デジカメ Watch

【伊達淳一のデジタルでいこう!】デジタル一眼6機種画質対決

~同一シーンで写りを比較
Reported by 伊達 淳一

左上からE-520、EOS 50D、SD14、α350、D90、K20D
 この秋は35mmフルサイズ一眼レフに注目が集まっているが、なんとなく“35mmフルサイズ=高画質”で35mmフルサイズに期待している人もいると思う。確かに、画素ピッチを狭くせずに高画素化するにはセンサーサイズそのものを大きくするしかないし、APS-Cサイズよりもレンズの焦点距離が長くなるので、同じ撮影ポジションから同じ画角、同じ絞り値で撮影した場合には、35mmフルサイズセンサーのほうが被写界深度が浅くなり、背景や前景をより大きくボカすことができる。つまり、35mmフルサイズ一眼レフのアドバンテージは、「高画素」、「高感度」、「大きなボケ表現」にあるわけだ。

 ただし、(少なくとも現在の)35mmフルサイズデジタル一眼レフは「大きく重い」。ボディ単体が大きく重いのはもちろん、開放からそれなりの周辺画質と開放F値が得られるレンズは、やはり大きく重いものが多い。その点、APS-Cサイズのデジタル一眼レフは、ボディもレンズもそこそこコンパクトで、周辺画質の落ち込みも一部のレンズを除けばそれほど大きくはない。35mmフルサイズ兼用のレンズを使えば、画質が良好な中心部だけを使うので、周辺まで均一な描写を得ることができる。35mmフルサイズに比べるとボケが小さいというのも、裏を返せば、あまり絞り込まなくても十分な被写界深度を確保できるということで、パンフォーカス的な風景撮影にはむしろ有利な面もある。

 そこで、APS-Cサイズとフォーサーズのデジタル一眼レフでどこまでの高精細描写が得られるのか、細部描写力が求められる風景撮影で比較してみることにした。今回、テストに引っ張り出したのは、以下の6機種。

  • オリンパス「E-520」(1,000万画素)+「ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6」
  • キヤノン「EOS 50D」(1,510万画素)+「EF-S 18-55mm F3.5-5.6 IS」
  • シグマ「SD14」(470万画素×3層)+「17-70mm F2.8-4.5 DC Macro」
  • ソニー「α350」(1,420万画素)+「DT 18-70mm F3.5-5.6」
  • ニコン「D90」(1,230万画素)+「AF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VR」
  • ペンタックス「K20D」(1,460万画素)+「DA 18-55mm F3.5-5.6 AL II」


 もともとは、K20D、α350、SD14の3機種で、ベイヤー対Foveon X3センサーの1,400万画素対決を考えていたのだが、モタモタしているうちに夏も終わり、秋の新製品も発売されたので、キヤノン、ニコン、オリンパスも加えて、全マウント総当たりで比較してみることにした(正直、これだけの機材を1人で持ち歩くことを考えると、あまりやりたくはないんだけどね)。

 撮影する被写体に選んだのは、東京・浜離宮恩賜庭園から汐留方向を臨む景色。高周波成分豊かな幾何学的な人工建造物と、樹木や芝といった低周波成分の多い被写体が混在していて、しかも青空と緑(しかもいろいろな樹木が混ざっている)の発色を確かめるには絶好のポイントだからだ。

●作例

※サムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。

※参考として、キヤノン「PowerShot G10」(1,470万画素)の画像も掲載しています。

※各機種のRAWファイルは、記事末のリンクからダウンロードできます。


テスト1「オート撮影」

 絞り優先AEモードで、絞り値をF8に設定して撮影。ホワイトバランスは“オート”。撮影感度は各機種の基本感度(常用感度でもっとも低い感度)で、測光モードは分割測光。±0.3EVのAEB撮影を行っているが、ここに掲載しているのは露出補正なしのカット。

 アクティブD-ライティングやオートライティングオプティマイザーなどの階調自動補正はOFFにしている。ピクチャースタイルやピクチャーコントロールなどの仕上がり設定はデフォルトに設定、ただし、K20Dだけは、カスタムイメージ「ナチュラル」のシャープネスを、ファインシャープネスに変更している(強度は変更していない)。ペンタびいきですから(笑)。


E-520
3,648×2,736 / 1/160秒 / F8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:オート / 14mm
EOS 50D
4,752×3,168 / 1/250秒 / F8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:オート / 18mm

SD14(470万画素×3)
2,640×1,760 / 1/400秒 / F8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:オート / 17mm
SD14(画素補間4倍)
4,573×3,048 / 1/400秒 / F8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:オート / 17mm

