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【新製品レビュー】ペンタックス Optio M30

~薄型スタイリッシュに生まれ変わった中堅機
Reported by 本誌:折本 幸治

 今春のOptioシリーズは、1/1.8型1,000万画素のハイエンドモデル「Optio A30」を筆頭に、薄型スタイリッシュの「Optio M30」、防水防塵の「Optio W30」、3型タッチパネルの「Optio T30」、エントリーモデルの「Optio E30」をラインナップ。そのうちOptio M30は、エントリー向けの要素が強かった先代の「Optio M20」から性格が大きく変貌した。単3電池駆動、イメージリンク端子など、これまでMシリーズの特徴だった部分を廉価なEシリーズに任せることで、Mシリーズは3万円弱の実勢価格と薄型金属ボディをメインに訴求する、いわゆる「売れ筋モデル」を担当するそうだ。

 そんなラインナップ戦略もあってか、機能は実にオーソドックス。最新の装備としては、ISO3200まで増感する「Digital SR」モードぐらいだ。しかし、薄型ボディ、2.5型液晶モニター、高感度、顔認識AF&AEを実売3万円弱に盛り込んでいるところが、現在の市場における売れ線モデルといえる。最近のペンタックスには、こうしたお手頃価格の薄型モデルがなかったこともあり、市場の反応が楽しみである。


ポケットから出し入れしやすい形状

 前述の通り、外観は前モデルのOptio M20から大きく変わった。単3電池駆動のためグリップ部が出っ張っていたOptio M20に対し、リチウムイオン充電池を採用したOptio M30は、ご覧の通りボディのどこをとっても薄い。メーカー公称の奥行きは18mm。金属外装の高級感もなかなかで、Optio M20に比べると、スタイリッシュモデルとしての資質は充分だろう。レンズ周りはペンタックスお得意のスピンドル加工。本体両サイドはクロームパーツだ。

 向かって右側面が丸みを帯びているため、カメラらしさという点で物足りなさを感じる人もいるかもしれない。ただしこの丸みのおかげで、ポケットから出し入れするときに引っかかりがない。実際、試用中はジャケットの胸ポケットに入れていたが、出し入れは大変スムーズで心地よかった。あまりにもスムーズなので、意味なく何度も出し入れしたほどだ。

 薄型化により、グリップ部がすっぱりとなくなっている。ただし、前面のPENTAXロゴが滑り止めになっているので、親指に加えて中指や薬指の側面に力を入れれば、意外にしっかりと支えられる。少々頼りないが、最近の薄型モデルはほぼすべてのモデルがこうしたタイプなので、この辺りはOptio M30に限らず似たり寄ったりだろう。

 背面の大半を占めるのが2.5型液晶モニターだ。大きさは平均クラスだが、画素数は約11.5万画素と低い。日中屋外での視認性も平均クラスで、順光で明るいと像が見づらくなる。光学ファインダーがないので、状況によってはほとんど勘で撮ることも。常時明るければベストだが、それが無理なら他社でいう「LCDブースター」のような、一時的に高輝度化する機能が欲しいところだ。

 各ボタンは小さいものの、操作に大きな不満はない。ペンタックス製品でおなじみのグリーンボタンも搭載。本来は最もシンプルな撮影モードとなる「グリーンモード」を呼び出すボタンだが、設定により「露出補正」、「ホワイトバランス」など、よく使う項目を割り当てられる。上位機種だとグリーンボタンに最大4機能を登録できるが、本機は1機能のみ。変更までの手数が1つ減るので、この方が便利という人もいるだろう。もちろん、グリーンボタンに登録していないメニュー項目は、普通に撮影メニューから変更できる。





 操作面ではそのほか、電源OFF時の設定を保持する「モードメモリ」が便利だ。ストロボモード、ドライブモード、ズーム位置など細かい項目も設定できるので、自分好みの起動時設定を構築できる。カシオ機にもある機能だが、露出補正も記憶できるのは珍しい。

 バッテリーは薄くかつ小さい「D-LI63」。他社も含め、今春の新製品はこのタイプのバッテリーを採用する機種が多い。薄型化に貢献しているのだろう。ただし、撮影可能枚数が約230枚と少な目(CIPA規格準拠の数値)。再生やカメラ内画像編集を多用していると、もっと少なくなる。撮影者のペースにもよるが、1泊旅行なら。もうひとつ予備が欲しくなる。

