大口径レンズを使われるユーザーはボケを駆使した映像表現を実現しようとしていると思いますので、我々はピントが合っている領域だけでなく、デフォーカス領域(ピントの外れた位置)での品位にも非常にこだわって製品設計をしています。パープルフリンジ(被写体の輪郭への紫色の色づき)やデフォーカス領域のボケの色にじみは青側の光が他の波長の集光位置とずれてしまうことで発生する現象なので、BR光学素子の使用も含め、様々な工夫を取り入れて可視波長全域を限りなく1点に集光させることで色づきを低減しています。

作例:RF85mm F1.2 L USM
EOS R / 1/800秒 / F1.2 / ISO 100

——点光源を撮影した実写結果を見ると後ボケのピント近傍においてエッジははっきりしていますが、中央にピークがあって周辺になるに従って強度分布が弱くなる感じで、ピント近傍のボケ方はEF85mm F1.2L II USMによく似ています。ボケが大きくなるにつれ、中間ではエッジが目立たず均等かつ平たい山形、大きなボケになるとボケの内部がほぼ均等な強度分布になるように感じました。だいたいそんな感じで合っていますか?

水間:その通りです。自社開発したフレア・ゴーストの高精度シミュレーションツールを以外にも、ボケ味についても独自のシミュレーションツールを使うことで、設計段階から入念に確認、調整をしています。シミュレーション技術は日々格段に進化し続けており、現在でも設計段階からあたかも実機で写真を撮ったかのような評価ができるようになっています。

——EF85mm F1.2L II USMの時とボケに対する考え方は変わっていないと先ほどうかがいましたが、EF時代も本当はこういうボケを実現したかったというところはありますか?

遠藤:当時はミラーボックスの制約があり、使用できる材料や技術も限られていたため、できることが現在よりも限られていました。しかし現在は、RFマウントの大口径・ショートバックフォーカスにより設計条件が大幅に緩和されたことに加えて、シミュレーション技術の発達により、設計の段階でボケのシミュレーションまで詳細にできるようになりました。また、その結果をフィードバックしながら設計を調整する作業を繰り返し、ボケを含めてかなり理想に近い描写性を実現できるようになっています。

——さすがに軸上色収差補正はほぼ完璧で、ボケの輪郭が色づくことはありませんね。EF85mm F1.2L II USMは、前ボケ部分のエッジは紫っぽい輪郭、後ボケ部分のエッジは緑っぽい色の輪郭が目立つ場合がありましたが、このレンズでは全く気になりません。これほど、軸上色収差がよく補正されたレンズは他社のものを含めて見たことがありません。これはやはりBR光学素子の効果でしょうか?

水間:その通りです。しかし、BR光学素子だけで、色収差が補正されているわけではありません。レンズ構成に含まれる硝子の組み合わせで、色収差を補正しています。色収差は、宝石や金属の反射面のような高輝度の被写体を含むような厳しい撮影条件ではどうしても目立ちやすくなるため、軸上色収差を極限まで抑えることを目指し、今回はBR光学素子を採用しました。

——林の中から外を見るような絵柄では、通常は木々の葉の間から漏れる外光のエッジ部分に紫色のフリンジが出たりしますが、このレンズの場合はあまり気にならない?

水間:気にならないレベルになっていると思います。

——フィールドでの撮影結果を見ると、実際には思っていた以上にふわっとしたボケになっていて、変な色づきもないので、すごく自然に背景に溶け込む感じですね。ピントの合ったところはものすごくシャープで、ボケはクリアで美しい。

水間:開発としては、ボケや色収差の部分を含めて目標に近い製品ができたと思います。ただ、ボケのニーズは多岐にわたり、全てのユーザーに対して、これが正解だというものはありません。しかしながら、今回の製品に関しては比較的理想に近いボケができたと考えています。

——前ボケと後ボケのボケ方の違いはどうなりますか?

