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【新製品レビュー】キヤノン IXY DIGITAL 90/10

~顔検出で簡単に使えるスタイリッシュなコンパクトデジカメ
Reported by 小山 安博

こちらはIXY DIGITAL 10
 キヤノンから、コンパクトデジタルカメラの定番「IXY DIGITAL」の最新モデル「IXY DIGITAL 90」と「IXY DIGITAL 10」が登場した。薄型軽量、スタイリッシュという従来通りのスタイルは継承したこの2モデルは、基本的なスペックは同等の姉妹機だ。ここでは、両モデルの違いを見つつ、IXY DIGITALの最新モデルをチェックしてみよう。


原点回帰でもさらに薄型・軽量化したデザイン

直線的なシンプルデザインで、レンズ周りの黒いデザインが古くて新しい印象
 IXY DIGITALシリーズの特徴といえばデザイン性。スクエアなデザインで質感の高いボディは、スタイリッシュコンパクトデジカメのはしりとしてすっかり定番化した。ここ最近のモデルでは、単なるスクエアデザインだけでなく、曲線を取り入れて柔らかなイメージも追加してきた。

 しかし今回、IXY DIGITAL 10も90も、基本的には直線をベースにしたデザインを採用。原点回帰ともいうべきデザインのリニューアルを実施して、全体をスクエアで、シャープなデザインにまとめてきた。レンズの周囲を黒くすることで、一層精悍なイメージを持たせている。外観としては初代IXY(APSの)に似た感じのデザインで、初代のIXY DIGITAL以来、少しずつ小さくなっていたレンズ周りのデザインアクセントが、また大型化し、デザインに彩りを添えている。


本体右下が面取りされた部分
 デザインバリエーションとしてはIXY DIGITAL 10はこのレンズ周りと鏡筒側面がシルバーとブラックの2色から選べる。イメージとしては男性向けのブラック、女性向けのシルバーといった感じだが、どちらを選んでも特に違和感はないだろう。ブラックの方はデザインが特徴的なので、多少好みが分かれるところかもしれない。IXY DIGITAL 90のカラーバリエーションは1種類のみだ。

 IXY DIGITAL 10のデザイン上の特徴としては、本体背面の右下に面取りがしてある部分。これは片手持ちの時に親指の付け根あたりに当たる部分で、肌に食い込まないようにするためだろう。本来は両手持ちした方が安定するが、こうしたカメラで常に両手持ちを強制するのも野暮な話なので、片手持ちでも快適に撮影できるように配慮した結果と思われる。


 前述の通り、IXY DIGITAL 10と90は姉妹機で、特にカメラ部の機能はほとんど同等だ。両モデルの大きな違いは、IXY DIGITAL 90が3型液晶を搭載、IXY DIGITAL 10は2.5型液晶だが光学ファインダーを備えている点。実質的な違いはこれぐらい。IXY DIGITAL 90の方は、「刀」をイメージしたIXY DIGITAL 80のデザインを踏襲して、イメージをさらに進めた「三日月」に変更になっていることも大きな違い。


IXY DIGITAL 10(左)とIXY DIGITAL 90。レンズ周りのデザインは似ているが、イメージはだいぶ異なる
背面を見ると、ガラリとデザインが異なっている。IXY DIGITAL 90の3型液晶が大きな特徴

上部も同様にシンプルだが、デザインのイメージは違う IXY DIGITAL 90もフラットな背面

 そのほか、IXY DIGITAL 90は3型液晶モニターを搭載して背面のスペースが限られるため、ボタン配置が異なっているほか、ボタンの大きさも違う。円形の十字キーはちょっと独特で、タッチホイール機能が(恐らく)静電式になっており、ボタンに触れるだけでモニターに十字キーの画面が表示されるようになっている。画面のアイコンは、指の触れている部分が飛び出す効果で、手探りでも十字キーのどこに触れているのがわかりやすい。実際にボタンの機能を選ぶときはボタンを押せばいい。


IXY DIGITAL 90のレンズもまったく同じ IXY DIGITAL 90の十字キーに触れるとアイコンが表示される

 両モデルは、端的に区別するとフラットで薄型、持ち運びしやすいIXY DIGITAL 10と、大画面液晶モニター搭載のIXY DIGITAL 90という感じ。IXY DIGITAL 10には光学ファインダーが搭載されているので、いざというときにバッテリーを抑えて撮影できるというメリットもある。IXY DIGITAL 90は、再生モード中でもシャッターボタンの半押しで、すぐに撮影モードに移行できる。この操作性は個人的に好きなので、これはIXY DIGITAL 90の方のメリットと言っていいだろう(IXY DIGITAL 10はモードスイッチを切り替える必要がある)。

