コラム

市場から消えたLexar、いよいよ日本の売場で復活か

日本法人も本格始動 気になるラインナップは?

レキサージャパン株式会社ディレクターの森下和彦氏。日本市場での復活について話を聞いた。

皆さんはレキサー(Lexar)のことを覚えておいでだろうか。1996年に設立され、20年以上もデジタルカメラの記録メディアを供給してきた米国ブランド、レキサー。スマートメディアやxDカードの時代からお世話になっていた読者もいるかと思う。

そのレキサー、2017年夏より日本での流通がストップしているのはご存知の通り。親会社Micron(マイクロン)が、レキサーを中国のメモリーモジュール企業、Longsys(ロンシス)にブランドごと売却したためだ。2017年8月にはLongsysがLexarの商標権を取得。市場からレキサーブランドの製品が消えた。

LongsysがLexarを買収完了した時の当サイトの記事。

人々の記憶から消えかけているレキサーだが、実は来年初旬、ついに日本市場で復活するという話を聞いた。果たして新星レキサーは、どのような戦略をひっさげて帰ってくるのだろうか。

新しい資本のもと復活

話を買収の頃に戻す。当時、より高い価値を持つ市場およびチャネル向けの製品に注力するとしていたMicronは、レキサーの売却先を探していた。そこに手を挙げたのがLongsysだった。

Longsysは中国深センに本拠を構える企業で、業界ではメモリーモジュールのOEM製品で知られていた。かねてよりOEMではなく独自での製品展開を望んでおり、それがレキサーを手放したいマイクロンのニーズに合致した。2017年のことだ。

その後日本では音沙汰がなかったレキサーだが、米国ではLongsys資本のもと、Lexar Internationalが発足。事実上、レキサーブランドがここに復活した。メモリーカードのラインナップも一部復活させ、北米での流通を開始。順次、台湾、中国にも現地子会社を起き、韓国、香港、オーストラリア、インドでも展開中だという。欧州でも代理店を通じて流通しているそうだ。

米国本社はかつてのLexar本社と同じエリアにあり、前Lexarで稼働していたテスト施設「Lexar Quality Labs」も引き継いでいる。従来よりLexarが品質を語る際、良く説明に出てきた施設だ。そこには1,100台以上のカメラなど対象機器が用意され、専門の試験技術者チームが在籍。製品に対するあらゆるテストを実施するという。製品の動作確認、互換性評価などは主にこの米国本社で行われる。

日本ではレキサージャパン株式会社が9月に創設され、いよいよ年明けより製品の流通が始まる見込み。当面は大手カメラ量販店が主な販路となり、かつてのMicron傘下時代と同様の規模を構築していく考えだ。

同時に日本法人はカメラメーカー(ほぼすべてが日本にある)と密接にコンタクトし、カメラメーカーと協力的な関係構築を行う任も担う。例えばカメラの開発段階から関与し、新製品の対象機種リストにLexar製品が含まれるようにするといった活動だ。そのため、他の現地法人にはいない人材としてFAE(Field Application Engineer)を常駐させる。

「日本法人の開設が遅れたのは、日本市場の調査とカメラメーカーとのコミュニケーションを進めていたためです」と語るのは、レキサージャパン株式会社の森下和彦ディレクター。決して日本市場に魅力がないわけでなく、FAEを置くなどの準備も必要だったのだろう。

また、「価格に対する考えは以前と変わりません。引き続き、日本国内と海外の価格差を少なくしたい考えを持っています」とのことだ。思えば2016年、XQDやCFast 2.0で、大幅な低価格供給を最初に実現したのはLexarだった。内外価格差がとかくいわれるメモリーカード分野において、今後もこの方針を変えない姿勢に安堵を覚える。

サポート窓口も従来通り。というより、旧Lexar製品のサポートはLongsysの新Lexarに引き継がれ、途切れることなく運営されていたという。

製品につけるロゴデザインなどもすべて旧Lexarを引き継いだ。Longsysがその辺りの権利もすべて取得したためだ。

お馴染みのLexarロゴ

MicronからLongsysへ

以上が新しいLexarの全容だ。では、これまでの旧Lexarと何が異なるのか。森下ディレクターは「基本姿勢は変わりません。ただメモリモジュール企業らしく、製品に使用するNANDメモリーの選択肢が増えました」と回答してくれた。

なるほど、以前のLexarは主にMicronのNANDメモリーを採用していた。Micron製メモリーの品質や価格に深い問題があったわけではないが、選択肢が増えることで、場合によってはコストや性能に変化が見られる可能性がある。実際、他社のNANDメモリーを使用した下位ライン製品の転送速度が向上したため、速度表記を見直した例もあるという。

加えて親会社のLongsysは、1999年かメモリーおよびストレージ関連製品の製造・設計を専門としている。自社でメモリーカードのファームウェアを設計できる実力があるなど、新Lexar製品の開発をサポートできる立場にいる。

ラインナップを見てみると……意外な事実が

気になるのはLexarが日本市場で展開する製品ラインナップだろう。基本的には米国など海外と共通で、プロ・ハイアマ向けの製品展開が予定されている。

米国Lexarのニュースリリースページより。このとき(2018年8月1日)、Lexarはフルラインナップの復活を宣言していたが……

現在確認できるのは、CFast 2.0、CF、SDHC/SDXC UHS-I、UHS-II、microSDHC/microSDXC UHS-I、UHS-IIといったところ。旧Lexarでは2アイテムしかなかった外付けのポータルブルSSDもあり、各種カードリーダーも用意されている。かつてのラインナップのうち上位ラインが踏襲されるようだ。……いやまて、XQDがない?

ニコンD5/D500とともにXQDを大々的に展開し、市場価格を押し下げたLexar。なのに、XQDがラインナップに見当たらないのはどうしたことなのか。いまなら同じくXQDを採用するZ 7/Z 6の存在もある。特にニコンユーザーとしては、何のための復活なのかと納得いかないことだろう。

その理由はXQDが将来的に、CFexpressへ移行すると見られるためだ。CFexpressはインターフェイスにPCI EXpress 3.0(Gen3)、プロトコルにNVM Express 1.2を採用するXQDの後継的存在。同じ形状・サイズのXQDと同じあり、カメラなどホスト側のスロットが対応すれば、XQD対応カメラでもCFexpressが使用できる。すでにニコンZ 7/Z 6ではファームウェアバージョンアップによるCFexpressへの対応を表明しているのは知られたところだ。

LexarはすでにCFMS(China Flash Market Summit)2018というイベントでCFexpressの開発を発表しており、おそらくCES 2019で正式発表される見込み。それもあり、旧LexarからXQDの生産・出荷を引き継がず、CFexpress対応カメラが普及するタイミングを見計らっているのだろう。

CFMS2018で開発発表されたLexarのCFexpress。(提供:レキサージャパン株式会社)
CFexpressの製品画像も入手した。黒をベースにしたデザインはこれまでのLexar製品と同じだが、よく見ると金色の帯が縦方向から横方向になっている。(提供:レキサージャパン株式会社)

問題はCFexpressに対応したカメラがいつ出るか。対応製品がないことにはメモリーカードを出す意味がない。Lexarは日本のイベントCP+2019にも出展が決まっており、そこで何らかの動きがあればと期待してしまうが、いったいどうなることか。

ともあれ、Lexarの復活は日本のメモリーカード市場を盛り上げるに違いない。今後の動向を見守りたいと思う。

制作協力:レキサージャパン株式会社

本誌:折本幸治