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メモリースティックPRO-HGデュオとExpressCardアダプター
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いまやデジカメでの採用メーカーはソニー1社と、“孤高のメモリカード”となっているメモリースティック。メモリースティックを製造するメーカーも少なく、容量や性能、コストパフォーマンスの進化には不利な状況といえる。しかし、そこは提唱者であるソニーの力というべきか、ほかのメモリカードと互角の性能向上を果たしてきた。
8月に発売される「メモリースティックPRO-HGデュオ」は、速度面で大きな進化をとげた製品だ。最高転送速度は実に30MB/sec。CFにはUDMA対応で最高45MB/secなどという製品もあるが、もっともフォームファクターが近いライバルであるSDHCメモリーカードは最高22~24MB/sec程度だから、現状の小型メモリカードとしては最速と呼んでも差し支えないだろう。
店頭予想価格は容量4GBが2万5,000円前後、2GBが1万3,000円前後、1GBが8,000円前後の見込みだ。
■ 従来のメモリースティックとの互換性を確保
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元祖「メモリースティック」
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ここでメモリースティックのラインナップを整理しておこう。メモリースティックには、「メモリースティック」と、これを小型化した「メモリースティック デュオ」の2種類のフォームファクター(おおざっぱにいえばメモリカードの大きさや端子の配置など)がある。
また、メモリースティックを高速大容量化したメモリースティックPRO規格がある。メモリースティックとメモリースティックPROはフォームファクターは一緒だが、上位互換性がない。しかし、現在市場にある製品のほとんどは両方をサポートしたスロットを備えている。
メモリースティックPROにも小型版のPROデュオがあって、現在もっとも一般的なのがこれだ。転送速度10MB/secの「メモリースティックPROデュオ HIGH SPEED」もある。
メモリースティックPROデュオの現在の最大容量は8GB。また、HIGH SPPEDは最大2GBとなっている。
このほか、携帯電話向けにメモリースティックPROデュオを小型化した「メモリースティック マイクロ」というフォームファクターも追加された。
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メモリースティックを高速大容量化した「メモリースティックPRO」(生産は完了している)
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メモリースティックPROを小型化した「メモリースティックPROデュオ」
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メモリースティックPROデュオを高速化した「メモリースティックPROデュオ HIGH SPEED」
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携帯電話向けの「メモリースティック マイクロ」(大きさの比率は正確ではありません)
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メモリースティックPRO-HGデュオ
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メモリースティックPRO-HGデュオは、メモリースティックPROデュオのさらなる高速版として、またHIGH SPEEDを速度、容量ともに上回る、メモリースティックファミリーのフラッグシップ的存在だ。ただ、容量の点では、通常のPROデュオの最大8GBには追いつけていない。
PRO-HGデュオは、以前のメモリースティックPRO/メモリースティックPROデュオとの互換性を確保しているのも特長だ。外形寸法はまったく同じだし、PRO-HGデュオをPROデュオ対応スロットで読み書きすることもできれば、PRO-HGデュオ対応スロットでPROデュオを読み書きすることもできる。また、アダプタを介せばPRO-HGデュオをメモリースティックPRO対応スロットで利用することもできる。さらに、メモリースティックの著作権保護機能である「MagicGate」にも対応している。
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外形寸法や形は同じ。左からPROデュオ HIGH SPEED、PRO-HGデュオ、PROデュオ
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厚みも変わらない。左からPROデュオ HIGH SPEED、PRO-HGデュオ、PROデュオ
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■ ピンを変更して高速化
PCにメモリカードのデータを転送する場合、メモリカードの速度は、
(1)メモリカード内のフラッシュメモリとコントローラの間の転送速度
