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【新製品レビュー】オリンパス「μ1030SW」

~広角28mmに対応したタフネスデジカメ
Reported by 吉住 志穂

 ハウジングなしで水中撮影が可能なμSWシリーズの新製品です。μSWにはほかに、カジュアルでおしゃれな「μ850SW」がありますが、今回紹介するμ1030SWは、よりタフな性能を持つ上位機種になります。

 しかも屈曲光学系のレンズとして初めて、焦点距離28mm相当(35mm判換算)からのズームレンズを搭載。μ850SWにはない機能で、画角が狭くなる水中はもちろん、陸上でのアウトドア用途でも活躍してくれそうです。

 撮像素子は、1/2.33型有効1,010万画素のCCD。液晶モニターは2.7型約23万ドット。記録メディアはxDピクチャーカードを使用します。実勢価格は4万2,000円前後。


外装からして普通と違う超タフネスボディ

 μSWシリーズの特徴は、もうおなじみでしょう。ハウジングなしで水没可能。泥がついたら水洗いできるし、雪の上に一時的においても問題なし。スキューバダイビングで気軽に水中写真を撮りたい人はもちろん、ラフに扱えるということは、それだけで持ち出せる範囲が広がるわけです。雨や雪の中でも気兼ねなしに撮影できるのは魅力。まるでプロ用のデジタル一眼レフカメラを思わせます。





 ただし、いくら頑丈でも傷はつきます。オプションでシリコンカメラジャケットが用意されているので、気になる人は試すのも手でしょう。また、最近のSWはレンズバリア式になったので、そこから砂などが入らないか心配です。砂地などにおくときは、なるべくレンズバリアを閉める癖をつけた方が良いかと思います。

 ボディの剛性感もすごい。下手なデジタル一眼レフカメラ以上です。水中10m防水、2mからの耐落下衝撃、100kgfの耐荷重構造、耐寒-10度などの耐環境性能が本体の造りに現れており、ものすごくがっしりした印象を受けました。外装の金属も厚みが感じられます。

 さらに感心したのは、シャッターボタンと各種操作ボタンが柔らかくなったこと。以前のμSWシリーズは防水仕様のため、とにかくボタンが重い印象がありました。しかしμ1030SWは防水機能がありながら、各ボタンの固さが普通のコンパクトデジタルカメラとあまりかわりません。

 液晶モニターは、2.7型の「ハイパークリスタルII液晶モニター」になりました。視野角が広くて見やすい上、コントラストが高くてとても視認性が高い液晶モニターです。何よりも画面が大きいので、メニューの文字がわかりやすい。FUNKボタンを押すと表示されるファンクションメニューが見やすくなったのはうれしいところです。大きくなったおかげで、露出補正、ホワイトバランス、ズームなどを撮影前に4分割画面で確認できる「比較ウィンドウ」も、2.5型の液晶モニターを搭載する従来機種より使いやすくなりました。


撮影中の液晶モニター表示。アイコンが見やすくなった 液晶モニターが大きくなり、比較ウィンドウも実用性が増している

屈曲光学系で初の28mm相当を実現

 搭載レンズは、焦点距離28~102mmの光学3.6倍ズーム。ボディから伸び縮みしない折り曲げ式のレンズでは、初めて28mm相当の画角をカバーしました。ちなみに従来機種の「μ795SW」は、38~114mmでした。水中では画角が狭くなるので、広角化は待ち望まれていた改良といえるでしょう。開放F値はF3.5~5.1。広角側の暗さは屈曲光学系レンズの弱点ですが、この辺も改良してもらえると水中での使い勝手が良くなると思います。

 描写も問題なく、歪曲収差もほどほどに抑えられています。四隅がもう少しシャープだと文句はないのですが、まずは技術の進歩を歓迎したいと思います。ズーム速度や起動速度も問題なし。次は防水性能にこだわらない、より薄型の機種への搭載にも期待したいところです。


記録メディアはxDピクチャーカード。microSDカードをスロットに入れるためのアダプターが付属

ストロボの横には、LEDの「ワンタッチライト」を搭載


「水中スナップ」は、泳いでいる人を撮るのに適しているという

逆光と赤目を一発で補正する「かんたん補正」


 水中関連では、シーンモードが充実しています。「水中ワイド1」、「水中ワイド2」、「水中マクロ」、「水中スナップ」を使い分けられます。さすが水中カメラのSWシリーズといったところで、さらにホワイトバランスに「水中1」、「水中2」、「水中3」が用意されています。

