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【新製品レビュー】ニコン「COOLPIX S60」

~復活したタッチパネルモデルを試す
Reported by 本誌:武石 修

COOLPIX S60。試用した色はロイヤルピンク
 ニコンの薄型スタイリッシュコンパクトデジタルカメラ「Sシリーズ」の最新モデルが「COOLPIX S60」だ。従来モデル「COOLPIX S52」のスタイルを引き継ぎ、ウェーブサーフェスデザインという独自の外観を持つ。ニコンのコンパクトデジタルカメラのなかでも、お洒落路線の筆頭といえそう。

 ボディカラーには、ロイヤルピンクやワインレッドなど女性が好みそうなカラーを揃えている。リッチゴールドもコンパクトデジタルカメラでは珍しい色だ。

 さて、COOLPIX S60の特徴はなんと言っても、タッチパネル式液晶モニターを搭載したことだ。ニコンでは、1997年にタッチパネル式のデジタルカメラ「COOLPIX 300」を発売している。手書きメモ機能や音声メモ機能が特徴で、どちらかというとビジネス向けの機種だった。今回のCOOLPIX S60は、タッチパネル機の復活といえる。

 タッチパネルは液晶モニターを見ながら直感的に操作できるのが利点。また、操作スイッチを減らすことができるため、より大型の液晶モニターを搭載することができる。COOLPIX S60の液晶モニターは3.5型ワイドと、コンパクトデジタルカメラとしては最大クラスとなっている。タッチパネルのメリットはそれだけではなく、スタイラスによるお絵かきやスタンプなどのおもしろ機能が盛り込めるところにもある。


3.5型のタッチパネル液晶モニターを採用。背面にボタン類がないすっきりとしたデザイン ボタンは、上部にあるシャッターボタンと電源ボタンのみ


 タッチパネル搭載のコンパクトデジタルカメラは既にソニー、パナソニック、ペンタックスなどが商品化しており、ニコンは後発。だが、満を持して投入しただけあって、本体のボタンは電源とシャッターの2つのみという、これまでにない思い切ったデザインを採用している。

 スタイリッシュなタッチパネル機といえば、ソニーの「サイバーショットDSC-T700」が思い浮かぶ。電源、シャッター、ズームレバー、再生とスイッチは4つ。かなりすっきりしたデザインだが、ボタンが2つしかないCOOLPIX S60からはさらに洗練された印象を受ける。


サイバーショットDSC-T700の背面。スイッチ類は上面に4つ LUMIX DMC-FX500の背面。タッチパネルを搭載しながらも、一通りのボタンを備える

 他方、パナソニックの「LUMIX DMC-FX500」は、タッチパネルを搭載しながらも、背面に十字キー(ジョイスティック)を含む一通りのボタンを搭載。ボタン操作にも重きを置いた設計で、“タッチパネルでできることは、タッチパネルで”というニコンの考え方とは対照的。どちらが良いのかは一概に言えないが、シャッター速度、絞り、ISO感度、露出補正など、撮影パラメーターを頻繁に変えて撮影するスタイルには、まだまだボタン操作に分がありそうだ。しかし、シーンモードやオートモードを基本にして、気軽に撮影する場合は、タッチパネルによるメリットの方が大きいだろう。

 DMC-FX500がこだわり派を意識しているのに対し、COOLPIX Sシリーズは、気軽に日常を写したい人向けのコンセプトになっている。それだけに、カメラ任せでどれだけ失敗なく撮影できるかが重要になってくる。そんなことを見越してか、COOLPIX S60には「おまかせシーンモード」を新たに搭載。カメラが自動的に「ポートレート」、「風景」、「夜景」、「夜景ポートレート」、「クローズアップ」、「逆光」の6シーンから識別してくれる。シーン認識機能は各社が搭載しており、コンパクト機ではトレンドになっている。撮影ごとにシーンモードを切り替えるのは、結構面倒な操作。こうした自動化はどんどん推し進めて欲しい。


