デジカメ Watch

【新製品レビュー】
ニコン ワイヤレストランスミッター「WT-3」(前編)

〜D200専用として登場した「WT-3」の機能とセットアップ
Reported by 天野 司

ワイヤレストランスミッターWT-3とは

WT-3(左)
 「WT-3」は、ニコン「D200」に取り付けて撮影画像をワイヤレスLANにより転送したり、外部からカメラを制御する機能を持つ専用オプションだ。当初は2006年夏の発売とされていたが、実際に発売されたのは9月29日であった。

 デジタルカメラは通常、撮影したデータをメモリカードに記録する。撮影後のデータはメモリカードをPCにセットすることでファイル転送するほか、USBなどを使ってカメラからPCに直接データを転送できる。さらに、デジタル一眼レフを中心とした上位製品では、USB経由でPCからカメラ設定を変更したり、実際に撮影が行なえる製品も多い。

 だが、USBのような有線接続ではなく、ワイヤレスでこれらの機能が行なえる製品というのは今のところ極めて少ない。そしてこの希少な機能を実現してくれるのが、今回紹介するワイヤレストランスミッターWT-3というわけだ。

 そもそもニコンは、他社と比較しても、ワイヤレス機能のサポートに積極的だ。同社で最初にワイヤレス機能をサポートしたのは3年前、2003年11月に発売された「D2H」である。同製品の専用オプションである「WT-1」と組み合わせて、撮影データをPCに自動転送することを実現していた。

 その後2005年2月にはD2Xとそのオプション「WT-2」を発売。コンパクト系でもワイヤレス機能を搭載する「COOLPIX P1」、「同P2」を発売した。つまりWT-3は、ニコンのデジタル一眼レフでは早くも3代目にあたるワイヤレス製品なのである。

 他社製品についていえば、ワイヤレス製品はほとんど存在しない。かろうじてキヤノンがEOSシリーズ向けに「WFT-E1」、コンパクト系で「IXY DIGITAL WIRELESS」などを発売している程度だろう。つまり、現在デジタルカメラのワイヤレス機能で最も先を走っているのがニコン製品というわけだ。

 ただそうしたワイヤレス機能も、その価格が災いしてか、対応機種が限られているためか、あまり注目されることが無かったことも事実だ。実際、デジカメWatchでも、WTシリーズの機能が紹介されたことはこれまでほとんどなかった。

 今回、ユーザーの多いD200が対象機種となったことで、ワイヤレス機能に興味を持つ人は多いだろう。そこで今回は、WT-3ばかりでなく、「WT-1」、「WT-2」についても紹介する。これにより、ニコンのデジタル一眼レフ向けワイヤレストランスミッターがどのように機能強化を果たしてきたか、現在どのレベルにあるのかがわかるはずだ。


初代ワイヤレストランスミッターWT-1

WT-1。ほぼD2H専用のオプションだ
 すでに述べたように、初代ワイヤレストランスミッターWT-1は、「D2H」専用オプションとして本体と同日、2003年11月29日に発売された。

 サポートするワイヤレス規格はIEEE 802.11b、最大11Mbpsの転送速度をサポートする。また、利用できる機能はFTPによる画像転送のみで、後に発売されるWT-2と比べるとかなり見劣りする。どちらかといえば、試験的な色彩の強い製品といってよいだろう。

 D2H専用と述べたが、実はWT-1は、それ以降に発売されたD2シリーズすべてに対応している。しかし機能・性能両面で、D2X以降の機種で利用することは厳しいといわざるを得ない。シリーズを通して最も安価な製品ではあるが、すでに販売が終了している製品であることを考えても、実質的にその立場はWT-2に引き継がれたと考えてよい。


大幅な機能強化を果たしたWT-2

 D2Hの発売から遅れること15カ月。2005年2月24日に発売された「D2X」とともに、2代目ワイヤレストランスミッター「WT-2」も発売された。

 WT-1およびWT-2の外見は極めてよく似ている。外観上での差違は、背面にあるNikonロゴの有無くらい。銘板に記された型番表示を見なければ、両者を見分けることは難しいだろう。


