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【伊達淳一のデジタルでいこう!】キヤノンEOS-1D Mark III(高感度・高速連写編)

Reported by 伊達 淳一

 キヤノンEOS-1D Mark III(以降、1DMK3)は、10枚/秒の高速連写が可能な史上最速のデジイチ(デジタル一眼レフ)だ。撮像素子はAPS-Hサイズ(28.1×18.1mm)の1,010万画素CMOSセンサーで、最新の画像処理エンジンDiGIC IIIを2基搭載し、並列処理を行なうことで、JPEG Largeで約110枚という驚きの高速連続撮影を実現。最高感度はISO3200で、カスタムファンクション設定時にはISO6400相当の超高感度撮影が行なえるのが特徴だ。

 また、AFシステムも一新され、19点クロス+26点アシストの新エリアAFを搭載。背面の液晶モニターは広視野角(上下左右140度)で3型(23万画素)と大きく見やすくなり、ライブビュー撮影も可能になっている。操作性も一から見直され、これまでのように“ボタンを押したままサブ電子ダイヤルを回してパラメータを選択し、ボタンから指を離して決定”という、コダックのデジイチが採用していた独特な操作から、EOS 5DやEOS 30Dのように取扱説明書を読まなくても直感的にわかる操作法に改められている。

 さらに、電源ON/OFF時に赤外吸収ガラスを超音波振動させ、撮像素子に付着したゴミやホコリをふるい落とす「セルフクリーニングセンサーユニット」も搭載。シャッターユニットやボディキャップにゴミが発生しにくい部材を使用するなど、内部からゴミを出さないようにすると同時に、赤外吸収ガラスに帯電防止処理を施し、静電気でゴミを吸い寄せないようにするなど、“ゴミを出さない、付けない、残さない”といった総合的なダスト対策が施されている。


電源ON/OFF時に赤外吸収ガラスを超音波振動させて、付着したゴミやホコリをふるい落とす「セルフクリーニングセンサーユニット」を搭載。メニューから「今すぐクリーニング」を実行した場合には、シャッターユニットにゴミが再付着しないよう、空シャッターを切る動作が3回繰り返される。ゴミを吸着する粘着シートは下部にあるので、カメラボディをまっすぐにしてクリーニング動作させるのが鉄則だ
セルフクリーニングセンサーユニットが動作しているときに液晶モニターに表示されるアニメーション。電源ON時にすぐにシャッターボタンを半押しすると、クリーニング動作を中止し、即座に撮影スタンバイ状態になるので、クリーニング動作が原因でシャッターチャンスを逃す心配はない

ICチップ内蔵のリチウムイオンバッテリーになり、バッテリーの残量や劣化度、バッテリーを交換してからの撮影枚数が詳細にチェックできる。また、従来よりもバッテリーが軽量コンパクトになっているにもかかわらず、撮影可能枚数は倍以上に増えている。撮影スタイルや使用するレンズによっても異なるが、1日の撮影で予備バッテリーが必要になることはまずないはずだ
 電源もリチウムイオンバッテリーに変更され、従来のEOS-1Dシリーズに採用されているニッケル水素バッテリーよりも小型・軽量・長寿命になっている。バッテリーにはICチップが内蔵されていて、バッテリーの残量を1%単位で確認できるほか、撮影回数や劣化度も把握できるのが特徴だ。

 とまあ、これが1DMK3の簡単な特徴だが、1DMK3を詳細にレビューしていくと一冊の本が書けてしまう。実際、「キヤノンEOS-1D Mark IIIスーパーブック」(学習研究社刊)という100ページ弱のムックを書いたのだが(さりげなく宣伝)、これでもまだ書き足らない部分があるくらいだ。いわゆる機能の説明や紹介、使いこなし術はこうしたムックやほかのレビューに任せるとして、この「デジタルでいこう!」では、「高感度・高速連写編」と「AF編」の2回に分けて、1DMK3の真の実力を探っていこうと思う。


高感度

1DMK3のCMOSセンサー
 さて、前述の「キヤノンEOS-1D Mark IIIスーパーブック」(しつこく宣伝)を執筆するために3月から1DMK3(試作機)を試用し続けてきたが、1DMK3のイチバンの魅力は、秒10枚の高速連写はもちろんのこと、ISO1600が常用できるほどの高感度画質の良さだ。撮像素子サイズを変えずに画素数がアップしているにもかかわらず、連写スピードは8.5枚/秒から10枚/秒へと向上し、高感度画質も良くなっているのだから、まさに理想の高画素化だ。

