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●絶大な信頼を寄せるプロの仕事道具
キヤノン「EOS-1D Mark III」 / 野下義光

EOS-1D Mark III
 何故このカメラを買ったのかと問われれば、買わない理由が無かったからと答えます。初代「EOS-1D」でデジタルを導入し、2代目「EOS-1D Mark II」で100%デジタル化。主力機は同型2台という方針の筆者は経費の都合でマイナーチェンジ版の「EOS-1D Mark II N」は見送ったものの、待望のフルモデルチェンジ版のEOS-1D Mark IIIは発表後躊躇無く予約しました。

 ただ、どこで購入するかをちょっと迷い発表翌日に予約したため、意外な大量予約により結局手元に届いたのは発売1カ月後の6月末。でも実はデモ機を借り受ける機会があり、発売1カ月前からもう使ってはいました。以来、この年末まで2台合わせて既に10万ショットを越え完全に手に馴染んでしまいました。

 実用上の画質はEOS-1D Mark IIでも必要十分でしたし、等身大ポスター等でも不満の無い解像感はありました。でもさすが新型です。A/D変換14bitも効いていると思いますが、階調表現が一段と滑らかになり、女性ポートレートでは肌をより艶めかしく描写してくれます。大判印刷でも更に解像感がアップしました。

 高感度ノイズも1段分は確実に良くなり、筆者基準でEOS-1D Mark IIではISO400までが通常の実用範囲でしたが、EOS-1D Mark IIIではISO800でも十分使えるようになりました。そのため、ハウススタジオなどで薄暗いながらも雰囲気のある自然光があってもストロボやHMIなどの人工照明の使用を余儀なくされてきた場面でも、その自然光をそのまま活かした撮影が行なえるようになりました。まさに撮影機器の性能向上は表現の幅を広げてくれるものです。


UDMAには対応して欲しかった

 通常は6枚/秒に設定している筆者には、(絞り開放時のみ)10枚/秒の高速連写性能はあまり重要ではありませんが、RAWでも最低30コマ分、さらにバッファメモリが最後まで使い切れるようになり、場合によっては30コマを超える連続撮影枚数はテンポを重視するポートレートには非常にありがたい性能向上です。

 しかし、最大最悪に残念なのはUDMA対応が見送られたこと。連続撮影枚数は増えたものの、早いテンポでバンバン撮っているとすぐにバッファフルになって撮影が途切れてしまいます。新ファームでSDHCメモリーカードへの書き込み速度がアップし、サンディスクExtreme III(SDHCメモリーカード)はCFのサンディスクDucati Editionよりも速く書き込めますが、それでも実測で15MB/秒程度。UDMAに対応していればUDMA対応CFで30MB/秒位の転送速度が得られ、更にテンポ良く撮影できたと思われます。なぜUDMA対応にしなかったのか? 最大の謎です。

 AFも変わりました。任意選択できる19点の測距点はF2.8対応のクロスタイプとなり、F2.8よりも暗いレンズを所有していない筆者には適した仕様です。その効果もあるのかもしれませんが、AFの精度も明らかに向上しました。ただAFスピードは遅くなった印象です。EOS-1D Mark IIはとにかく速く、実際にピントが合っていようがいまいがお構いなしに素早くAFが動作していましたが、EOS-1D Mark IIIはじっくり慎重にそして正確に動作している様子です。

 AIサーボ不具合の件では該当するロットナンバーだったので一応修理に出しました。ただ、もともとAIサーボはほとんど使わないので、その不具合が発生したことはありませんし、きちんと動作した場合どの程度性能があったのかもわかりません。ほとんど使いませんとは書いたものの、稀には使うこともありその際に本来持っている性能が発揮しなかったら嫌なので修理に出した次第です。なお、この修理を施すとワンショットAFも素速くなるとの噂を耳にしましたが、修理済みと未修理の2台を同時に比較しても違いは筆者には感じられませんでした。


何の不安も無く被写体に集中できる

 基本性能には満足していますが、新機能、新設定の使い勝手ははっきり言ってイマイチ。今一歩痒いところに手が届かないといった感じです。開発者は撮影者ではないし、開発者が想像するプロの現場と実際ではギャップがあるので致し方ない面ではありますが、筆者も含め各方面からいろいろな要望が上がり今後更に熟成されるでしょう。

 初代EOS-1DからこのEOS-1D Mark IIIまでかれこれ100万ショットを撮影し、その間致命的な故障は皆無。砂浜に直置きしても海に一瞬水没させても全く動じないそのタフさ。プロの仕事道具として絶大な信頼感があり、何の不安も無く被写体に集中できる。それが1D系、そして最新のEOS-1D Mark IIIです。

 おそらくまた数年後にフルモデルチェンジされたら即それを導入するだろうと思いますが、それまではこのカメラで最前線を戦い抜いていこうと思っています。


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野下義光
(のしたよしみつ)熊本県生まれ、千葉県育ち。国立木更津工業高等専門学校機械工学科卒業後、エンジニアとして大手コンピューター会社に5年勤務。その後、夢を捨てきれず写真界へ身を投じる。現在ジュニアアイドルを中心にWeb、DVDジャケ写などで活躍中。フルデジタルの写真集も多数手がけている。趣味はネットオークション(笑)

2007/12/25 12:20
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