 記録メディアはSDHC/SDメモリーカードに対応。SDHCメモリーカードだと、4GBで1,000枚近く撮れる(最高解像度の3,072×2,304ピクセル、最低圧縮の場合)。ここまで撮れると、数カ月は取り替えなしで大丈夫だろう。最近は大容量のSDHC/SDメモリーカードが安くなっているので、コンパクトデジタルカメラでは、カードを本体に入れっぱなしにしておく使い方が一般化しそうだ。そうなると、今まで以上に再生機能の充実が求められると思う。

 本機の場合、カレンダー機能が大量画像から目的の写真を選ぶのが便利。また、カードへは日付ごとにフォルダ分けして記録するので、PCへの取り込み時も前回との差分がわかりやすい。再生速度は全般的に速く、情報表示も充実している。

【お詫びと訂正】記事初出時、「再生モードで起動できない」との記述がありましたが、再生ボタンを押しながら電源を投入すれば、再生モードで起動します。お詫びして訂正させていただきます。


レンズは38~114mm相当、F3.1~5.9の3倍ズーム。電源ONからの起動はスムーズで速い
背面操作部のボタン配置は、ペンタックスとしてオーソドクスなもの。各ボタンは小さいが押しやすい

とても押しやすいシャッターボタン。位置も適当だ。カメラメーカーらしさを感じる
バッテリーは薄型のリチウムイオン充電池。今春は良く似た形状のものを各社が採用している

充電器とバッテリー。バッテリーに比して充電器は大きい。しかもACコードが必要なタイプ。携帯性はあまり良くない

最高感度はISO3200

 レンズは35mm判換算で焦点距離38~114mm相当。開放F値はF3.1~5.9。ペンタックスのラインナップに28mm相当からのズームレンズを備える機種はない。誰しもが28mm相当の広角表現を必要とする訳ではないが、現在のトレンドを考えると、ラインナップに1機種はあってもよいと思う。ただ、それによって薄型ボディが損なわれるのなら、この製品のコンセプトにはそぐわないだろう。それでも個人的には38mm相当ではなく、35mm相当の広角端を希望したい。

 最短距離はマクロモード広角端で10cm。いまひとつ物足りないが、スーパーマクロモードにすると5cmまで寄れる。大抵のメモ的な接写はこれで充分だろう。ただし、焦点距離が44mm相当に固定され、ワイド感の高い写真になるのは覚悟した方がいい。ちなみにマクロモードで望遠側にズームすると、とたんに最短撮影距離が伸びる。これも最近のコンパクトデジタルカメラでは良くあるパターンだ。それよりも私が試用した個体の場合、焦点距離によっては画面右端が流れがちなのが気になった。

 画質は最低感度でも輪郭がざらざらしたタイプで、これも最近のコンパクトデジタルカメラで見かけるもの。空にもカラーノイズが散見される。といっても2Lサイズ程度ならさほど問題なく、プリント上では質感が豊かで、シャープさもある程度損なわれていない。ただしA4サイズになると、写真の内容によっては荒さが気になるケースもある。

 高感度になるとノイズが増えるが、個人的にはISO400までなら許容範囲だ。ISO800やISO1600でも精細感は高い。注目のISO3200は、さすがに各種ノイズが目立つ。特にカラーノイズの粒が大きく、補正も難しい。あくまでも非常用かつメモ用途だろう。撮れないより撮れた方が便利だが、Optio A30のような手ブレ補正機構を搭載していれば、(被写体が動かなければ)2~3段は低感度に設定できると思うと残念だ。

 ちなみに、新設の「Digital SR」モードは、明るさに応じてISO3200まで増感する。通常のISOオートはISO400まで。増感の条件はシャッター速度1/15秒以下なので、暗い室内など手ブレが気になる場所では、ノイズを覚悟して最初からDigital SRにしておくのも手だろう。


撮影時表示。リアルタイムヒストグラムも利用できる
ペンタックスお得意のモードパレット。上位機種に比べ、撮影モードは少ない

感度設定。プログラムオートなら、ISO3200までを任意で設定できる
モードメモリ。電源OFFでどの設定を保持するかを選択可能。露出補正も記憶できる

グリーンボタンに主要機能を登録できる。ペンタックスのカメラでおなじみの機能
ただしM30で登録できるのは1機能だけ。機種によっては4つまで割り付けられる

再生画面 9画面表示

カレンダー表示。グリーンボタンを押すとフォルダ表示に切り替わる
フォルダ表示。撮影日付ごとにフォルダを自動生成できる

再生モードパレット。デジタルフィルタ、トリミング、フレーム合成などが可能
一定時間操作しないと、機能をテキストで説明する

特定色以外をモノクロ化するデジタルフィルターも
ソフトフィルターも内蔵。結構本格的な結果が得られる

まとめ

 起動や書き込みが大きくもたつくことはないし、グリーンボタンによる操作性も良い。「3万円弱で薄型スタイリッシュ」というボリュームゾーンを追いながら、カメラとしての諸機能は手堅いのも特徴。例えば露出はかなり優秀で、1/2.5型のCCDを搭載しながら、他機種に比べて露出補正したくなる結果がほとんどなかった。また、速度と認識数で他社の最新機種に敵わないものの、ポートレートモードなら流行の「顔認識AF&AE」も利用できる。