 ちなみに、1DMK3の撮像素子の画素ピッチは7.2μmで、従来のEOS-1D Mark II N(1DMK2N)の8.2μmよりも狭くなっているので、光を受け止めるフォトダイオードの面積も狭くなっている。しかし、光をフォトダイオードに集めるオンチップマイクロレンズの隙間(ギャップ)を狭め、マイクロレンズの口径を大きくすることで、画素ピッチが狭くなったことによる受光効率の低下を回避している。

 また、オンチップノイズ除去回路や新型の出力アンプを採用することで、アナログ段階で混入するノイズを徹底的に低減。画素ごとの出力のバラツキを補正すると同時に、信号を読み出してから早い段階で信号を増幅して送り出すことで、途中で混入するノイズの比率を小さくしている。ノイズが混入してから増幅するとノイズまで増幅されるので、ノイズが入る前にある程度信号を増幅してから送り出そうというわけだ。

 さらに、最新の画像処理エンジンDiGIC IIIによるノイズリダクションも行なわれている。デフォルトでは、カスタムファンクションの「高感度撮影時のノイズ低減」は“しない”になっているので、必要最低限のノイズリダクションしか行なわれず、ISO800以上の高感度ではそれなりにノイズが浮いてくる。1DMK2Nや5D、30Dといった従来のEOSデジタルと比べると、シャドー部のカラーノイズが少なくなり、特にグリーンのカラーノイズだけが突出しなくなっているので、決して嫌みなノイズではないものの、ピクセル等倍で鑑賞する人にとっては、ISO1600が常用できる範囲かどうかは微妙なところだろう。

 しかし、「高感度撮影時のノイズ低減」を“する”に設定すると、カラーノイズがほとんど消え、カラーチャートや背景のグレーなど濃淡の変化が少ないベタ部分が非常にスッキリとした仕上がりになる。輝度ノイズは強引に除去していないので、解像感を大きく低下させることもなく、人形の顔の細かな布目もしっかり残っている。シャドー部ほど輝度ノイズが目立つので、ローキーな絵柄だとISO1600は許容範囲外になるかもしれないが、全体に濃度が明るめのカットであれば、ISO2500で撮影しても十分使えるレベルだ。

 またISO50は、カスタムファンクションの「ISO制御範囲の設定」の下限値を変更しないと設定できないようになっているが、ISO50とISO100のカットを見比べると、ピンクの人形の帽子の明るい部分がISO50だと白トビしかけている。ISO100に比べるとISO50はダイナミックレンジが狭く、2/3EV近く白トビ限界が早い。だから、デフォルトでは、ISO50が設定できないようになっているのだ。


デフォルトの状態で設定できる感度はISO100~3200。ISO50相当のLとISO6400相当のHを設定できるようにするには、カスタムファンクションの「ISO感度の制御範囲の設定」でそれぞれ上限値と下限値を変更する必要がある
カスタムファンクションの「高感度撮影時のノイズ低減」を“する”に設定すると、カラーノイズが大幅に低減され、スッキリとした仕上がりになる。ただし、連続撮影枚数が激減するという副作用もある

※作例のリンク先のファイルは撮影した画像です。クリックすると、等倍の画像を別ウィンドウで開きます。

※高感度画質のチェックポイントについては下記のリンク先をご覧ください。
高感度画質のチェックポイントはココ!


●ISO感度によるノイズ変化



ISO50(L) ISO50(L)

ISO100 ISO100

ISO200
ISO200

ISO400
ISO400

ISO800 ISO800

ISO1600
ISO1600

ISO3200
ISO3200

ISO6400(H)
ISO6400(H)

白トビ限界を広げる高輝度側・階調優先

ハイライトの白トビ限界を約1EV広げる「高輝度側・階調優先」。高感度撮影時のノイズ低減と同様、カスタムファンクションで設定する。高輝度側・階調優先時には、設定できるISO感度がISO200~3200に制限される
 ところで、ダイナミックレンジといえば、1DMK3には「高輝度側・階調優先」というカスタムファンクションがあり、これを“する”に設定すると、通常よりもハイライト側のダイナミックレンジが広がり、白トビしにくくなる。内部でどのような処理が行なわれているのかをキヤノンに聞いても「秘密です」ということで何も教えてはくれないが、要はハイライトをトバさないように1段アンダーの露出(たとえば実効感度がISO100なのにISO200として露出を決める)で撮影し、暗くなってしまった中間調からシャドー部をトーンカーブ補正で持ち上げる、といったようなことを行なっているものと思われる。