水間:前ボケと後ボケでそれほど大きな違いが出ないようにしていますが、どちらかといえば後ボケが綺麗になるようにしました。ただ実写では、ほとんど変わらないと思います。また、高輝度な被写体のボケ部分では前後のボケでわずかに色づきの違いが出る場合があります。

——EF85mm F1.2L II USMと比較すると鏡筒が伸びているのに口径食の悪化は見られませんでした。

水間:口径食はレンズのサイズに依存するところがあり、改善するためにはレンズ径をもっと大きくする必要があります。それではレンズの取り回しが大変になるので、大きさと性能のバランスを考え、EF85mm F1.2L II USMと口径食が同等になるようにしました。

作例:RF85mm F1.2 L USM
EOS R / 1/80秒 / F1.2 / ISO 800

——一眼レフカメラで目立つ、大口径レンズの絞り開放時のボケが蒲鉾状にケラレる現象は全く見られませんでした。

水間:一眼レフのミラーボックスで生じる蒲鉾状のケラレは、ミラーボックスのないRFマウントのカメラでは発生しません。RFマウントのカメラで、EFマウントのレンズをアダプター経由で使う場合、ミラーボックスによるケラレは生じません。

——他社のミラーレス機ではF1.2以上の明るさのレンズを装着するとイメージセンサー内部の構造上のケラレが出ることがありますが、EOS RではF1.2より明るいレンズを装着しても大丈夫でしょうか?

河合:どうでしょう。極端に明るいレンズを付けた場合、そのようなことが起こるかもしれません。現在、RFレンズで一番明るいレンズはF1.2のため、そのようなことはありません。

——研削非球面レンズの削りムラといいますか、いわゆるぐるぐるした同心円状のムラがボケ部分に見られることはありませんか?

水間:研削非球面レンズを採用したレンズの場合、昔からそうした削りムラが出やすいと言われますが、キヤノンでは長年にわたり研削非球面レンズを作り続けており、日々、研削加工の製造技術は向上しています。その結果、今回のレンズも、全くゼロではありませんが、削りムラが目立たないようになっています。

非球面レンズの研削方法

描写性・使いこなしについて

——このレンズをポートレートだけに使うのはもったいないと思います。このレンズなら心置きなく絞り開放から大きなボケを楽しめる。風景やスナップ、静物などなど、このレンズで広がる撮影領域はかなりあると思います。

河合:もちろんポートレートだけでなく色々な被写体でご活用いただきたいと思います。例えば、星空をF1.2・絞り開放で撮影した作例では、周辺部まで点が点に写っていると言えると思います。

作例:RF85mm F1.2 L USM
EOS R / 6秒 / F1.2 / ISO 800

——これはすごいですね。さすがに絞りF1.2開放でこれほど高精細に描写された星空の写真は見たことがありません。設計的には点光源の描写はどうでしょうか?

水間:絞り開放において、画面四隅の周辺部は完全な点とは言わないまでも、ほぼ点に近い形状になっています。F2.8まで絞ると画面のどの位置でも点はほぼ点に写ります。

——星空の撮影で推奨する絞り値は?

水間:星空写真のような、点を本当に点の状態で撮影したい場合はF2.8まで絞ることをおすすめしますが、F1.2でも問題なく使えると思います。

——個人的にはF1.2の描写でも従来ここまで点に写るレンズは見たことがありません。なお完璧に近く描写したいときはF2.8まで絞ると良いということですね。ところで、星空撮影を行うときはピントを無限遠で固定したいと思いますが、これはどうすれば良いですか?

川波:フォーカスモードをMF(マニュアルフォーカス)にした際に、ファインダーやモニターに表示される距離スケールの指標を、無限遠マークの真ん中に合わせていただければ無限遠になります。カメラの拡大表示を使うことでより正確に、ピント位置を設定することができます。

——レンズ側に物理的な距離スケールがない理由は?

河合:ファインダーやモニターに撮影距離情報が表示できます。操作上、レンズ側に距離指標があるよりもファインダー等で確認する方が便利なため、レンズ側の距離目盛の採用は見送りました。

——最短撮影距離0.85mはEF85mm F1.2L II USMより10cm短く、被写体にだいぶ寄れるようになっていますね。0.85mになっているのは機構上の制限からでしょうか? 描写性を考慮してのことでしょうか?

水間:フォーカスレンズ群の移動量の制限から0.85mにしています。最短撮影距離を短くするには、どうしても繰り出し量を増やすことになり、レンズが大型化してしまいます。今回のレンズの場合、前玉レンズを固定しているため、前玉径を大きくしなければなりません。そこで、バランスを考えた上で最適なところが0.85mでした。

——このレンズで被写体にもう少し寄りたい場合はどうすれば良いですか?

