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●小兵力士には小兵力士の相撲がある
オリンパス「E-3」 / 安孫子卓郎

E-3
 2007年も、いろいろなデジカメやレンズを購入しました。2年分くらい買ってしまった感がありますが、その中で、最も思い入れを持って購入したのは、オリンパスの「E-3」でしょう。

 2003年の10月10日に「E-1」が発売となり、その日からEシステムのユーザーとなって使い始めたわけですが、49.5カ月を経て、ようやくその後継機が出てきました。E-1は、しっかりしたボディや豊かな発色など、また小さく軽快なシャッター音など長所もたくさんありましたが、AFを中心に不満点もいろいろとあり、後継機の発売を待ち望んでいたのは、ほかのEシステムユーザーの方々も同じ思いでしょう。

 この間、オリンパスは「E-300」、「E-500」、「E-330」、「E-410」、「E-510」と発売してきました。すべてを購入してきましたが、その中で最も印象的なのがE-330です。ライブビューという新しい機能を搭載し、画期的なAモードライブビューと可動式液晶モニターによって新しい撮影の世界を切り開いてくれました。歴史に残るすばらしい機能であり、私はこれこそカメラグランプリに選ばれるべき機種であると考えておりましたが、ライブビューと可動式液晶モニターのよさが今ひとつ受け入れられず、またオリンパス自身にも従来のカメラと違うことに対する反発もあったようです。E-330という画期的な機種がありながら、TVCMはE-1だったりしたのですから、悲運の機種ともいえるでしょう。

 私がE-3に対して最も期待していたのは、この可動式液晶モニターとライブビューの搭載です。もちろんE-330では貧弱だったAF性能の改善や、縦位置のアングルに対応すること、増感性、連写、防塵防滴など期待するところはたくさんありましたが、ライブビュー(Aモード)とフリーアングルの可動式液晶モニターが、私にとっては最も重要なポイントでした。E-410やE-510も普通のカメラとしては良くできていましたが、この点に関しては肩透かしを食らっていただけに、その無念さもプラスしてE-3への期待となっていたのです。


価格対性能比はクラス一

 実際にE-3が発表されて見ますと、ライブビューのAモードは搭載されていませんでしたが、BモードAFが改善されており、ボディ剛性の高さや小さいミラーのおかげもあって、連写を行なっても違和感のない状態に仕上がっていました。液晶モニターも日中でも良く見えるものとなり、もちろんフリーアングルでもあり、満足のできる製品となっていました。

 画素数を1,010万画素にとどめたことで増感性能も向上しました。E-1を超える強固な防塵防滴によって、より安心感の高い機種となりました。連写こそ5枚/秒と、時代の最先端からするとやや足りないところもありますが、SWDレンズの投入でAFも速く、少なくともS-AFにおいて、単純なピント合わせ作業では世界最速のAFというキャッチも、納得できる速さがあります。今まで弱かった暗い場所でも十分に使えるようになり、価格対性能比で考えれば、E-3はこのクラスの中で一番ではないかと考えています。

 同時に購入した「ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4 SWD」は、使い勝手がよく、広角側が12mmまであるのはとてもありがたいと感じました。60mmでF4ですからあまりボケないかと思っていましたが、ボケ方も良くて期待以上でした。もちろんAFもCMに偽りのない速さを実現しています。メカ連動のフォーカスリングになりましたから、(メーカー保証外ですが)テレコンと中間リングを重ねるような使い方をしてもMFの操作ができますし、花火の撮影中に露光間ピントずらしのようなテクニックも使えるようになりました。まあ、これは他社では当たり前のことなんですが。逆に、従来の「ZUIKO DIGITAL 14-54mm F2.8-3.5」は抜群の逆光性能を持っていましたが、ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4 SWDはそこまでではなく、この点も他社並みになってしまったのは惜しいところです。結局ZUIKO DIGITAL 14-54mm F2.8-3.5や「ZUIKO DIGITAL 11-12mm 2.8-3.5」も、今後とも併用してゆくつもりです。

 不満点も述べておきましょう。最も気になるのは、操作性の不統一です。ライブビューだけ使っていれば、悪くありません。光学ファインダーだけ使っていれば、大変快適なカメラです。しかしこの2つをミックスして使うと、調和の取れた操作性とは思えません。単純に2つの操作性を足してしまったように思われます。

