デジカメ Watch

【伊達淳一のレンズが欲しいッ!】
シグマ Macro 70mm F2.8 EX DG

〜絞り開放からキレキレに写る“カミソリマクロ”
Reported by 伊達 淳一

Macro 70mm F2.8 EX DG
 マクロレンズでもっとも人気があるのが“中望遠マクロ”だ。標準マクロよりもワーキングディスタンス(レンズ先端から被写体までの距離)が長いので、レンズや撮影者の影が写り込みにくく、画角も狭いのでちょっと撮影ポジションを変えれば、煩雑な背景もスッキリ整理して、主要被写体を浮かび上がらせることができる。花や虫などの撮影だけでなく、最短撮影距離を気にせず撮影できる中望遠レンズとしてポートレート撮影を楽しむ人も多いレンズだ。

 ただし、撮像素子がAPS-Cサイズのデジイチ(デジタル一眼レフ)に装着した場合には、ほぼ150mm相当の画角になってしまうため、中望遠マクロというよりも望遠マクロに近くなってしまう。フルサイズに比べるとボケ量が少ないAPS-Cサイズのデジイチでは、これくらい望遠の画角で撮影したほうがそれなりに大きなボケを楽しめるが、写り込む背景の範囲が狭くなってしまうので、被写体の置かれた状況がわかりづらくなってしまう。

 背景を単純化して被写体そのものに注目を集めるのには好都合だが、極論すればどこで撮っても似たような写真になってしまう危険もはらんでいるわけで、情報量の少ない薄っぺらな写真になりがちだ。ある程度、被写体の置かれた状況を感じさせつつ、適度にボカして単純化するには、100mm相当の画角が適している。

 そんなニーズに応えてくれるのが、シグマの「Macro 70mm F2.8 EX DG」だ。APS-Cサイズのデジイチに装着すると、105mm相当(キヤノンEOSデジタルは112mm相当)の画角になるので、中望遠マクロそのものの描写を楽しめる。しかも、デジタル専用ではなくフルサイズもカバーしているので、EOS 5Dなどフルサイズのデジイチや35mm銀塩一眼レフでも使用できるのが特徴だ(もちろん、その場合は70mmレンズの画角となる)。

 レンズ単体で等倍までの撮影が可能。ピント合わせは全体繰り出し式で、近距離撮影になるほど鏡胴がニョキニョキッと伸びる。最短撮影距離は25.7cmだが、等倍撮影時には鏡胴が倍近い長さになるので、ワーキングディスタンスはフードを外した状態で約6cm強、フードを装着すると約3cmしかない。


フォーカスが無限遠時(左)と最短撮影距離時(右)。全体繰り出し式なので、近距離になるほど鏡胴が伸びる。鏡胴には撮影倍率が記されている 左がフルサイズもカバーするシグマ Macro 70mm F2.8 EX DG。右がAPS-Cサイズデジタル専用のキヤノン「EF-S 60mm F2.8 Macro」。EF-S 60mmマクロはインナーフォーカス方式なので、最短撮影距離時でも鏡胴の長さは変わらない

 フォーカスリングの回転方向はキヤノンと同じ。HSM仕様ではないので、AF動作に伴ってフォーカスリングも回転するし、AF動作音もやや耳障りだ。鏡胴の長さがそれなりにあるので、フォーカスリングの回転がホールディングに支障はないが、最近のシグマはHSM仕様のレンズも増えているだけに、新規設計のEXレンズがHSM仕様でないのが惜しい。

 それと、付属のフードはバヨネット着脱ではなく、いまどき珍しいネジ式の金属フードだ。PLフィルター装着時にはフードごと回転できるというメリットはあるものの、収納時に逆かぶせしてもピタッとハマらないし脱着するのも面倒だ。フードにもフィルター溝があるので、フードを外さず77mmのキャップをすることもできるが(レンズ自体のフィルター径は62mm)、収納時にかさばるのが難点だ。


付属のフードはネジ式で金属製。PLフィルター使用時にはフードごと回せるというメリットはあるが、着脱は面倒
収納時にはフードを逆かぶせしたいところだが、バヨネット式のようにカチッと固定することはできない