水間:現時点ではクローズアップレンズやエクステンションチューブなどの用意はなく、本製品に対応した、これらの計画も予定しておりません。

——歪曲収差も非常に少なく、マクロレンズ並みと感じました。

水間:中望遠レンズのため、歪曲収差も極力抑えるようにしています。マクロレンズも歪曲収差が完全にゼロではないため、そういう意味では、マクロレンズ並みとも言えます。

AF機構について

——先ほどフォーカスレンズが大型である理由をおうかがいしましたが、これを動かすとなるとかなり大変かと思います。RF85mm F1.2 L USMのAF動作を解説した動画がありますが、動画を見ると超望遠レンズ並みのAF機構が入っている印象を受けます。実際にはどうなのでしょうか?

鳥居:こちらが実際のフォーカスレンズです。フォーカスレンズとしては超望遠系のレンズよりも大きく重くなっています。そのため、超望遠レンズ以上のケアをしています。具体的には、フォーカスレンズを動かしているカム作用が駆動する際の摩擦が大きな負荷になってしまうため、その摩擦を軽減するためにボールやボールベアリングを積極的に採用して負荷を減らす工夫をしています。

レンズ全体(左)とフォーカスレンズ(右)

——AF機構的に今回新たに採用された技術はありますか?

鳥居:RF50mm F1.2 L USMで採用している機構と同様の機構を今回採用しています。摩擦負荷を極力低減する機構を取り入れることで、大型のフォーカスレンズでも駆動できるようにしています。

——EF85mm F1.2L II USMは、後端のレンズ1枚だけ残して残りのレンズ全体が繰り出す方式でしたが、今回のレンズと機構的に異なる部分はありますか?

鳥居:EF85mm F1.2L USMはヘリコイド式ですが、RF85mm F1.2 L USMはカム式を採用し、摩擦負荷を大きく抑えている点が異なります。

——結果的にAF速度は、EF85mm F1.2L II USMよりも高速なのでしょうか?

鳥居:最短撮影距離が短くなった上で、無限遠から最短撮影距離までの動作時間は同等です。そのため、同じ撮影距離で比較した場合のAF速度は高速です。

また、今回新たに撮影距離範囲切替スイッチを設けており、スナップ撮影などで使われる撮影距離の常用範囲にフォーカスの駆動範囲を制限することで、その範囲でのAFの作動時間を短縮できる仕組みを取り入れています。

撮影距離範囲切替スイッチ

遠藤:これは常用する撮影距離範囲でのAF作動時間を少しでも短縮しようということで導入しました。

——85mm F1.2のレンズを使うと被写界深度が非常に浅いのでピントが非常にシビアになると思います。EOS RとRF85mm F1.2 L USMの組み合わせでピント精度の問題はありませんか?

川波:精度的には上がっています。例えばフォーカスレンズを止める位置精度は、従来のEFレンズよりも4倍ほど細かくなっており、より高精度にピントを合わせることが可能です。

——F1.2に設定しているときはF1.2でピントを合わせるのでしょうか?

川波:基本的には、その通りです。

——瞳AFできちっとピントが合いますか?

河合:合います。事前に社内のフォトグラファーに瞳AFとRF85mm F1.2 L USMの組み合わせで繰り返しテストをして、狙ったところにちゃんとピントがくることを確認しています。高精度なAFができるようになったのも、フォーカスレンズの位置精度の向上によるものと言えますね。

AFを駆動させるリングUSM

——MFでは、カメラに装着していないとフォーカスリングを動かしてもフォーカスが動かないタイプですか?電源を切った場合は、電源を切る直前のフォーカス位置は覚えているのでしょうか?

川波:電源がないとフォーカス機構が作動しないため、カメラから外すと動きません。カメラメニューの「電源オフ時のレンズ収納」をOFF状態で電源スイッチをOFFにした場合、またはオートパワーオフ機能を使用する場合は、電源が切れる前のフォーカス位置を記憶しています。それ以外では、距離情報は一旦リセットされます。

——電源を入れたままレンズを外すとフォーカス位置を維持したままにできますが、電源を入れたままレンズを外しても大丈夫ですか?