WT-2 WT-1(上)とWT-2。両者の外見上の違いは、左側にあるNikonロゴの有無くらいで、ほとんど見分けはつかない

 良く似た外観に対して、内部は大きく変化した。まずワイヤレス規格では11MbpsのIEEE 802.11bに加え、最大54Mbpsの転送速度を持つIEEE 802.11gを新たにサポートした。転送プロトコルはFTPのみだったWT-1に対し、PTP/IPも新たにサポート、これによりWT-1ではできなかったPCからのコントロールなどをサポートした。対応するカメラボディは、D2X/D2Xs/D2Hsの3機種。残念ながらD2Hはサポートしない。

 WT-1/2はいずれもD2シリーズ専用であるため、形状は、D2シリーズにぴったりフィットするように作られている。競合製品となるキヤノンのWFT-E1は、複数のカメラボディに対応する汎用設計となっており、カメラボディが異なっても共通して使えることと比較すると、ボディごとに別製品となるニコンはちょっと辛いところだ。

 ただWTシリーズには、専用設計であるが故のメリットもある。第一のメリットは、ボディとフィットするデザインのため、ホールディングの点で有利という点だ。

 直方体に近い形状のWFT-E1に対し、WT-1/2は、ホールディング性を大きく損なわないよう形状が工夫されている。縦位置グリップの厚みを増す形でボディに取り付けられるようになっているが、D2系のボディはもともと縦位置グリップが細めのため、シャッターボタンや前後ダイヤル、ボタン類の操作はなんとか行える。さすがに背面マルチセレクターの操作だけは縦位置では行なえなくなるが、カスタムセッティングにより、AF-onボタンにマルチセレクターの機能を割り当てれば代用は可能だ。


WT-2を装着しても縦位置シャッターや前後ダイアルは操作できる。ただ背面マルチセレクターに指は届かないのでAF-ONボタンで代用する必要がある WT-2を装着した状態でも三脚の利用はできる。重いレンズを装着しても、強度的な不安は無い

 三脚が利用できる点は大きなメリットと感じる。WT-1/2は、カメラ本体の三脚穴を利用して取り付けるが、WT-1/2自身にも三脚穴が用意されており、このまま三脚に取り付けることができる。カメラボディと同様、剛性の高い金属製であるため、重量級のレンズを使用した状態で三脚を利用しても不安感はない。

 WT-1/2は、専用の電池を必要としない点もWFT-E1との大きな差だ。WT-1/2の電源は、カメラ本体に取り付けた際、カメラ底面にある専用端子から供給されるようになっているからだ。WFT-E1では、汎用設計のためこうした設計にはなっておらず、カメラ本体とは別にバッテリーが必要となる。特にEOS-1D系の本体と組み合わせる場合、本体とは異なるバッテリーを使わねばならないため、充電管理に頭を悩ませることになる。

 ただ、このような電源端子を専用で用意しながら、WT-1/2とカメラ本体を接続する際にデータ用のUSBケーブルも取り付けないといけないのは大きな不満だ。WT-1/2側面から直接出ているケーブルをカメラ側面にあるUSB端子に接続する必要がある。このケーブルがいかにも「とってつけた」ような印象で、非常に格好悪い。なぜ電源と同じく、カメラ底面で接続できなかったのか、非常に疑問だ。


D2X底面に用意されたWT-1/2接続用の電源コネクタ。電源はここから供給されるので、WT-2本体にバッテリーは必要ない D2X本体とWT-1/2間は、底面端子のほかUSBケーブルも接続する必要がある。あまり邪魔にならない位置であるが、目障りだ

 底面端子部やUSBケーブルには、Oリングおよびゴム製のパッキングが配置され、本体の防塵防滴性能を損なわないようになっている。しかしこれらのカバーを取り付けた状態では、カメラ本体に元々備わるUSB端子カバーがあまってしまう。このカバーは本体に固定されたまま取り外せないため、ぶらぶらした状態でその場に残ってしまう。このあたりの処理も、スマートさに欠けるといわざるを得ない。