 本体サイズはIXY DIGITAL 10が85.9×19.4×53.5(幅×奥行き×高さ)mm、約125g(本体のみ)で、前モデルのIXY DIGITAL 70と比べてさらに薄型化、20mmを切る厚さを実現している。重さも15gほど軽くなっており、一層持ち運びやすくなった。IXY DIGITAL 90は91.6×19.6×56.8(幅×奥行き×高さ)mm、約130g(同)で、こちらはIXY DIGITAL 80と比べて15gほど軽くなった程度。

 どちらもほとんどフラットなデザインなのでポケットにも、小さな女性用バッグにも収まりがよく、取り出しやすいデザイン。コンパクトデジカメの生命線である「サッと取り出してサッと撮る」という使い方にピッタリだ。


こちらはIXY DIGITAL 10。横から見るとボディのフラットさがよくわかる。特に、本体と液晶の高さがほとんど一緒という点も見事だ 上から見ても直線的なフラットボディ

 いずれのモデルも、全体的にツルツルしたボディは今まで通りで、ざっくり構えると滑り落としそうになるので注意は必要。特に滑り止めになるようなものもないが、薄く軽いボディはバランスがいいせいか、思ったよりも安定感を感じる。

 IXY DIGITAL 10と90の違いはこの程度。一見するとだいぶ違うモデルに見えるが、実質的にカメラの機能としては同等となる。以下では、IXY DIGITAL 10を中心に紹介するが、レンズスペックや撮像素子、撮影機能は同じなので、IXY DIGITAL 90と読み替えても一緒だ。いくつか撮影してみたが、写りの方も特に差があるようには感じなかった。


人の顔を見つけるフェイスキャッチテクノロジー

 撮影機能としては、光学3倍ズームレンズ搭載のスタンダードなもの。レンズは焦点距離35~105mm(35mm判換算)の光学3倍ズームレンズで、F値はF2.8~F4.9と、レンズスペック自体は前モデルと変わりはない。撮像素子はこれまでの1/2.5型有効画素数600万画素から1/2.5型有効画素数710万画素に高画素化している。


薄型の光学3倍ズームレンズを搭載。レンズスペック自体は特に強調すべき点はない 背面

 すっかり一般化した手ブレ補正機能はないが、IXY DIGITALシリーズで光学式手ブレ補正を備えたIXY DIGITAL 900 ISが、大げさに言えば一回りぐらい大型なので、それよりだいぶ小さく薄く、しかも価格も抑えられている。

 映像エンジンには最新のDIGIC IIIを搭載し、最近流行の顔検出機能「フェイスキャッチテクノロジー」に対応する。人の顔を検出して追尾し、露出やピントを合わせる顔優先AF/AEに加えて、顔に合わせてストロボ発光量を調整する顔優先FEを搭載する。

 ハードウェアベースのキヤノンの顔検出は、検出スピードも十分に速く、精度もいい。顔は真横でもない限りはきちんと検出し、顔にAFを合わせてくれる。最大で9人までの顔を同時に検出、合焦するので、集合写真でも威力を発揮する。

 フェイスキャッチテクノロジーを利用するには、メニューボタンを押して設定メニューを開き、「AiAF」から「顔優先」を選べばいい。ちょっと変更は面倒だが、顔優先の場合、顔が検出できなければ自動的に9点AiAFになるので、基本的には顔優先を選んでおけばいいだろう。


ISO感度をボタン1つでブーストする

ISO感度の設定は十字キーの上ボタンから。ISO1600まで設定できるほか、ISO800まで増感する高感度オートも設定できる
 もう1つの新機能としては高感度への対応だ。これまでもISO800までは対応していたが、今回は新たにISO1600までの高感度撮影をサポート。より高速なシャッタースピードでの撮影が可能になり、手ブレと被写体ブレが防げるようになる。

 ISO感度の設定には、十字キーの上ボタンに専用ボタンが用意されており、手軽に設定できる。通常のオートISO感度設定に加え、高感度オート設定を搭載。オートISO感度の上限はISO200までだが、高感度オート時は極力高感度で撮影するようにして、上限もISO800までとなっているので、より手ブレ・被写体ブレが防げるようになる。ただ、高感度オートの場合は最低感度がISO80となっているので、うっかり明るい場所で使うと高感度のまま撮影されてしまうので注意が必要だ。