α350
4,592×3,056 / 1/320秒 / F8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:オート / 18mm
D90
4,288×2,848 / 1/320秒 / F8 / 0EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 18mm

K20D
4,672×3,104 / 1/250秒 / F8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:オート / 18mm

PowerShot G10
4,416×3,312 / 1/500秒 / F4.5 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:オート / 6mm


 晴天昼光の撮影で、しかも白いビル群も写っているというのに、オート撮影でこれだけ色調がばらつくのには、正直唖然とさせられた。特に、D90は明らかな露出オーバーと、ホワイトバランスがアンバー方向に多少寄っているのが合わさって、非常に不自然な描写になっている。たまたまこのシーンだけおかしくなったわけではなく、D300、D700などほかのニコン機でもこうしたオートホワイトバランスの崩れに遭遇するケースが多い(いいときはいいんだけどね)。ちなみに、このテストのために浜離宮恩賜庭園に3回足を運んでいて、1回目、2回目は晴れは晴れでも、雲が多くて全機種安定した撮影が行えなかったり、霞のかかった薄い青空で青空の再現には不適と判断して、再々撮影を行なっているのだが、そのいずれも同じように露出オーバー傾向とオートホワイトバランスの崩れが生じてしまった。いったい何をシーン認識して、こういう挙動になってしまうのか不思議に思う。

 また、EOS 50Dは、この6機種の中ではもっとも画素数が多いので、それだけ細部描写力が高そうだが、確かに背景の高層ビル群は(周辺で倍率色収差が出ているものの)細かい部分まで描写できているが、一部の樹木がまるで綿菓子のようにフワッと解像感のない描写になっていて、ここだけぼかしフィルターをかけたようになっているのがきわめて不自然。廉価ズームなんかで画質を比較するのが間違っている、という突っ込みがあるかもしれないが、幸か不幸か、この廉価ズームこそEOS 50Dの性能をなんとか引き出せる数少ない標準ズームだったりするのだ。

 それに、この後に掲載しているRAWから現像したカットを見ていただければ、レンズの性能不足でないことは明らかで、EOS 50Dを初めとするEOS digitalのカメラ内画像処理がこういう描写の味付けになっているとしか思えない。ちなみに、同じキヤノンでも「PowerShot G10」(1,470万画素)だと、シャープネスが強めということもあるだろうが、コントラストの差が少ない樹木の葉っぱも自然な解像感が得られている。同じDIGIC4による処理で、画素数もほぼ同じなのに、これほど樹木の再現が違うのはなぜなのだろうか?


 意外と(といっては失礼かもしれないが)健闘しているのが、もっとも画素数が少ないE-520。画素数からくる細部描写力の限界はあるものの、高層ビル群と樹木など自然風景との解像感の差が少なく、しかも、派手すぎず地味すぎず、色と階調のバランスが非常に良いのが印象的。α350も少し青みが強いものの、フィルム的な発色でボク的には好み。K20Dは、1/3EVほど露出がアンダーになってしまって、それが足を引っ張っているが、ファインシャープネスの効果で樹木の葉っぱや芝目など他機種では不鮮明になりやすい部分が解像しているように見える。

 シグマSD14は、JPEG記録もできるものの、この機種の魅力を引き出すならRAWで撮影するのが基本、というか、JPEGで撮影するのならベイヤー配列の高画素機を使ったほうがよほど楽。なので、SD14はRAWで撮影し、SIGMA Photo Proの「オート」で現像したものをオートとして掲載している。470万画素で出力したものは、ピクセル等倍鑑賞でもビシッと細部まで解像感がある。ただ、ビルの屋上の柵など斜線部分はジャギーが生じているのがデジタル臭い。また、4倍に画素数を補間して出力したカットを見ると、想像していたよりも樹木に解像感がある。ローパスフィルターがなく、RGB各色470万画素の豊かな色情報を持っていることで、これだけの情報を鈍らせずに保持できているのだろう。ただ、高層ビル群などベイヤー配列の機種が得意とする色味が少なく幾何学パターンの被写体では、やはりジャギーが目立ち、輝度情報が470万画素しかない限界が感じられる。


テスト2「マニュアル撮影」

 次に、各機種の本来の画質を比較するために、露出とホワイトバランスをマニュアルで撮影。露出はF8、1/250秒(D90は基本感度がISO200なのでF8 1/500秒)、ホワイトバランスは太陽光(昼光)に設定して撮影している。それ以外はオート撮影と同じ設定だ。


E-520
3,648×2,736 / 1/250秒 / F8 / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / WB:晴天 / 14mm

EOS 50D
4,752×3,168 / 1/250秒 / F8 / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / WB:晴天 / 18mm