 ただ実際に使ってみてはじめて気づいたことなのだが、このような「格好悪い」接続方法になっていることで、簡単にワイヤレス機能を停止できる。もちろんメニューを操作すれば同じことはできるのだが、ケーブルをちょっと抜くだけで簡単にワイヤレス動作を禁止できるのは便利だ。再度ワイヤレスを使うときも、ケーブル挿しなおすだけですぐに使えるようになる。まさかこうした使い方を想定して、あえて短いケーブルを用意したとも思えないが、今後は、このような使い勝手と見た目のスマートさを両立する新しい接続方法を検討してほしいところだ。


D200用に登場した3代目

 3代目ワイヤレストランスミッターWT-3はD200専用として登場した。対応ボディの発売からは10カ月遅れの発売となったわけだが、この10カ月間は筆者にとってかなり辛いものとなった。というのは、筆者はすでに、D2XとWT-2でのワイヤレス環境の快適さに慣れ切っていたためだ。D200を購入したことで、ワイヤレスが使えない「旧世代」の不便さを痛感したのである。

 WT-2とWT-3を比較すると、ハードウェアスペックの面では、両者の差はそれほど大きくは無い。新たに100Base-Tによる有線Ethernet接続ができるようになった点が明らかな差異だが、ワイヤレスが魅力の製品では、有線による接続が可能になったことがどの程度の訴求力を持つかは微妙なところ。

 縦位置グリップを持たないD200用のオプションであるため、WT-3はワイヤレス機能と縦位置グリップ機能、2つの側面を持つこととなった。実際WT-3は、D200オプションとして用意されている縦位置グリップ「MB-D200」とほとんど同じ外見を持つ。縦位置用シャッターボタンやメイン/サブコマンドダイヤル、AF-ONボタンなど、操作系もパーツまで含めてMB-D200と全く同じもののようだ。


WT-3は、縦位置グリップ兼用としてD200に装着する WT-3のシャッターボタンやコマンドダイヤルはMB-D200と同じもののようだ

 MB-D200との明らかな相違点は、バッテリーの搭載能力にある。専用リチウムイオンバッテリー「EN-EL3e」を2本搭載可能なMB-D200に対し、WT-3では1本しか搭載できない。また単3型電池の搭載機能もない。つまり、カメラ本体とWT-3の電源は、いずれも1本のEN-EL3eから供給されることになるわけで、ニコン機の中ではバッテリーの保ちが良くないD200ではちょっと厳しいところだろう。

 ただ装着バッテリー本数が1本になったことで、MB-D200のマイナス点であった剛性感が向上したのは不幸中の幸いだ。MB-D200の場合、大きなバッテリー開口部が災いしてか、強く握るとたわむような不安感があった。WT-3はMB-D200と同じくプラスチック製だが、開口部が小さいおかげで剛性感はずっと高い。WT-1/2と同じく、三脚装着した場合でも強度不足は感じない。

 WT-1/2で不満だったUSBケーブルによる接続方法は、WT-3でもまったく改善されていない。バッテリー装着方法の違いのため、WT-3の方がより短いケーブルとはなったが、スマートさという点ではまだまだだ。コネクタ部にはWT-1/2同様ゴムカバーが用意されているが、カメラ側のカバーがぶらぶらと残ってしまう点も改善されていない。


WT-3では装着できる電池は1本のみになった。電池室カバーにはゴムパッキンが配置されており、防塵防滴能力が担保される WT-3でも、本体との接続に短いUSBケーブルを使用する点は変更されていない

 ACアダプタを使用する場合、カメラ本体ではなくWT-3側に接続する。WT-1/2の場合、本体から電源をもらっていたのに対し、WT-3では、WT-3からカメラ側へ電源を分け与えるようになっているためだ。


ACアダプタ端子とEthernet端子はWT-1/2には無くWT-3のみに存在する WT-3でも、縦位置使用時は背面マルチセレクタに指は届かない

WT-1/2では外部に取り付けられていた近距離用アンテナWA-S1は、WT-3では樹脂製ボディとなったことで本体に内蔵されるようになった
 WT-1/2では近距離用、遠距離用アンテナともに外付けとなっており、ループコイル式の近距離用アンテナWA-1Sが標準添付となっていた。WT-3では、本体がプラスチックになったために近距離用アンテナは内蔵となった。遠距離用アンテナはオプションで、WT-1/2と同じくホイップアンテナ「WA-E1」が利用できる。これを使用した場合、スペック上、見通し150mまでの遠距離通信が可能となる。


