デジカメ Watch

【新製品レビュー】オリンパス「μ830」

~顔検出が機能アップした5倍ズームコンパクト
Reported by 飯塚直

 オリンパスの「μ830」は、4月に発売された「μ780」を機能強化したモデル。光学5倍ズームレンズや生活防水機能はそのままに、新機能「フェイス&バックコントロール」などを搭載した800万画素機だ。実勢価格は4万円前後。

 いまやコンパクトデジタルカメラを選ぶ際のポイントにもなる「顔検出」機能の有無。従来機のμ780では「顔検出逆光補正機能」と呼ばれる「顔にピントを合わせて露出をコントロールする」機能だったが、μ830になり被写体と背景を総合処理する「フェイス&バックコントロール」となった。また、μ780では検出した顔を追いかけるフレームがなく、iESPの測距枠を流用していたが、μ830では他社モデルと同じく顔の位置にあわせて枠が表示されて顔に追随するなど、より使い勝手と精度が向上している。


5倍ズームと手ブレ補正機構を搭載

 Arc(円弧)とWedge(クサビ形)で構成された「Arc&Wedge」というデザインコンセプトが同じため、外観は従来機のμ780とほとんど変わらない。ボタンの大きさなど多少の差異は見受けられるが、特徴的なスタイリングはそのままだ。本体サイズ99.6×24×55.1mm(幅×奥行き×高さ)、重量125gともにμ780と同じだ。

 また、μシリーズの特徴であるJIS保護等級4相当(いかなる方向から水の飛沫を受けても、有害な影響を受けない)の生活防水機能も継承しており、多少の水なら濡れることを気にせずに撮影できるという、洗練された使い勝手には変わりがない。





 機能面では、35mm判換算時で36~180mmの光学5倍ズームレンズ、画像処理エンジン「TruePic III」、CCDシフト式の光学手ブレ補正機構と高感度撮影による手ブレ/被写体ブレを軽減させる「DUAL IS」などを継承している。一般的なコンパクトデジタルカメラのズームレンズが光学3倍程度なのに対し、μ830は光学5倍。3倍では気にならない手ブレも望遠側にシフトするにしたがって目立ってくる。しかし、μ830はCCDシフト式の光学手ブレ補正機構を搭載しており、手ブレを軽減させることが可能だ。

 大きく変わったのはCCDだ。μ780が1/2.33型で有効画素710万だったのに対し、μ830は1/2.35型の有効800万画素になった。搭載された画像処理エンジンのTruePic IIIハ、デジタル一眼レフカメラ「Eシステム」の画像処理エンジンと同名のもの。μ780から引き続き搭載され、処理速度の向上やノイズ低減などを担当している。

 μ830のISO感度は、AUTO時で64~800、マニュアルでは、ISO64/100/200/400/800/1600から設定できる。ISO1600での撮影は、フル解像度でも可能だ。実際に試した感じでは、ISO400からノイズが目立ちはじめ、ISO800だと解像感が乏しくなった。突発的な暗所撮影以外はISO400以下に抑えておきたい。

 ただ、撮影可能枚数がCIPA規格で250枚から200枚に減っているのが気になるところだ。

 液晶モニターは2.5型(ハイパークリスタル液晶)。170度の広視野角を実現しており、明るい環境での視認性も良好。また、最近のμシリーズでおなじみとなった「ブライトキャプチャー」機能を搭載しており、低照度環境でも被写体を明るく映し出すことができ、構図を決めるのにも快適だ。約23万画素と高精細なので、撮影画像の拡大チェックも実用に堪えられる。

 「デジタルカメラに搭載された液晶モニターは、キレイすぎてPCに取り込んだときにガッカリする」という話をよく聞く。μ830も例に漏れず、液晶モニターのコントラストが高く、実際に撮った写真以上にキレイに見えてしまう。カメラだけで完結する場合にはそれで十分だが、PCに保存する場合にはモニターの輝度を下げるなどして、実際の画像に近づけても良いだろう。筆者が試用したμ830では、輝度-1ぐらいがちょうどよい気がした。


レンズは36~180mm相当(35mm判換算)。望遠よりの光学5倍ズームだ
生活防水だけあって、バッテリー&記録メディア室の蓋にもシーリングが施されている

顔以外にも使える「顔検出パーフェクトショット」

 μ830のAF方式は「iESP」、「スポット」、「顔検出」の3つ。ちなみに検出数は最大3人までだ。10人以上の顔を検出できるものもあるが、集合写真などで使わない限り3人程度の検出で十分だろう。被写体の動きに合わせてAF枠が追従するので、例えば家族の場合、相手の動きを邪魔せず、さりげなく撮れそうだ。