SD14(470万画素×3)
2,640×1,760 / 1/250秒 / F8 / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / WB:晴天 / 17mm

SD14(画素補間4倍)
4,573×3,048 / 1/250秒 / F8 / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / WB:晴天 / 17mm


α350
4,592×3,056 / 1/250秒 / F8 / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / WB:晴天 / 18mm

D90
4,288×2,848 / 1/500秒 / F8 / 0EV / ISO200 / マニュアル露出 / WB:晴天 / 18mm


K20D
4,672×3,104 / 1/200秒 / F8 / +0.3EV / ISO100 / マニュアル露出 / WB:晴天 / 18mm


 露出とホワイトバランスを揃えて撮影しただけで、各機種の差異はかなり少なくなってくる。高画質を引き出すには、いかに露出とホワイトバランスが重要かがおわかりだろう。AE、AF、AWBといったオート性能が優秀な機種のほうが、オートで安定した描写が得られる確率が高いが、どんなにオート性能に優れていても、100%完璧なオートなど存在しない。つまり、オートが苦手なシーンを見極め、マニュアルで撮影する技量を磨くことが大切だ。

 さて、マニュアルで撮影すると、確かに明るさや色調のばらつきは少なくなったが、一見してわかるのが青空の発色だ。同じ露出とホワイトバランスで撮影しているのに、これほど青空の発色に違いが出る。

 一番青空が濃く鮮やかなのはE-520。オート撮影からわずか1/3EVアンダーな露出にするだけで、青空の青がグンと濃くなる。芝や樹木の緑も黄色みが抜け、さほど不自然でない程度に記憶色寄りのクリアな緑になっている。また、オート撮影ではかなり残念な結果に終わっていたD90も、露出レベルを2/3段アンダー補正し、ホワイトバランスを昼光に設定し直すだけで、こんなに自然な発色になる。もう少し、自然風景に対するシーン認識力を高めてくれれば、オートでもこんな写りが得られるのだが、それまではマイナスの露出補正と、ホワイトバランスを太陽光固定にして撮影するのが無難だろう。

 樹木の緑が目で見た以上にクリアなのがα350。緑から黄色みを抜いているのでクリアに見えるのだが、この季節の常緑樹はこれほど濁りのない緑ではないので、そのあたりがやや作為的に見えてしまうと受け入れられない発色かもしれないが、一般受けはする発色だろう。

 キヤノンは伝統的に青空の青が明るめに写るが、EOS 50Dもその伝統は受け継がれており、他機種に比べると少しマゼンタも浮いた青空になっている。台風一過の青空を少しアンダー露出で撮影するか、PLフィルターで空を相当暗く落とさないと、EOS digitalでリバーサルフィルムのような深く濃い青空は期待できない。ボクは青は見た目よりも暗め、黄色は明るめに再現される機種が好きなので、キヤノンの力ない青空の発色はいつも残念に思う。といって、ピクチャースタイルを[風景]にすると、ベタッとした青空になってしまう。ボクが求めているのは、明度のみを下げて彩度は上げない青空だったりする。


テスト3「純正ソフトによるRAW現像」

 マニュアル撮影時に同時記録していたRAWを、カメラ付属のデジタル現像ソフトで仕上げてみた。ビルのグレー部分でホワイトバランスをマニュアル設定し、アクティブD-ライティングなど階調補正機能が有効な場合は[オート]または[標準]を適用している。


E-520
3,648×2,736 / 1/250秒 / F8 / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / WB:晴天 / 14mm

EOS 50D
4,752×3,168 / 1/250秒 / F8 / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / WB:晴天 / 18mm


SD14(470万画素×3)
2,640×1,760 / 1/250秒 / F8 / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / WB:晴天 / 17mm

SD14(画素補間4倍)
4,573×3,048 / 1/250秒 / F8 / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / WB:晴天 / 17mm

α350
4,592×3,056 / 1/250秒 / F8 / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / WB:晴天 / 18mm
D90
4,288×2,848 / 1/500秒 / F8 / 0EV / ISO200 / マニュアル露出 / WB:晴天 / 18mm

K20D
4,672×3,104 / 1/200秒 / F8 / +0.3EV / ISO100 / マニュアル露出 / WB:晴天 / 18mm

PowerShot G10
4,416×3,312 / 1/500秒 / F4.5 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:晴天 / 6mm


 このパートでもっとも注目してほしいのが、EOS 50Dの描写。付属のDigital Photo Professonal(DPP)を使用して現像しているが、JPEGではボヤボヤだった樹木の描写が見違えるほど解像感が高まっている。描写が甘かったのは決してレンズのせいではない証だ。また、レンズ収差補正のうち[倍率色収差]、[色にじみ]、[周辺光量]の3つを補正しているが、高層ビルの輪郭から色ズレが消え、スッキリした描写に改善されている。解像感を重視するならRAWをDPPで現像したほうがいいだろう。