 ライブビュー時にいちいちアイピースシャッターを閉めろといってくるのもわずらわしく、電動で自動的にしまってほしいと思いますし、液晶モニターを閉じて表示オフになったら、開いても復帰しないというのも気が利きません。


撮像素子は小型化に向かう

 私は、長いスパンで考えたとき、撮像素子は小さくなる方向に進化をするはずだと考えています。

 確かに、3年や5年という単位で考えますと、しばらくは35mm判サイズなどのより大きい撮像素子がもてはやされるでしょう。しかし、現在のガラスを使うレンズの仕組みである限りは、大きい撮像素子は大きいレンズを要求してきます。35mm判フイルムのレンズがそのまま使えるといいましても、実際のところ、2,000万画素などの大画素数になると、レンズの解像力が追いつかず、画素数が無駄に増えているというのが現状だろうと考えています。

 そうした画素数に見合うレンズも出てくるでしょうが、それはより大きく、より高価なものとならざるを得ません。超高解像度に対応できる、液晶レンズのような画期的なシステムが開発され、大きい撮像素子でも、ちっちゃくて、軽くて、安いレンズですむようになれば別ですが、現在のガラスレンズシステムである限りは、巨大なボディと巨大なレンズで、必要以上の画素数を求める時代が長く続くとは思えません。仮にボディが小型化したとしても、2,000万画素などを解像できるレンズは、巨大にならざるを得ません。

 フォーサーズは、画素数を増やす方向では、APS-Cサイズや35mm判サイズにかないません。根本的に小さいのですから、同じ技術で作る限りは、同じ画素数なら感度が低くなり、同じ感度なら画素数を減らさざるを得ないのです。画素数を追いかけるならば、必ず負けます。しかし、小型化という点では、逆に必ず利があります。35mm判サイズのカメラがどこまで小型化しても、同じ技術で作るならば、フォーサーズの方がもっと小さく作れるのは必然です。

 オリンパスのフォーサーズレンズは、当初期待されたものよりかなり大きいレンズです。「何だあんなに大きくてはフォーサーズの意味がない」と思ってしまいますが、逆に2,000万画素の超高解像度に対応できているレンズは、オリンパスの高級レンズくらいしかありません。もしAPS-Cサイズや35mm判サイズで、2,000万画素やそれ以上の画素数を活かしきれるレンズを作ろうとするならば、オリンパスのレンズよりももっと大きくなってしまうはずなのです。


 30年、50年というスパンで考えたときには、必要十分な画素数を持つより小型で軽量なシステムに優位性があるだろうと考えております。フォーサーズはそのひとつでありうるわけですが、賢い戦略を立てられるかどうかが、今後の成否を決めてゆくでしょう。画素数を追いかける限りは、必ず負けます。どうせ新しい規格だったのですから、画素数を追いかけるなら35mm判より大きい規格を作るべきでした。小さい規格を作っておいて、画素数を追いかけるというのは本末転倒です。しかし、小型化においては利があるのですから、今後画素数は増やさず1,000万画素にとどめて、増感性や連写性、ライブビューなど画素数以外の部分で他社を凌駕するような開発方向を定めるならば、将来性は高いと考えています。

 小兵(小さい撮像素子)力士が巨漢横綱と、がっぷり四つに組まねば相撲が取れないと、オリンパスが考えているのならば、私は応援するのもほどほどにしたいと思います。負けるのは必然ですから。しかし小兵力士には小兵力士の相撲があり、身の丈(小さい撮像素子であること)を活かした相撲をとるならば、面白い相撲が見られるでしょうし、今後もEシステムを使っていきたいと考えています。

 健全なる発展を期待しています。


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安孫子卓郎
(あびこたくお) きわめて頻繁に「我孫子」と誤変換されるので、「我孫子ではなく安孫子です」がキャッチフレーズ(^^;。大学を卒業後、医薬品会社に就職。医薬品営業からパソコンシステムの営業を経て脱サラ。デジタルカメラオンリーのカメラマンを目指す。写真展「デジタルカメラの世界」など開催。現在パソコン誌、写真誌等で執筆中。

2007/12/25 12:25
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