デジカメ Watch

●35mmフルサイズを小型ボディで実現した素晴らしさ
キヤノン「EOS 5D」 / 上田晃司

EOS 5D
 私が、今年購入したデジタル一眼レフカメラは「EOS 5D」の1台のみ。EOS 5Dは、2005年9月28日に発売されてもう2年以上経っているカメラだが、とある理由で購入することになった。もともと、私がメインで使用していたカメラは「EOS-1Ds」で、スナップ、物撮り、風景写真では、ほとんど不満は無かった。

 しかしながら、人物写真を主に撮るようになってから、EOS-1Dsのバッファ速度があまりにも遅いことが気になるようになった。撮影中何度も書き込みで待たされ、撮影の流れを止めてしまうことが多々あった。書き込みを始めると1~2分近く書き込みを続ける上、その間は撮影した画像のプレビューも見ることができないので、とても困っていた。特に、ファッション系の動きのある撮影では、モデルさんが撮影に乗ってきた時に限って、バッファフルでシャッターが切れず何度か泣かされた。そんなこともあり、EOS-1Dsの代わりになるカメラを購入することを決意した。


イメージに近い発色と階調

 人物を主に撮るので35mmフルサイズであるという条件だけは、譲れなかった。その時点で、候補に上がったカメラは、「EOS-1Ds Mark II」かEOS 5Dのどちらか。EOS-1Ds Mark IIは、同じ1Ds系だが予算的にも厳しい上、後継機も出そうな雰囲気だったので候補から外した。結局、EOS-1Dsと画素数もほとんど一緒で、RAWで連続撮影枚数約17枚撮影可能なEOS-5Dを購入することにした。

 実際使用してみて、一番気になっていたバッファ速度も問題なく、今まで数カ月使っていて1度も書き込みで待たされることはなかった。それによって、撮影はとてもスムーズに行なえるようになった。さらにEOS-1DsとEOS 5Dの画素数の差が約170万画素位しか変わらなかったので、PCをアップグレードしなくて済んだのも助かった。Photoshopでレタッチする場合やDPPでの処理速度も、以前と比べて大きな差は無いように感じた。

 液晶モニターは、EOS-1Dsと比べると2型から2.5型に大きくなっているのでスタジオ内や室内ではとても重宝しているが、野外では少し見づらく感じた。液晶モニターの色味は個人的に少し青みが強いように感じたが、基本的に液晶モニターで確認するのはフレーミングとハイライト位なので撮影には影響はなかった。

 気になる画質に関しては、ISO800以上の高感度では暗部のノイズが気になるが、通常ISO50(感度拡張の時)かISO100しか使用しない私にとっては、まったくといって良いほど不満は感じなかった。解像感に関しても、Lレンズとの組み合わせで、ポスターサイズに引き伸ばしても問題はなかった。人物写真を撮る上で、1番気になる肌の色や人肌の階調も、イメージに近い発色と滑らかな階調でとても好印象だ。

 連続撮影速度は、約3枚/秒と少なめな印象を受けるが、大型ストロボを使用して撮影をすることが多い私にとって不便に感じなかった。AFフレームは、EOS-1Dsではサブ電子ダイヤルで選んでいたが、EOS 5Dでは、マルチコントローラーを搭載しているので、AFフレームを簡単に選ぶことができて、瞬時の切り替えが必要な場合にはとても役だった。直感的に思い通りのAFフレームに切り替えができるのは、とても重要だ。


視野率は不満もトータルバランスは良好

 不満の少ないEOS 5Dだが、今まで視野率100%のファインダーを覗いていた私には、視野率約96%のファインダーは少し不便に感じた。視野率約96%のファインダーでは、実際に見えている範囲よりも広い範囲が写ってしまう。例えば、スタジオ撮影で、見切れていないはずのライトスタンドや照明機材などが見切れてしまっていたり、風景を撮っていて写っていないはずの電柱が画面の端に写っていたりした。

 しかしながら、EOS-1Dsに比べるとコンパクトなボディで持ち運びが便利になり、今まで使用したカメラバックより1回り小さいサイズに入れることができるので、電車移動の多い私にはとてもありがたい。このサイズだと、仕事だけではなくプライベートでスナップや旅行にも持って行く気になるので、とても重宝している。ただ、フラッグシップ機のように防塵防滴機構を搭載していないので、急な雨や雪の場合は意外と気を使ってしまう。雨や雪が降りそうな場合は、レインジャケットなどを一緒に持ち歩かないといけないので、少し荷物が嵩張る。

 とはいえ、このサイズのボディに35mmフルサイズのCMOSセンサーを搭載し、画質、解像感ともに不満のないすばらしいカメラだと感じた。結果的に、私にとってEOS 5Dを購入したのは正解だったと思っている。もちろん、フラッグシップ機から見れば、劣る点も多々あると思うが、価格、画質、機能などいろいろ総合的に判断してみると、EOS 5Dはとてもバランスの良いお得なカメラだと思う。


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上田晃司
(うえだこうじ)1982年広島県生まれ。アメリカ、サンフランシスコに留学し、写真と映像の勉強をする。学生時代にTV番組やCMを制作するものの人物写真に目覚め、写真家を目指すことを決意。帰国後、写真家塙真一氏のアシスタントしながらフリーランスのカメラマン、ライターとしても活動を開始。

2007/12/25 12:24
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