ワイヤレス機能

 前出の通り、WT-1では11MbpsのIEEE 802.11b、WT-2/3ではこれに加えて最大54Mbpsの転送速度(理論値)を持つIEEE 802.11gに対応する。同じく54MbpsのIEEE 802.11aには対応していないが、そもそもIEEE 802.11aは、電波法の規制により日本国内では屋外使用が禁じられている。カメラ向けという性格を考えると、11aに対応しないこと自体は問題ではないだろう。

 ちなみに、WTシリーズには米国向けとしてWT-1A/2A/3Aという製品も用意されている。これは、日本国内および海外での電波法の違いに対応したもので、サポートするプロトコルや機能自体は同一だ。

 接続モードは、カメラとPCを1:1で接続する「アドホックモード」と、ワイヤレスアクセスポイントを経由してカメラとPCを接続する「インフラストラクチャモード」の両モードに対応する。ただしアドホックモードは、後述する理由により通信速度が制限されるため注意が必要だ。

 ワイヤレスということで気になるセキュリティだが、WT-1ではWEP、WT-2ではWEPおよびWPA-PSK(TKIP)に対応する。最近のワイヤレス製品では常識ともいえるセキュリティ機能であるが、WT-3ではさらにセキュリティが強化された。暗号方式として、PCでもまだサポートしている製品が少ないAES方式にも対応。さらにWPA2-PSK(AES)を早くもサポートするなど、現時点で考えられる最強のセキュリティ方式をサポートすることとなった。


WTシリーズの比較。登場順に機能が向上しているのがわかる

WTシリーズのセットアップ方法

 セットアップ方法は、大きくわけて以下の3通りに分かれる。

  1.カメラ本体の液晶画面からセットアップ
  2.PC上で設定ファイルを作成、CF経由でカメラ側で読み込み
  3.PCとカメラを接続した状態でUSB経由で直接カメラに設定


WTシリーズがサポートする設定方法

 WTシリーズでの設定項目は多い。そもそも非常に多機能なユニットであるうえに、接続モードやWEP/TKIPキー、IPアドレスなど、通常のデジタルカメラでは縁の無い情報を入力しなければならない。


カメラ本体の液晶画面でWEPキーなどを入力するのはかなり面倒
●本体画面でセットアップ

 カメラ本体の液晶画面で設定する方法は、かなり面倒だ。IPアドレスやネットマスクの設定はともかく、SSIDやWEPキーなどの任意の文字列を入力する場合、表示される一覧の中から必要な文字をひとつずつ拾い出さなければならない。この際、マルチセレクター全体を押し込む「中央押し」が必要となるのだが、この操作が非常に難しいのだ。ちょっと力を入れる方法がずれると、上下左右いずれかの方向キーとして入力されてしまうのだ。

 筆者は自分のことを、他人よりもとりたてて不器用ではないし、さほど気の短い方でもない方ではあると思っている。しかし、D2シリーズの液晶画面でゼロからWT-1/2の設定をやれと言われたら、設定が完了するより前にカメラを投げ出してしまいたくなる。正直な感想を言えば、この設定をカメラ本体だけでやらせようとするのはあまりに無茶だ。せいぜい、入力済みデータを小変更する程度が精一杯だろう。


●CF経由でセットアップ

 手動設定の面倒さを解消するのが、PC上で設定データを入力、CF上に設定データを書き込んだ上でこれをカメラから読み込む方式だ。設定には、ニコンが同社ホームページ上で公開する「Nikon WT Configurator」を使う。

 使用方法は簡単だ、ワイヤレス設定、TCP/IP、FTPの3種のタブで分類された画面上で、必要な設定をすべて入力したあと、「書き出し」ボタンを押せば、入力されたデータが「WLANSET.WT1」という名称のファイルに書き出される。このファイルをCFにコピーし、これをカメラ側で読み込むだけで良い。これとは逆に、カメラ側の設定をCFに保存、これをWT Configuratorで読み出して再編集することもできる。CFを経由するというのは一見面倒に思えるかもしれないが、こうした手間をかけても、設定作業はWT Configuratorを使用する方が遥かに楽だ。


