デジカメ Watch

【特別企画】「ほぼAdobe RGB対応」ディスプレイを試す

Reported by 本誌:折本 幸治

 デジタル一眼レフカメラの色域として標準採用の感がある「Adobe RGB」。しかし、その色域をフルに表示できるディスプレイは種類が少なく、高価な業務用モデルに限られているのが現状だ。そんな中、今年は「NTSC比92%」など、色域の広さを売りにする液晶ディスプレイがいくつか登場している。完全にAdobe RGBをカバーしているわけではないが、Adobe RGBフル対応の業務用モデルが70万円近くすることを考えると、価格も6万5,800円~18万円弱と値ごろ感がある。

 そこで本稿では、広色域を謳う4社4製品の24.1型(または24型)ワイドモデルをとりあげてみた。これらは同じ液晶パネルを採用していると見られ、いずれも解像度1,920×1,200ピクセル、コントラスト比約92~97%、視野角160~178度と共通スペックが多い。色域だけでなく、写真鑑賞やレタッチ作業に充分なスペックを持つといえるだろう。


アイ・オー・データ機器「LCD-MF241X」。NTSC比92%
デル「2407WFP-HC」。NTSC比92%

ナナオ「ColorEdge CG240W」。NTSC比92%、Adoobe RGB比96% 三菱電機「RDT241W」。NTSC比92%

 注意したいのが、色域のカバー率を表す表記だ。今回とり上げた製品のうち、製品情報ページなどにおいて4モデルが「NTSC比92%」、2モデルが「Adobe RGB比96%」を公称している(アイ・オー・データのナナオのColorEdge CG241Wが両規格の数値を公表)。NTSCはアナログテレビの走査線などを規定した規格として知られる。PC周辺機器が準拠するsRGBよりその色域はかなり広く、カバー範囲はAdobe RGBと幾分似かよっている。ただし、プロット図を見比べればわかる通り、完全に同一とはいいきれない。NTSCでのカバー率を持って「=Adobe RGB」ではないことに留意いただきたい。

●[参考]3規格の色域の違い

※デジタルカメラ向けの画像表示ビューア「DPEx」(Ver.1.51)の「ヒストグラム・プロット表示」を利用


Adobe RGB
NTSC sRGB(D65)

 今回は各機種ごとに、ICCプロファイルから得たプロット図を用意してみた。ICCプロファイルは、DVI-Dで接続したときにMac OS Xで選択できるプロファイルのうち、液晶ディスプレイの型名と同じものを使用。OS標準の「ColorSyncユーリティ」で生成したプロット図を掲載している。

 あわせて、Spyder2でキャリブレーションした結果も同様のプロット図として掲載した。キャリブレーションの設定は、6,500Kに指定したほかは、輝度を含めてデフォルトだ。結局1モデルをのぞき、標準添付のICCプロファイルとの差は少なかった。

 なお、広色域モデルとの比較として、NECの24.1型ワイド「LCD2490WUXi」も記事末に加えている。参考になれば幸いだ。


アイ・オー・データ機器「LCD-MF241X」

  • 標準価格:14万4,900円
  • 発売時期:8月上旬
  • サイズ:24.1型ワイド
  • 解像度:1,920×1,200ピクセル
  • 色域カバー率:NTSC比92%
  • 本体色:ナチュラルホワイト、マットブラック



左からUSBアップストリーム、S映像(上段)、コンポジット(下段)、アナログ音声(上下段)、D5(上段)、アナログ音声(下段)、D-Sub15ピン(アナログRGB)、DVI-D、HDMI×2

側面にUSBダウンストリームを3ポート搭載 OSD例(映像) OSD例(その他)

遮光フードを別売で用意 リモコン

 今回の4製品の中で、最もAV系の入力が充実したモデル。HDMI×2、D5×1を備えるほか、リモコンも標準装備。PC用ディスプレイとしての用途に加え、プライベートルームのフルHD対応AVディスプレイとしても活躍することだろう。HDMI端子の搭載は、今回とり上げるもでるでは唯一。HDMIケーブル2本が付属する。PC入力としては、HDCP対応のDVI-D端子、アナログRGB(D-sub15ピン)を各1系統装備。

 特筆すべきは、オプションに遮光フード「DA-SH241」(6,615円)が用意されていること。折りたたみ式の簡素なものだが、内部に反射を防ぐフロッキ―加工を施し、キャリブレーターの使用を前提とした上面の開閉式小窓を備えるなど、使い勝手は良い。使わないときは畳んでしまえるのも特徴だ。AV用途だけでなく、写真やDTP分野への利用を想定しており、同社としては珍しい試みという。また、USBアップストリームを利用したシステムアップデート機能を搭載しているのもディスプレイ製品として珍しい。