使い勝手の良いタッチパネル

スタイラスが付属する
 気になるタッチパネルだが、タッチだけでなくドラッグによる画像送りなどにも対応しており、操作性は良い。撮影、再生画面のほか、撮影モード切替やカメラの基本的な設定画面に入るためのホーム画面を用意しており、動画モードなどに写る際もホーム画面から選ぶようになっている。

 撮影画面は、タッチ操作できるアイコンを左右に集めたレイアウトを採用。左側に撮影再生モード切替、ストロボモード切替、セルフタイマー、マクロモードが並び、右側にズームとホーム画面呼び出しアイコンが並ぶ。

 ホワイトバランス、ISO感度、露出補正などはホーム画面からセットアップアイコンをタッチすると設定できる。露出補正くらいは撮影画面から直接設定できた方が良かったようにも思うが、こういったカメラはオート主体で使用する人が多いためだろう。


撮影時の画面。タッチするボタンは左右に並ぶ 撮影モード、メニュー、セットアップなどに移るためのホーム画面を備える

ホーム画面のデザインは3種類から選べる。これは「ライトシャワー」 クリアールージュ

新モードには新たに料理モードが加わった。撮影時にホワイトバランスを簡単にセットできる メニューは、大きなボタンで表示されるため押しやすい

・タッチパネルの操作(動画)


撮影時の様子。タッチ操作でフォーカス枠が移動する ペイント機能とスタンプ機能を試してみた

再生時の様子。指をスライドさせることで写真の送り、戻しができる

 撮影時に便利なのがタッチによるフォーカスフレームの移動機能だ。ピントを合わせたい被写体にタッチするだけでフォーカスフレームが移動する。手持ちの時はもとより、三脚を使用した場合に便利だった。また、一般的な顔検出機能はもとより、人物の笑顔を認識してシャッターが切れるモードも搭載している。おもしろいところでは、「人物ワンタッチズーム」という機能が付いており、ポートレートモードか夜景ポートレートモードで、人物を検出した場合、人物ワンタッチズームアイコンをタッチすると、自動的に顔のアップにズームを合わせてくれる。

 ズーム操作は、タッチパネルで行なう方式で新鮮な感覚だが、操作性はズームレバーと変らない。特に操作しにくいこともなく、快適に撮影ができた。

 一方再生時は、サムネイル表示からタッチで1枚の画像を選んだり、1枚表示の画像を次のコマにドラッグで送ることができる。もちろん前のコマに戻るのもドラッグで行なえるため結構快適だ。


再生画面
 また、撮影済画像の編集機能では、ペイント機能といったタッチパネルを活かした編集のほか、人物を細く見せるスリム効果や建物をシフトレンズで撮影したように変形できるアオリ効果などが利用できる。ニコンのデジタルカメラではおなじみの、逆光やストロボの光量不足で暗くなった部分を補正するD-ライティングも装備している。

 ペイント機能は、画像に画を描いたり、スタンプを押せる機能。書き込んだ画像は、オリジナルとは別に保存される。ただし、最大300万画素相当になる。ペイントでは、ペンの太さや色を変更可能。付属のスタイラスを使用するとかきやすい。スタンプはさまざまなタイプが用意されており、こちらはスタイラスを使用せずタッチで行なっても、意図したところにスタンプを押すことができた。


トレンドを押さえてうまくまとめたカメラ

レンズは屈曲光学式の5倍ズーム。センサーシフト式の手ブレ補正機構も搭載
 COOLPIX S60は、レンズに屈曲光学系を用いて厚さ22mmを実現したスリムモデル。撮像素子は1/2.3型有効1,000万画素。レンズは35mm判換算の焦点距離33~165mm相当。

