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【特別企画】オリンパス「E-3」で撮る雪景色

Reported by 吉住 志穂

ED 12-60mm F2.8-4 SWD / 3,648×2,736 / 1/100秒 / F8 / +1.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 21mm




E-3とZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4 SWD
 花のクローズアップをメインの被写体としている私ですが、毎年冬は、山間の雪景色を撮りに行くことにしています。花が少なくなる季節だからですが、それだけではありません。白と黒だけになる独特の世界、色が省略される非日常な雰囲気に惹かれるからです。

 「雪景色を撮る」というと、過酷な雪山に登山するようなイメージがありますが、私が良く行くのは山間にある観光地です。スキー場が併設されているところなら冬でも交通の便が良く、バスが走っているなら、道路は朝から除雪されているのが普通でしょう。食事をとる場所もあり、携帯電話もつながりやすく、宿泊施設も豊富。そんな場所でも、撮影は充分に楽しめます。もちろん、奥深く山に分け入って初めて撮れる景色もありますが、まずは入門として、スキー場付近がおすすめです。


 私が今回行ったのは、裏磐梯、日光、志賀高原。季節を問わず美しい場所ですが、冬もまた素晴らしい。そしてたっぷりと積もった雪が楽しめます。

 もちろん、防寒対策はしっかりと。標高が高くなると気温が下がります。今回も昼間なのに-12度まで下がりました。また、天候が悪くなったときは、素直に撮影をあきらめることも大切なことです。

 では、私が良く撮るシーンと被写体を解説しましょう。ちなみに、今回のカメラはオリンパスE-3です。レンズはZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4 SWDを中心に、ZUIKO DIGITAL ED 35-100mm F2を使いました。

※作例のリンク先は、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
※作例下のデータはレンズ / 画像サイズ(ピクセル) / シャッター速度 / 絞り / 露出補正値 / 感度 / ホワイトバランス / 焦点距離です。すべて分割測光で撮影しています。






露出補正+1EVが基本

 その前に、基本テクニックを少し解説します。ご存知の通り、カメラ内の露出計は、白や黒を18%グレーに近づけようとします。最近の多分割測光は、いろんなシーンでかなり精度が高くなっていますが、雪景色を白く撮るには、やはりプラス側への露出補正が必要です。

 E-3の場合は+1EV補正を基本に、シーンに合わせて微調整をかけました。ヒストグラム表示を見ながら、白トビしないように露出補正を細かく変更します。といっても、わずかな部分の白トビを気にすると、今度は見せたい白が出なくて、グレーっぽくなります。あまり神経質にならない方がよいでしょう。

 また、E-3には階調メニューに「オート」があり、暗い部分を明るくしてくれます。これを使うと、輝度差のあるシーンに効果的なのですが、白と黒を対比で見せたい雪景色においては、階調「標準」の方がさまになることが多かったです。あまり難しく考えず、暗部がつぶれて困るようなシーンで使ってみる程度でしょうか。

 E-3の階調オートは、他社のダイナミックレンジを圧縮する機能と違い、露出(特にシャッター速度)も変わります。どちらかというと従来機種にもあった「ハイキー」、「ローキー」の仲間といってよいでしょう。


階調:ローキー
ED 12-60mm F2.8-4 SWD / 3,648×2,736 / 1/400秒 / F8 / +1EV / ISO100 / WB:曇天 / 21mm
階調:ハイキー
ED 12-60mm F2.8-4 SWD / 3,648×2,736 / 1/200秒 / F8 / +1EV / ISO100 / WB:曇天 / 21mm

階調:標準
ED 12-60mm F2.8-4 SWD / 3,648×2,736 / 1/320秒 / F8 / +1EV / ISO100 / WB:曇天 / 21mm
階調:オート
ED 12-60mm F2.8-4 SWD / 3,648×2,736 / 1/320秒 / F8 / +1EV / ISO100 / WB:曇天 / 21mm

 ホワイトバランスは、太陽光かオートに合わせます。雪を純白にしたいならオート。太陽光だと青みがきつくなり、寒々しい雰囲気が得られます。ただし、太陽の出方によって変わるので、ケースバイケースです。

 E-3の太陽光は少し青みが強く、どちらかというと今回はオートを多用しました。雪景色の写真は、わずかな雪の色の変化で雰囲気ががらりと変わるので、とりあえずRAWで撮影し、あとで微調整するのも手でしょう。