 メニューからAF方式「顔検出」を設定できるのは、撮影モードをP(プログラムオート)に設定したときとSCN(シーンモード)の一部。また、AUTOを含めた多くの撮影モードでは、背面右下の消去ボタンを押すと「顔検出パーフェクトショット機能」のオン/オフメニューが現れる。これをオンにすると、顔検出AFに固定される。


撮影メニュートップ画面
AF方式は撮影メニューから選ぶ

背面右下が「顔検出パーフェクトショット/削除ボタン」。これを押すと……
顔検出と背景を含めた暗部を持ち上げる「顔検出パーフェクトショット」のオン/オフが選べる

 さらに顔検出パーフェクトショットにするとシーン全体の明るさが最適化される。新開発の「シャドー・アジャストメント・テクノロジー」をベースとした技術で、具体的には影などの暗部が明るくなり、暗い部分のディテールがはっきりする。そのため、特に逆光での撮影に威力を発揮する。顔検出AFと合わせて使うことで、背景を含めた顔(上)から体(下)まで、適正な露出で撮影できるというわけだ。顔検出AF精度の向上や美肌など、徹底して顔に注力する他社に対して、顔検出パーフェクトショットはオリンパスの撮影に対する姿勢ともいえる。

 ちなみに被写体が人物でない場合、顔検出パーフェクトショットは意味がないのかというとそうではない。シャドー・アジャストメント・テクノロジーによって暗部が明るく撮影できるという特性があるため、例えば逆光で撮った建物もディテールを補うことができる。影を残して雰囲気を活かす場合はオフ、メイン被写体の特徴をしっかり記録したいときはオンにするなどの使い分けが可能だ。


ユニークな「比較ウィンドウ」

 μ830はオリンパス製品のラインナップの中で、いわゆる手軽さと高画質を両立するメインストリーム製品だが、シャッタースピードや絞りを自分でコントロールすることはできない。いわゆる「押すだけ」で撮影できるオート主体の製品だ。そしてそれを象徴しているのが「比較ウインドウ」と呼ばれる機能。従来機のμ780では「パーフェクトショットプレビュー」と呼ばれていた機能でもある。

 モードダイヤルを「GUIDE」に設定すると、ガイド撮影画面が表示される。その中に「1 撮影効果を比較して設定する」という項目がある。これが「比較ウインドウ」で、撮影シーンを画面で確認しながら撮影イメージにある設定を選ぶという機能だ。選べる項目は、「ズーム」、「露出」、「色合い」、「測光」などで、たとえば「色合い」であれば「AUTO」、「太陽光」、「曇り」を4分割のスルー画でリアルタイムに確認できる。

 ちなみに露出補正だけは、モードダイヤルを「GUIDE」にしなくても、撮影中に十字ボタンの上を押せば比較ウィンドウを表示できる。また、 比較ウインドウは再生モードでも利用できる。「編集」項目のひとつ「カラー編集」では、モノクロ、セピアなどを比較しながら、色合いの変更が行なえる。


比較ウィンドウを使うには「ガイド撮影」メニューから「1」を選ぶ
比較ウィンドウの例(露出補正)

比較ウィンドウの例(色合い)
比較ウィンドウの例(測光方式)

 ホワイトバランスやISO感度の設定は、撮影メニューからだけでなく、OK/FUNCボタンを押して表示されるファンクションメニューから設定可能。独立したボタンではないためダイレクトに設定が変更できるわけではないが、必要な項目が1画面に集中しているのがありがたい。

 ボディ上部に備えた電源ボタンやシャッターボタンは少々小さく、男性の手だと深く押し込む必要がある。背面のメニューボタン、再生ボタン、十字ボタンなどは程よくクリック感があり、操作性は良好。

 気になったのが、設定項目の決定とキャンセル操作だ。たとえば、メニューボタンを押して表示されるメイン画面から撮影メニューに入るとする。その後、ホワイトバランスやAF方式を変更して、素早く撮影に戻りたいのに、わざわざメニューボタン(戻る)を押す必要があるのだ。誤操作防止という観点ではわかりやすいメニュー構造なのだが、シャッターチャンスを逃さないという意味でも、シャッターボタンの半押しなどで撮影状態に戻れればなぁと思う。


まとめ

 オリンパスのコンパクトデジタルカメラ共通の特徴として「スーパーマクロモード」の搭載が挙げられる。レンズ位置が固定され、ストロボを発光させることができなくなるが、被写体に最短3cmまで近づいて撮影できるというものだ。

 今回は作例として蝶を撮ったが、ここまで近づくことができるのは正直、驚いた。スーパーマクロモードで撮影した画像を拡大すると、驚きが感動に変わる。解像感は損なわれず、肉眼では見ることのできない画を映し出せるのだ。背景のボケも落ち着いており、ピントの合った部分はシャープで、それ以外は全体的にやわらかい印象になる。