 ただ、斜線部にジャギーが生じやすく、高感度ではノイズも目立つ。EOS 50DのJPEGは、全体にアンチエイリアス処理がかかったような描写で、1,510万画素という画素数から期待されるほどの解像感は得られないものの、ジャギーやノイズは目立ちにくくなっている。ノイズやジャギー、解像感のどちらを優先するかで、RAWとJPEGを使い分けるといいだろう。

 D90は、本格的にRAW現像するのであれば「Capture NX2」を使いたいところだが、実売で2万円前後する別売品なので、ここでは付属のViewNXでRAW現像している。アクティブD-ライティングDS[標準]、ハイライト[50]に調整してシャドー部を多少持ち上げているので、樹木の緑が多少明るめになっていると思う。D90やD300、D700、D3は、画像処理エンジンで倍率色収差を自動補正してくれるのが特徴だが、ViewNXによるRAW現像では倍率色収差補正は行なわれないようで、ビルの輪郭を見るとJPEG撮影にはなかった色ズレが露呈している。これは大きな落とし穴だ。ちなみに、Capture NX2では、自動的に倍率色収差補正される。ここは出し惜しみせずにViewNXにも、倍率色収差補正を搭載してほしいものだ。まあ、D90にはカメラ内RAW現像機能があるので、ホワイトバランスやピクチャーコントロールを変更したいのなら、メモリカードにRAWデータを書き戻して、D90でRAW現像したほうが倍率色収差のない描写を引き出せる。

 カメラ内RAW現像といえば、現行のデジタル一眼レフでもっとも優れているのがK20D。付属のPENTAX PHOTO Laboratory(PPL)を使うよりもお手軽に、液晶モニターで調整結果を見ながらRAW現像できるが、PPLを使うと倍率色収差が補正できるので、その点だけはPPLが優れている。ただ、ファインシャープネスと同等のシャープネス機能は備えていないので、ファインシャープネスの解像感に惚れ込んでいるのならカメラ内現像を選択するしかない。


テスト4「SILKYPIX Developer Studio 3.0で現像」

 同じRAWデータでも、画像処理次第で画質は大きく変わる。カメラに付属する純正のRAW現像ソフトではなく、純国産のRAW現像ソフト、「SILKYPIX Developer Studio 3.0」(市川ソフトラボラトリー)で対応するRAWを現像してみた。

 SILKYPIX Developer Studio 3.0に限らず、RAW現像ソフトは調整パラメータが非常に豊富で、パラメータ次第で画質も大きく変化する。大半のパラメータはデフォルト設定のままで現像しているが、ホワイトバランスはマニュアル設定(グレー点指定)、調子はコントラスト[1.8](硬調仕上げ)、シャープは輪郭の縁取りが目立ちにくい[ピュアディテール]に設定し、輪郭強調[30]/ディテール強調[75]と、K20Dのファインシャープネスに近い強めのシャープネスをかけている。また、倍率色収差も補正。より高度なアルゴリズムで細部の描写を引き出してくれることを期待(その分、モアレは生じやすくなっているが)して、デモザイク精度は[100]に設定している。

※SILKYPIX Developer Studio 3.0は、SD14のRAWに対応していないため、SD14の作例は掲載しておりません。


E-520
3,648×2,736 / 1/250秒 / F8 / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / WB:晴天 / 14mm
EOS 50D
4,752×3,168 / 1/250秒 / F8 / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / WB:晴天 / 18mm

α350
4,592×3,056 / 1/250秒 / F8 / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / WB:晴天 / 18mm

D90
4,288×2,848 / 1/500秒 / F8 / 0EV / ISO200 / マニュアル露出 / WB:晴天 / 18mm


K20D
4,672×3,104 / 1/200秒 / F8 / +0.3EV / ISO100 / マニュアル露出 / WB:晴天 / 18mm


 JPEG撮影に比べると、現像アルゴリズムが同じということで機種間の差異は少なくなっている。明るめでマゼンタ寄りだったEOS 50Dの青空も、かなり他機種と似通ってきている。SILKYPIX Developer Studioの描写が好きか、嫌いかという問題はあるが、複数の機種を併用する場合、RAWで撮影して同じ現像ソフトで仕上げると、メーカーや機種によるテイストの差を小さくすることができる。

