デジカメ Watch

最新ファームウェアで試す、DMC-L10とE-420のコントラストAF

Reported by 本誌:田中 真一郎

Leica D Vario-Elmar 14-150mm F3.5-5.6 ASPH. MEGA O.I.S.を装着したオリンパスE-420(左)と、ZUIKO DIGITAL 25mm F2.8を装着したパナソニックLUMIX DMC-L10
 4月17日、パナソニックとオリンパスから、「LUMIX DMC-L10」(以下、DMC-L10)と「E-420」、そして両社のコントラストAF対応レンズを相互利用可能にするファームウェアが発表された。ここではコントラストAFが利用可能な製品とファームウェアの組み合わせを整理し、アップデート後の両機種と対応レンズの動作を紹介する。


DMC-L10とE-420の“高速コントラストAF”

 2007年10月に発売されたパナソニックのDMC-L10は、デジタル一眼におけるコントラストAFの性能向上を大きな特長としている。2008年4月、同じフォーサーズ陣営のオリンパスがE-420でこれに続いた(オリンパスでは「ハイスピードイメージャAF」と呼称しているが、ここではコントラストAFと記述する)。

 両機のコントラストAFには次のような特徴が共通してある。


  1. コンパクト機なみの速度で動作する
  2. 対応レンズでのみ動作する
  3. コントラストAF時のほうが、位相差AF時よりも測距点が多い
  4. コントラストAF時は顔検出AF可能
  5. 非対応レンズが装着されている場合は、ライブビュー中でも位相差AFを行なう


 とくに印象的なのがほかの機種よりも速く感じる動作速度で、コンパクト機なみのレスポンスがコンスタントに得られる。

 この2機種でコントラストAFを高速化できた理由は具体的に説明されていないが、関係者によれば、コンパクト機と同じように、レンズのボケかたなどの特性を配慮してAFが動作するから、ということのようだ。

 一見単純な解決法だが、デジタル一眼レフでこれを実現するには大きな障壁がある。レンズが交換できないコンパクト機ならそのレンズに合わせてAFをチューニングできるが、さまざまなレンズに対応しなければならないデジタル一眼レフでは、すべての装着可能なレンズの情報を持つことは難しい。

 そのためかこの2機種では、コントラストAFができるレンズを次の3本ずつのみ、と限定している。


●パナソニックのコントラストAF対応レンズ

  • Leica D Summilux 25mm F1.4 ASPH.(以下、Summilux 25mm F1.4)
      (※ファームウェアVer.2.0以上が必要)
  • Leica D Vario-Elmar 14-50mm F3.8-5.6 ASPH. MEGA O.I.S.(Vario-Elmar 14-50mm)
  • Leica D Vario-Elmar 14-150mm F3.5-5.6 ASPH. MEGA O.I.S.(Vario-Elmar 14-150mm)


Leica D Summilux 25mm F1.4 ASPH. Leica D Vario-Elmar 14-50mm F3.8-5.6 ASPH. MEGA O.I.S. Leica D Vario-Elmar 14-150mm F3.5-5.6 ASPH. MEGA O.I.S.

●オリンパスのコントラストAF対応レンズ

  • ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6(ZD 14-42mm)
      (※ファームウェアVer.1.01以上が必要)
  • ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4-5.6(ZD 40-150mm)
      (※ファームウェアVer.1.01以上が必要)
  • ZUIKO DIGITAL 25mm F2.8(ZD 25mm F2.8)


ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6
ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4-5.6
ZUIKO DIGITAL 25mm F2.8

DMC-L10とE-420のコントラストAFが互換に

 DMC-L10は2007年9月、E-420は2008年3月に発表された。発表当初、どちらの機種も、コントラストAF対応レンズは自社製レンズのみとされていた。

 パナソニックとオリンパスでは、個々に独立してコントラストAFの高速化に努めてきたが、その手法は基本的に同じで、両社間のコントラストAFには互換性があるとの話も関係者から聞かれたが、公式な発表はなかった。

 2008年4月、E-420の発売と同時に、パナソニックとオリンパスから、両社のコントラストAFを相互利用するためのファームウェアが発表された。

 発表の内容をパナソニックとオリンパスに分けて整理すると、次のようになる。

●パナソニック
DMC-L10用ファームウェア Ver.1.3
 DMC-L10とオリンパス製レンズの組み合わせでコントラストAFを実現するためのファームウェア。ただし、対応するオリンパス製レンズはZD 14-42mm、ZD 40-150mm、ZD 25mm F2.8の3本のみ。またレンズ側のファームウェアが、ZD 14-42mmとZD 40-150mmはVer.1.2以上、ZD 25mm F2.8はVer.1.1以上に更新されている必要がある。

Summilux 25mm F1.4用ファームウェア Ver.2.0
 Summilux 25mm F1.4は、3月に発表されたファームウェアVer.2.0で、DMC-L10のコントラストAFに対応していた。このVer.2.0のままで、E-420のコントラストAFにも対応することが発表された。