 光学5倍ズームレンズ、CCDシフト式の手ブレ補正機構、高感度撮影、生活防水、フェイス&バックコントロールなど、シーンを選ばずオールマイティに活躍できるカメラだ。スピード面とコスト面で見劣りするxDピクチャーカードを記録メディアに採用しているのが残念だが、高速連写を望まなければ問題ない。スーパーマクロモードにより、気軽にマクロの世界を味わえるメリットも大きい。さまざまなシーンで積極的に使えるカメラだ。


ファンクションメニューには、そのとき設定可能な機能を1画面に集約
マクロモードのひとつとして、最短3cmまで寄れるスーパーマクロモードも選べる

作例

  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 作例下の撮影データは、記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。
  • 強調のため一部の項目を1行目に抜粋した場合もあります。


◆画角変化


広角端
3,264×2,448 / 1/400秒 / F3.3 / +0.7EV / ISO64 / WB:オート / 6.4mm
望遠端
3,264×2,448 / 1/125秒 / F5 / +0.3EV / ISO64 / WB:オート / 32mm

広角端
3,264×2,448 / 1/200秒 / F3.3 / +0.3EV / ISO64 / WB:オート / 6.4mm
望遠端
3,264×2,448 / 1/100秒 / F5 / +0.3EV / ISO64 / WB:オート / 32mm

◆歪曲収差


広角端
3,264×2,448 / 1/4秒 / F3.3 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 6.4mm
望遠端
3,264×2,448 / 1/2秒 / F5 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 32mm

◆ISO感度


ISO64
3,264×2,448 / 1/320秒 / F3.3 / +0.7EV / WB:オート / 6.4mm
ISO100
3,264×2,448 / 1/500秒 / F3.3 / +0.7EV / WB:オート / 6.4mm

ISO200
3,264×2,448 / 1/1,000秒 / F3.3 / +0.7EV / WB:オート / 6.4mm
ISO400
3,264×2,448 / 1/800秒 / F5 / +0.7EV / WB:オート / 6.4mm

ISO800
3,264×2,448 / 1/1,600秒 / F5 / +0.7EV / WB:オート / 6.4mm
ISO1600
3,264×2,448 / 1/2,000秒 / F5 / +0.7EV / WB:オート / 6.4mm

◆スーパーマクロ


3,264×2,448 / 1/160秒 / F3.3 / +0.7EV / ISO64 / WB:オート / 6.4mm 3,264×2,448 / 1/25秒 / F3.3 / +0.7EV / ISO64 / WB:オート / 6.4mm

◆一般作例


3,264×2,448 / 1/1,000秒 / F5.6 / +0.7EV / ISO64 / WB:オート / 7.92mm 3,264×2,448 / 1/320秒 / F3.3 / +0.7EV / ISO64 / WB:オート / 6.4mm

3,264×2,448 / 1/640秒 / F5 / +0.7EV / ISO64 / WB:オート / 6.4mm 3,264×2,448 / 1/400秒 / F3.3 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 6.4mm

3,264×2,448 / 1/500秒 / F3.3 / +0.7EV / ISO64 / WB:オート / 6.4mm 3,264×2,448 / 1/320秒 / F3.3 / -0.7EV / ISO64 / WB:オート / 6.4mm

3,264×2,448 / 1/400秒 / F3.3 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 6.4mm 3,264×2,448 / 1/10秒 / F3.3 / -0.7EV / ISO64 / WB:オート / 6.4mm

3,264×2,448 / 1/1,250秒 / F5 / -1EV / ISO64 / WB:オート / 6.4mm


URL
  オリンパス
  http://www.olympus.co.jp/
  製品情報
  http://olympus-imaging.jp/product/compact/mju830/

関連記事
オリンパス、5倍ズームの生活防水モデル「μ830」(2007/09/06)



飯塚直
(いいづか なお)パソコン誌&カメラ誌を中心に編集・執筆活動を行なうフリーランスエディター。DTP誌出身ということもあり、商業用途で使われる大判プリンタから家庭用のインクジェット複合機までの幅広いプリンタ群、スキャナ、デジタルカメラなどのイメージング機器を得意とする。

2007/10/25 01:15
デジカメ Watch ホームページ
・記事の情報は執筆時または掲載時のものであり、現状では異なる可能性があります。
・記事の内容につき、個別にご回答することはいたしかねます。
・記事、写真、図表などの著作権は著作者に帰属します。無断転用・転載は著作権法違反となります。必要な場合はこのページ自身にリンクをお張りください。業務関係でご利用の場合は別途お問い合わせください。

Copyright (c) 2007 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.