WB:晴天
ED 12-60mm F2.8-4 SWD / 3,648×2,736 / 1/1.3秒 / F8 / +0.7EV / ISO100 / 46mm
WB:オート
ED 12-60mm F2.8-4 SWD / 3,648×2,736 / 1/1.3秒 / F8 / +0.7EV / ISO100 / 46mm




霧氷

 さて、雪山だからといって、雪がつもっている様を撮るだけではもったいない。私が良く撮るのが霧氷です。霧氷とは、凍り付いた水分が氷点下の木々の枝などについた状態。枝に雪が積もった状態とはひと味違い、冬の木々が凛として見えます。

 霧氷は気温が上がると溶けてしまうので、なるべく手早く撮りたいもの。日が昇ってきたら、徐々に高い標高に移動するのが良いでしょう。


ED 35-100mm F2 / 3,648×2,736 / 1/160秒 / F8 / +1EV / ISO100 / WB:オート / 86mm ED 35-100mm F2 / 3,648×2,736 / 1/100秒 / F8 / +1.7EV / ISO100 / WB:オート / 83mm

ED 12-60mm F2.8-4 SWD / 3,648×2,736 / 1/60秒 / F8 / +1.3EV / ISO100 / WB:オート / 60mm ED 12-60mm F2.8-4 SWD / 3,648×2,736 / 1/100秒 / F8 / +1EV / ISO100 / WB:オート / 26mm

 晴天はもちろん、撮り方によっては曇りでも絵になるのもポイントです。晴天では青空をバックに枝振りを見せる。あるいは、逆光でキラキラ輝くのを撮るのもきれいでおすすめです。

 曇りでは望遠レンズで背景をボカし、冬化粧した枝の美しさを切り取ってみてください。


ED 35-100mm F2 / 3,648×2,736 / 1/640秒 / F2.8 / +1.3EV / ISO100 / WB:オート / 100mm





小川

 小川と雪の取り合わせも、私が良く探して撮る被写体です。黒い川面と雪のコントラストが美しく、水で溶けた雪の不思議な造形も趣があります。ただし、ダイナミックレンジが必要とされるシーンなので、少し前のデジタルカメラでは、見たままを再現するのは少々難しかったものです。

 撮像面積が狭いE-3ですが、フォーサーズにしては白トビしにくく、コントラストを保ったまま川の黒さも出ています。もちろん、まだフィルムにはかないませんが、条件が良ければ満足いく絵が撮れると思います。


ED 35-100mm F2 / 3,648×2,736 / 1/8秒 / F11 / +0.7EV / ISO100 / WB:オート / 35mm(階調:オート) ED 12-60mm F2.8-4 SWD / 3,648×2,736 / 1/60秒 / F11 / +1.3EV / ISO100 / WB:オート / 60mm

ED 35-100mm F2 / 3,648×2,736 / 1/5秒 / F5.6 / +1.3EV / ISO100 / WB:オート / 86mm ED 35-100mm F2 / 3,648×2,736 / 1.3秒 / F11 / +0.7EV / ISO100 / WB:オート / 100mm




シルエット

 雪山を歩いていると、雪の上に伸びる面白い形の影に出会うことがあります。小川と同じように白と黒の対比といえる被写体です。雪に伸びる木々などの影も興味深いもので、ついつい撮ってしまいます。

 影が黒いといっても、雪の上だとグレーに近いので、小川ほど白トビや黒ツブレに悩むことはないはずです。むしろ重要なのはアングル。雪面のうねりと組み合わせるなど、ユニークな造形を探し出して見てください。


ED 35-100mm F2 / 3,648×2,736 / 1/250秒 / F11 / +1.3EV / ISO100 / WB:オート / 48mm ED 12-60mm F2.8-4 SWD / 3,648×2,736 / 1/30秒 / F11 / +1.7EV / ISO100 / WB:晴天 / 32mm

ED 12-60mm F2.8-4 SWD / 3,648×2,736 / 1/200秒 / F8 / +1EV / ISO100 / WB:オート / 32mm ED 12-60mm F2.8-4 SWD / 3,648×2,736 / 1/200秒 / F8 / +1EV / ISO100 / WB:オート / 32mm