 家族に勧める1台としてバランスがいいし、その薄さから自分が日常持ち歩くメモカメラとしても面白い。モードメモリによるカスタマイズ性も秀逸なので、普段は日常スナップ的な使い方をし、旅行では奥さんに手渡し、自分はデジタル一眼レフカメラ、という使いわけも面白そうだ。


作例

  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 作例下の撮影データは、記録解像度(ピクセル)/撮影モード/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離/35mm判の画角に相当する焦点距離を表します。
  • 強調のため一部の項目を1行目に抜粋した場合もあります。


◆画角


広角端
3,072×2,304 / プログラム / 1/400秒 / F4.6 / 0EV / ISO64 / WB:太陽光 / 6.3mm / 38mm
望遠端
3,072×2,304 / プログラム / 1/250秒 / F5.9 / 0EV / ISO64 / WB:太陽光 / 18.9mm / 114mm

◆ISO感度


ISO64
3,072×2,304 / 夜景 / 1秒 / F3.9 / -0.7EV / WB:太陽光 / 9.3mm / 56mm
ISO100
3,072×2,304 / 夜景 / 0.6秒 / F3.9 / -0.7EV / WB:太陽光 / 9.3mm / 56mm

ISO200
3,072×2,304 / 夜景 / 0.6秒 / F3.9 / -0.7EV / WB:太陽光 / 9.3mm / 56mm
ISO400
3,072×2,304 / 夜景 / 1/8秒 / F3.9 / -0.7EV / WB:太陽光 / 9.3mm / 56mm

ISO800
3,072×2,304 / 夜景 / 1/13秒 / F3.9 / -0.7EV / WB:太陽光 / 9.3mm / 56mm
ISO1600
3,072×2,304 / 夜景 / 1/25秒 / F3.9 / -0.7EV / WB:太陽光 / 9.3mm / 56mm

ISO3200
3,072×2,304 / 夜景 / 1/40秒 / F3.9 / -0.7EV / WB:太陽光 / 9.3mm / 56mm

◆そのほか


3,072×2,304 / プログラム / 1/800秒 / F5.9 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 10.3mm / 62mm
3,072×2,304 / 風景 / 1/1,250秒 / F4.6 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 6.3mm / 38mm

3,072×2,304 / プログラム / 1/250秒 / F5.9 / -0.7EV / ISO64 / WB:太陽光 / 18.9mm / 114mm
スーパーマクロ
3,072×2,304 / プログラム / 1/640秒 / F4.9 / 0EV / ISO64 / WB:太陽光 / 7.4mm / 44mm

3,072×2,304 / プログラム / 1/320秒 / F5.9 / -0.3EV / ISO64 / WB:太陽光 / 10.3mm / 62mm マクロ
3,072×2,304 / プログラム / 1/50秒 / F3.5 / 0EV / ISO250 / WB:オート / 7.4mm / 44mm

3,072×2,304 / プログラム / 1/200秒 / F4.6 / 0EV / ISO64 / WB:太陽光 / 6.3mm / 38mm 3,072×2,304 / プログラム / 1/500秒 / F5.2 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 8.4mm / 50mm

3,072×2,304 / プログラム / 1/320秒 / F6.5 / -1EV / ISO64 / WB:太陽光 / 12.3mm / 74mm
3,072×2,304 / プログラム / 1/160秒 / F4.6 / -0.3EV / ISO64 / WB:太陽光 / 6.3mm / 38mm

3,072×2,304 / プログラム / 1/30秒 / F3.1 / 0EV / ISO1250 / WB:太陽光 / 6.3mm / 38mm
3,072×2,304 / プログラム / 1/50秒 / F3.1 / -0.3EV / ISO200 / WB:オート / 6.3mm / 38mm

3,072×2,304 / 風景 / 1/250秒 / F7.8 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 16.3mm / 99mm


URL
  ペンタックス
  http://www.pentax.co.jp/
  製品情報
  http://www.digital.pentax.co.jp/ja/compact/optio-m30/feature.html

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ペンタックス、奥行き18mmの薄型モデル「Optio M30」(2007/01/23)



本誌:折本 幸治

2007/03/07 15:27
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