川波:大丈夫なように設計をしているものの、一般の電子機器と同様に電源をOFFにしてから外すことを推奨しています。

——その他、AFの制御関連で苦労された点はありますか?

川波:RF85mm F1.2 L USMは、中望遠の大口径レンズであるため、被写界深度がかなり浅く、通常のレンズよりもシビアにAFの制御を調整する必要があり、苦労しました。

AF時の速度を速めるとピント精度を落とすことになり、ピント精度を良くすると速度を落とすことになるため、ある程度の早いAF速度を保ちつつ、ピント精度も上げていくという、制御を工夫しながらバランス点を見極めるところが難しかったですね。

機構設計

——これほど高性能なレンズになると、機構精度的にもかなりシビアになると思いますが、機構設計としては腕の見せ所になるのでは?

鳥居:「圧倒的高画質を達成する」という目標のもと、機構部分は、大型のフォーカスレンズをいかに精度良く保持するか、過酷な使用環境でいかに精度を維持できるかという2点が課題になり特に苦労しました。

例えばカメラの横位置や縦位置という撮影スタイルにかかわらず、高精度なAFを維持するレンズ保持構造や、衝撃に強い構造が求められ、実現するためにシミュレーションで検証を重ね、実機で確認を行いました。実際に製品が出来上がって手に取ったときに、苦労した甲斐があったなと感じることができました。

——製造のばらつきも許容範囲が狭そうですが、製造上で工夫しているところはありますか?

鳥居:部品精度自体をかなり高いレベルで追い込んでいます。しかし、それでも発生する製造誤差を補正するために補正機構を積極的に入れて対応しています。例えばガラスとガラスの間隔や傾きなどを補正する機構を入れ、個々のレンズで微妙な製造誤差を補正できるようにしています。

——コントロールリングは従来のEOSにはなかった機能で、静止画ユーザー間であまり有効活用している声は聞きません。RFマウントで導入されたのは動画撮影時の絞りコントロールの意味合いが大きいのでしょうか?

浅野:コントロールリングを静止画のお客様があまり有効活用していないという話は、実際そのようなことはないのではないか、と考えています。

例えば、従来のEOSシステムで露出調整を行う際、カメラ側にあるメインとサブの2つの電子ダイヤルでしか調整ができませんでした。EOS Rシステムでは、コントロールリングが加わることで3つ目のこれまでにない操作性を実現できるようになりました。つまり、シャッタースピード、絞り値、ISO感度、露出補正をそれぞれダイレクトに調整することが可能になったわけです。お客様からは、「コントロールリングにはISO感度を設定して使っている」「ファインダーを覗きながら色々と設定を変えられて使いやすい」など、前向きな声をいただいています。

また、EOS R の場合はファインダーを覗いたまま各種設定ができますが、コントロールリングに露出補正を割り当てることで撮影後の明るさを確認しながら撮影できます。さらに、コントロールリングに適度な手に感じるクリック感をつけることで、直感的な操作感を得られるように工夫しています。このように、コントロールリングは、どちらかと言えば、動画のお客様向けというより、デフォルト設定でクリック感を設けていることもあり、静止画のお客様向けの機能として導入しています。

——コントロールリングや絞り関連で工夫しているところはありますか?

浅野:静止画のお客様だけでなく、実は動画のお客様向けの設定も新しくできるようにしています。例えば、RFレンズを装着した動画撮影時には、絞りの設定ステップを1/8段にすることができます。ボディ側にあるダイヤルでこれを操作するのはやや大変ですが、コントロールリングではよりスムーズに操作できると思います。また、希望するお客様向けに、有償ですが、クリック感をなくすサービスを提供しているため、ぜひ静止画だけでなく動画を撮影されるお客様にも使ってもらいたいですね。

それと、絞りの制御方法もRFレンズから新しくしており、動画撮影時だけでなく静止画撮影時にも撮影者に絞りの作動音が聞こえにくくなるよう配慮をしています。具体的には、RFレンズでは絞りの高速性を維持しつつ、そっと止まることができるような制御を採用し、静止画撮影時においても、より快適に撮影できるようにしています。

——防塵防滴対応ということですが、フォーカスによって空気が外部と出入りすることはありますか?

