●フィルム時代を思い出す薄型フォルムの良き相棒
オリンパス「E-410」 / 佐々木啓太
E-410
オリンパスのデジタル一眼レフカメラもE-410から1,000万画素時代を迎えた(ヨーロッパでの限定販売だったE-400は除きました)。私はインクジェットプリントの性能も上がり画像処理ソフトで処理していけば、500万画素の「E-1」でも十分だと思っていたので、デジタルカメラの高画素化にとても懐疑的だった。そうはいっても使ってみると細かな再現性は格段に高く、その繊細な描写性能を活かしたデジタルモノクロプリントという自身のデジタル化当初の目的が現実味を帯びてきたように感じた。
しかし、E-410の最大の魅力は、デジタルのテクノロジーではなく、フォルムだと思っている。フィルムカメラのような薄さは初めて手にしたカメラを思い出す哀愁を帯びている。左手を中心に下からカメラを支えるようにした構え方も、手巻きで使っていた時を思い出して懐かしい。
デジタルカメラとフィルムカメラの最大の違いは進化の速度にある。2年も待たずに後継機種が出てしまい、現行機種は型遅れとなる。これは先に書いた高画素化など技術的な進化に主な原因がある。画素ピッチも昔は無理といわれていたサイズまで極小化している。これからもさらに進化して次々と新しいカメラがでてくるはずだ。
昔のカメラは親父から息子(おじいさんから孫に)に引き継がれ愛着を持って長く大事に扱われてきた。現状のデジタルカメラにそれを望むのはむずかしいかもしれないが、大切なのはそのカメラが、記録や記念だけでなく自己表現できる道具だということだ。道具には必ず良い点と悪い点がある。必要なのは良い部分をのばしていくことだ。
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気軽に持ち出せるコンパクトさ
薄型軽量なコンパクト一眼レフの魅力は、いつでも持ち出せる気楽さにある。同じく軽量コンパクトなWズームレンズセットを一緒に持っても785gとE-3の1台分より軽い。撮った写真をオリジナルプリントにして作品を作るためには、手間をかけてもRAWから階調豊かに仕上げたい。現時点ではRAW+JPEGでストレスなく撮影するためには、デジタル一眼レフカメラが必要だ。RAWの撮れるコンパクトカメラでは撮影後の書き込みに時間がかかることが最大のネックになる。荷物が多くてカメラが入らないので、しょうがないからコンパクトデジタルカメラ……というのがこのカメラを持つまでの解決策だった。
確かにコンパクトデジタルカメラにもその良さがあり、デジタル化で作品作りにも使えるクォリティは備わっていると感じることもある。RAW+JPEGの同時記録の良さは、トラブルが起きてもどちらかのファイルが救える可能性が高いこと、セレクトはJPEG、仕上げのプリント作業はRAWからにして作業効率を高められることにある。ディスプレイで見るだけならばJPEGでも十分だと思うが、プリント作業になれてくると、オリジナルがRAWでないと、微調整がやりづらくストレスが大きくなってくる。
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暗くなったらライブビューを活用
撮影時のシャッターや絞り、露出補正のコントロールもデジタル一眼レフカメラは素早くできる。E-410はダイヤルがひとつしかないので、プログラムモードを使ってシャッタースピードと絞りはプログラムシフト、露出補正は「+/-ボタン」+ダイヤルという使い方をしている。
スナップで使う時は、カメラのフォーカス設定は必ずMFを使うようにしている。これはピントがあっていることより、自分の思った瞬間にシャッターが切れることが最優先だからだ。ミラーを使ったファインダーは、ピントの山がつかみづらくマニュアルフォーカスがやりづらいので確かに不満もある。
最近のデジタル一眼レフカメラは、AFの動作をシャッターボタン以外のボタンで独立して操作できるようになっているので、MF設定にしていてもAFを使うことは可能だ。オリンパスでは、「AEL/AFLボタン」にその機能を振り分けることができる。この設定にしておくと、ピントをあわせてから構図を変えてもピントの位置が変わらず、構図を変えながらピント位置を動かさずにシャッターをきることができる。
また、暗くなってから広角レンズを使っているときなどで、厳密なピント合わせがしたいときは、ライブビューで10倍拡大を使う。E-410から、AFを設定したままライブビューを使うと、シャッターボタンを全押ししたときにAFでピントをあわせ直す設定になっているので、測距点以外でピントを合わせてから撮影するときにも、MFを使ってAF動作をシャッターボタンから独立させる設定は有効だ。
E-410が仕事のサブカメラや、作品のメインカメラになることはないと思うが、いつでも持ち出せるカメラとして心強い相棒ができたのはとてもうれしい。
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佐々木啓太
(ささきけいた)1969年兵庫県生まれ。写真専門学校でモノクロオリジナルプリントを見たのがきっかで、写真家への道を志すようになった。スタジオアシスタント、写真家の助手生活を経て独立。現在は「街角写真家」という肩書きで活動中。「街角写真」とは、気になる街の片隅をスナップする写真のこと。デジタルカメラの登場でカラーにシフトしていたが、PX-5500やファインアート紙と出会い、再びモノクロ熱が上昇中。
http://homepage.mac.com/st_eight/
2007/12/25 12:22
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