デジカメ Watch

●自分のスタイルにあったバランスの良いカメラ
キヤノン「EOS 40D」 / 大浦タケシ

EOS 40D
 2007年、私のわずかな持ち合わせのなかから購入に至ったカメラといえば「EOS 40D」だ。購入の理由は極めて単純。EOS D30以来このシリーズを使用し続けていることと、トータル的なバランスがよさそうに感じたからである。実際、使用を開始してすでに4カ月が経とうとしているが、全てにおいてバランスがよく、不足を感じることの少ないものである。

 まずクラスを考えたとき、取材やプライベートの撮影などは、EOS-1D系では重いしかさ張るしオーバースペック。ファインダーの見え具合とシャッターのタイムラグの少なさは断トツにイイけれど、そこまで予算が工面できない理由もある。さりとて「EOS Kiss Digital X」ではやはり仕事カメラとして物足りない。画素数こそ40Dと同じだし性能的に見劣りするところは少ないものの、撮影現場をカメラに詳しいクライアントが見たら、仕事する気があるのかと問われることがあるかもしれない。

 以上のような理由はミドルレンジクラスの存在理由でもあるが、自分自身にとってもEOS 40Dがクラスとしてちょうどよいと考える。「EOS 5D」という選択もあるけれど、個人的には35mmフルサイズであることにまったく未練がない。APS-Cサイズでは、使用するレンズの焦点距離から想像できる画角と実際の画角が合わないとする向きもないわけでもないが、焦点距離から正確な画角を割りだす器用な真似のできない私にとって、そのような考えはまったく無縁といってだろう。


液晶モニターは大きければ大きいほどよい

 基本的な性能は必要にして十分といえるものだ。画素数は1,020万画素と過不足なく、印刷物ではB5サイズを余裕でカバーできる。本当のことをいえば、「EOS 30D」と同じ820万画素でもよかったと思っているほどだ。絶対的な画質を考えれば、少しでも画素ピッチは大きいに越したことはないわけだし、ファイルサイズもより小さくてすむ。A4よりも大きなサイズの印刷を行なう予定の撮影なんぞ、自分の仕事ではほとんどないことも関係する。

 だったらEOS 40Dを買わなくていいではないか、と指摘されてしまいそうだが、EOS 40Dを発表早々にお店に予約したのには訳がある。それは3型液晶モニターを採用していることである。個人的には、液晶モニターは大きければ大きいほどよいと考える。撮影した画像の確認のほかメニュー設定時など、最近老眼鏡を購入した身分としては、カメラ背面部いっぱいに広がる液晶モニターの存在は実にありがたい。撮影後の編集者やデザイナーをはじめとするスタッフのビュアーとして考えたときも便利だ。

 この秋、多くのデジタル一眼レフがリリースされたが、バリアングル機能を優先させるあまり2.5型の液晶モニターを採用してしまった某カメラのユーザーが気の毒に感じてしまうほどである。ただし、画素数はニコン「D300」やソニー「α700」の92万画素には遙かに及ばないのは残念といわざるをえない。

 そのほか6.5枚/秒の連続撮影能力も魅力的だ。AEBを使用した場合、ドライブモードの高速連続撮影だと3コマがあっという間に終了する。記録するファイルの種類や大きさによって微妙にコマ数が変わるようだが、いずれにしてもサクサクとAEB機能を使用したスナップ撮影ができることはありがたい。

 操作に関しては、くるくると回転させるサブ電子ダイヤルの使いやすさはいうまでもないが、タブにより振り分けられたメニューはよりわかりやすくなり、スピーディな設定ができて便利だ。EOS 40Dがリリースされる以前、カメラ誌のレビューで発売前の「EOS-1D Mark III」を3週間ほど使用したが、同じタイプのメニューが採用されており操作性に親しみを感じていた。そのこともあって、EOS 40Dのメニュー操作は迷うことなくすぐに順応できたといっていいだろう。

 また、EOS 30D以前では液晶モニター左側にボタン類が集約されていたが、EOS 40Dで上下に分散されるようになっても、使い勝手になんら支障や不満はないものである。こちらもすぐに慣れてしまった。

 一眼レフの要、ファインダーもわずかであるがその見え具合が改善されているのもよい。誤解を恐れずにいえば、ファインダーの像は大きければ大きいほど、ピントの山が掴みやすければ掴みやすほうが一眼レフとしてはいいと思っている。EOS 40Dのそれはけっして特別大きく感じることも、ピントの山が素晴らしく掴みやすいわけではないが、カメラの価格から考えられるコストのバランスを考慮したとき、かろうじて及第点といっていいだろう。


センサークリーニング機構のさらなる進化に期待

 では不満がまったくないかといえば、正直そうでないところもある。ローパスフィルターに付着したゴミを振るい落とすセンサークリーニング機能は今イチ頼りないことも多く、妙に軽いシャッター音はいまだに馴染めない。高輝度諧調優先はEOS 40Dを手に入れる前からかなり期待した機能であったが、実際の使用ではノイズが浮きやすく常用するまでには残念ながら至っていない。調光補正もストロボを使うことの多い自分としては±2段まででなく±3段まで欲しいところだ。

 次にリリースされるであろう「EOS 50D」(!?)ではそのようなところが改善されると、より自分が思う完成度の高いカメラとなることと思う。とはいえ、EOS 40Dは現時点ではもっとも自分の撮影スタイルに適したバランスのいいカメラ。当分、何かと持ち出す機会は多そうだ。


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大浦タケシ
(おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に写真雑誌等の記事を執筆する。プライベートでは写真を見ることも好きでギャラリー巡りは大切な日課となっている。カメラグランプリ選考委員。

2007/12/25 12:24
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