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Atom搭載ノートPC「N10J」をモバイルフォトPCとして使ってみる

〜“フォトストレージ適性"をエプソンP-7000と比較
Reported by 飯塚直

左からエプソンP-7000、アスース「N10J」
 現在、外出先での撮影画像のバックアップツールとしては、フォトストレージとノートPCが双璧だろう。フォトストレージは大容量HDD、カードスロット、液晶ディスプレイ、バッテリーなどを搭載する、いわばバックアップの専門家。一方ノートPCは、写真の高速閲覧、レタッチなど、フォトストレージよりも柔軟に作業することができる。当たり前だが、メールやWebブラウンジングなどのコミュニケーション機能を持ち合わせているのも特徴だ。

 ここで気になるのが、最近流行のネットブックだろう。ノートPCよりも非力なことで知られるネットブックだが、データを保存するだけなら十分に利用できるのではないだろうか。

 今回は厳密にはネットブックとはいえないものの、ASUSTeK ComputerのAtom搭載ノートPC「N10J」を用意して、フォトストレージの定番、エプソン「P-7000」と比較しながら、バックアップツールとしてのそれぞれの個性をさぐってみた。

 N10Jは、CPUにIntel Atom N270(1.60GHz/L2 512KB)、2GBのメモリ、160GBのHDDを搭載したネットブック。本体サイズは276×195×29mm、重量は約1.4kgとなる。10.2型ワイドの液晶パネル(1,024×600ドット)や無線/有線LANのほか、SDHC/SDカードに対応したカードスロットを搭載する。実勢価格は約8万円前後。Windows XP搭載モデルを試用した。

 この手の製品では珍しく、GPUにGeForce 9300M GSを搭載。チップセット内蔵のグラフィック機能がデファクトスタンダードの中、高性能GPUを搭載しているのが最大の特徴といえる。出力端子のひとつとして、HDMIを備えているのも珍しく、テレビなどへの高精細な画像出力が可能だ。


本体にSDHC/SDメモリーカードスロットを搭載
HD出力に対応したHDMI端子を搭載

右側面にはD-Sub15ピンなどを備える
大容量バッテリー(付属)装着時の駆動時間は最長約7時間

新設計のフルキーボード採用している

 一般的なノートPCよりも非力とはいえ、ノートPCとしてほ基本的な使い方は似ている。普段PCで使用しているソフトが使えるとなれば、持ち歩くメリットは大きい。加えて、メールチェックやWebサイトの閲覧が可能な点はフォトストレージにない特徴となる。無線LANスポットや移動体通信などの通信インフラが必要になるが、撮影旅行中に撮影地や休憩場所のチェックができたり何かと有用だ。

 が、非力故に、PCで普段使っているソフトがそのまま使えるかどうかは怪しい。ネットブックの黎明期に、Photoshop CS 3や、Photoshop Lightroom 2などをインストールしたことがある。すると、起動はするが快適とはほど遠い操作感で、すぐに諦めたことを思い出す。

 ただしN10JはGPUが利いてか、思いのほかこうしたソフトがサクサク動いてビックリ。これなら使えるというレベルだ。さすがに数十枚の写真を開くと重くなるが、1点、あるいは数点の写真データを補正するなら十分といえるだろう。

 一方P-7000は、160GBのHDD、Adobe RGB比94%の4型液晶ディスプレイを搭載。JPEGだけでなくRAWデータの表示にも対応している。本体内での現像処理も可能になった。USB端子経由で外付けHDDへのデータ転送や、PictBridgeでのダイレクトプリントも可能。満充電時で、CFを約75回、SDを約70回バックアップすることができる(ともにカタログ値)。サイズは、150×33.1×88.7mm。重量は約433g。実勢価格はN10Jとほぼ同等の約8万円前後。

 フォトストレージ製品の魅力は、数ステップでバックアップできる手軽さだ。また液晶ディスプレイがデジタルカメラの液晶モニターより大きい上、表示の美しさもにも力を入れている。列車などでの移動中や休憩中に、本来ならPCで行なう作業、例えばレーティングや現像処理などを行なえるメリットもある。専用機だけにシンプルなインタフェースで、直感的に扱えるというのもポイントが高い。


