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●撮り鉄で実感した3D-トラッキングの威力
ニコン「D3」 / 小山伸也

D3
 仕事でいろいろなデジタルカメラを使うが、常用しているカメラはニコンのD200。体験セミナーの講師をしたので、その関係と思われがちだが、D200の購入が先で講師の話がきたのはその後だ。D200は、画質もよく使いやすさにも満足しているので、よく使っている。

 仕事とは別に趣味として鉄道写真を撮ることが多く、画面内を前後方向あるいはやや斜め方向に移動する被写体を連続撮影しても、ピントを良好に合わせ続けるダイナミックAFモードは、お気に入りの機能だ。これを使って駅に進入する電車(おおよそ70~80km/hで走行)を連続撮影すると、被写体である電車にピントを合わせ続けてくれるので、非常に都合がいい。

 以前において、高速で走る列車を撮影する場合には、置きピンと連続撮影を組み合わせていた。これは、あらかじめ置きピンをしてある位置に列車が近づいたら連続撮影を開始して、過ぎ去ったら終了とすることによって、1コマあるいは複数のコマにおいて良好なピントが得られることを狙ったものだ。したがって全てのコマに対してピントが合うということは期待していない。D200でいくぶん改善されたものの、それでもよい撮影結果を得るには使い方が限定されていた。

 そして、さる8月23日に、ニコンが「D3」と「D300」を発表した。D2系やD200と比べて、さらなる高画質や高速性能が実現されたのはもちろんだが、このD3とD300には、「3D-トラッキング」が加えられた。「3D-トラッキング」は、被写体の輝度や色を認識して、ピントを合わせた被写体が画面内の前後方向だけでなく、上下および左右方向へ移動してもピントを合わせ続けるので、D200よりもAFの追随性が向上して高速で走る新幹線の撮影に使えるのではないかと思った。


新幹線の先頭部に追従

 その後、ニコンの「D300スペシャルカレッジ」の講師を担当することになり、9月中旬にD300と新しいレンズを借りることができた。さらに、4日間という短い時間であるが、D3も借用できることになり、D3とD300の両方を使うことができた。

 結果は、両機種とも3D-トラッキングを使って、およそ240km/hで通過する新幹線を14~30コマ連続撮影しても、いずれのコマもピントが合うことを確認した。このうち、D300を使って撮影したものはD300スペシャルカレッジで皆さんにご覧いただいている。この3D-トラッキングは、今までのカメラでは、できなかったことができるようになり、鉄道写真を趣味とする「撮り鉄」にとっては、大きな朗報である。

 D300スペシャルカレッジの作例写真として高速で通過する新幹線を撮影している時に、アクティブになっているフォーカスエリアがファインダー内で次々と移動して、500系「のぞみ」の先頭部を追いかけたことや、撮影後に液晶モニターで画像を確認したら、運転席の前面窓のリベットまできちんと写り込んでいたことを今でも鮮明に憶えている。この時、D3ではなくてD300で十分だと思った。もちろん、値段を含めての判断であった。


このカメラだから撮影できた

 しかしながら、D300を使っているうちにさらなる欲がでてきてしまった。この撮影の時も小雨が降ったり止んだりの天候で、あまり良いコンデションでは無かったが、もっと悪いコンデション、たとえばもっと暗い時間帯ではどうだろうか? また、新しい広角ズーム「AF-S Nikkor 14-24mm F2.8 G ED」も使ってみたいなど、いろいろなことが頭をよぎっていった。

 あれこれ考えているうちに、個人営業ゆえ潤沢な資金を持っているわけではないが、D300だけでなくいずれはD3も買うことになると思い、どちらを先に買うかということになった。D300は借用して使っている間に完全に慣れたが、微妙に感触が違うD3には、少し習熟する時間が必要だと思い、D3を先に購入することにした。

 性能は別として、D300とD3が大きく異なることは、まず重さ。バッテリーやCF、ストラップを取り付けた使用時の重さはD300が約1kgであるのに対して、D3では1.5kgにもなる。これにAF-S Nikkor 14-24mm F2.8 G EDを取り付けるともちろん2kg超となり、非常に重たいということになる。

 また、D3の性能をフルに活用するには、FXフォーマット(35mmフルサイズ)に対応したレンズを使う必要があり、数本のレンズも購入しなければならない。D3は、体力と金力がいるデジタルカメラであるが、いろいろと使っているうちに、このカメラだから撮影できたと思える写真も出てきたので、今では大いに満足している。


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小山伸也
中央大学理工学部卒業後、オーディオメーカー、カメラメーカーを経て2002年春にフリーになる。カメラ雑誌で写真やカメラの解説、鉄道や航空雑誌で車両や航空機の解説など幅広く活躍している。カメラメーカー勤務時には日本カメラショーなどの講師を務めていた。1955年生まれ東京都出身。

2007/12/25 12:23
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