夕焼け

 夕方になると雪が赤く染まり、幻想的な風景になります。木々のシルエットも濃くなり、ドラマチックなシーンが期待できます。

 撮影は、通常の夕景と同じです。JPEGで撮るなら、ホワイトバランスを太陽光や曇りにして、赤みを強調できます。


ED 12-60mm F2.8-4 SWD / 3,648×2,736 / 1/50秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:曇天 / 30mm ED 12-60mm F2.8-4 SWD / 3,648×2,736 / 1/200秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:曇天 / 49mm

ED 12-60mm F2.8-4 SWD / 3,648×2,736 / 1/15秒 / F11 / 0EV / ISO100 / WB:曇天 / 23mm ED 35-100mm F2 / 3,648×2,736 / 1/400秒 / F8 / -1EV / ISO100 / WB:日陰 / 100mm




そのほか

 ほかにも、ストロボを発光させて降る雪を写したり、つららをマクロレンズで撮るなど、雪景色ならではの被写体と撮り方がいろいろあります。薄い雪雲に覆われてうっすらと輝く、白っぽい太陽も冬らしい光景といえるでしょう。

 というわけで皆さんも、スキーや温泉など雪の多い場所に行く機会があれば、お手軽な雪景色の撮影にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。くれぐれも、防寒対策と天候には気をつけてください。


ED 35-100mm F2 / 3,648×2,736 / 1/1,000秒 / F2.8 / +1.3EV / ISO100 / WB:オート / 100mm ED 12-60mm F2.8-4 SWD / 3,648×2,736 / 1/1,600秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 60mm(階調:ローキー)

ED 12-60mm F2.8-4 SWD / 3,648×2,736 / 1/10秒 / F8 / 1.3EV / ISO100 / WB:オート / 60mm ED 12-60mm F2.8-4 SWD / 3,648×2,736 / 1/6秒 / F11 / +0.7EV / ISO100 / WB:オート / 60mm

ED 12-60mm F2.8-4 SWD / 3,648×2,736 / 1/60秒 / F3.4 / +1EV / ISO100 / WB:オート / 24mm(内蔵ストロボ発光)




E-3について

 何といってもボディとレンズが防滴なのは安心感があります。ボディ上面に雪が積もるような状況でも、また気温が-12度まで下がっても、動作が不安定になることはありませんでした。バッテリーは、常温より3分の1ほど減りが早い気がします。E-3に限らず、雪山では予備バッテリーは必須でしょう。ポケットに入れておくと少しは持ちが良くなります。

 フォーサーズということで、ダイナミックレンジの狭さが心配でしたが、E-410よりも白側が広がっている印象で、それほど白トビに悩まされることはありませんでした。

 また、ライブビューとフリーアングル液晶モニターの組み合わせは抜群で、真上を見上げるような撮り方でも首に負担がかかりません。本来は三脚と組み合わせて使うのがベストなのでしょうが、手ブレ補正の効きが良いのと、位相差AFで撮影までが速くなったので、手持ちでも結構使えます。

 気になったのは、露出補正ボタンなど、よく使う操作のボタンが小さく、手がかじかむと操作しにくいところ。また、液晶モニターがフリーアングルなのは良いのですが、雪山で太陽を背にしていると薄くなって見づらくなります。E-3の液晶モニターは、周囲の明るさに合わせて輝度を自動的に変える機能がありますが、雪山では自分で明るさ+2などに設定した方が良いかもしれません(バッテリーの持ちは少なくなります)。

 あと、ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4 SWDの使いやすさは特筆ものです。雪が降っているといくら防滴でもレンズ交換はできないので、よく使う焦点域をカバーするズームレンズが活躍します。画質も良く、E-3を使うならおすすめです。



URL
  オリンパス
  http://www.olympus.co.jp/
  製品情報(E-3)
  http://olympus-imaging.jp/product/dslr/e3/
  オリンパスE-3関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2007/10/18/7222.html
  オリンパスE-3関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2007/10/18/7222.html



吉住 志穂
(よしずみ しほ)1979年東京生まれ。日本写真芸術専門学校卒業後、竹内敏信事務所に入社。 2005年4月に独立。自然の「こころ」をテーマに、花や風景の作品を撮り続けている。「デジタルフォト」や「日本フォトコンテスト」で連載中。日本自然科学写真協会(SSP)会員。http://www.geocities.jp/shihoyoshizumi/

2008/01/31 00:00
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