●オリンパス
ZD 14-42mm用ファームウェア Ver.1.2
ZD 40-150mm用ファームウェア Ver.1.2
ZD 25mm F2.8用ファームウェア Ver.1.1
 いずれも、DMC-L10に装着した際にコントラストAFが可能になる。ただし、DMC-L10のファームウェアがVer.1.3以上である必要がある。

 このように、出荷時のファームウェアでも動作するのはE-420だけで、DMC-L10と対応レンズはファームウェアを更新する必要がある。

 なお、発表にはVario-Elmar 14-50mmとVario-Elmar 14-150mmがE-420で利用できるかどうかが含まれていないが、17日に更新されたオリンパスのWebサイト上のQ&A( http://digital-faq.olympus.co.jp/faq/1028/app/servlet/qadoc?DI102262 )では、Vario-Elmar 14-50mmとVario-Elmar 14-150mmが出荷時のファームウェアのまま、E-420のコントラストAFが利用可能であると記載されている。

 というわけで、DMC-L10、E-420と計6本のコントラストAF対応レンズについては、互換性が維持された。


ファームウェア更新後の動作を確認

 では、ファームウェア更新前と更新後の動作を、DMC-L10とE-420で見てみよう。


DMC-L10+ZD 28mm F2.8
●DMC-L10
 DMC-L10とオリンパス製レンズでコントラストAFを使う場合は、DMC-L10もレンズもファームウェアを更新する必要がある。対応バージョンはDMC-L10がVer.1.3以上、ZD 14-42mmとZD 40-150mmがVer.1.2以上、ZD 28mm F2.8がVer.1.1以上となる。

 ここではDMC-L10をVer.1.3に更新し、レンズはZD 14-42mmを用意。ZD 14-42mmはVer.1.0(コントラストAF非対応)、Ver.1.1(オリンパスのコントラストAFのみ対応)、Ver.1.2(DMC-L10のコントラストAFにも対応)の3つのバージョンを揃え、動作の違いを見てみた。

 DMC-L10でのライブビュー中にAFモードボタン(十字ボタンの左)を押すと、コントラストAF対応レンズなら「顔認識」、「マルチ」などのAFモードを選択できる。しかし非対応レンズを装着しているとこれらの選択肢は表示されず、光学ファインダー使用時の位相差AFと同様に、3つの測距点のどれを使うかを選択することになる。

 Ver.1.0の場合は、AFモードボタンを押しても、位相差AFと同じ選択肢しか表示されないが、Ver.1.2ではちゃんとコントラストAFの選択肢が表示され、顔認識も動作した。


DMC-L10でボディとレンズのファームウェアのバージョンを確認したところ。ボディVer.1.3以上、ZD 14-42mmはVer.1.2以上である必要がある
Ver.1.2のZD 14-42mmを装着したDMC-L10でライブビューしたところ。顔検出モードになっているため、顔を追尾している

DMC-L10でのコントラストAFに対応していると、ライブビュー中のAFモード選択メニューが表示される。写真はマルチエリアAFを選んだところ Ver.1.0、つまりDMC-L10でもE-420でもコントラストAFに対応していないバージョンのZD 14-42mmを装着すると、ライブビュー中でも位相差AFと同じ3点のフォーカスポイントが表示される

 興味深いのは、オリンパスのコントラストAFにしか対応していないはずのVer.1.1が、DMC-L10でもコントラストAFが動作し、顔認識も動作したことだ。両社のコントラストAFが基本的に同じものとわかる興味深い現象だが、関係者によれば、コントラストAFのためのチューニングは、レンズの微細な要素が影響するため、徹底した検証が必要になるという。Ver.1.2はこうした検証がなされたファームウェアとして公式にリリースされたものなので、Ver.1.2に更新しておくことは、やはり必要だろう。弊誌がVer.1.1での動作を確認したのは限られた条件下であって、実際の撮影状況で不具合が出ないとは限らない。

 ZD 25mm F2.8の場合も、オリンパスのみ対応のVer.1.0でもコントラストAFが動作したが、同様の理由でVer.1.1へ更新したほうがよいだろう。

 DMC-L10は大ぶりなボディとしっかりしたグリップを持つカメラだが、パンケーキレンズのZD 25mm F2.8との組み合わせでは非常にコンパクトなカメラとなる。パナソニックのレンズはいずれも大柄なので、ZD 25mm F2.8に限らず、コンパクトで安価なオリンパス製レンズをフルに活用できるのは実に魅力的だ。


E-420+Vario-Elmar 14-150mm
●E-420
 E-420では、ボディのファームウェアは出荷時のままで、パナソニック製とオリンパス製のレンズでコントラストAFを使える。

 また、パナソニックのレンズで更新が必要なのはVario-Elmar 25mm F1.4をVer.2.0以上にするのみで、Vario-Elmar 14-50mmとVario-Elmar 14-150mmはそのままE-420でのコントラストAFが使える。