 どうしてもタフさに目がいきがちの機種ですが、撮影機能もほかのμシリーズに引けを取りません。撮影ガイドを見ながら機能を設定できる「かいけつナビ」や、顔検出に明るさ補正を組み合わせた「顔検出パーフェクトショット」も装備。顔検出は、背面の専用ボタンひとつでオンとオフを切り替えられます。

 中でも、カメラ内で逆光や赤目をボタン1つで補正できる「かんたん補正」が秀逸です。撮影前に設定するより、カメラの初心者でも使いこなせるでしょう。子どもだと正面を向いてくれなかったり、ちょろちょろと動くので、顔検出があってもかえってチャンスを逃すことがあります。そんなときは素直に顔検出オフでフォーカスロックにして撮影、逆光で顔が暗くなるようだったら、その後にかんたん補正で補正するのがおすすめです。逆光のとき、露出補正の操作でシャッターチャンスを逃すのは悔しいものですが、こんなに便利な機能があるのなら、後から補正する手も考えた方が良いのかもしれません。ただし私は気になりませんでしたが、再保存するため画質が少し粗くなることがあるようです。

 面白い機能としては、ワンタッチライト(LED光源)があります。ストロボと違ってずっと光っているので、暗いところでのフレーミングが楽でした。内蔵ストロボが強制オフされるスーパーマクロでの使用を想定しているそうです。光の回り方や強さがまだまだ未完成な印象を受けましたが、携帯電話のLED機能のように、気軽なメモ用途なら大丈夫でしょう。


シャッターを押す前2秒前から記録する「プリキャプチャムービー」。面白いけど計7秒しか記録できないのは残念 内蔵メモリにお気に入りの写真を登録する「ポケット写真」も装備。しかもポケット写真をメニューの背景にできる

まとめ

姉妹機のμ850SWには、こんなおしゃれな本体色が選べる(写真はカシスピンク)
 残念なのは、いまどき手ブレ補正機構を搭載していないこと。それと姉妹機のμ850SWのように、カラフルなボディカラーが選べないことです。見た目もμ850SWのほうがかわいくて、女性に受けそう。機能を無視して私がどちらを選ぶかといえば、μ850SWになると思います。カジュアルユースならμ850SW、よりハードな使い方をしたいならμ1030SWという考えだと思いますが……。

 2つの機種を比べた場合、μ850SWには28mmからのズームレンズがないのが大きなマイナスでしょう。38~114mmになってしまいます。耐衝撃性能や耐水深性能も落ちますが、それよりもレンズや液晶モニター(μ850SWは2.5型)など、基本仕様が変わることに注意。それでも普通のデジカメよりタフなのは間違いないので、どちらを選ぶかは、自分の用途で考える必要がありそうです。

 いずれにしても、これからの季節にぴったりのカメラ。悪天候に強いので、個人的にはネイチャーフォトのサブカメラやメモカメラとしても重宝しそうだと思いました。


 

●作例

  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 作例下の撮影データは、記録解像度(ピクセル)/露出モード/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。
  • 強調のため一部の項目を1行目に抜粋した場合もあります。


画角


広角端
3,648×2,736 / プログラムオート / 1/15秒 / F3.5 / +0.3EV / ISO80 / WB:オート / 5mm
望遠端
3,648×2,736 / プログラムオート / 1/6秒 / F5.1 / -0.3EV / ISO80 / WB:オート / 18.2mm

歪曲収差


広角端
3,648×2,736 / プログラムオート / 1/125秒 / F3.5 / 0EV / ISO80 / WB:曇天 / 5mm
望遠端
3,648×2,736 / プログラムオート / 1/60秒 / F5.1 / 0EV / ISO80 / WB:曇天 / 18.2mm

感度

 個人的にはISO200までが許容範囲。それ以上は、ノイズと輪郭のゆるみが気になります。撮影モードを「寝顔」と「キャンドル」にすると、最高ISO2500での撮影が可能になりますが、画像サイズが2,804×1,536ピクセル(300万画素相当)に限定されます。


ISO80
3,648×2,736 / プログラムオート / 1/4秒 / F4.4 / -0.7EV / WB:オート / 8.9mm
ISO100
3,648×2,736 / プログラムオート / 1/4秒 / F4.4 / -0.7EV / WB:オート / 8.9mm

