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【新製品レビュー】富士フイルム「FinePix S8100fd」

~数多くのシーンに対応できる18倍ズームモデル
Reported by 小山 安博

 富士フイルムから登場した「FinePix S8100fd」(以下S8100fd)は、光学18倍ズームレンズという超望遠レンズを搭載したデジタルカメラだ。広角から望遠までどんなシーンにも対応できる懐の深いカメラに仕上がっている。

 撮像素子は1/2.3型の有効1,000万画素CCD。電源は単3電池4本。実勢価格は4万3,000円前後。


光学18倍の超高倍率ズームレンズ搭載

 S8100fdの最大の特徴は、なんといっても35mm判換算で焦点距離27~486mm相当、光学18倍という望遠レンズを搭載した点だ。最近は28mm相当の広角レンズ搭載カメラが増えているが、それよりもわずかに広い27mm相当のレンズを搭載しており、屋外だけでなく屋内での利用にも適している。逆にテレ端は486mm相当と並の望遠レンズ以上の画角を実現しているのでかなりのシーンで満足できるはずだ。ワイド端からテレ端までのズーミング速度も速く快適。





 ボディデザインは一般的なコンパクトデジカメとは異なり、しっかりとしたグリップを持つ一眼レフライクなもの。薄型のカードサイズのものとは一線を画す大きさだが、それでも500mm付近の一眼レフ用の望遠レンズと比べれば、比較にならないレベルのコンパクトさだ。

 18倍という高倍率ということで多少無理をしている感じは否めないが、ここまでのレンズを手軽に利用できるというメリットには代え難い魅力がある。ライバルとなりそうなオリンパスの「CAMEDIA SP-570UZ」が25mm~520mmの光学20倍ズームとちょっと及ばないものの、十分に使い勝手がいいレンズだ。

 最短撮影距離は通常時でワイド端は約70cm、テレ端で約1.5m、マクロでは同約10cm~、約1.2m~。特にテレマクロで約1.2mまで寄れるのはうれしいところ。ズーム位置が約60mmに固定されるが、スーパーマクロでは約1cmまで近寄れる。

 CCDシフト方式の手ブレ補正機能も搭載。S8100fdだと、一般的にはテレ端の場合で1/500秒ぐらいのシャッタースピードがないと手ブレしてしまうが、1/100秒を切っても手ブレが防げたので、望遠撮影時に威力を発揮する。

 グリップのしっかりした一眼ライクなボディデザインも、手ブレ防止に一役買っている。レンズも大きいので右手でグリップ、左手でレンズの下をしっかりと持てばだいぶ手ブレが抑えられるだろう。


一見するとデジタル一眼レフにも見えるがっしりしたボディ。レンズも大型で迫力があるが、その分構えやすく安定感がある

しっかりとしたグリップ。ズームレバーも使いやすい。この位置に顔検出、手ブレ補正の2つのボタンが配置されている


横から見たところ。左から電源オフ時、ワイド端、テレ端。これだけ伸びると大迫力


被写体を強調して撮れる「ねらい撮りズーム」

 新機能としては「ねらい撮りズーム」機能を搭載。これは液晶モニター上にガイドフレームを表示して枠内に被写体を起き、被写体の周辺の状況を確認しながら撮影できるという機能で、実際に記録されるのはガイドフレーム内の被写体だけになる。実質的にはデジタルズームとなり、記録画像はそのときの画像サイズまで拡大される。

 ガイドフレームは4種類(縦横いずれも1.4倍、2倍の2種類)の中から選べ、カメラを横位置に構えたまま縦位置として記録することもでき、撮影中に十字キーの上を押すだけで気軽に使える。デジタルズームは画像を拡大保存するため画質が悪化するというデメリットがあり、最近は画像サイズを拡大しない擬似的な光学ズームが主流になっているが、S8100fdではそんなデジタルズームの新たな使い方を提案している。

