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【新製品レビュー】ソニー「VAIO type Aフォトエディション」

〜写真用途向けノートPCを試す(その1)
Reported by 本田雅一

ディスプレイフード「VGP-DHA1」を装着したVAIO type Aフォトエディション
 デジタル一眼レフカメラの普及が進むにつれ、RAW現像や写真修整のノウハウが一般の写真愛好家にも拡がり、さらにデジタル写真関連のアプリケーションソフトウェアも機能、画質、価格のそれぞれにおいて充実してきた。

 6年ほど前にカラーマネジメントの仕組みやカラーマッチング出力のやり方、キャリブレータの使い方やICCプロファイルのカスタム編集などの特集記事をパソコン誌で書いたことがあった。当時はまだそれらの概念が広く知られる前で、読者アンケートでも良く理解できたと喜びの反応をもらった一方で、全くその必要性が判らないという人も多かったようだ。

 ところが昨今は、やや高価であっても、カラーキャリブレーション対応の広色域ディスプレイに興味を持つ人が多くなってきている。それだけパソコンで写真を扱うことに対する知識も広がってきているのだろう。

 2008年秋、ソニーが同社のノートPCであるVAIO type Aにフォトエディションが追加されたが、ほぼ時を同じくして日本ヒューレットパッカードも、同社のビジネス向けノートPC、EliteBookシリーズに広色域ディスプレイを採用したDreamColor対応バージョンの発表を行なった。

 これまで写真修整を目的としたパソコン環境といえば、デスクトップPCに高性能ディスプレイを組み合わせたものと相場が決まっていたが、これらのノートPCは少し趣が異なる。ハードウェアとして色再現域を拡げているだけでなく、パソコン本体とディスプレイが一体になっているノートPCの良さを活かして、よりシンプルに写真修整やRAW現像に適した環境を作ろうとしている。

 まず初回は、発表されたばかりのVAIO type A フォトエディションの2009年春モデルから、デジタル写真ユーザー向けの機能に絞ってレビューをお届けしたい。次回は日本HP EliteBookをレビューする。


新モデルで64ビットOSがプリインストールに

 2009年春の新モデルといっても、基本的な部分に関しては2008年秋モデルとの大きな違いはない。Adobe RGB高カバー率100%の広い色再現域を持った18.4型ディスプレイや、きめ細かなカラーマネジメント機能とサポートソフトウェア、出荷前のガンマ特性検査・調整、それにノートPCとしては最高クラスの高速プロセッサ・GPUの搭載などは、(詳しくは後述するが)そのまま前モデルから引き継いでいる。

 最も大きな違いは、さらに快適なRAW現像や写真修整を行うため、64bit版Windows Vistaが標準採用されるようになったことだ。ご存知の方も多いように、現在のPC用プロセッサは、そのほとんどが64bitに対応している。しかし、ドライバのサポートとなると話は別で、特にメーカー製PCとなると64bit OSインストール機のみ、他製品とは独立して64bit OSでの互換性テストを行う必要があり、コンシューマ向けパソコンで64bit OSをインストールする例はほとんどなかった。



 一般的なパソコンの用途であれば、2GBあるいは3GBのメモリ容量があれば、十分な性能が得られることも、64bit版Windowsへの切り替えが進まない理由かも知れない。しかし”フォトエディション”という、メモリ容量が快適性に直結する用途が明白なモデルということもあり、搭載メモリを増やすためにも64bit化へと踏み込むことになったようだ。

 店頭モデルの標準搭載メモリも2GBから4GBに増加し、最大8GBまでのメモリを搭載できる。これぐらいのメモリがあれば、画素数の多いセンサーを持つカメラのRAWファイルを数多く同時に扱う際にも、メモリ不足を感じることは少なくなるはずだ。同時に内蔵ハードディスクも500GBから640GBへと増加している(いずれも店頭モデル)。

 さらに標準搭載されるアドビシステムズのPhotoshop Elementsが最新のバージョン7に変更されている点も、このソフトウェアを所有していない人にとっては嬉しいことだろう。

 いずれも32ビットアプリケーションのため、それ単体で64bitの大容量を活かせるわけではないが、ほかのアプリケーションも同時に動かすことも考慮すれば、64bit化の恩恵はある。また引き続きプリインストールされるLightroom 2は64bit化が終わっている(ほかにもPhotoshop CS4などCS4シリーズのWindows版は64bit化が終了しており、VAIO OWNER MADEモデルであれば、それらのプリインストールを選択することも可能だ)。


アプリケーションごとに適用プロファイルを自動切り替え

 本機を評価する上でのポイントは、なんと言っても広色域ディスプレイと、それを活かすためのユーティリティの使い勝手だ。

 採用されている液晶パネルは広視野角タイプではなく、一般に視野角が狭いとされるTN型である。とはいえ、近年のTN型液晶は表示品質がかなり上がってきた。極端に視野角が狭いと問題だが、18.4インチというサイズということを考えれば、TN型でも充分に許容範囲だと感じる。