 ちなみに、高輝度側・階調優先を“する”に設定すると、ISO感度の設定範囲がISO200~3200に制限されるのも、前述の推論にピッタリ当てはまる仕様。また、通常撮影時よりも、低輝度部(シャドー部)のノイズが若干増えることがある、とも書かれており、中間調からシャドー部の階調を明るめに持ち上げているとすれば、“さもありなん”とうなずける。

 通常撮影時と高輝度側・階調優先時で階調再現特性がどのように変化するかを調べてみたが、18%グレーを基準に-4EVから+1.7EVまではどちらもまったく同じ特性で、+2EVを超える直前から高輝度側・階調優先のほうが軟調になってくる。そして、通常撮影時は+3.3EVで白トビに至るのに対し、高輝度側・階調優先時には+4.3EVまで白トビしないで階調が残る。白のウエディングドレスや白鷺(コサギやダイサギなど)といった白トビしやすい被写体を撮影するときには、高輝度側・階調優先は非常に心強い機能だ。

 なお、高輝度側・階調優先時にシャドー部のノイズが若干増えることがある、と取扱説明書にはかかれているが、今回の比較テストでは特に大きな差異は見受けられなかった。これなら、高感度撮影時でも遠慮なく高輝度側・階調優先を“する”に設定しても支障はないと思う。

 それから、高輝度側・階調優先が“する”に設定されていると、ファインダーおよび上部液晶パネルのISO感度の数字のゼロが小さく表示される。たとえば通常撮影時は「ISO 400」と表示されるのに対し、高輝度側・階調優先時は「ISO 4oo」というようにゼロが小さく表示されるので、いちいちメニューボタンを押して設定を確認しなくても、一目で高輝度側・階調優先が“する”になっているのか“しない”になっているかが見分けられる。これは覚えておいて損はないTipsだ。こうした1DMK3のためになるTipsも「キヤノンEOS-1D MarkIIIスーパーブック」で紹介しているので、ぜひご一読あれ(ついに露骨に宣伝)。

●ISO感度によるノイズ変化(高輝度側・階調優先=する)



ISO200 ISO200

ISO400 ISO400

ISO800 ISO800

ISO1600 ISO1600

ISO3200 ISO3200

DPPによるノイズ緩和も使い勝手が向上

 EOSデジタルには「Digital Photo Professional(DPP)」というキヤノン純正のデジタル現像ソフトが付属している。カメラ(DiGIC)で生成されるJPEGと、RAWをDPPでデジタル現像したものとでは画像生成のアルゴリズムが違うため、仕上がり結果も微妙に異なっている。色や階調はほとんど同じだが、解像感というか精細感はDPPで現像したもののほうが上だ。ただし、DPPで現像するとノイズが目立つ。そうした声を受けてDPPには前バージョンからノイズ緩和機能が追加されているが、ツールメニューの環境設定で切り替える必要があり、カットごとにノイズ緩和の有無を指定できなかった。

 ところが1DMK3に付属するDPP Ver.3からは、ツールパレットに「NR」タブが設けられ、輝度ノイズと色(カラー)ノイズ緩和レベルをそれぞれ“強/弱/なし”の3段階に切り換えられるようになった。もちろん、カットごとにノイズ緩和レベルを調整し、一括して現像することも可能だ。これならノイズが気になる高感度でも、安心してRAWで撮影しDPPで現像できる。

●ISO感度によるノイズ変化(RAWをDPPでデジタル現像)



ISO50(L) ISO50(L)

ISO100 ISO100

ISO200 ISO200

ISO400 ISO400

ISO800 ISO800

ISO1600 ISO1600

ISO3200 ISO3200

ISO6400(H) ISO6400

【お詫びと訂正】記事初出時、[どちらも強]の作例がNRなしで現像されておりましたため、NRありで現像したものに差し替えました。お詫びして訂正させていただきます。

 また、JPEGで撮影した写真に対しても、色ノイズを緩和することができる。高速連写の項で改めて説明するが、高輝度側・階調優先=“する”に設定すると、連続撮影枚数が大幅に減ってしまうので、連続撮影枚数を求められる撮影では高輝度側・階調優先=“しない”に設定して撮影し、撮影したJPEGをDPPに読み込んで一括で色ノイズ緩和を行なうというのも手だ。