ISO200
3,648×2,736 / プログラムオート / 1/8秒 / F4.4 / -0.7EV / WB:オート / 8.9mm
ISO400
3,648×2,736 / プログラムオート / 1/15秒 / F4.4 / -0.7EV / WB:オート / 8.9mm

ISO800
3,648×2,736 / プログラムオート / 1/30秒 / F4.4 / -0.7EV / WB:オート / 8.9mm
ISO1600
3,648×2,736 / プログラムオート / 1/60秒 / F4.4 / -0.7EV / WB:オート / 8.9mm

ISO2500(撮影モード:寝顔)
2,048×1,536 / 寝顔 /1/15秒 / F4.7 / +0.3EV / WB:オート / 11.8mm
ISO2500(撮影モード:寝顔)
2,048×1,536 / 寝顔 / 1/40秒 / F3.5 / +0.7EV / WB:オート / 5mm

ワンタッチライト(スーパーマクロLED)

 被写体までレンズ前2cmまで近づけるスーパーマクロは、ズーム位置が固定され、さらにストロボ発光が不可能です。あまりにも暗い場合は、ワンタッチライトを使いましょう。ご覧の通り、光量が少ない割には影がきつくなりがちですが、メモ的な撮影なら可能です。


3,648×2,736 / プログラムオート / 1/30秒 / F4.1 / +0.3EV / ISO1600 / WB:オート / 6.5mm

3,648×2,736 / プログラムオート / 1/60秒 / F4.1 / +0.3EV / ISO800 / WB:オート / 6.5mm


16:9

 ハイビジョンテレビでの表示を意識した16:9モードもあります。ただし、テレビと同じ画面サイズの1,920×1,080ピクセルでしか撮影できないのは残念です。


1,920×1,080 / プログラムオート / 1/40秒 / F4 / +0.7EV / ISO80 / WB:曇天 / 13.2mm

1,920×1,080 / プログラムオート / 1/30秒 / F3.5 / -0.3EV / ISO80 / WB:晴天 / 5mm


水中撮影

 水に手を突っ込んでサンショウウオ(?)のオブジェを撮影。こんな感じでカメラ本体を水中に沈めて撮影できます。水深10mまで沈められるので、本来ならスキューバダイビングなどで使用したい機能ですが。


3,648×2,736 / プログラムオート / 1/8秒 / F4.1 / +0.3EV / ISO1600 / WB:オート / 6.5mm


一般作例


2,736×3,648 / プログラムオート / 1/50秒 / F4.3 / -0.3EV / ISO80 / WB:オート / 7.6mm

3,648×2,736 / プログラムオート / 1/250秒 / F4.1 / 0EV / ISO250 / WB:晴天 / 6.5mm


3,648×2,736 / プログラムオート / 1/50秒 / F5.1 / +1.3EV / ISO80 / WB:晴天 / 18.2mm

3,648×2,736 / プログラムオート / 1/250秒 / F4.7 / +0.7EV / ISO80 / WB:晴天 / 16.2mm


3,648×2,736 / プログラムオート / 1/60秒 / F4.3 / +0.3EV / ISO80 / WB:曇天 / 14.7mm

3,648×2,736 / プログラムオート / 1/6秒 / F3.5 / -1EV / ISO80 / WB:晴天 / 5mm


2,736×3,648 / プログラムオート / 1/3秒 / F4.4 / +0.3EV / ISO80 / WB:晴天 / 8.9mm

3,648×2,736 / プログラムオート / 1/400秒 / F3.5 / +0.7EV / ISO80 / WB:晴天 / 5mm


3,648×2,736 / プログラムオート / 1/640秒 / F4 / -0.3EV / ISO80 / WB:昼光色蛍光灯 / 5mm



URL
  オリンパス
  http://www.olympus.co.jp/
  製品情報
  http://olympus-imaging.jp/product/compact/mju1030sw/

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吉住 志穂
(よしずみ しほ)1979年東京生まれ。日本写真芸術専門学校卒業後、竹内敏信事務所に入社。 2005年4月に独立。自然の「こころ」をテーマに、花や風景の作品を撮り続けている。「デジタルフォト」や「日本フォトコンテスト」で連載中。日本自然科学写真協会(SSP)会員。http://www.geocities.jp/shihoyoshizumi/

2008/05/13 00:32
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