 一般的なワイドビューフィルム(光学補償フィルム)は使われているようで、左右方向の視野角に関しては特に問題はなかった。画面と正対する位置に座り、角度を適した状態に保つならば、視野角について大きな不満は感じないだろう。

 通常のノートPC向け液晶パネルは6bit駆動のものが多いが、本機に採用されているのは8bitパネルで、ガンマ補正テーブルは10bitで持っているという。ノートPCのディスプレイとしては、最高レベルの対策と言えるだろう。

 さて肝心の色再現域だが、日本ヒューレット・パッカードの広色域ディスプレイLP2480zxと比較しても遜色ない印象だ。RGBの色度点が異なるため、厳密な比較は難しいが、単純な色再現域の広さだけで言えば、VAIO type A Photo Editionの方が狭いように感じる。しかし、ターゲットの色再現域がAdobe RGBということならば、全く問題はないと思う。

 ディスプレイのICCプロファイルは、あらかじめ3種類の色温度分がインストールされている。本機はRGBの各LEDを配置したLEDアレイをバックライトにしているため、ホワイトバランスをバックライト側で自由に変更することができる。別途、「VAIOの設定」ユーティリティを用いることで手動、あるいは自動で色温度を切り替えることもできるが、この際は自動的にICCプロファイルも、それぞれにマッチしたものに差し替えてくれるのは便利……と言いたいところだが、若干、注文もある。


ICCプロファイル

色モード設定。最適な色モードへ自動的に切り替える機能が特徴 色温度設定。5000K、6500K、9300Kから選択できる

 筆者の場合は、D65に固定しておくのが、もっとも利用しやすかった。つまりせっかくの自動切り替えを使わないという選択をしたが、ソフトウェアで実現している機能だけに、今後ユーティリティのアップデートなどで、より使いやすくなればいいと思う。

 なお、経年変化による色の違いにはどのように対応するのか? という疑問は当然あるだろう。RGBの各LEDは劣化速度が均一ではなく、経年変化によりホワイトバランスは変わってしまう。

 しかしカラーフィルタの劣化(こちらは無視できる程度の差しか出ないそうだ)を除けば、バックライトの色温度を一定に保つセンサーを内蔵しており、システムが監視しながらホワイトバランスをターゲットの色温度に保つよう設計されているとのことだ。

 実際にカラープロファイルに対応したソフトウェアで、いくつかの基準としている画像を見たが、プリインストールのICCプロファイルはうまく機能してくれている。これは当然として、暗部階調の不安定さも目立たず、きちんと検査をして調整をかけているというのは本当なのだろう。

 製品全体を覆うフードがオプションで用意されていることからもわかるとおり、かなり拘って製品企画が行われていることは充分に伝わってくる。細かな点だが、液晶パネルの表面処理にもこだわっており、完全なグレアではなくハーフグレアとでも言うべき、ノングレアとグレアの中間的な仕上げにすることで、色純度の高さと映り込み防止のバランスを取っている。

 これだけ細部に拘った商品開発をしているならば、デジタル一眼レフユーザーに対して特別バージョンであることを訴求できるのでは。そう思える製品に仕上がっている。


便利な高速CFスロット

UDMA対応のCFスロットを装備
 フォトエディションとしてのこだわりは、たとえばCFスロットにも現れている。CFスロットは汎用スロットとして使う場合、UDMAモードをサポートすることができない。このため、ノートPC内蔵CFスロットの多くが、大容量CFカードとの組み合わせでは遅すぎて役に立たなかった。

 しかし本機のCFスロットはストレージデバイス専用になっており、UDMAモードを用いた高速転送をサポートしている。ではその実力は? ということで、CrystalDiskMark 2.0の64bit版を用いてテストしてみた。使用したCFは、サンディスクのExtreme IV(45MB/Secエディション)である。

 結果を見ると、シーケンシャルリードは40MB/secを超えており、ほぼ最高速に近いパフォーマンスが出ている。厳密に言えば、サンディスク純正のFireWireカードリーダー(毎秒42〜43MBぐらいの値が出る)より若干遅いが、ほとんど無視できる差でしかなく、ほとんどのUSB 2.0対応カードリーダーよりも高速だ。これなら、別途高速CF用にリーダを別に用意する必要はなく、スマートに収まる。

 参考までに今回試用しているtype Aの内蔵ストレージの速度も計測した。試用モデルはVAIO OWNER MADEで構成可能なもっとも高スペックのモデル。メインプロセッサはCore2 Duo T9800(2.98GHz)、メインメモリ8GBを搭載。ストレージは128GB SSDを2台用いたRAID 0をシステムブート用に、富士通製2.5インチ500GB HDDをデータ保存用に搭載している。