鳥居:今回のレンズは全長固定のインナーフォーカスタイプなのでありません。前玉が繰り出るレンズは、空気のポンプ効果により前玉が繰り込みにくくなるのを防ぐために、空気の出入り穴を設けています。

防塵防滴構造を採用

——そうしますとレンズ内部に埃などが混入することも少ないと考えられますか?

鳥居:そうですね。極力埃などは入らない構造になっています。また、空気の出入り穴を設けている防塵防滴対応レンズも、空気の出入り穴から埃などが入りにくい構造を採用しています。

——EFレンズの時と比べて、防塵防滴の仕様は同じですか?フィルターは必要ですか?

鳥居:防塵防滴の仕様は同等です。今回のレンズではフィルターなしで防塵防滴を達成しています。

——製造はどこで行なっていますか?

河合:日本製です。

河合:本レンズを商品化するにあたって、試作機を使った性能テストを何度も繰り返し行いました。瞳AFを使った絞り開放でのポートレート撮影では、撮影者から思わず興奮の声が漏れるほどのシャープな写真を撮影することができました。RF85mm F1.2 L USMは徹底的に色収差が抑えられており、なおかつピントの合ったところは、高解像・高コントラストな写真を得ることできました。本レンズの魅力は特に“絞り開放”にあると考えます。今まで、少し絞って撮影していたユーザーも本レンズでは、F1.2で撮影して出来上がった写真を見て楽しんでいただけると幸いです。

インタビューを終えて

RF85mm F1.2 L USMを初めて手にすると、その大きさ・重さにしばし呆然とする。ミラーレス機では同じスペックのレンズなら従来よりも小型軽量になるという先入観が、常識とは逆に大きく重くなったレンズに対してどう理解すべきかの答えを失わせるからだ。

しかし、コンパクトなEOS Rに似合うとは言い難いこの大きなレンズを装着して撮影し撮影結果を見た途端、レンズの大きさや重さなどもはやどうでも良いと感じさせるほど、その極めてシャープで繊細な「写り」に衝撃を受ける。

筆者も長年写真をやっているが、開放F値・F1.2のレンズはもとより、F1.4クラスいやF2クラスの大口径レンズにおいてこれほどまでにシャープで収差感のないレンズは見たことがない。

ボケ部分を見ても、ほぼ完璧なまでに補正された軸上色収差により、ブルーマゼンタやグリーンの輪郭や色にじみは、微塵も見られない。

F1.2の極限まで薄い被写界深度の中に見える、そのどこまでもシャープに研ぎ澄まされた先鋭感、僅かな濁りも感じさせないクリアで自然なボケは、今までのどの大口径レンズにもない新しい85mm・中望遠の描画空間を体感させてくれる。

今回のインタビューを通して、この史上最高の85mmとも言うべき高性能なレンズを作り上げた技術者から帰ってくる返答は意外なほど普通であった。RFマウントの大口径・ショートフランジバックの特徴と、キヤノンの持つ特殊硝材技術、最新の光学設計技術とシミュレーション技術などの組み合わせによる総合力でこの高画質を実現したというのである。

しかし、光学設計に有利な大口径・ショートフランジバックは、裏を返せば設計者の力量が如実に表れてしまう設計環境でもあるはずだし、長期にわたって使用されるであろうRFレンズの初代を設計する栄誉と重責を思えば、設計者も自ずと普段以上の力が入るであろうし、より上のレベルの性能を狙おうとするのは当然だろう。

RFマウントのレンズがいま、設計力を競い合うかのごとく最高性能のレンズを連発しているのは、控えめな返答の行間に込められた、並々ならぬ設計者のプライドと情熱があってこそに違いない。

昨年のRF50mm F1.2 L USM、そして今回のRF85mm F1.2 L USMと立て続けに、かつてないほどの高性能レンズを体験すると、あらためて単焦点レンズの表現力の強さと深みを再認識する。ミラーレス時代だからこそ実現できた新たな表現の世界への扉の鍵の一つは、間違いなく高性能・単焦点レンズが握っていると感じさせるインタビューであった。

杉本利彦

千葉大学工学部画像工学科卒業。初期は写真作家としてモノクロファインプリントに傾倒。現在は写真家としての活動のほか、カメラ雑誌・書籍等でカメラ関連の記事を執筆している。カメラグランプリ2018選考委員。