 画はニコンらしいパリっとした描写で好感が持てる。色ノリもいい。この厚みで5倍ズームを実現しているのも売りだろう。屈曲光学系を使用しているせいか、歪曲収差は大きめ。サンプルを見ていただきたいが、広角側でタル型、望遠端でもはっきり分かる糸巻き型収差が出ている。ただし、本機には歪曲収差補正機能があるのでONにしておくとほぼ目立たなくなる。

 高感度は、ISO200まではディテールの崩れも無く良好。ISO400ではノイズリダクションのせいかアマさが増す。ISO800ではかなりアマくなるが大きく引き延ばさなければ問題ないだろう。ISO1600はかなりノイズが増えるため緊急用といった感じだが、色の喪失は比較的少ないように感じた。

 音楽付きスライドショー作成機能「Pictmotion」は、ハイビジョン対応の「HD Pictmotion」になったのもうれしいところ。本体のHDMI端子からテレビにつなげれば簡単にスライドショウが楽しめる。


本体横にはHDMI端子を備え、静止画や、スライドショウ(HD Pictmotion)をハイビジョンTVで楽しめる 記録メディアはSDHC/SDメモリーカード。バッテリーはリチウムイオン充電池で、CIPA準拠の撮影枚数は約140枚

 さて、ざっと試用してみたが、旺盛なチャレンジ精神に加えて、全体的にはよくまとまっているカメラという印象を受けた。顔検出、センサーシフト式手ブレ補正、自動シーン認識など現在のトレンドを押さえた上で、光学式手ブレ補正内蔵の5倍ズームやタッチパネル液晶など、ライバル機を上回る部分も備えている。ペイント機能など遊べる部分もあり、普段持ち歩いて気軽に撮影する向きにはいいかもしれない。是非店頭やショウルームなどで、タッチパネルの操作を味わってみて欲しい。


作例

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します(特記あるものを除く)。


・画角


広角端
3,648×2,736 / 1/552秒 / F3.8 / 0EV / ISO64 / 撮影モード:オート / WB:オート/ 5.9mm

望遠端
3,648×2,736 / 1/464秒 / F4.8 / 0EV / ISO64 / 撮影モード:オート / WB:オート/ 29.5mm


・ISO感度


ISO64
3,648×2,736 / 1/5秒 / F4.3 / 0EV / 撮影モード:オート / WB:オート/ 10.2mm
ISO100
3,648×2,736 / 1/8秒 / F4.3 / 0EV / 撮影モード:オート / WB:オート/ 10.2mm
ISO200
3,648×2,736 / 1/16秒 / F4.3 / 0EV / 撮影モード:オート / WB:オート/ 10.2mm

ISO400
3,648×2,736 / 1/34秒 / F4.3 / 0EV / 撮影モード:オート / WB:オート/ 10.2mm

ISO800
3,648×2,736 / 1/65秒 / F4.3 / 0EV / 撮影モード:オート / WB:オート/ 10.2mm
ISO1600
3,648×2,736 / 1/137秒 / F4.3 / 0EV / 撮影モード:オート / WB:オート/ 10.2mm

・歪曲収差


広角端(ゆがみ補正無し)
3,648×2,736 / 1/6秒 / F3.8 / 0EV / ISO64 / 撮影モード:オート / WB:オート/ 5.9mm
望遠端(ゆがみ補正無し)
3,648×2,736 / 1/3秒 / F4.8 / 0EV / ISO64 / 撮影モード:オート / WB:オート/ 29.5mm

広角端(ゆがみ補正あり)
3,648×2,736 / 1/6秒 / F3.8 / 0EV / ISO64 / 撮影モード:オート / WB:オート/ 5.9mm
望遠端(ゆがみ補正あり)
3,648×2,736 / 1/3秒 / F4.8 / 0EV / ISO64 / 撮影モード:オート / WB:オート/ 29.5mm

