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【新製品レビュー】飛鳥 Tripper V

~高速転送ときれいな画面のフォトストレージビューアー
Reported by 小山 安博

 メモリカードの低価格化が進み、大容量のメモリカードを持ってデジタルカメラの撮影をする人が増えている。カメラの高画素化が進んでいるとはいえ、数GBクラスのメモリカードが低価格化しているので、数百枚の画像を一度に撮影して、持ち歩くことも手軽になってきた。

 画像を大量に持ち歩いていると、デジカメの液晶モニターを使って手軽に人に画像を見せることも可能だが、いかんせん、まだデジカメの液晶モニターは(一部を除いて)最大でも3型程度なので「鑑賞する」にはちょっと小さい。

 また、たくさんの画像が保存できると、ついついPCに保存し忘れて、いつの間にかメモリカードがいっぱいになってしまう、ということが起こりがちだ。

 そうした場合に1台持っていると便利なのがフォトストレージビューアーだ。画面も大きく、メモリカードよりも大容量のHDDを内蔵するため、より多くの画像が保存できる。大量の画像を保存していたカードが破損してデータが失われてしまうという危険を避けるためにもこまめにフォトストレージに保存するという使い方もいいだろう。

 フォトストレージビューアーといえば、エプソンの「P-5000」が現在の代表選手といえる。高い液晶品質と高機能で性能は折り紙付きだが、今回紹介する飛鳥の「Tripper V」も性能としては負けてはいない。80GBモデルで直販価格4万9,980円、120GBモデルで同6万9,825円、160GBモデルで同7万9,800円と、80GBで実売価格6~8万円のP-5000よりも価格が安いこともメリットだ。


見やすく美しい液晶表示

 Tripper Vは横長の筐体で、前面には中央やや左寄りに4.3型WVGA(800×480ピクセル)の液晶ディスプレイを搭載する。前面右側には大きな円形の十字キーとOK、MENUなど5つのボタンを配置する。

 いずれもボタンは大型で押しやすい。この5つのボタンは、その時押せるボタンが青く光るので、現在どのボタンを使うことができるのがわかりやすくていい。


4.3型のワイド液晶、大型のボタンで操作は明確。スタート画面となるこの「HOME」画面もアイコンが大きく、GUIが明確なので全体的な操作性はいい
全画面表示。色は非常にはっきりとしていて見やすい

 本体はプラスチッキーなので特に高級感はないが、液晶ディスプレイの品質はかなりいい。視野角も広く、色味も豊かに再現される。通常の液晶のRGBにCMYを加えた6要素と、輝度情報をマトリクス演算して色表現する「NCM(Natural Color Matrix)リアルカラー液晶」を搭載しているということで、NCMリアルカラーをオンにすると、色彩は一層あざやかになる。

 NCMをオンにすると、実際の撮影画像よりもあざやかになるようで、撮影画像を正確に確認したい場合はNCMをオフにした方がいいかもしれない。しかし、単純に画像を閲覧する場合は、NCMはオンにした方が見栄えがいい。「記憶色」という意味ではNCMオンの方が良さそうだ。

 液晶ディスプレイの品質は良く、はっきり見えるのでピントの確認にも使えそう。画像の拡大は8倍までだ。全画面表示と等倍表示を素早く切り替えられるモードがあるとうれしいのだが、等倍表示は特に指定できず、2倍、4倍、8倍と拡大表示するしかない。


単画像表示中にMENUボタンを押したときの項目。「情報表示」ではExif情報を表示できる。常時Exifを表示することはできない
MENUボタンから「LCDの明るさ」を選択、「NCM」からオン/オフを設定する

NCMオンとオフ(右)。色味が変化しているのがわかる。NCMオンの方が派手な感じ

 サムネイルは1画面15コマ。特にサムネイルサイズを変更することはできない。最初のサムネイル表示はやや時間がかかるが、キャッシュが効くために2回目以降のサムネイル表示は高速になる。

 サムネイルで画像を選択し、OKボタンを押すと1画面表示になる。画像の拡大縮小はOK/CANCELボタンに割り当てられている。拡大表示時は、十字キーで上下左右に画像を移動できる。拡大時の移動はあまり高速ではないのが残念なところ。

 1画面表示時は、MENUボタンでEXIF情報を表示したり、メモリカードに画像をコピーしたり、液晶の明るさ変更・NCMオン/オフの切り替えが可能だ。

 サムネイル表示でMENUボタンを押すと、画像の移動やコピー、スライドショー再生などが可能で、移動やコピーでは複数の画像を選択できる。また、画像の種類や更新時間、名前による並び替えも可能だ。


サムネイル表示は1画面15コマ。サムネイルサイズの変更や日付分けなどはできない
HOME画面から各種設定を行なえる

高速な読み込みが可能

スロットはCFとSDHC/SDの2つ
 本体上部にはCFとSDHC/SDメモリーカードの2つのスロットを備える。カードを挿入して、COPYボタンを押せばすぐに画像を本体のHDD内にコピーしてくれる。とはいえ、いつでもCOPYボタンが有効なわけではなく、ホーム画面でしか画像コピーは行えないようだ。

 コピー方法には2種類用意され、設定の「コピー機能設定」から「通常コピー」と「高速コピー」を選択する。

 通常コピーの場合、画面にコピー中の経過が表示され、途中で読み込みのキャンセルも可能。高速コピーの場合は画面がブラックアウトし、途中のキャンセルも効かない。Tripper Vの作業をすべて画像のコピーに割り当てることで高速性を実現しているそうだ。


