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●優秀なフォーサーズレンズの力を引き出せる1台
オリンパス「E-3」 / 北村智史

E-3
 実をいうと、「E-3」を買おうと思う前に、フルサイズ機の購入を検討していた時期があったのだが、カメラ自体が安くないうえに、フルサイズの画面の四隅まできちんと解像できるレンズがいったい何本あるんだろうとか考えたあげく、断念することにした。

 35mmフィルム一眼レフのシステムをベースに発展してきたデジタル一眼レフでは、フルサイズはひとつの理想と言える。しかし、レンズ側から見ると、フルサイズは難しい面も多い。広い画面の隅々まできちんと解像させるには、フィルム時代と同じレンズ設計では対応しきれない。で、乱暴な話、ユーザーは、より大きく重く高価なレンズを買いそろえるか、あるいは画面周辺部の画質低下に目をつぶるかという選択を迫られる。けっこうきびしい2択である。

 体力と経済力はないくせに、画面四隅の画質が気になってしかたがない筆者にはどちらも受け入れがたく、結局、どうやら自分にはフルサイズは向いていないらしいという結論に達したわけだが、その要因のひとつがE-3の登場である(正確に言えば、「E-1後継機」のモックアップの画像である)。


「第2章」で様変わりしたオリンパス

 どうしてフルサイズからフォーサーズという対極にぶっ飛んでしまうのかと言うと、要はレンズの問題である。

 いわゆるAPS-Cサイズのデジタル一眼レフでも、すべてが安心して使えるというわけではいし、ましてフルサイズ機にいたっては……ねぇ、という状況である。そんな中でフォーサーズだけはどのレンズを使っても絞り開放から安定した画質が得られるのが当たり前で、それがちょっとうらやましかった。

 ただ、レンズがいくらよくても、それを支えるカメラがいまいちだったら意味はない。昨年までのオリンパスのカメラにはまるで魅力を感じなかったのが、今年に入ってからの「第2章」でずいぶん様変わりした。オリンパスというメーカーが良い方向に変わってきているぞ。そんな予感があった。

 仕事で「E-410」を実写する機会があって、チープなキットレンズでも十分にシャープな画質が得られたのにびっくりした。くどくならない程度にハデめな発色も楽しかったし、キヤノンやニコンのカメラではなかなか味わえない立体感のキレイさも気に入った。

 もちろん、画面の小ささの分だけマイナス面はある。予想どおりファインダー像が小さくてピントの山が見えづらいし、ダイナミックレンジもやや狭い。いわゆるAPS-Cサイズのカメラの感覚で撮ると、ハイライトが白トビしやすい。それに、今どき3点測距は物足りなさすぎだ。


感動的なAF

 まあ、いいところもあれば悪いところもあるといったところだし、ダブルズームキットで785gという軽快さは買って損はない。というわけで、発売と同時に購入。もちろん、E-3(当時は「年内発売希望のアレ」と呼んでいたが)のサブカメラにしようと目論んでのことである。

 なにしろ、2007年のフォト・イメージング・エキスポで見たE-1後継機のモックアップ(実物を見たのはこのときが初めて)はかなり期待が持てそうな顔つきをしていて、それまでのフォーサーズのイメージを覆してくれそうな気がした。予想が外れたら外れたでニコン「D200」の後継機を買おうと思っていたら、正式に発表されたE-3はものすごく進化していた。

 前時代的な3点測距のAFは、全点クロスの11点測距に変わって、しかも世界最速のオマケ付き。どのぐらいマシにできるかというレベルでしか期待してなかったのが、一気にトップクラスである。正直言って、絶対眉唾だと思っていたが実力もすごかった(これはけっこう感動的だった)。

 ファインダーも、本音を言えばもっと高い倍率にしてもらいたかったところだけれど、いわゆるAPS-Cクラスに負けない大きさのファインダー像が見られるようになった。加えて視野率100%のプロスペック。そのうえ、手ブレ補正もシャッター速度で約5段分。「E-510」を上回る補正効果が得られるというから驚くしかない。今までのオリンパスは何だったんだと思うぐらいにすごくなっていたのである。

 で、まあ、速攻で予約しちゃったわけだ。カミサンへのいいわけを考えながら、である。使ってみての感想とか、いいところ悪いところとかはレビューに書いたし、長期レポートでもあれこれやっていこうと思っているが、重さにだけは少々めげ気味である。E-410の3倍を超える数字を見て、「フォーサーズのメリットって何だっけ?」と首をかしげた人も多いと思う。5枚/秒連写や防塵・防滴性の高さ、頑丈そのもののボディを見れば文句は言えないけれど、もうちょっと軽くして欲しかったなぁというのが本音である。


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北村智史
(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。最初に買ったデジタルカメラはキヤノンPowerShot S10。 ブログ:http://ketamura08.blog18.fc2.com/

2007/12/25 12:23
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