 手軽に使えて便利なのだが、個人的には、拡大せずにそのまま切り取る形で保存してくれた方がうれしかった。1,000万画素もあるので、多少のリサイズは大きな問題とならないし、画質も犠牲にならないからだ。


ねらい撮りズームのガイドフレーム。横1.4倍

こちらは縦2倍


 同様の機能では「ズームアップ3枚撮り」機能も搭載。これは、一度のシャッターで「等倍・1.4倍・2倍」の3段階の画像を記録するというもの。ズームアップ3枚撮りはモードダイヤルに配置されており、選択すると画面上に1.4倍と2倍の枠が表示される。十字ボタン上で縦位置撮影への切り替えも可能。ねらい撮りズームとは異なり画像の拡大処理は行われない。そのため等倍で1,000万画素の場合、画像サイズは1.4倍で500万画素、2倍で300万画素となる。

 便利なのは、顔検出機能の「顔キレイナビ」を使っていると、検出した顔を中心に枠が移動するため、顔の拡大画像が簡単に撮影できるという点。拡大率を選択できないので、たとえば顔のアップ、バストアップ、全身といったような使い分けには対応しないが、撮影時の構図に悩まずに手軽に撮影できる。ただ、撮影後に10秒近い保存時間がかかってしまうのは残念な点だ。


顔検出やマニュアル撮影に対応

 顔検出機能の「顔キレイナビ」はハードウェアベースで高速に、10人までの顔を検出できる。顔にピントが合うのでピントの中抜けなどが防止でき、逆光時などの露出が最適化されるほか、ストロボ時の赤目を自動補正してくれる。前述の通りズームアップ3枚撮りでも活用される。

 再生時には顔キレイナビボタンを押すと顔の部分を拡大して表示してくれる。複数の人物が写っていると、ボタンを押すたびに顔の部分を拡大してくれる。顔の部分を拡大してトリミングしたり、顔を拡大しながらスライドショー再生したりといった機能も備える。

 ただ、ズームアップ3枚撮りをのぞけば、こうした機能は従来から富士フイルムのカメラには搭載されており、決して目新しい部分ではない。たとえば「FinePix F100fd」のように、顔検出範囲が360度に拡大したり、顔に合わせたホワイトバランスの調整といった機能は搭載されていない。

 また、最近のデジカメでは顔検出後に笑顔をとらえてシャッターを自動で切るといった機能を搭載した例も増えているし、F100fdのように広ダイナミックレンジを実現したりといった機能も搭載されていないので、ちょっと物足りないところではある。


F-モードでは基本的にISO感度をよく使うだろう

同じようによく使いそうなホワイトバランスは撮影メニュー内にある


 とはいえ、撮影機能は充実している。P/S/A/Mのマニュアル撮影モードを備え、シャッタースピードや絞りを自由に変更して撮影できるほか、13種類のシーンポジションに加えて高感度・高速シャッターに自動設定する「ブレ軽減」、高感度でストロボなしの撮影をする「ナチュラルフォトモード」、1回のシャッターで「ナチュラルフォト」とiフラッシュ撮影の2枚を撮影する「高感度2枚撮り」というおなじみの機能をモードダイヤルに配置する。前モデルではダイヤルにシーンポジションが2つ配置されているが、1つは「ズームアップ3枚撮り」に変更されている。

 撮影時は「F-モード」ボタンを押すことでISO感度、画像サイズ、FinePixカラーの変更ができる。ただし、マニュアル撮影モード以外ではISO感度は変更できない。それ以外の撮影設定は十字キー中央のMENUボタンを押す。


ISO6400での撮影に対応

 メニューボタンからはセルフタイマーやホワイトバランス、シャープネスといった設定が可能。十字キーには上にねらい撮りズーム、左にマクロ、下に連写モード、右にストロボ設定が割り当てられている。本体上部には顔キレイナビボタンとブレ防止ボタンが配置されている。