 ちなみに、シグマの50mmマクロも105mmマクロもやはりネジ式のフードを採用しているので、なにか設計者にこだわりがあるのかと聞いてみたところ、「全体繰り出し式のマクロレンズでは、鏡筒をエンジニアリングプラスチック化すると強度を保つ事ができないため、バヨネット化ができないたから」とのこと。だったら、全体繰り出し式ではなくインナーフォーカス化したほうが、近距離撮影時にも鏡胴が伸びず、レンズの重量バランスも崩れないし、ワーキングディスタンスも長く確保できるのに……、と切り返してみると、「全体繰り出し式のほうがマクロ域での画質特性を素直に出しやすく、画質を最重視してこういった仕様を採用した」とのこと。

 確かにその言葉どおり、この70mmマクロの描写力は凄まじく、絞り開放から恐ろしいほどキレキレに写る。まさに“カミソリマクロ”と呼ぶのがふさわしい。金属が光る部分を見ても色ニジミは皆無で、今回撮影した限りでは倍率色収差も認められなかった。マクロレンズ本来の使用目的である“複写”にはピッタリのレンズだ。

 絞り羽根は9枚で、円形絞りではなく少し角張った形状だが、絞り込んでも形状は整っている。ボケの周りに色づきもなく、非常にスッキリとした光点ボケだ。ボケ味は、柔らかいとはいえないものの、特に二線ボケが目立つというわけでもなく、背景までの距離によって良くも悪くもなる感じ。EOS 5DとEOS 30Dのポートレート比較を見ても、フルサイズの5Dでは、絞り開放で口径食がわずかに出る程度で、整った後ボケだ。

 フルサイズまでカバーしているということでEOS 5Dでも実写してみたが、70mmという画角に慣れていないためか、構図を決めるのがむずかしかった。標準マクロほど背景の広がり感を出せないし、中望遠マクロほど背景を単純化できず、どうしても余計なモノが写り込んでしまうのだ。「じゃあ、おまえはズームを使わないのか?」とつっこまれそうだが、確かに、70mmといえば大口径標準ズームのテレ端の画角だし、そう考えれば慣れない画角ではないはずだ。

 ただ、標準レンズだと画角が平凡な分、レンズの効果に頼った作画がむずかしいように、70mmマクロをフルサイズで使うのもむずかしい。どちらかというと、APS-CサイズのEOS 30Dに装着したときのほうが、すんなりと構図が決められた。やはり、APS-Cサイズのデジイチで使ったほうが便利な画角だが、将来APS-Cサイズよりも大きな撮像素子のデジイチを買ったときにもこのレンズならムダな投資にならないのは魅力。絞り開放から安心して使える高解像力のマクロレンズだ。


APS-Cサイズとフルサイズの比較

 APS-CサイズのEOS 30DとフルサイズのEOS 5Dでバストアップのポートレートを撮影してみた。EOS 5Dに装着したときとEOS 30Dに装着したときでは実撮影画角が違うので、人物がほぼ同じ大きさになるように撮影位置を変えている。具体的には、EOS 30Dのほうが画角が狭くなるので、人物からより離れて撮影している。どちらも同じように見えるが、背景の樹木を見るとEOS 30Dのほうがわずかだが離れて見える。



※作例のリンク先ファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。

※写真下の作例データは、記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランスを表します。なお、撮影モードは全て絞り優先AEです。

※一部の作例については、作例データの一部項目を別の行で強調表示しています。


【EOS 30D】
3,504×2,336 / 1/500秒 / F2.8 / 0EV / ISO320 / WB:オート
【EOS 5D】
4,368×2,912 / 1/500秒 / F2.8 / 0EV / ISO320 / WB:オート

EOS 5Dでのボケ味チェック

【F2.8】
4,368×2,912 / 1/500秒 / 0.33EV / ISO200 / WB:オート
【F4】
4,368×2,912 / 1/320秒 / 0.33EV / ISO200 / WB:オート

【F5.6】
4,368×2,912 / 1/160秒 / 0.33EV / ISO200 / WB:オート
【F8】
4,368×2,912 / 1/80秒 / 0.33EV / ISO200 / WB:オート