今やフォトストレージの定番モデルとなったP-7000
UDMA対応CFスロットとSDHC/SDメモリーカードスロットを搭載

速度面で意外に健闘。GPUの力なのか

 では、そろそろ比較に入ろう。

 計450MBのJPEGが入ったサンディスク「Extreme III SDHC 4GB」のデータをそれぞれの内蔵HDDにコピーしたところ、N10Jで約48秒、P-7000では約108秒だった。P-7000、N10Jはそれぞれ本体搭載のSDHC/SDメモリーカードスロットでの結果になる。P-7000よりN10Jの方が速いのは意外で、専用機のP-7000をしのぐ速度が得られたのはビックリだ。

 転送後のデータの扱いについては、パソコンであるN10Jに導入したソフト次第で変化する。P-7000はRAW現像やレーティングといった処理が可能で、つけたレートをLightroomやBridgeに引き渡せる。N10Jで同じ環境を揃えようとすると、相応の価格と手間がかかることだろう。本体の実勢価格は8万円前後とほぼ同等なので、それ以上の追加投資ができるかどうかが、どちらを選ぶかのポイントのひとつとなりそうだ。

 画面表示はP-7000が有利。サイズだけを見れば、10.2型で1,024×600ドットのN10Jが魅力的に思えるが、P-7000の4型液晶ディスプレイは、さすが専用機だけあって色再現性が高く、撮ったデータの確認をするのには最適だ。N10Jの液晶ディスプレイは色域やダイナミックレンジがいまひとつであり、色の偏りも気になる。視野角も狭く、お世辞にもP-7000に太刀打ちできるクオリティとはいえない。

 専用機だけに個々の性能がずば抜けて高いP-7000と、自宅のPCと同じ環境を再現できる(ディスプレイの解像度は低いが)N10J。どちらも一長一短があるので、通信環境の必要性をはじめ、PCとしての機能を撮影時に携帯する必要があるなら、N10Jを選ぶことになるだろう。つまり、従来のノートPCとフォトストレージの比較と同じだ。従来のノートPCとの比較では、約1.4kgの軽さと7万円台の低価格が強みだ。ただし繰り返すように、パフォーマンスの低さはある程度覚悟する必要がある。


●N10Jで動作した画像関連ソフト


サクサクと動いたのが「PhotoStagePro」
ビューアソフトの「フォトのつばさPro」も快適に動作した

Lightroom 2。現像は思ったより快適に行なえた。ただし画面が狭い Photoshop CS4も動いた。ただし、処理枚数が増えると動作が重くなる

 少々強引だが、N10JとP-7000の両方をロケ先に持ち込んで使うという手もある。P-7000にはUSBディスプレイ機能が搭載されているので、ネットブックや低価格ノートPCの弱点である、色再現性の低い液晶ディスプレイを補間できる(ただしPhotoshop CSシリーズ、またはPhotoshop Elements 4以上がインストールされいてることが条件)。また、P-7000はUSB接続の外部HDDとして機能するので、ネットブックの貧弱なストレージ環境を補うことも可能だ。

 ただし正直な話、デジタルカメラの画像を本格的に扱うには、Atom搭載ノートPCやネットブックには当たり外れがある。外れを引くとPhotoshopやLightroomなどを快適に動かせないのだ。その点、今回試用したディスクリートGPU搭載のN10Jは当たりだった。この手のAtom搭載ノートPCにこれ以上を望むのは酷かもしれないが、軽量でコンパクトな特徴を生かし、旅行の多いアマチュアカメラマンの良きサポートツールに育ってくれればと思う。



URL
  エプソン
  http://www.epson.jp/
  アスース・ジャパン
  http://www.asus.co.jp/
  ASUS、Atom搭載モバイルノート「N10」にWindows XPモデル(PC)
  http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/1201/asus.htm

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エプソン、RAW現像できるフォトストレージ「P-7000」(2008/08/26)



飯塚直
(いいづか なお)パソコン誌&カメラ誌を中心に編集・執筆活動を行なうフリーランスエディター。DTP誌出身ということもあり、商業用途で使われる大判プリンタから家庭用のインクジェット複合機までの幅広いプリンタ群、スキャナ、デジタルカメラなどのイメージング機器を得意とする。

2009/03/10 16:41
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