【お詫びと訂正】記事初出時、高感度オートでの最低感度をISO400と記述しましたが、ISO80の誤りでした。お詫びして訂正させていただきます。


写真はIXY DIGITAL 10だが、90の方もほぼ同じ場所にイージーダイレクトボタンがある
 面白い機能が「ISOブースター」と呼ばれる機能だ。これは、半押しした段階で手ブレしそうなぐらいシャッタースピードが遅かった場合、自動的に背面のイージーダイレクトボタンが青く光り、そのボタンを押すとISO感度が最高ISO800まで感度アップする、という仕組みだ。

 高感度オートと違うのは、能動的にISO感度を制御できる点だ。しかもいざ撮影しようと半押しした段階で手ブレしそうだと気づいて撮影をやり直すのではなく、半押し状態から1ボタンでISO感度がアップして手ブレ・被写体ブレを抑えられる。高感度オートとISO800/1600以外の時は、どのISO感度設定でもISOブースターは利用可能で、ISO80などと手動設定していても、青く光ったイージーダイレクトボタンを押せばISO感度が最高ISO800までアップする。

 この機能自体はよく考えられている便利な機能だと思う。ただ、イージーダイレクトボタンが、構え方によっては親指で隠れてしまうので、光っているかどうかがわからない場合があるのが少し難点。背面右下の角を面取りして、親指を深く構えても痛くないような配慮をしつつ、そうした持ち方をすると親指でボタンが隠れてしまうのだ。

 もっとも、半押し時に手ブレ警告アイコンが表示された場合は、高感度オート/ISO800/1600以外であれば間違いなくイージーダイレクトボタンが青く光るので、ISOブースターが使えるかわからない場合でもとりあえず押してみればいいだろう。

 だがそれ以上に悩ましいのが、シャッターボタンを半押ししながらイージーダイレクトボタンを押すのが難しい点だ。両手持ちをしている場合は、右手でシャッターボタン、左手でイージーダイレクトボタンを押せばいいのだが、片手でシャッターボタンとイージーダイレクトボタンを押すのが微妙に難しく、シャッターボタンから指が離れてしまうこともしばしばだった。

 おすすめは、あらかじめ親指でイージーダイレクトボタンを押す準備をしてからシャッターボタンに指をかけること。そうすると、(その構えさえ慣れれば)けっこう楽に押せる。せっかくの便利な機能なので、何とか工夫して便利に使いたい。とはいえ、背面のスピーカーのあたりにイージーダイレクトボタンがあればもっと使いやすそうな気もするので、次はボタン位置の改良を期待したい。

 ところで、シャッターボタンを半押ししたときに、シャッタースピードと絞り値、ISO感度オート(高感度オート含む)の場合、それぞれの数値が表示されるようになった。細かい変更点だが、これはありがたいところだ。


ショートカットが設定できるように

 撮影機能自体は従来通り。FUNCボタンを押して各種撮影設定を変更する。変更できるのは露出補正、ホワイトバランス、ISO感度、マイカラー、測光方式といった項目で、オートかマニュアル(プログラムAE)、シーンモードから選択して撮影する。

 注目は、イージーダイレクトボタンが撮影時にショートカットとして機能するようになったこと。なぜかキヤノンは、しばらくこのイージーダイレクトボタンを撮影時は無用の長物としていたが、最近はここにショートカットキーとして撮影機能を割り当てられるようになった。


キヤノンのコンパクトデジカメでは統一されたファンクションメニュー ショートカット機能で動画を割り当てると、静止画の撮影可能枚数に加え、動画の撮影可能時間も表示される

 設定できるのは、露出補正、ホワイトバランス、マニュアルホワイトバランス、デジタルテレコン、撮影ガイド表示・非表示、動画、ディスプレイオフ、効果音の8つの機能。メニュー画面から設定する。自分の使い方を考えながら設定するといいだろう。

 ここで動画を設定すると、画面に静止画の残り撮影可能枚数に加えて、録画可能時間も表示され、イージーダイレクトボタンを押すと動画が撮影できるようになる。シャッターボタンを押せば、普通に静止画撮影が可能で、モードスイッチを動画に合わせなくても動画撮影が可能になる。