APS-Cサイズのデジイチで撮影した場合は、赤枠で囲んだ範囲が写る

EOS 5Dによる作例

4,368×2,912 / 1/500秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / WB:オート
4,368×2,912 / 1/500秒 / F4.5 / 0EV / ISO200 / WB:オート

4,368×2,912 / 1/3,200秒 / F3.5 / -0.33EV / ISO100 / WB:マニュアル
4,368×2,912 / 1/200秒 / F3.5 / 0EV / ISO400 / WB:マニュアル

4,368×2,912 / 1/800秒 / F3.5 / 0EV / ISO400 / WB:オート
4,368×2,912 / 1/500秒 / F4 / 0EV / ISO400 / WB:オート

4,368×2,912 / 1/640秒 / F4 / 0EV / ISO400 / WB:オート
4,368×2,912 / 1/160秒 / F5.6 / 0.33EV / ISO200 / WB:オート

4,368×2,912 / 1/1,250秒 / F5.6 / -0.33EV / ISO250 / WB:オート

EOS 30Dによる作例

3,504×2,336 / 1/640秒 / F8 / 0EV / ISO200 / WB:オート
3,504×2,336 / 1/5,000秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / WB:オート

3,504×2,336 / 1/250秒 / F8 / -0.33EV / ISO200 / WB:オート
3,504×2,336 / 1/1,250秒 / F6.3 / -0.33EV / ISO200 / WB:マニュアル

3,504×2,336 / 1/5,000秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / WB:オート
3,504×2,336 / 1/2,000秒 / F4.5 / 0EV / ISO200 / WB:オート

3,504×2,336 / 1/400秒 / F5 / 0EV / ISO200 / WB:オート
3,504×2,336 / 1/250秒 / F5 / 0.33EV / ISO200 / WB:オート

3,504×2,336 / 1/250秒 / F11 / 0.33EV / ISO200 / WB:オート 3,504×2,336 / 1/640秒 / F3.5 / 0EV / ISO200 / WB:オート

3,504×2,336 / 1/250秒 / F3.2 / 0.67EV / ISO640 / WB:オート
3,504×2,336 / 1/400秒 / F3.5 / 0EV / ISO200 / WB:オート

3,504×2,336 / 1/800秒 / F3.5 / 0.33EV / ISO200 / WB:オート
3,504×2,336 / 1/1,000秒 / F3.5 / 0.33EV / ISO200 / WB:オート

3,504×2,336 / 1/250秒 / F4 / 0.33EV / ISO200 / WB:オート
3,504×2,336 / 1/200秒 / F5.6 / 0EV / ISO400 / WB:オート

3,504×2,336 / 1/800秒 / F8 / 0EV / ISO200 / WB:マニュアル
3,504×2,336 / 1/2,000秒 / F4.5 / -0.33EV / ISO200 / WB:マニュアル

3,504×2,336 / 1/250秒 / F4.5 / 0.33EV / ISO400 / WB:オート
3,504×2,336 / 1/500秒 / F4 / 0EV / ISO400 / WB:オート

3,504×2,336 / 1/160秒 / F5.6 / -0.33EV / ISO400 / WB:オート
3,504×2,336 / 1/2,500秒 / F3.5 / 0EV / ISO200 / WB:オート

3,504×2,336 / 1/250秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / WB:オート
3,504×2,336 / 1/400秒 / F4.5 / -0.33EV / ISO125 / WB:オート

3,504×2,336 / 1/250秒 / F8 / 0.33EV / ISO100 / WB:オート
3,504×2,336 / 1/200秒 / F5.6 / 0.67EV / ISO400 / WB:オート


URL
  シグマ
  http://www.sigma-photo.co.jp/
  製品情報
  http://www.sigma-photo.co.jp/lens/macro/70_28.htm

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シグマ、中望遠マクロレンズ「70mm F2.8 EX DG」(2006/07/10)



伊達 淳一
1962年生まれ。千葉大学工学部画像工学科卒業。写真、ビデオカメラ、パソコン誌でカメラマンとして活動する一方、その専門知識を活かし、ライターとしても活躍。黎明期からデジタルカメラを専門にし、カメラマンよりもライター業が多くなる。自らも身銭を切ってデジカメを数多く購入しているヒトバシラーだ。

2006/10/03 01:21
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