何故このカメラを買ったのかと問われれば、買わない理由が無かったからと答えます。初代「EOS-1D」でデジタルを導入し、2代目「EOS-1D Mark II」で100%デジタル化。主力機は同型2台という方針の筆者は経費の都合でマイナーチェンジ版の「EOS-1D Mark II N」は見送ったものの、待望のフルモデルチェンジ版のEOS-1D Mark IIIは発表後躊躇無く予約しました。
実用上の画質はEOS-1D Mark IIでも必要十分でしたし、等身大ポスター等でも不満の無い解像感はありました。でもさすが新型です。A/D変換14bitも効いていると思いますが、階調表現が一段と滑らかになり、女性ポートレートでは肌をより艶めかしく描写してくれます。大判印刷でも更に解像感がアップしました。
高感度ノイズも1段分は確実に良くなり、筆者基準でEOS-1D Mark IIではISO400までが通常の実用範囲でしたが、EOS-1D Mark IIIではISO800でも十分使えるようになりました。そのため、ハウススタジオなどで薄暗いながらも雰囲気のある自然光があってもストロボやHMIなどの人工照明の使用を余儀なくされてきた場面でも、その自然光をそのまま活かした撮影が行なえるようになりました。まさに撮影機器の性能向上は表現の幅を広げてくれるものです。
AFも変わりました。任意選択できる19点の測距点はF2.8対応のクロスタイプとなり、F2.8よりも暗いレンズを所有していない筆者には適した仕様です。その効果もあるのかもしれませんが、AFの精度も明らかに向上しました。ただAFスピードは遅くなった印象です。EOS-1D Mark IIはとにかく速く、実際にピントが合っていようがいまいがお構いなしに素早くAFが動作していましたが、EOS-1D Mark IIIはじっくり慎重にそして正確に動作している様子です。
初代EOS-1DからこのEOS-1D Mark IIIまでかれこれ100万ショットを撮影し、その間致命的な故障は皆無。砂浜に直置きしても海に一瞬水没させても全く動じないそのタフさ。プロの仕事道具として絶大な信頼感があり、何の不安も無く被写体に集中できる。それが1D系、そして最新のEOS-1D Mark IIIです。