・ペイント機能


2,048×1,536 / 1/37秒 / F4.6 / 0EV / ISO64 / 撮影モード:オート / WB:オート/ 13.9mm


・ピクチャーカラー

 撮影した画像の色調を変更できる機能。はっきりした色調の「ビビッドカラー」、「白黒」、「セピア」、ブルー系色調になる「クール」の4種類が利用できる。オリジナル画像とは別に保存可能。

※共通データ:3,648×2,736 / 1/236秒 / F3.8 / -1EV / ISO64 / 撮影モード:オート / WB:オート/ 5.9mm


オリジナル

「ビビッドカラー」 「白黒」

「セピア」 「クール」

・パノラマアシスト

 複数枚の写真を撮影してパノラマ画像を作成する機能。パノラマ合成は、同梱のソフト「Panorama Maker」で行なう。ウィザード形式で合成できるので、手軽にパノラマ写真が楽しめる。思った以上に写真同士の繋がりは良好。

※サムネイルをクリックすると、横1,200ピクセルにリサイズした画像を表示します。


3枚を合成

4枚を合成。撮影のタイミングの関係で、列車は切れている

・一般作例


3,648×2,736 / 1/579秒 / F3.8 / 0EV / ISO64 / 撮影モード:オート / WB:オート/ 5.9mm

3,648×2,736 / 1/286秒 / F4.8 / 0EV / ISO64 / 撮影モード:オート / WB:オート/ 29.5mm


3,648×2,736 / 1/44秒 / F4.6 / 0EV / ISO64 / 撮影モード:オート / WB:オート/ 13.9mm

3,648×2,736 / 1/90秒 / F3.8 / 0EV / ISO64 / 撮影モード:オート / WB:オート/ 5.9mm


3,648×2,736 / 1/115秒 / F3.8 / 0EV / ISO64 / 撮影モード:オート / WB:オート/ 5.9mm

3,648×2,736 / 1/306秒 / F4.8 / 0EV / ISO64 / 撮影モード:オート / WB:オート/ 29.5mm


3,648×2,736 / 1/26秒 / F4.6 / -0.7EV / ISO64 / 撮影モード:オート / WB:オート/ 13.9mm

3,648×2,736 / 1/765秒 / F3.8 / 0EV / ISO64 / 撮影モード:オート / WB:オート/ 5.9mm


3,648×2,736 / 1/98秒 / F4.8 / 0EV / ISO64 / 撮影モード:オート / WB:オート/ 17.1mm

3,648×2,736 / 1/36秒 / F4.6 / 0EV / ISO64 / 撮影モード:オート / WB:オート/ 13.9mm


3,648×2,736 / 1/19秒 / F4.7 / -0.7EV / ISO64 / 撮影モード:オート / WB:オート/ 15.4mm

3,648×2,736 / 1/240秒 / F3.8 / 0EV / ISO64 / 撮影モード:オート / WB:オート/ 5.9mm


3,648×2,736 / 1/19秒 / F4.8 / 0EV / ISO64 / 撮影モード:オート / WB:オート/ 29.5mm

3,648×2,736 / 1/728秒 / F4.6 / -0.3EV / ISO64 / 撮影モード:オート / WB:オート/ 13.9mm


3,648×2,736 / 1/19秒 / F3.8 / 0EV / ISO64 / 撮影モード:オート / WB:オート/ 5.9mm


【12月25日12時】歪曲収差の作例を追加しました。
【12月26日14時20分】記事初出時、「ニコン初のタッチパネル搭載デジタルカメラ」と記載しておりましたが、COOLPIX 300がタッチパネルを搭載していたため、表記を訂正いたしました。



URL
  ニコン
  http://www.nikon.co.jp/
  製品情報
  http://www.nikon-image.com/jpn/products/camera/compact/coolpix/s60/
  ニコン「COOLPIX300」ファーストインプレッション(PC Watch)
  http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/970609/cool300.htm

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ニコン、タッチパネル式3.5型液晶の「COOLPIX S60」(2008/08/07)



本誌:武石 修

2008/12/25 00:36
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