デジカメ Watch

●仕事のメインで使っていける潜在能力の高さを感じる
ニコン「D300」 / 本田雅一

D300
 これまで数多くのEOS DIGITALを使ってきた。「EOS D30」に始まり「EOS D60」、「EOS 10D」、「EOS 20D」、「EOS 5D」。それに軽量なお手軽機として「EOS Kiss Digital」シリーズも初代、それに2代目。数えてみるともう7台。EOSばかりに集中しているのは、僕にとってボディよりもレンズの方がずっと重要で、手持ちのレンズが使えればボディは何でも良かったからだ。

 僕にとってのデジタル一眼レフカメラの基本は取材道具。PCと同時に持ち歩いて仕事をこなす。だから過去も、そしてこれからもEOS-1Dシリーズとは縁がないだろうが、EOSの中位機種とは長いつきあいになると覚悟していたのだが、今年はニコンD300を選択した。これに驚いたのは周りの友人、そして妻である。

 道具としてのEOSには今も不満はない。EOS 40Dは良いカメラだと思うが、今ひとつときめかない。仕事がら写真家でもないのに最新カメラに触れる機会は多いが、今年はキヤノン以外に個人的な興味を引く製品が多く揃った。

 パナソニックの「LUMIX DMC-L10」は、まだ高い完成度とまではいかないが、本当の意味でデジタルカメラ世代のユーザーがレンズ交換式へと向かう道筋を示したという意味で興味を惹く。大きめ、重めではあるが、操作感も良いキットレンズのコストパフォーマンスの高さも魅力だった。

 オリンパスのE-3は、本来は中級機の範疇で評価すべき製品ではない。内蔵のボディ内手ブレ補正の性能、しっかりしたボディに高速AF。使っていて気持ちよく、機能と性能の割にはコンパクトだが、暗いイベント会場でノーストロボ撮影を強いられることの多い僕の使い方にはちょっと合わない。


「D3」はあらゆる面で理想的だが……

 “使える超高感度”で、従来にないほど撮影領域を拡大したニコンD3は、性能と機能、画質など、あらゆる面で理想的。グリップやバランスが良いので、数値ほどには重さも感じない。が、さすがにこのカメラとパソコンを同時に抱えて1日中、展示会場を取材して回る気にはなれない。趣味で使うなら間違いなくD3を選んだろうが、トータルの性能、機能、画質を評価してD300を選んだ。取材時にポケットに忍ばせておける小型ストロボのSB-400も気に入り、SB-600とともに同時購入している。

 長い間、キヤノンユーザーだった僕は、現時点では各種操作のあまりの違いにとまどいつつ、まだ使いこなしていない状態だ。よく知られているように、ニコンはいろいろな操作がキヤノンの逆。ズームリング、フォーカスリングはもちろん、露出計の+側が左に位置し、ダイヤル操作による露出パラメータの調整も逆方向の回転となる。

 D300は、本体内の操作方向はカスタマイズで変更できるが、今後レンズが増えてくるとエントリー機の「D40」やその後継を選ぶことになるだろう。エントリー機には、操作方向のカスタマイズといったマニアックな設定はないから、今のうちに慣れておかねばならないと思って修行中だ。

 肝心の絵作りは従来のニコンより色のノリがよい印象。反対に、デフォルトでISO感度アップ時に自動的にかかるよう設定されていたノイズリダクションは、ディテールをかなり舐める印象なので効果を弱めてある。ただ、画質面でもっとも期待を裏切ってくれた(良い方向でだが)のが、アクティブD-ライティングの的確な動作だ。常に「弱」にして使っているが、肉眼で風景を捉えた時のトーンカーブに近い雰囲気に仕上げてくれる点がいい。

 加えて感心したのがマルチパターン測光の露出判断。特に夜景など背景が暗い場面での露出判断が非常に良く、無駄に明るく撮そうとしない。おかげで、これまでは多用していた露出補正をほとんど使うことがなくなった。ストロボ調光やストロボのリモートコマンドモードといった機能も含め、ニコンのカメラも知っていたつもりだったが、改めて「ここまで撮影感覚に違いがあったのか」と軽い驚きを経験しながら使っている。


高い操作性も評価できる

 一方、今後評価が分かれてきそうなのは、高感度撮影時の画質。ほぼ同じ画素数のD2Xsなどと比べると大幅にS/Nが改善されている。センサーの質が高まったのが原因だと思っていたが、画像処理の違いと(CMOSオンチップのノイズリダクションではなく後処理の)ノイズリダクションに鍵があるようだ(もちろんセンサーも改善されているが)。

 標準感度のISO200時には、他製品比で特にローノイズということはなく、むしろ暗部にノイジーさを感じるところもあるが、ISO800以上になると逆にローノイズ。ディテールを舐めるノイズリダクションをオフにしても、ISO800ぐらいなら大丈夫そう。さらにノイズリダクションの副作用を許容するならISO1600、Web向けレポートの写真ならISO3200以上でも十分使い物になる。

 何よりスイッチやダイヤルで頻繁に変更したくなる機能を設定できるのは、メニュー操作やダイヤルとボタンのコンビネーション操作を多用するEOSに比べると設定内容を視認しやすく、変更操作も素早く行なえる。まだ完全にD300を掌握しきってはいないが、潜在能力の高さは十分に感じている。しばらくはこのD300を中心に、仕事をこなしていけそうだ。


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本田雅一
PC、IT、AV、カメラ、プリンタに関連した取材記事、コラム、評論をWebニュースサイト、専門誌、新聞、ビジネス誌に執筆中。カメラとのファーストコンタクトは10歳の時に親からお下がりでもらったコニカEE Matic。デジタルカメラとはリコーDC-1を仕事に導入して以来の付き合い。

2007/12/25 12:20
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