 シャープネスを必要以上に強めにしているので、ピクセル等倍鑑賞では「キレの良い描写」に見えると思う(特に600万画素時代のデジタル一眼レフやコンパクトデジカメの描写を見慣れた目には……)。ただ、シャープネスを強くしすぎると、立体感が損なわれ、平面的な写真に陥りやすい。

 プリントで鑑賞する場合は、あまりシャープネスが高くなくても、意外とそれが立体感として作用することも多い。特に画素数が増えてくると、シャープネスに頼らずともある程度の情報量を含んでいるので、必要以上にシャープネス処理をかけないほうが立体感のあるプリントを得ることができる。そういう意味では、ここに掲載した写真の仕上げは、シャープネスとコントラストを高くしすぎなのだが、個人的に嫌いではなかったりする。


テスト5「Camera RAW 4.6で現像」

 Photoshop CS3のプラグイン、Camera RAW 4.6(ACR)でも現像してみた。デフォルトでは少し明るめに仕上がるので、露光量[-0.20]、補助光効果[10]、明るさ[+50]、コントラスト[+30]と、少しアンダー補正と、コントラストを強めにし、シャドーが暗くなりすぎないように補助光効果を加えている。ホワイトバランスはグレー点指定。シャープネスは適用量[40]/半径[0.7]/ディテール[60]/マスク[0]と、SILKYPIX同様、輪郭強調の線を細めにしつつ、強度を強めにかけている。


E-520
3,648×2,736 / 1/250秒 / F8 / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / WB:晴天 / 14mm

EOS 50D
4,752×3,168 / 1/250秒 / F8 / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / WB:晴天 / 18mm


SD14(470万画素×3)
2,640×1,760 / 1/250秒 / F8 / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / WB:晴天 / 17mm

SD14(画素補間4倍) 5,120×3,413 / 1/250秒 / F8 / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / WB:晴天 / 17mm


α350
4,592×3,056 / 1/250秒 / F8 / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / WB:晴天 / 18mm
D90
4,288×2,848 / 1/500秒 / F8 / 0EV / ISO200 / マニュアル露出 / WB:晴天 / 18mm

K20D
4,672×3,104 / 1/200秒 / F8 / +0.3EV / ISO100 / マニュアル露出 / WB:晴天 / 18mm


 SILKYPIXに比べると機種ごとの青空の個性が残っている。自分の色に強制変換するSILKYPIXに対し、素材の個性を多少残すCamera RAWといったところか。EOS 50Dの樹木の描写もJPEGに比べるとまるで違っていて、これくらい解像感があると1,510万画素機を買ったという満足感にも浸れると思う。


まとめ

PowerShot G10
 以上、オート撮影、マニュアル撮影、RAW現像ソフトによる描写の差を比較してみたが、意外にも健闘したのが、PoweShot G10なのは皮肉。1/1.7型で1,470万画素という小さなセンサー、極小の画素ピッチでここまでの画質を引き出せるのだから、もっとセンサーの特性に余裕のあるAPS-Cサイズのデジタル一眼レフなら、レンズ性能や画像処理次第で、さらなる高画質が引き出せるはず。さらに大きなセンサーを搭載した35mmフルサイズのデジタル一眼レフならなおさらだ。

 35mmフルサイズのデジタル一眼レフ(とその性能を引き出せるまともなレンズ)が出そろったところで、また同じ場所で実写比較をしてみたいものだ。

●RAWファイルダウンロード

 各機種のRAWファイルはこちらからダウンロードできます(94MB、ZIP形式)。

【お詫びと訂正】記事初出時、“テスト1「オート撮影」”のEOS 50Dの作例で、ホワイトバランスが太陽光の作例を掲載しておりましたため、正しい作例に差し替えました。お詫びいたします。



URL
  オリンパスE-520関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2008/05/20/8468.html
  キヤノンEOS 50D関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2008/09/18/9156.html
  シグマSD14関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2006/10/24/4887.html
  ソニーα350関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2008/02/05/7906.html
  ニコンD90関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2008/09/18/9154.html
  ペンタックスK20D関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2008/02/05/7800.html

関連記事
キヤノン、広角28mmレンズ搭載の「PowerShot G10」(2008/09/17)



伊達 淳一
1962年生まれ。千葉大学工学部画像工学科卒業。写真、ビデオカメラ、パソコン誌で カメラマンとして活動する一方、その専門知識を活かし、ライターとしても活躍。黎 明期からデジタルカメラを専門にし、カメラマンよりもライター業が多くなる。自ら も身銭を切ってデジカメを数多く購入しているヒトバシラーだ。ただし、鳥撮りに関 してはまだ半年。飛びモノが撮れるように日々精進中なり

2008/11/06 01:04
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