●ISO感度によるノイズ変化(JPEGをDPPで色ノイズ緩和=強)


ISO50 ISO100 ISO200

ISO400 ISO800 ISO1600

ISO3200 ISO6400

高速連写

 1DMK3のカタログには、“約10枚/秒の連続撮影”、“JPEG Largeで約110枚、ゆとりある連続撮影可能枚数”と書かれている。しかし、この高速連写性能を引き出すには、いくつかの条件を満たす必要があり、撮影条件やカメラ設定によっては、連写スピードが低下したり、連続撮影枚数がかなり少なくなるので注意が必要だ。

 まず、10枚/秒の連写スピードを得るには、絞り過ぎは禁物。というのも、通常、レンズの絞りは“開放”になっていて、シャッターが切れる直前に設定した絞り値まで絞り羽根を絞り込むという動作を行なっている。つまり、絞りを絞り込むほど、設定した絞り値になるのに時間がかかるわけだ。しかも、EFレンズの絞りは電磁駆動なので、レバーをメカ的に動かして絞り込むよりも時間がかかる。そのため、1DMK3の10枚/秒という連写スピードが引き出せるのは、開放絞りから2段絞ったときまでだ。それ以上絞ってしまうと、連写音を聞いただけであきらかに連写スピードが遅くなっているのがわかるほど。それと、当然のことながら、シャッタースピードが遅いときやAF合焦に手間取るときにも、10枚/秒の連写スピードは引き出せない。

 いっぽう、連続撮影枚数はさまざまな条件で変化する。カタログで謳われているように100枚以上途切れずJPEG連写するためには、以下のような条件を満たす必要がある。

(1)高感度撮影時のノイズ低減=“しない”
 デュアルDiGICIIIをもってしてもノイズ低減処理は非常に重い処理のようで、高感度撮影時のノイズ低減=“する”に設定しただけで、ファインダー右下の連続撮影枚数表示は14にまで落ち込んでしまう(実際にはもっと連続で撮れることもある)。

(2) ISO感度はISO640以下に
 感度を高く設定するにつれ、ファインダー右下の連続撮影枚数表示が減ってくるが、とくにISO640とISO800との間に大きな溝がある。ISO640だと連続撮影枚数は86もあるのに、1/3段だけ感度をアップしてISO800にしただけで38に激減する。ちなみに、高輝度側・階調優先=“する”に設定しているときには、ISO320とISO400の間で連続撮影枚数が大きく変化する。高感度撮影で連続撮影枚数を稼ぎたいときには、高度側・階調優先=“しない”に設定しよう。

(3)書き込み速度の速いメモリカードを使う
書き込み速度が遅いメモリカードを使うと、ファインダー右下に表示される連続撮影枚数よりも手前で連写が途絶えてしまうこともある。なかには読み出し速度を大きく表示し、高速メモリカードと謳っている製品もあるが、重要なのは書き込み速度だ。少なくともサンディスクのUltra IIクラス(最大9MB/秒)の書き込み速度を誇るメモリカードを用意しよう。特にSDHCメモリーカードはClass 6と表示されていてもかなり遅い製品が多いので要注意。266倍速クラスのCFをメインに、2GBの高速SDメモリーカードをサブとして、1DMK3のデュアルスロットに挿しておけば、CFがいっぱいになったときでも自動的にSDメモリーカードに切り替え、撮影を続行できる(記録機能を“自動切り換え”に設定時)。


 以上が、10枚/秒の高速連写と100枚以上の連続撮影枚数を確保するために、最低限知っておきたいポイントだが、必ずしも1,010万画素の画素数にこだわらないのであれば、記録画素数をM1やM2に落としたり、JPEG画質を8から5くらいに落としても、連続撮影枚数を増やすことができる。どうしても、高感度で高輝度側・階調優先を使って連続撮影枚数を稼ぎたいときは、記録画素数や圧縮率を落とすことも検討してみよう。


高速連写作例

・イルカとトレーナーのジャンプシーン(新江ノ島水族館で撮影)
 水面のどこからイルカ(というよりトレーナーの頭)が飛び出すかわからないが、1DMK3なら、AFが速く、レリーズタイムラグも短いので、水面が盛り上がり始めてからフレーミングを決め、連写し始めても十分間に合う。また、連写の最中もミラーがピタッと止まるので、被写体がクリアに見えるので、イルカやトレーナーの動きをファインダーで楽々と追える。