Nikon WT Configurator。WT-1およびWT-2の設定をPC上で行える。ニコンのサイトからダウンロードできる D2xでは、4通りのワイヤレス設定を記憶でき、その中からひとつを選択できる

 1枚のCFに保存可能なワイヤレス設定は1つだけ、という点は気になる。設定ファイルはごく一般的なテキストファイルであり、ファイルサイズはおおよそ400バイト前後しかない(設定内容により前後する)。このため1枚のCFに設定をいくつでも記録できるのだが、カメラ側には設定ファイル名を選択する機能が用意されておらず、常に先頭に記録されたファイルしか読めない。複数の設定を使い分けたい場合、設定ごとに別々のCFを用意するか、設定を変更するたびにPCからCF上のファイルを書き換えなければならない。

 もっともこうしたワイヤレス設定は、たとえば自宅とスタジオといった具合に、せいぜい2、3通りが記憶できれば十分だろう。WT-2の場合、本体内にワイヤレス設定を4つまで記憶可能であるため、面倒なのは初回だけだ。WT-1の場合、設定は1通りしか記憶できないため、筆者の場合は使わなくなった小容量のCFを設定の数だけ用意して使い分けをしている。


●USB経由でセットアップ

 WT-3では、WT-1/2とは違い、USB経由による設定を採用した。PCとカメラとをUSBで接続した状態で、PC側からカメラの設定をダイレクトに書き換えるというものだ。WT-1/2のようにファイルを経由して設定を行う必要は無いかわり、設定は必ずPCとカメラを接続した状態で行わなければならない。

 設定ソフトはWT-3専用に用意された「WT-3 Setup Utility」を使用する。このソフトを使用する場合、ごく一部の設定を除いては必ずPCとカメラを接続した状態で行わなければならない。設定可能な項目は、WT-1やWT-2で入力する内容とほぼ同様で、ワイヤレスLAN関係の設定、TCP/IP関連の設定、FTP関連の設定など多岐に渡る。


WT-3 Setup Utility。カメラ内の設定をダイレクトに変更するため、使用する場合にはPCとカメラを常にUSBで接続しておく必要がある WT-3でも、FTPによる転送設定は、カメラ側で入力および変更が可能だ

 この方式では、カメラ側の設定を変更するためには常にPCが必要となるため、一見不便に感じるかもしれない。しかしWT-3では、内部に記憶可能な設定数は9通りと十分な余裕がある。もちろん9通りの中のどれを使うかは、カメラ側の操作のみで切り替えられるようになっているため、実用上の問題は無い。

 また比較的変更する機会が多いと思われる、ファイルを転送する先のサーバーアドレス(FTPサーバーのアドレス)だけは、カメラ側で変更可能だ。


サポートプロトコル

TCP/IP設定やFTP設定はかなり詳細な項目まで設定可能
 WTシリーズでは、PCとの間の通信にTCP/IPを使用する。設定機能は柔軟で、IPアドレスやネットマスクなど、一般的なネットワーク機器とほぼ同等の設定が可能だ。

 一例を挙げると、IPアドレスの設定では手動設定のほかDHCPによるアドレス自動取得も可能だ。アドホックモードのように、DHCPサーバーが存在しない環境下でもIPアドレスが自動割り当てできるようAPIPA(Automatic Private IP Addressing)もサポートしている。また、DNSによるホスト名解決もサポートしており、FTPサーバー名などを、IPアドレスではなくホスト名で指定することもできる。

 ただし、ルーティング機能では、任意のルーティングテーブルを作成することはできず、デフォルトゲートウェイの設定しか行えない。またIPv6のサポートも無い。もちろん、機器の性格を考えれば、そこまで要求するのは酷というものだろう。