(2)メモリカードとメモリカードリーダーの間の転送速度
(3)メモリカードリーダーとPCの間の転送速度
で決まる。
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メモリカードの速度を決める要素
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(1)はフラッシュメモリやコントローラの性能向上に負うもので、もちろんメモリースティックPRO-HGデュオでも高速化されている。(2)はメモリカードの理論速度として一般的に表記されるところで、PRO-HGデュオのもっとも大きな改良ポイントはここだ。
従来のメモリースティックPROは、4bitパラレル転送を40MHzで行なっていたが、HGデュオはこれを8bit、60MHzで行なうのだ。これにより理論上は60MB/sec(480Mbps)の転送が可能になる。実際の製品は30MB/sec(240Mbps)となっているから、伸びしろがまだあるということだろう。
8bit転送を実現するために、メモリースティックPRO-HGデュオでは端子のピンの数を増やした。メモリースティックPROでは10本のピンを備えていて、うち4本をデータ転送に使っている。PRO-HGデュオではデータ転送ピンを4本増やし、計14本とした。
この際、単純にピンの本数を増やして形状を変えてしまっては、メモリースティックPROとの互換性が失われてしまう。そのため、ピンの形状や配置は変更されていない。4本のデータ転送ピンを前後に2分割し、後ろ半分を新たな4本のピンとして使うようにしたのだ。
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右がPRO-HGデュオ、左がPROデュオの端子。PRO-HGデュオのほうが端子全体がすこし長く、内側の4本の端子が前後に分割されている
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PRO-HGデュオ対応リーダーでは、この後ろ半分のピンを独立したピンとして使用することで、8本のピンとして検知し、8bit転送を行なう。PRO-HGデュオに対応していないリーダーでは、後ろ半分のピンを検知できないから、4本のピンで4bitパラレル転送を行なうことになる。
■ 最低書き込み速度も向上
とかく「最高速度」がクローズアップされがちなメモリカードのデータ転送速度だが、メモリースティックPROの規格では、約1.9MB/sec(15Mbps)の「最低書き込み速度」が保証されてきた。メモリースティックPRO-HGデュオにもこの規定が継承されているが、最低保証速度は8bitパラレル転送時で15MB/sec(120Mbps)、4bitパラレル転送時で5MB/sec(40Mbps)に引き上げられているのにも注目したい。
SD/SDHCメモリーカードでも「スピードクラス」という最低書き込み速度保証の概念が導入されているが、その速度は最速のClass 6で6MB/secだ。PRO-HGデュオは8bit転送時なら倍以上の速度が保証されていることになる。
画素化が進み、大容量をファイルを連続して高速に書き込む必要がある昨今のデジタルカメラでは、むしろこの最低保証速度による安定度が、いずれは大きな安心につながるかもしれない。
ここで興味深いのは、PRO-HGデュオを以前のメモリースティック対応機器で使ったときの最低保証速度が5MB/secであることだ。メモリースティックPROの最低書き込み速度は約1.9MB/secだったから、こちらも倍以上に高速化されていることになる。
PRO-HGデュオは、4本しかデータ転送ピンを使えない以前の機器でも、転送速度の向上が期待できそうだ。
■ ExpressCardアダプタを採用
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メモリースティックデュオExpressCardアダプター MSAC-EX1
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メモリースティックPRO-HGデュオ対応リーダーとして、「メモリースティックデュオExpressCardアダプター MSAC-EX1」が同時に発売される。これが、先述の(3)の強化ポイント、つまりメモリカードリーダーとPCの間の転送速度の向上にあたる。
その名のとおり「デュオ」専用のカードリーダーで、メモリースティックやメモリースティックPROは挿入できないし、メモリースティック マイクロを挿入するにはデュオに変換するアダプタが必要になる。だが、メモリースティックデュオやメモリースティックPROデュオには対応している。
ExpressCardは次世代PCカードとして策定された規格で、PCカードよりも小さく、高速なデータ転送が可能だ。当然、PCにもExpressCard用のスロットが必要となる。
ExpressCardには幅54mmの「ExpressCard/54」と、幅34mmの「ExpressCard/34」があるが、MSAC-EX1は34を採用する。ExpressCardは、PCとはUSB 2.0かPCI Expressのどちらかによって接続される。