 この種の製品としてはOSDがグラフィカルで、設定はわかりやすい。ただし、タッチ式の操作系には慣れが必要な印象を受けた。とはいえ、入力の切替など頻繁に行なう操作はリモコンでまかなえるので、最初の設定以外に困ることはないだろう。さらに同Windows用ソフト「ディスプレイマネージャー2V」を使うと、画質設定や子画面の位置などをマウスで指定して保存できる。デスクトップ分割などが行なえるWindows Vistaのサイドバーガジェットも同梱する。

 写真表示の品質は今回試した製品すべてに通じるもので、飽和手前の高い彩度も表現。特に赤系の再現がすごい。ColorSyncユーティリティで確認した標準のICCプロファイルは控えめな色域だが、キャリブレーション後はほかの3モデルに近いプロット図になった。


標準のICCプロファイル(背景白線はAdobe RGB、以下同) キャリブレーション後

デル「2407WFP-HC」

  • 標準価格:6万5,800円
  • 発売時期:6月19日
  • サイズ:24型ワイド
  • 解像度:1,920×1,200ピクセル
  • 色域カバー率:NTSC比92%




左からUSB(ダウンストリーム)、USB(アップストリーム)、コンポーネント、S映像、コンポジット、アナログRGB、DVI-D

OSD例

 広色域対応パネルとHDCP対応DVI-D入力を装備、しかも発表時の10万8,000円から価格が下がり、現在6万5,800円という低価格になっている。ディスプレイ部を縦に90度回転させてのピボット表示も可能だ。回転は予想以上に軽い力で行なえた。サムネイルを主ディスプレイ、拡大表示をサブディスプレイに出力するApertureなどのアプリケーションで、積極的に活用できそうだ。

 側面にUSB接続のカードリーダーを備えるのも特徴。CF、SDメモリーカード、MMC、スマートメディア、メモリースティックなどに対応する。また、この製品もGUIに凝っており、左右に並ぶアイコンから階層をたどる方式を採用する。PC入力時の画質モードは「PCモード」と「MACモード」しかなく、そこから「MAC標準」、「MAC青系」、「MACユーザーカラー」など4種類から選択するおおざっぱなもの。しかし、キャリブレーション後、OS上でプロファイルを設定すれば問題ないだろう。

 画質もほかの3モデルと同様のレベルにあり、写真表示に十分使える品質を持つ。キャリブレーション後の色調は3機種と類似。価格と機能を考えると大変お買い得なディスプレイといえるだろう。


標準添付のICCプロファイル
キャリブレーション後

ナナオ「ColorEdge CG241W」

  • 標準価格:18万8,790円
  • 発売時期:6月29日
  • サイズ:24.1型ワイド
  • 解像度:1,920×1,200ピクセル
  • 色域カバー率:NTSC比92%、Adobe RGB比96%




AV入力は一切ない代わり、DVI-Iを2系統備える

OSD例

遮光フードを標準で同梱

 グラフィック・DTP向けで定評あるColorEdgeシリーズの最新モデル。従来のワイドモデルは民生向けを意識した「CE」だったが、今回から型名にプロ用と同じ「CG」を冠する。

 インターフェイスはDVI-I×2。HDCP対応となっている。2台のPCを常時接続して、特別な装置なしに切り替えられるのは便利だ。金属製の遮光フードも同梱。また、ボット表示が可能で、2407WFP-HCと同じく写真の縦位置表示も行なえる。ただし本体の重量があるためか、回転させるのはたやすくない。

 階調特性を1台ごとに調整してから出荷するなど、ColorEdgeらしい画質面へのこだわりは健在。資金に余裕があるなら、2面同時購入も視野に入れたい。16bit処理ルックアップテーブルの採用や、ムラを低減する「デジタルユニフォミティ回路」も備えている。ハードウェアキャリブレーションに対応し、専用キャリブレーションソフトが付属。また、センサー付きモデル(20万9,790円)も用意する本格派だ。

 画質傾向はほかの3モデルと良く似ているが、RGBの各ゲインやRGBCMY各6色を調整できたりと、細かい調整関連も特徴。フロントパネルでの操作性も良く、一見して造りが良く、価格に見合った高級感を有している。


標準添付のICCプロファイル
キャリブレーション後

三菱電機「RDT241W」

  • 標準価格:オープンプライス(実勢10万円前後)
  • 発売時期:6月25日
  • サイズ:24.1型ワイド
  • 解像度:1,920×1,200ピクセル
  • 色域カバー率:NTSC比92%



入力はデジタルとアナログ各1系統とシンプル

OSD例
OSD例

 10万円を切る低価格ながら、NTSC比92%を実現したモデル。AV入力を廃し、HCDP対応DVI-DとアナログRGB(D-sub15ピン)のみというシンプルなインターフェイスを採用する。