EF 70-200mm F4 L IS USM / マニュアル露出 / F5 / 1/1,600秒 / ISO400 / AWB / 高感度撮影時のノイズ低減=なし / 高輝度・階調優先=あり









・カワセミの水浴び(試作機で撮影)
 巣穴掘りで汚れたくちばしや身体を洗うため、水浴びするカワセミ。ファインダーをのぞきながらカワセミが動き始めた瞬間にシャッターを切っているつもりだが、どうしても人間側の反応が遅れるのと、カワセミの動きが速すぎるため、1枚目は完全に飛んでいるシーンしか撮れない。しかも、10枚/秒で連写しているとは思えないほど、動きが不連続にスカスカに見える

EF 100-400mm F4.5-5.6 L IS USM / マニュアル露出 / F8 / 1/3,200秒 / ISO2000 / AWB / 高感度撮影時のノイズ低減=あり / 高輝度・階調優先=なし / MFで置きピン






・巣から飛び立つアオゲラ
 近くの植物園で営巣していたアオゲラ。周りは木が茂っていて晴れていてもかなり暗め。アオゲラの動きをピタッと止めるには1/1,600秒くらいのシャッタースピードで撮影したいところだが、天気に恵まれた日でもISO2500で1/1,250秒を確保するのがやっと。日がかげり照り返しがなくなると、ISO3200でも1/500秒まで落ち込んでしまうようなシーンだ。しかも、アオゲラが巣に戻ってくるのは2~3時間に1回しかないので、そう何度もチャレンジはできない。ピントもアオゲラが飛び出すコースを予想して置きピンなので、一か八かの賭だ。で、やっと撮れたマシなカットがこれだが、さすがにISO3200ともなるとノイズが目立つので、DPPで現像するときにノイズ緩和をかけ、なおかつ出力画素数を抑えてピンボケとノイズを目立ちにくくしてみた。

シグマAPO 120-300mm F2.8 DG EX HSM / マニュアル露出 / F3.2 / 1/1,600秒 / ISO3200 / WB:マニュアル / 高感度撮影時のノイズ低減=あり / 高輝度・階調優先=なし / RAWをDPPで現像




 ボクがちょうどカワセミに興味を持ち始めた頃、グッドタイミングで1DMK3の試作機が手元に長期滞在することとなった。それから3カ月以上、1DMK3でカワセミや近所の野鳥を撮り続けてみたが、1DMK3の高感度画質の良さには本当に助けられた。これまで使ったことがないような大口径超望遠レンズを手持ち撮影できたのも、ISO800や1600がなんの躊躇もなく使える1DMK3の高感度画質の良さのおかげだ。

 もちろん、最良のキレを求めるなら感度はISO400くらいまででとどめておいたほうがいいが、その分、歩留まりは悪くなる。高原や森まで遠征し、十分な光量が確保できないシチュエーションで本格的に野鳥撮影に取り組んでいる人には笑われるような簡単なシーンでのお気軽鳥撮影ではあるが、それでも手ブレ、被写体ブレを防ぐためにISO1600~2500まで感度を上げざるを得なかったシーンも少なくない。

 実写作例にアオゲラの雛が巣立ちする一連のカット(巣立ちする直前にアオダイショウが巣穴に侵入するというハプニングも発生。一羽の雛は飛び出したものの地面に落下し、植物園の係員が保護。残りの雛は絶望視されたものの、雛が大きすぎたのか手ぶらでアオダイショウは退散。その後、母親がやってきて給餌しながら巣立ちを促すというシーンだ)があるが、この場所は木が生い茂っていて晴れていてもかなり暗い。しかも、被写体ブレも防ぐ必要があるので、三脚を使っていてもそうシャッタースピードを落とすことができないのだが、1DMK3の高感度画質を信じてISO1600~2500というこれまでならノイズまみれ必至の感度で撮影。背景が明るめということもあって、これがISO1600以上の高感度だとは思えないほどざらつきの少ない写真に仕上がっている。1DMK3さまさまだ。この1DMK3の高感度画質(特に高感度撮影時のノイズ低減=“する”時)を見てしまうと、EOS 5DやEOS 30DのISO1600の画質に大きな不満を感じるようになってしまった。5Dや30Dの後継機に一番期待すしているのは、1DMK3譲りの高感度画質の良さだ。