 マニュアル撮影をする場合は、露出補正ボタンを押し、それから十字キー上下左右でシャッタースピードや絞り、露出補正を行う。この辺りの動作はコンパクトデジカメとしては一般的なもの。

 ISO感度はISO6400まで選択できるが、ISO3200以上だと画素数が500万画素に限定される。ISO1600以上はかなり無理のあるレベルで、ブログに貼り付けるレベルであれば、明るく撮影できるので許容できる場合もあるかもしれないが、一般的には使いどころが難しい。ISO400ぐらいまでが常用域だろうか。

 ISO200からすでにノイズは出始め、ISO400からは色の変化も大きくなる。ISO800以降になると強いノイズ低減の影響でかなり厳しい感じ。ISO1600のブツブツよりも、ISO3200の方が塗り絵のような写りだが、縮小すれば印象はいい。ただ、カラーバランスの崩れが気にかかる。少なくともISO1600以上は緊急避難用だろう

 再生時には、最大で1画面に100コマのサムネイルを表示できる「マイクロサムネイル機能」が便利。カーソルのある画像を少し拡大して表示し、1コマずつのサムネイルは小さいが想像以上に目当ての画像が探しやすい。カーソルの移動もなめらか。


そのほか、撮影中に前3コマの撮影画像を表示することもできる。構図を微妙に変えながら撮影する場合などに便利

ずらっと並ぶサムネイルが爽快なマイクロサムネイル機能


まとめ

乾電池を利用できるのはいざというときに便利

 バッテリーは単3電池×4で、アルカリ乾電池で約300枚、ニッケル水素電池では約500枚の電池寿命(いずれもCIPA規格)ということだが、実際のバッテリーの持ちも悪くなく、1~2日程度の撮影であればほとんど問題とはならないだろう。手に入りやすいアルカリ乾電池でも300枚という長寿命はうれしい。

 記録媒体は約58MBの内蔵メモリ、xDピクチャーカード、SDHC/SDメモリーカード。最近、FinePixはSDHC/SDメモリーカードにも対応を広げてきており、この辺りはユーザーメリット的にも悪くはないだろう。

 S8100fdは、光学18倍ズームレンズ搭載というのが最大の特徴だが、その使い勝手は想像以上。これ1台でさまざまなシーンに対応できるのがうれしいところ。大きさは確かに大きいので、ポケットに入れて気軽に持ち歩くというのは難しいが、これまでのカードサイズデジカメではとても撮影できなかったシーンにも対応できるのが強みだ。

 これ1台ですべてのシーンを撮影するのもいいが、デジタル一眼レフの望遠側のサブとするなど、プラス1のカメラとして使うのも便利だろう。


 

●作例

  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 作例下の撮影データは、記録解像度(ピクセル)/露出モード/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離/FinePixカラーを表します。
  • 強調のため一部の項目を1行目に抜粋した場合もあります。


ズームアップ3枚撮り

 1回のシャッターで、等倍・1.4倍・2倍の3パターンを撮影する機能。望遠になるほど記録解像度が減少するが、デジタルズームと違って輪郭が緩くならない。


等倍
3,648×2,736 / プログラムオート / 1/280秒 / F2.8 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 4.7mm / F-スタンダード
1.4倍
2,592×1,944 / プログラムオート / 1/280秒 / F2.8 / 0EV / ISO64 / WB:オート / ― / F-スタンダード

2,048×1,536 / プログラムオート / 1/280秒 / F2.8 / 0EV / ISO64 / WB:オート / ― / F-スタンダード

ISO感度


ISO64
3,648×2,736 / 絞り優先AE / 1/6秒 / F5 / 0EV / WB:オート / 13mm / F-スタンダード
ISO100
3,648×2,736 / 絞り優先AE / 1/10秒 / F5 / 0EV / WB:オート / 13mm / F-スタンダード

ISO200
3,648×2,736 / 絞り優先AE / 1/20秒 / F5 / 0EV / WB:オート / 13mm / F-スタンダード
ISO400
3,648×2,736 / 絞り優先AE / 1/45秒 / F5 / 0EV / WB:オート / 13mm / F-スタンダード