コピー方法は設定画面から選ぶ。単に撮った画像をバックアップしたいだけであれば「高速コピー」を選んでおくといいだろう
「通常コピー」を選択するとプログレスバーが表示され、途中でコピーをキャンセルできる

 実際のコピー速度では、バッファローの「RCF-Uシリーズ(8GB)」を使い、146枚のRAW/JPEGファイル(約1GB)を転送したところ、5回転送の平均時間では通常コピーで平均3分23秒、高速コピーで平均1分34秒だった。

 Tripper Vは転送速度45MB/secのUDMAに対応しているようで、RCF-Uの高速性が遺憾なく発揮されている。試しにトランセンドの45倍速の1GB CFカードでコピーしてみたところ、146枚のRAW/JPEGフィル(約1GB)の転送時間は、通常コピーで平均約3分30秒、高速コピーで平均2分22秒となった。通常コピーはあまり差が出なかったが、高速コピーでは1分近い高速化となっている。

 Tripper Vでは、画像は「保存データ」と「My Picture」などといったフォルダに分けて保存できるが、メモリカードからCOPYボタンでコピーを行なうと、画像はまずは「保存データ」に保存される。感覚的には、画像ファイルはすべてMy Pictureフォルダに集めてくれた方が分かりやすい気がする。

 逆にいうと、画像のバックアップ用途でTripper Vを使い、画像を確認しつつ保存したい画像だけをMy Pictureフォルダに移動させる、という使い方もある。明らかな失敗写真や露出や構図をずらして撮った写真でも、念のために全部保存しておき、成功写真をMy Pictureフォルダにのみ移動すれば、Tripper V上で整理することもできる。

 また、PCから転送した画像をMy Pictureフォルダに、メモリカードの画像を保存データフォルダにそれぞれ分けておけば、後でTripper VからPCに画像を転送する際に、メモリカードから取り込んだ画像だけを転送しやすい。

 スライドショー再生にも対応しており、その場合はスライドショーの間隔は設定できるが、特にトランジションなどの設定はできない。大画面でスライドショー再生したい場合は、AV出力端子を備えているので、TVに出力、大画面テレビでスライドショー再生を楽しむことができる。せめてTVに接続してのスライドショー再生時は、縦位置で撮影した画像を自動で回転表示してくれる機能があれば良かった。


RAWファイルにも対応

 対応するフォーマットはJPEG、RAW、MPEG-4、MP3、AACで、RAWファイルではキヤノンやニコン、富士フイルム、ペンタックス、オリンパス、コダックのRAW形式に対応。主要なメーカーのRAWファイルに対応している点がうれしい。ただ、ソニーやエプソンのRAWやDNGに対応していないのは気になるところ。

 オリンパスとキヤノンのRAWファイルで確認してみたが、JPEGとRAWで特に画像の読み込みや表示速度が大きく異なるということはなさそうだった。とはいえ、RAWは現像するのではなく、(恐らく)RAW内のサムネイル画像を抽出して表示しているだけなので、拡大表示してもシャギーが目立つ結果になる。実際の画像の確認はPCで行なうしかない。

 動画や音楽フォーマットへの対応はあくまでオマケ程度と考えた方が良さそうだ。単純にフォトストレージビューアーとして考えた場合、音楽や映像を楽しんでいたら画像をバックアップする前にバッテリーが無くなってしまった、というのでは本末転倒だ。


本体右側面には電源スイッチ
左側面には各種インタフェースが集約されている

 動画もいまだにデジカメでは多いMOV形式やAVI形式の画像に対応しているわけではないので、あくまでPCで作成したMP4動画、または一部のMP4対応デジカメの動画しか再生できないし、音楽も単純にドラッグ&ドロップで音楽ファイルを放り込むだけだ。手軽ではあるが、iPod+iTunesなどの専用音楽プレーヤーのような楽曲管理はできない。

 Tripper Vの魅力は、高速なデータ読み込みと美しい液晶ディスプレイ、そしてP-5000と比べて抑えられた製品価格だ。

 ホーム画面のインタフェースも分かりやすい。反応がやや鈍く、今ひとつきびきびと動かない点は気になったが、フォトストレージビューアーとしては十分及第点を出せる。

 発売後も、2度のファームウェアバージョンアップにより、HOMEボタンを3秒以上長押しでスタンバイモードに移行する機能が追加されたり、JPEG画像をVGAサイズで表示した際にキャッシュして高速表示が可能になるなど、バージョンアップが行われている点も好印象だ。

 撮影枚数が多い人は、メモリーカードを使い分けながら撮影することが多いだろうが、紛失や破損に備えてバックアップは常にとっておきたいところ。画像のコピーが速く、画像の確認もきれいな画面で行えるTripper Vは、十分におすすめできる製品だ。



URL
  飛鳥
  http://www.aska-corp.co.jp/
  製品情報
  http://www.aska-corp.co.jp/products/p-tripper-v01.htm

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飛鳥、4.3型液晶搭載のHDDフォトストレージ「Tripper V」(2007/03/02)



小山 安博
某インターネット媒体の編集者からライターに転身。無節操な興味に従ってデジカメ、ケータイ、音楽プレーヤー、コンピュータセキュリティなどといったジャンルをつまみ食い。軽くて小さいものにむやみに愛情を感じるタイプ。デジカメ、音楽プレーヤー、PC……たいてい何か新しいものを欲しがっている。

2007/05/21 00:02
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