まとめ

撮影可能枚数はCIPA規格で約210枚(IXY DIGITAL 90/10ともに)。光学ファインダーのみを使うと約600枚撮れる(IXY DIGITAL 10のみ)
 IXY DIGITAL 10とIXY DIGITAL 90は、長く使い込まれて安定した使い勝手の良さと写り方をする、まさに定番中の定番コンパクトデジカメだ。IXY DIGITAL 10のすっきりとした箱形のデザインは飽きのこない作りで、IXY DIGITAL 90はちょっとサイバーな印象もある独特のデザインが目を引く。新しく両モデルに搭載されたフェイスキャッチテクノロジーも、こうしたコンパクトデジカメには便利で使い勝手がいい。

 ところで、細かい点だが、長らくISO感度をExifのメーカーノートに記録して、通常のソフトではISO感度が確認できなかったキヤノンのコンパクトデジカメだが、IXY DIGITAL 90/10では、ようやくISO感度が普通のソフトでも確認できるようになった。これもうれしい変更点。

 もうちょっと広角で、手ブレ補正をつけて、といった要望もなくはないが、無い物ねだりという感じもする。スタイルも使いやすさも、そつのない作りのカメラだ。


作例(全てIXY

  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。

  • 作例下の撮影データは、記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/ISO感度/露出補正値/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。


3,072×2,304 / 1/320秒 / F8 / ISO80 / 0EV / WB:オート / 5.8mm 3,072×2,304 / 1/125秒 / F4.9 / ISO200 / 0EV / WB:くもり / 17.4mm

3,072×2,304 / 1/500秒 / F4.9 / ISO80 / 1/3EV / WB:オート / 17.4mm
3,072×2,304 / 1/200秒 / F2.8 / ISO80 / 1/3EV / WB:くもり / 5.8mm

3,072×2,304 / 1/125秒 / F4.9 / ISO100 / 1/3EV / WB:オート / 17.4mm
3,072×2,304 / 1/500秒 / F4.9 / ISO80 / 1/3EV / WB:オート / 17.4mm

3,072×2,304 / 1/400秒 / F2.8 / ISO80 / 1/3EV / WB:オート / 5.8mm
3,072×2,304 / 1/250秒 / F2.8 / ISO80 / 1/3EV / WB:オート / 5.8mm

3,072×2,304 / 1/60秒 / F2.8 / ISO200 / 0EV / WB:オート / 5.8mm
3,072×2,304 / 1/100秒 / F2.8 / ISO80 / 0EV / WB:オート / 5.8mm

3,072×2,304 / 1/160秒 / F8 / ISO80 / 0EV / WB:オート / 5.8mm
3,072×2,304 / 1/200秒 / F2.8 / ISO80 / 0EV / WB:オート / 5.8mm

3,072×2,304 / 1/100秒 / F2.8 / ISO80 / 0EV / WB:オート / 5.8mm
3,072×2,304 / 1/40秒 / F2.8 / ISO200 / 0EV / WB:オート / 5.8mm

くっきりカラーで撮影
3,072×2,304 / 1/60秒 / F2.8 / ISO200 / 0EV / WB:オート / 5.8mm
3,072×2,304 / 1/25秒 / F2.8 / ISO800 / 0EV / WB:オート / 5.8mm

3,072×2,304 / 1/50秒 / F2.8 / ISO125 / 0EV / WB:オート / 5.8mm
3,072×2,304 / 1/60秒 / F2.8 / ISO160 / 0EV / WB:オート / 5.8mm

3,072×2,304 / 1/25秒 / F2.8 / ISO80 / 0EV / WB:オート / 5.8mm
3,072×2,304 / 1/60秒 / F2.8 / ISO80 / 0EV / WB:オート / 5.8mm

3,072×2,304 / 1/25秒 / F2.8 / ISO80 / 0EV / WB:オート / 5.8mm
3,072×2,304 / 1/50秒 / F2.8 / ISO400 / 0EV / WB:オート / 5.8mm

3,072×2,304 / 1秒 / F2.8 / ISO80 / 0EV / WB:オート / 5.8mm


URL
  キヤノン
  http://canon.jp/
  製品情報(IXY DIGITAL 10)
  http://cweb.canon.jp/camera/ixyd/10/
  製品情報(IXY DIGITAL 90)
  http://cweb.canon.jp/camera/ixyd/90/

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小山 安博
某インターネット媒体の編集者からライターに転身。無節操な興味に従ってデジカメ、ケータイ、音楽プレーヤー、コンピュータセキュリティなどといったジャンルをつまみ食い。軽くて小さいものにむやみに愛情を感じるタイプ。デジカメ、音楽プレーヤー、PC……たいてい何か新しいものを欲しがっている。

2007/04/27 01:21
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