 アプリケーション層では、FTPおよびPTPの2種のプロトコルをサポートする。FTPは撮影データをPCに自動転送する際に使用するもので、WT-1/2/3すべてで利用可能だ。FTP転送時には、anonymousログインのほか、アカウント名とパスワードを使ったログインも行える。FTPポートも変更可能なほか、PORTモードとPASVモードの切替、プロキシ経由での接続も行えるなど、機能的には十分すぎるほど揃っている。

 PTP/IPは、WT-2およびWT-3でサポートされる。カメラとPCとを接続してPC側からカメラの設定を変更したり、シャッターレリーズを行うといった機能が利用できる。ただしこの機能を利用するには、PC側にカメラを制御する専用アプリが必要だ。具体的に言えば、Nikon Capture 4.xに付属のCamera Control、あるいは、別売ソフトのCamera Control Proが必要となる。


PTP/IPで接続中はWindowsの標準機能を使ってもカメラを制御できる
 ニコン製のデジタル一眼レフカメラは、全機種がWIA(Windows Imaging Acquisition)に対応する。WT-2でPTP/IPを用いてPCとカメラを接続した状態では、WIA機能が有効となるため、上記のソフトが無い状態でも最低限のカメラ機能は利用できる。たとえばWindowsのエクスプローラーを使ってカメラ内の画像を取得したり、「カメラとスキャナのウィザード」画面から撮影解像度の変更や、ストロボのモード変更、シャッターレリーズなどが行える。とはいえ、カメラのフル機能が利用できるわけではないので、やはり上記のソフトウェアは必須と考えたほうがよい。

 WT-3に限り、FTPの代わりにPTPで撮影データをPCに自動転送できる。さらに、DPOF機能を用いて、カメラ側操作だけで、PCに接続したプリンタに直接画像をプリント出力することも可能だ。ニコンのワイヤレスプリントアダプタPD-10をプリンタに取り付けておけば、PCなしで、D200から画像をダイレクトプリントすることも可能だ。D200クラスのカメラでダイレクトプリントの必要性がどの程度あるかは未知数だが、機能面ではWT-2から着実に進歩しているといえるだろう。


アクセスポイント

 WTシリーズを紹介する前に、これらとペアで使用すると便利なアクセスポイントについても紹介しよう。すでに述べたように、ワイヤレスLANには、アドホックモードとインフラストラクチャモードと呼ばれる2つの接続モードがある。

 WTシリーズやワイヤレスLANカードを搭載したノートPCなど、ワイヤレス機能を持つ個別の機器のことをIEEE 802.11規格では「ステーション」と呼ぶ。これに対して、ステーションを認証し、LANに接続したり、ステーション同士の間に入って通信の仲立ちを行う専用機器のことを「アクセスポイント」と呼ぶ。

 一般的な使用方法では、ステーションはアクセスポイントによってLANに接続され、ステーション同士もアクセスポイントを経由して互いに通信を行う。こうした接続のことを「インフラストラクチャモード」と呼ぶが、これに対して、アクセスポイントを使用せず、ステーション同士がダイレクトに互いを認証、通信する方式のことを「アドホックモード」と呼ぶ。アドホックモードは、インフラストラクチャモードよりも小規模でネットワークが実現できるというメリットを持つ。

 ただし制限もある。最大の制限は、IEEE 802.11b/g規格では、アドホックモードの利用は最大でも11Mbpsの通信速度しか利用できない点だ。すなわち802.11gの最大54Mbpsという通信速度は、インフラストラクチャモードでしか使えない。

 できるだけ荷物を少なくしたいカメラ用途では、この制限はかなり厳しい。カメラとPCだけあれば利用できる手軽さがアドホックモードのメリットなのに、高速な通信が利用したければ、アクセスポイントを追加するしかないのである。しかも市販のアクセスポイントは、ほとんどの製品が100V商用電源を要求する。屋外やロケ先ではこれらが利用できないこともあるだろう。そこで、これまで筆者が利用してきた、AC電源無しでインフラストラクチャモードが使える環境を紹介しよう。


ASUSTekのWL-167g。クライアント向けのUSBワイヤレスアダプタだが、ソフトウェアによりアクセスポイントとしても動作できる
●ASUSTek WL-167g