 なお、オリンパス製のZD 14-42mm/ZD 40-150mmは、ファームウェアがVer.1.1以上でないとコントラストAFに対応しない。E-410などと同時に購入したZD 14-42mm/ZD 40-150mmのユーザーは、ファームウェアのバージョンに注意しておきたい。

 E-420にコントラストAF対応レンズを装着してライブビューを行なうと、ライブビュー画面に「I-AF」(イメージャAF)アイコンが表示される。測距点は光学ファインダー使用時の3点から11点になる。

 Vario-Elmar 14-50mmとVario-Elmar 14-150mm、さらにファームウェアを更新したSummilux 25mm F1.4でも、これらが表示され、11点AFや顔検出機能が使える。

 E-420ユーザーとしてうれしいのは、Vario-Elmar 14-50mmとVario-Elmar 14-150mmのレンズシフト式手ブレ補正が使えることだろう。使えるのはモード1(常時補正)のみで、レリーズ時のみ補正のモード2や流し撮り用のモード3は使えないとはいえ、顔をカメラの支持に使えないライブビュー時にこそ手ブレ補正は重宝する。Summilux 25mm F1.4には手ブレ補正がないが、コントラストAF対応レンズ中最大口径のレンズとしてやはり魅力的である。


E-420とVario-Elmar 14-150mmのファームウェアのバージョンを確認したところ。どちらも出荷時のVer.1.0のままで動作する Vario-Elmar 14-150mmを装着したE-420でライブビューしたところ。右上に「I-AF」のアイコンが見え、顔を検出/追尾している

コントラストAF対応レンズでのライブビュー中なら、11点AFが使える これはコントラストAF非対応のレンズ(Ver.1.0のZD 14-42mm)を装着したところ。位相差AF同様の3点のフォーカスポイントが表示される。左上の顔のアイコンは顔検出がONになっていることを表す。もちろん非対応レンズでは顔は検出されないが、撮影画像の再生時には顔検出機能により顔をクローズアップするため、このアイコンが表示されているとか

ファームウェアのアップデートに問題

 このように、ファームウェアのバージョンにさえ注意していれば、DMC-L10でもE-420でも、何の問題もなくコントラストAFが使えることがわかった。

 注文があるとすれば、ファームウェアのアップデート方法が、オリンパスとパナソニックで互換性がないところだ。

 現在、両社のレンズのファームウェアを更新するには、それぞれのメーカー製のボディにレンズを装着してPCに接続し、それぞれのメーカーのWebサイトからダウンロードする必要がある。

 たとえば、E-420でSummilux 25mm F1.4が使いたいが、入手したレンズのファームウェアが古かった場合は、DMC-L10/DMC-L1といったパナソニック製ボディに装着してVer.2.0に更新しなければならない。更新可能なボディを持っていない場合は、サポート窓口で代行してくれるが、これには時間がかかる。

 これからコントラストAF対応レンズが増えれば、ファームウェアのバージョン確認や更新作業は頻繁に行なうことになるし、コントラストAF以外の機能向上だってありうる。メーカーごとに違うボディやソフトウェアを使わなければならないのは煩雑だ。また、現状ではシグマのレンズのファームウェア更新方法が公開されていないが、フォーサーズ内で更新方法が統一されれば、シグマレンズのアップデートによる機能向上の可能性もひらける。

 デジタル一眼専用として登場したフォーサーズ規格は、現在のところオリンパス、パナソニック、シグマの3社が参画している。製品が発売されてからまだ5年弱ながら、参画各社の製品を相互利用を可能にすることで、ラインナップを充実させている。ファームウェアの更新方法が統一されて、どのメーカーのボディでもすべてのレンズのファームウェアをアップデートできれば、よりレンズとボディの相互利用が容易になり、フォーサーズマウントの利便性が高まるのは明らかだ。

 なにはともあれ、こうしたフォーサーズのメリットが、コントラストAFでも維持されようとしているのは、ユーザーにとっては大きな福音といえる。レンズごとの特性を厳密に検証しなければならない以上、コントラストAF対応レンズが限られてしまうのはある程度仕方ないことだが、今後もコントラストAFをはじめさまざまな技術革新が陣営内で共有され、フォーサーズ・システムの可能性を広げていくよう願ってやまない。



URL
  パナソニックLUMIX DMC-L10関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2007/09/26/7096.html
  オリンパスE-420関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2008/03/14/8123.html

関連記事
パナソニック、DMC-L10とZUIKO DIGITALの組み合わせでコントラストAFを可能に(2008/04/17)
オリンパス、交換レンズ3本を「LUMIX DMC-L10」のコントラストAFに対応(2008/04/17)



本誌:田中 真一郎

2008/05/09 15:43
デジカメ Watch ホームページ
・記事の情報は執筆時または掲載時のものであり、現状では異なる可能性があります。
・記事の内容につき、個別にご回答することはいたしかねます。
・記事、写真、図表などの著作権は著作者に帰属します。無断転用・転載は著作権法違反となります。必要な場合はこのページ自身にリンクをお張りください。業務関係でご利用の場合は別途お問い合わせください。

Copyright (c) 2008 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.