 10枚/秒の高速連写については、撮影する被写体によりけりだろう。通常のスナップ撮影には10コマ/秒の連写スピードは必要ないし、新江ノ島水族館で撮影したイルカとトレーナーのジャンプのようなシーンも10枚/秒もあれば十分過ぎるだろう。むしろ、10枚/秒の連写スピードそのものよりも、10枚/秒の高速連写を実現するために像消失時間が短くなっていることのほうが評価できる。

 いっぽう、野鳥撮影となると、10枚/秒でもまだまだ。8.5枚/秒の1DMK2Nに対して、明らかなアドバンテージがあるというと、その差は微妙だ。カワセミが水に飛び込むシーンやアオゲラが巣から飛び出したり戻ってくるシーンの撮影に挑戦してみたが、“これで本当に10枚/秒?”と首をかしげたくなるほど、動きと動きの間がスカスカなのだ。いかに鳥の動きが速いかを思い知らされた。そういう被写体に対しては、10枚/秒ではまだまだ不満。ミラーアップしてライブビュー状態でのMF撮影でも構わないので、15枚/秒くらいの高速連写はできないものだろうか。なんて、自分の腕の未熟さを棚に上げて、カメラのさらなる高性能化に期待していたりする(笑)。まあ、腕が未熟だから機材の性能に頼ってしまうんだけどね。(後編に続く)


実写作例(製品版)


※作例下の撮影データは、レンズ(実焦点距離)/撮影モード/シャッター速度/絞り/露出補正値/感度/ホワイトバランス/高輝度側・階調優先/高感度ノイズ低減/備考です。


EF 500mm F4L IS USM / 絞り優先AE / 1/2000秒 / F4 / 0EV / ISO400 / AWB / しない / しない
EF 500mm F4L IS USM / 絞り優先AE / 1/800秒 / F4 / 0EV / ISO400 / AWB / しない / しない

EF 300mm F4L IS USM / 絞り優先AE / 1/1250秒 / F5.6 / -0.3EV / ISO200 / AWB / する / しない EF 300mm F4L IS USM / 絞り優先AE / 1/250秒 / F5 / 0EV / ISO200 / AWB / する / しない EF 300mm F4L IS USM / 絞り優先AE / 1/3200秒 / F4.5 / 0EV / ISO400 / AWB / する / する

EF 500mm F4L IS USM / マニュアル露出 / 1/250秒 / F4 / 0EV / ISO1600 / 太陽光 / する / する
EF 300mm F4L IS USM / マニュアル露出 / 1/320秒 / F4 / 0EV / ISO1250 / 太陽光 / する / する

EF 500mm F4L IS USM + EF 14XII / マニュアル露出 / 1/100秒 / F5.6 / 0EV / ISO1600 / 太陽光 / する / する
EF 500mm F4L IS USM / マニュアル露出 / 1/250秒 / F4 / 0EV / ISO1600 / 太陽光 / する / する

EF 500mm F4L IS USM / マニュアル露出 / 1/320秒 / F4 / 0EV / ISO2500 / 太陽光 / する / する
EF 500mm F4L IS USM / マニュアル露出 / 1/320秒 / F4 / 0EV / ISO2500 / 太陽光 / する / する
EF 500mm F4L IS USM / マニュアル露出 / 1/320秒 / F4 / 0EV / ISO2500 / 太陽光 / する / する

EF 300mm F4L IS USM / 絞り優先AE / 1/320秒 / F4.5 / +0.3EV / ISO400 / 太陽光 / する / する
EF 300mm F4L IS USM / 絞り優先AE / 1/80秒 / F8 / 0EV / ISO500 / AWB / する / する

EF 300mm F4L IS USM / 絞り優先AE / 1/640秒 / F5.6 / -0.3EV / ISO500 / AWB / する / する
EF 300mm F4L IS USM / 絞り優先AE / 1/160秒 / F4.5 / 0EV / ISO320 / AWB / しない / しない

EF 300mm F4L IS USM / 絞り優先AE / 1/1600秒 / F4.5 / 0EV / ISO400 / AWB / する / しない

EF 24-105mm F4 IS USM (24mm) / 絞り優先AE / 1/320秒 / F8 / -0.3EV / ISO200 / AWB / する / する / ピクチャースタイル:風景 シグマ APO MACRO 150mm F2.8 EX DG HSM / 絞り優先AE / 1/125秒 / F4 / -0.3EV / ISO400 / AWB / しない / しない