ExpressCardのメモリカードリーダーは、これまでにもいくつかの製品が発売されてきたが、そのほとんどはUSB 2.0で接続されている(Windowsならデバイスマネージャーを見るとわかる)。が、MSAC-EX1はPCI Expressでの接続を選択している。ソニーによると、実効速度の検証結果に基づき、PCI ExpressのほうがPRO-HGデュオの性能を最大限に活かせると判断したのだそうだ。
■ USB 2.0経由でも高速なPRO-HGデュオ
高速メモリーカードとしてメモリースティックPRO-HGデュオが用意され、その最高の性能を発揮できる環境としてMSAC-EX1が用意されたわけだが、これまで見てきたとおり、PRO-HGデュオ非対応機器でも性能向上も見込めそうでもある。
そこで、メモリースティックPRO-HGデュオ(MS-EX2G)とメモリースティックPRO-HGデュオ HIGH SPEED(MSX-M2GN)、メモリースティックPROデュオ(MSX-M2GS)の転送速度を、ノートPCで計ってみた。いずれも容量は2GBである。
計測は、MSAC-EX1経由と、USB 2.0対応カードリーダー経由で行なった。
使用したUSB 2.0カードリーダーはエレコムの「MR-A20H」。メモリースティックPROデュオを直接挿入できるほか、メモリースティックPROデュオ HIGH SPEEDに対応している。2006年6月に発売された製品なので、PRO-HGデュオには対応していない。
テストに使用したPCはThinkPad T60(Core Duo T2400 1.83GHz、メモリ1.5GB)、OSはWindows XP Professional SP2。計測ソフトはHDBENCH Ver.3.30のDISK測定で5回測定し、Read、Write、Copyの値(KByte/秒)を平均し、小数点以下を四捨五入して記載している。
結果は次のとおりだ。
メモリースティックPRO-HGデュオ
| Read | Write | Copy |
ExpressCard | 38760 | 31623 | 2486 |
USB 2.0 | 15597 | 13275 | 1368 |
メモリースティックPROデュオ HIGH SPEED
| Read | Write | Copy |
ExpressCard | 14504 | 12827 | 1683 |
USB 2.0 | 13708 | 8359 | 1106 |
メモリースティックPROデュオ
| Read | Write | Copy |
ExpressCard | 7387 | 1487 | 125 |
USB 2.0 | 7364 | 1473 | 124 |
PRO-HGデュオがPROデュオ HIGH SPEED、PROデュオよりも高速なのは一目瞭然で、ExpressCard経由で比較すると、PROデュオ HIGH SPEEDでは読み出しで約2.7倍、書き込みで約2.5倍もの速度を叩き出している。PROデュオとくらべると、読み出しで5倍以上、書き込みではなんと20倍以上にもなる。
まさにケタ違いの速さだが、USB 2.0経由での速度にも注目したい。PRO-HGデュオ同士で比べるとExpressCard経由の半分以下の速度になってしまうのだが、PROデュオ同士ではExpressCard経由でもUSB 2.0経由でも速度は変わらない。PROデュオ HIGH SPEEDでは書き込みで若干の差がついたとはいえ、PRO-HGデュオの伸びには及ばないし、読み込みは大差ないレベルといえる。MSAC-EX1の性能の高さというか、PRO-HGデュオとの相性のよさが証明された形だ。
さらに興味深いのがUSB 2.0経由での各メディアの速度の比較だ。先述のとおりPRO-HGデュオはUSB 2.0経由ではExpressCard経由の半分以下の速度しか出ないのだが、それでもPROデュオのUSB 2.0経由での速度の2倍以上の速度となっている。ただし、PROデュオ HIGH SPEEDとPRO-HGデュオとの比較では、読み出しに関してはあまり差が付いていない。
あくまで簡易的なテストの結果ではあるが、PRO-HGデュオは、通常のPROデュオとの比較であればMSAC-EX1との組み合わせでなくても高速が図れるようだ。ExpressCardスロットを備えたPCが増えてきつつあるとはいえ、まだ標準装備の座はPCカードスロットやCFスロット、USB 2.0ポートから奪えていない。ExpressCardスロットを持っていなくてもPRO-HGデュオへの投資は無駄にはならないということだ。
一方、PROデュオHIGH SPEEDのユーザーがPRO-HGデュオへの買い替えを考える場合は、MSAC-EX1とのセットでなら、もっとも有効に高速化の恩恵を蒙ることができる。ExpressCard以外のカードリーダーでもある程度の速度向上は認められるものの、USB 2.0でもよりPRO-HGデュオの性能を活かせるリーダーの登場が待たれるところだ。
■ URL
ソニー
http://www.sony.co.jp/
ニュースリリース
http://www.sony.jp/products/ms/news/product_070529.html
■ 関連記事
・ ソニー、最大4GB・30MB/secの「メモリースティックPRO-HGデュオ」(2007/05/29)
・ サンディスクとソニー、「メモリースティックPRO-HG」を開発(2006/12/11)
2007/07/11 00:03
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