 最近では珍しく、組み立て式のスタンドはネジ止めが必要。組み立て後は軽量ながらしっかりしており、上15度だけでなく、下5度へも可動するチルト機構が上下2面のデュアルディスプレイ構成で結構便利だ。このモデルだけ視野角が178度でなく160度となっているが、目測ではほとんどほかのモデルと変わりはなかった。

 画質はほかの3モデルと同じ傾向。デフォルトのシャープネスがきつめなので、デジタル接続なら適宜調整した方が良い結果になった。また、デフォルトの輝度が低めなので、キャリブレーション時にある程度上げた方が上手く行く。価格も安く、余計なAV入力を必要としないシンプルなモデルが好みなら、アマチュア写真ファンの強力な選択肢になるだろう。


標準添付のICCプロファイル
Spyder2でキャリブレーション後

[参考]NEC「LCD2490WUXi」

  • 標準価格:18万6,900円
  • 発売時期:5月25日
  • サイズ:24.1型ワイド
  • 解像度:1,920×1,200ピクセル
  • 色域カバー率: 非公開
  • 本体色:ブラック、ホワイト



左からS映像、DVI-D、DVI-I、D-sub15ピン(アナログRGB)

 12bitルックアップテーブル、ムラ補正、専用キャリブレーションソフトの同梱など、「プロフェッショナル向け」を謳う兄貴分の25.5型ワイドモデルとほぼ同等の機能を持つ。色域の広さをアピールした製品ではないが、定評ある製品なので、参考までに掲載する。

 ICCプロファイルを表示させると、上記4モデルとははっきりと異なるプロット図が得られた。特に緑と青方向にはっきりと差が出ているのがわかる。しかし、実際の写真表示は問題なく、むしろキャリブレーション後の白の階調や色味については、本機が最もピュアで嫌みがなく感じられた。ただしこの感想は、これまで広色域のディスプレイで長時間の作業をしたことがない、筆者個人の印象であることをお断りしておく。


標準添付のICCプロファイル キャリブレーション後

まとめ

 広色域を謳う4モデルは同種のパネルを採用していると見られ、いずれも色調はほぼ同等。表示する写真によっては細かいところでわずかな差が感じられるが、筆者にはその差があまり大きく感じられなかった。

 4モデルを独断で選評するなら、シンプルな外観と価格の安さを求めるならRDT241W、ゴージャスなAV入力をとるならLCD-MF241Xといったところだろうか。また、RDT241W以上のコストパフォーマンスを持つ2407WFP-HCの魅力も強烈だ。表示品質などへの信頼感を重視するなら、出荷時調整を行なうColorEdge CG240が一番に感じられる。いずれにしても、広色域かつ高解像度の製品が相次いで投入されたことは喜ばしく、今後の製品展開にも期待したい。

主な仕様
機種名 LCD-MF241X 2407WFP-HC ColorEdge
CG241W
RDT241W
メーカー名 アイ・オー デル ナナオ 三菱電機
(直販)価格 14万4,900円 6万5,800円 17万9,800円 10万円前後
パネルサイズ 24.1型ワイド 24型ワイド 24.1型ワイド 24.1型ワイド
NTSC比 約92% 約92% 約92% 約92%
解像度 1,920×1,200 1,920×1,200 1,920×1,200 1,920×1,200
最大輝度 400cd平方m 400cd平方m 300cd平方m 400cd平方m
コントラスト比 1,000:1 1,000:1 850:1 900:1
視野角
(上下左右)
178度 178度 178度 160度
PC入力 DVI-D(HDCP)×1
D-Sub15ピン×1
DVI-D(HDCP)×1
D-Sub15ピン×1
DVI-I(HDCP)×2 DVI-D(HDCP)×1
D-Sub15ピン×1
ビデオ入力 HDMI×2
D5×1
Sビデオ×1
コンポジット×1
コンポーネント×1
Sビデオ×1
コンポジット×1
566mm 559.7mm 566mm 567.2mm
奥行き 228mm 195mm 230mm 252.5mm
高さ 418~488mm 387.9~584.7mm 456~538mm 394.8~484.8mm



URL
  製品情報(アイ・オー・データ機器LCD-MF241X)
  http://www.iodata.jp/prod/display/lcd/2007/lcd-mf241x/
  製品情報(デル2407WFP-HC)
  http://www1.jp.dell.com/content/products/compare.aspx/monitors_24_30?c=jp&cs=jpdhs1&l=ja&s=dhs
  製品情報(ナナオCG241W)
  http://www.eizo.co.jp/products/ce/cg241w/
  製品情報(三菱電機RDT241W)
  http://www.mitsubishielectric.co.jp/home/display/product/rdt241w/
  製品情報(NEC LCD2490WUXi)
  http://www.nec-display.com/products/display/model/lcd2490wuxi/

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本誌:折本 幸治

2007/08/31 10:27
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