ISO800
3,648×2,736 / 絞り優先AE / 1/90秒 / F5 / 0EV / WB:オート / 13mm / F-スタンダード
ISO1600
3,648×2,736 / 絞り優先AE / 1/170秒 / F5 / 0EV / WB:オート / 13mm / F-スタンダード

ISO3200
2,592×1,944 / 絞り優先AE / 1/320秒 / F5 / 0EV / WB:オート / 13mm / F-スタンダード
ISO6400
2,592×1,944 / 絞り優先AE / 1/680秒 / F5 / 0EV / WB:オート / 13mm / F-スタンダード

FinePixカラー


F-スタンダード
3,648×2,736 / 絞り優先AE / 1/9秒 / F4 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 13mm
F-クローム
3,648×2,736 / 絞り優先AE / 1/9秒 / F4 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 13mm

F-B&W
3,648×2,736 / 絞り優先AE / 1/10秒 / F4 / 0EV / ISO64 / WB:― / 13mm

一般作例


2,736×3,648 / 絞り優先AE / 1/550秒 / F4.5 / +0.3EV / ISO100 / WB:オート / 84.2mm / F-スタンダード 2,736×3,648 / 絞り優先AE / 1/340秒 / F6.3 / 0EV / ISO800 / WB:オート / 84.2mm / F-スタンダード

2,736×3,648 / ブレ軽減 / 1/320秒 / F4.5 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 84.2mm / F-スタンダード 2,736×3,648 / 絞り優先AE / 1/240秒 / F4.5 / +0.3EV / ISO64 / WB:オート / 36.9mm / F-スタンダード

2,736×3,648 / 絞り優先AE / 1/150秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 4.7mm / F-スタンダード 2,736×3,648 / 絞り優先AE / 1/640秒 / F4.5 / 0EV / ISO100 / WBオート: / 84.2mm / F-スタンダード

3,648×2,736 / 絞り優先AE / 1/170秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 84.2mm / F-スタンダード 3,648×2,736 / 絞り優先AE / 1/680秒 / F3.5 / +0.3EV / ISO100 / WB:オート / 9.8mm / F-スタンダード

3,648×2,736 / 絞り優先AE / 1/400秒 / F4.5 / +0.3EV / ISO64 / WB:オート / 9.8mm / F-スタンダード 3,648×2,736 / 絞り優先AE / 1/1300秒 / F4.5 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 18.6mm / F-スタンダード


2,736×3,648 / ブレ軽減 / 1/110秒 / F4 / 0EV / ISO800 / WB:オート / 13.8mm / F-スタンダード

2,736×3,648 / 絞り優先AE / 1/480秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 9mm / F-スタンダード


3,648×2,736 / 花の接写 / 1/340秒 / F5 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 84.2mm / ―

3,648×2,736 / 絞り優先AE / 1/480秒 / F4.5 / +0.3EV / ISO64 / WB:オート / 22.9mm / F-スタンダード


3,648×2,736 / 絞り優先AE / 1/340秒 / F8 / +0.7EV / ISO200 / WB:オート / 84.2mm / F-スタンダード

2,736×3,648 / 絞り優先AE / 1/350秒 / F4.5 / +0.3EV / ISO64 / WB:オート / 4.7mm / F-スタンダード



URL
  富士フイルム
  http://www.fujifilm.co.jp/
  製品情報
  http://fujifilm.jp/personal/digitalcamera/finepixs8100fd/

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小山 安博
某インターネット媒体の編集者からライターに転身。無節操な興味に従ってデジカメ、ケータイ、音楽プレーヤー、コンピュータセキュリティなどといったジャンルをつまみ食い。軽くて小さいものにむやみに愛情を感じるタイプ。デジカメ、音楽プレーヤー、PC……たいてい何か新しいものを欲しがっている。

2008/05/07 00:04
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