 本来は、ステーション向けとして使われるUSBタイプのワイヤレスLANアダプタ。だが、この製品が採用しているRaLink RT-2500では、Windows PCをアクセスポイントとして動作させる「ソフトウェアAP」機能を搭載している。

 WL-167gのドライバは、この機能が利用可能であるため、これを使用しているPCはワイヤレスLANアクセスポイントとして動作させることができる。USBスティックタイプのため、PC本体に内蔵されているものを除けば、最小最軽量でアクセスポイントが実現できる点もメリットだ。

 ただしあくまでソフトウェアで実現するため、パフォーマンスや安定性という点では、単体アクセスポイントと比較するとどうしても劣る部分もある。暗号化方式もWEP方式しかサポートしない。このため筆者も、次に示す「WL-330g」を購入して以降は、ソフトウェアAP機能は利用していない。


ASUSTekのWL-330g。最も初期に発売された超小型ワイヤレスAP。USB電源からだけで動作する
●ASUSTek WL-330g

 同じくASUSTekから発売されている超小型のアクセスポイント。IEEE 802.11b/gのアクセスポイント機能のほか、ワイヤレスLANコンバータとしても利用できる。

 この製品の魅力はなんといってもそのサイズだ。面積はクレジットカードよりも短辺方向がわずかに長い程度。ほぼ直方体形状のため取扱いも容易だ。暗号化はWEP64/128bitのほか、WPA-PSK/TKIPもサポート。登録済みMACアドレス以外からはアクセスさせないといったフィルタリング機能もサポートしており、アクセスポイントとしては必要十分な機能をサポートする。

 さらにこの製品では、USBからの5V電源だけで動作するという大きな特徴がある。今でこそこうした製品はいくつか登場しているが、この製品が発売された当時は、他にこうした製品が存在せず、非常に貴重な存在であった。


ロジテックのLAN-PWG/APR。発売されたばかりの超小型ワイヤレスAP。ルータ機能も備えた高機能タイプで、使い勝手も良い
●ロジテック LAN-PWG/APR

 5月に発売されたばかりの超小型アクセスポイント。ASUSTekのWL-330gと同様、IEEE 802.11b/gに対応、USBからの電源供給だけでも動作するというメリットを持つ。

 本体サイズはWL-330gとほぼ同じだ。重量は55gと、WL-330gよりも軽いのだがその差はわずかに7gなので、誤差の範囲と言ってよいだろう。WL-330gに比べて薄型ではあるが、片側が厚くなった楔形のため、扱いやすさではWL-330gの方が良い。個人的な好みを言わせてもらえば、外観デザイン/形状ともにWL-330gの方が上だと思う。

 ただし後発なだけあって、機能的にはこちらの方が大幅に優れる。第一のメリットは、ブロードバンドルータとしても利用できる3モードであるという点だ。ワイヤレストランスミッタを使用する場合にはあまり関係無いが、出張先のホテルなどでインターネット回線に複数のPCを接続したい場合などには役立つ。

 また、DHCPサーバー機能も搭載するため、必要に応じてカメラやPCにIPアドレスを割り当ても可能だ。暗号方式にWPA-PSK/AESやWPA2-PSK/AESに対応する点もポイントだ。これらはWT-3でもサポートするため、セキュリティを重視する場合には良いだろう。なお後述するベンチマークテストでは、このアクセスポイントを使用して速度測定を行なっている。


 後日掲載の後編では、各種のベンチマークテストを通してWT-3の実力を検証する。



URL
  ニコン
  http://www.nikon.co.jp/
  製品情報
  http://www.nikon-image.com/jpn/products/camera/slr/accessory/wirelesslan/index.htm#wt-3

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天野 司
(あまの つかさ)PC関連ハード/ソフトのレビュー一筋に13年。今回はデジカメWatchなんですが、無線関連ということで、思い切り「パソコンライター」らしいベンチマークを頑張ってみました。他の記事とはちょっと毛色が違っていてすみません。え、顔写真? 今回は手の出演だけで勘弁してください(イラストは、イラストレータ/漫画家の花摘香里さんに描いていただきました)。

2006/11/07 01:16
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