シグマ APO MACRO 150mm F2.8 EX DG HSM / 絞り優先AE / 1/1250秒 / F4.5 / +0.3EV / ISO320 / AWB / しない / しない シグマ APO MACRO 150mm F2.8 EX DG HSM / 絞り優先AE / 1/100秒 / F2.8 / 0EV / ISO500 / AWB / しない / しない

シグマ APO MACRO 150mm F2.8 EX DG HSM / 絞り優先AE / 1/500秒 / F2.8 / +0.7EV / ISO500 / AWB / しない / しない シグマ APO MACRO 150mm F2.8 EX DG HSM / 絞り優先AE / 1/400秒 / F3.2 / +0.7EV / ISO500 / AWB / しない / しない

シグマ APO MACRO 150mm F2.8 EX DG HSM / 絞り優先AE / 1/160秒 / F4 / +0.7EV / ISO500 / AWB / しない / しない

シグマ APO MACRO 150mm F2.8 EX DG HSM / 絞り優先AE / 1/640秒 / F3.2 / 0EV / ISO640 / AWB / しない / しない シグマ APO MACRO 150mm F2.8 EX DG HSM / 絞り優先AE / 1/800秒 / F3.2 / 0EV / ISO640 / AWB / しない / しない

シグマ APO MACRO 150mm F2.8 EX DG HSM / 絞り優先AE / 1/80秒 / F3.5 / 0EV / ISO640 / AWB / しない / しない シグマ APO MACRO 150mm F2.8 EX DG HSM / 絞り優先AE / 1/100秒 / F3.5 / 0EV / ISO640 / AWB / しない / しない

EF 300mm F4L IS USM / 絞り優先AE / 1/800秒 / F4 / 0EV / ISO1600 / AWB / する / する
EF 300mm F4L IS USM / 絞り優先AE / 1/800秒 / F4.5 / 0EV / ISO1000 / AWB / する / する

EF 300mm F4L IS USM + EF 14XII / マニュアル露出 / 1/400秒 / F5.6 / 0EV / ISO2500 / AWB / する / する
EF 300mm F4L IS USM / マニュアル露出 / 1/320秒 / F4 / 0EV / ISO2500 / AWB / する / する

EF 70-200mm F4L IS USM (200mm) / マニュアル露出 / 1/1600秒 / F5 / 0EV / ISO400 / AWB / する / しない EF 70-200mm F4L IS USM (93mm) / マニュアル露出 / 1/2000秒 / F5 / 0EV / ISO400 / AWB / する / しない / 新江ノ島水族館で撮影

EF 70-200mm F4L IS USM (176mm) / マニュアル露出 / 1/1600秒 / F5 / 0EV / ISO400 / AWB / する / しない / 新江ノ島水族館で撮影 EF 70-200mm F4L IS USM (176mm) / マニュアル露出 / 1/1600秒 / F5 / 0EV / ISO400 / AWB / する / しない / 新江ノ島水族館で撮影 EF 70-200mm F4L IS USM (176mm) / マニュアル露出 / 1/1600秒 / F5 / 0EV / ISO400 / AWB / する / しない / 新江ノ島水族館で撮影

EF 70-200mm F4L IS USM (200mm) / マニュアル露出 / 1/1000秒 / F4.5 / 0EV / ISO500 / AWB / する / しない / 新江ノ島水族館で撮影 EF 70-200mm F4L IS USM (185mm) / マニュアル露出 / 1/1250秒 / F5.6 / 0EV / ISO500 / AWB / する / しない / 新江ノ島水族館で撮影


URL
  キヤノン
  http://canon.jp/
  製品情報
  http://cweb.canon.jp/camera/eosd/1dmk3/
  キヤノン EOS-1D Mark III関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2007/03/12/5810.html



伊達 淳一
1962年生まれ。千葉大学工学部画像工学科卒業。写真、ビデオカメラ、パソコン誌で カメラマンとして活動する一方、その専門知識を活かし、ライターとしても活躍。黎 明期からデジタルカメラを専門にし、カメラマンよりもライター業が多くなる。自ら も身銭を切ってデジカメを数多く購入しているヒトバシラーだ。ただし、鳥撮りに関 してはまだ3か月のド・初心者。飛びモノが撮れるように日々精進中なり

2007/08/17 08:35
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