 さすがにSSD RAIDは高速。メモリ容量が8GB搭載されていることもあるが、アプリケーションの起動にしても、各プログラムの動作感に関してもコンスタントに高速で、実に操作感はいい。普段、筆者がデスクトップで使用しているMacPro(Core2 Duo/3GHz×2、メモリ8GB)と併用していても、ほとんどパフォーマンスの違いを体感しない程度に速い。

 なお、ストレージ容量に関しては、SSD×2の代わりに2.5インチHDDをもう1台、搭載することも可能で、500GB×2の1Tバイトが本機の最大内蔵ストレージ容量となっている。

 次にRAW現像のテストを、プリインストールされているLightroom 2で行った。ニコンD300で撮影したRAWファイルを50枚、SSD RAIDドライブに一時保管し、現像結果を同じSSD RAIDドライブに書き出した場合と、HDDに書き出した場合の速度を計測した。

 SSDへの書き出し時間は2分11秒、HDDへの書き出し時間は2分13秒で、ほとんど誤差程度の違いしか出なかったが、別のベンチマーク結果を見れば判るように、ランダムアクセス時にHDDは遅くなる。ランダムアクセスの多いシステムドライブをSSD RAID、加えてデータ保存用にHDDをという構成は理にかなっている。


まとめ

写真管理・現像ソフトとして、Lightroom 2をプリインストールしている
 本機はノートPCというパッケージの中で、どこまでデスクトップPCに近い操作感や性能、機能を実現できるかに挑戦したような製品だ。内蔵ストレージ、内蔵プロセッサ、内蔵ディスプレイ、内蔵カードリーダーなど、ひとつの筐体内にデジタル一眼レフユーザー向けに最適化した要素を詰め込んでいる。贅沢を言うならば、Core2 Quadの搭載にも挑戦して欲しかったと思うが、ここまで高性能ならばデスクトップではなくノートPCの方がいいと思う人も少なくないのではないだろうか。

 ただし、必要な機能や性能をコンパクトにまとめた結果、本製品の絶対的な価格が一般的なノートPCよりも高価になっている。決してコストパフォーマンスが悪いとは思わないが、デスクトップPCにするか、それとも本機にするかで迷っているならば、多少割高に見えるかもしれない。割安感で言えばデスクトップPCの方が有利なのは明白だ。


 しかし、試用したSSD RAIDと500GB HDDを同時搭載し、8GBものメモリを搭載したモデルは別格として、30〜32万円が見込まれる店頭モデルでも、Core 2 Duo T9550、4GBメモリ、320GB HDD×2、Blu-rayドライブなどが搭載されている。テンキーを含むキーボードも、画像編集時の数値入力などにはとても便利だ。加えて色にこだわったディスプレイとユーティリティを搭載しているのだから、価格なりの満足感は得られるだろう。

 似たような環境を得ようとしてキャリブレータ対応ディスプレイを使おうと思えば、それだけでもかなりの出費になる。手っ取り早く写真修整・現像用の環境が欲しいという方にはお勧めしたい。

 ただし文中でも述べたように、まだ完璧とは言い難い面もある。たとえばWindowsには、まだカラーマネジメントに対応していないアプリケーションも多数ある。代表的な例ではInternet Explorerがある。WebページはsRGBでデザインされているが、カラーマネジメント非対応のIEを使って表示すると、ドギツイ色(特に赤が強く見えるはずだ)に見えてしまう。

 カラーマネジメントの仕組みを知らない人が、何も知らずに「写真用だから」と何気なく買ってしまったら、対策の方法も判らないに違いない。Firefox 3を使えばカラーマネジメントが効いた状態でWebブラウジングが可能だが、この場合もConfigモードで設定を変更する必要があり、知識がなければ環境を整えることはできない。

 色管理の問題はPCベンダーにすべての責任があるわけではなく、本質的にはWindowsの仕様に起因するものだ。しかし、フォトエディションと名乗るからには、そこに何らかの工夫があってもいいはずだ。知識最低限の知識で広色域ディスプレイの特徴を活かした使い方ができるよう、一層の配慮がされれば、さらに完成度の高い製品になるだろう。

【2009年1月15日】40Mbpsとの表記を40MB/secに改めました。



URL
  ソニー
  http://www.sony.co.jp/
  製品情報
  http://www.vaio.sony.co.jp/Products/AW1/

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本田雅一
PC、IT、AV、カメラ、プリンタに関連した取材記事、コラム、評論をWebニュースサイト、専門誌、新聞、ビジネス誌に執筆中。カメラとのファーストコンタクトは10歳の時に親からお下がりでもらったコニカEE Matic。デジタルカメラとはリコーDC-1を仕事に導入して以来の付き合い。

2009/01/14 15:07
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