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【新製品レビュー】エプソン P-4500

~完成度を増した定番HDDフォトストレージ
Reported by 本誌:折本 幸治

 美しい3.8型透過型の「Photo Fine液晶」のインパクトにより、液晶モニター付きHDDフォトストレージの代表格となったエプソンのPシリーズ。新製品の「P-4500」は、P-4000の基本装備を踏襲しながら、メディアからのコピーを最大2.5倍に高速化したという。さっそく実力を試してみた。

 基本装備は、2.5インチ80GB HDD、3.8型640×480ピクセルの液晶ディスプレイ、CFスロット、SDメモリーカードスロット、リチウムイオン充電池、USB 2.0インターフェイスなど。本体重量はP-4000の415gから若干増した438g。付属のバッテリーはP-4000と共通で、実測値は55gだった。

 手にしてまず思ったのは、P-4000から思ったよりデザインや操作系が変化していること。デザイン面では天面、側面、底面がガンメタリックからヘアライン仕上げの明るいシルバーになり、高級感が若干増した印象だ。

 操作系では、比較的よく使う「Home」ボタンが一番下側から一番上になり、代わりに「Print」ボタンがなくなった。もともとHomeボタンのあった場所には、新機能の「Tag」ボタンが設けられている。また、十字ボタン中央の「OK」ボタンも押しやすくなった印象だ。

 液晶ディスプレイはP-4000同様、「Photo Fine」と称する透過型。その美しさには定評がある。今回も微細な描写と程度な彩度を保っており、撮影後のモニターとして十分活躍できるだろう。ただし個人的には、写り込みを気にしなければならないグレア処理(ツルピカ液晶)の採用に、ビューアとして疑問を感じる。


左からP-4500、P-4000 左からAV出力、リセット、USB 2.0、DC入力

電源スイッチ 付属品のACアダプター(上)、イヤフォン(下段左)、リモコン(同右)

Homeメニュー 4×3サムネイル表示

8×8サムネイル表示 リスト表示

大幅に高速化した画像取り込み

 P-4500でコピー速度が高速になったのは、TrueIDEモードでの転送をサポートしたためという。正式にTrueIDEの対応を謳うのは、フォトストレージとして初めてではないだろうか。

 実際にD200で撮影したRAWデータ1.8GB分(238ファイル)を2GBのCFに入れ、P-4500とP-4000のCFスロットからコピーして、それぞれの時間を計ってみた。メディアはサンディスク「Extreme III」。5回計測して平均を取ると、P-4500が4分50秒16、P-4000が12分51秒33。圧倒的にP-4500が高速という結果になった。

 なお、SDメモリーカードスロットからのコピー(RAWデータ1GB分110ファイル)では、P-4500が2分59秒5、P-4000が6分6秒5という結果を得た。使用したSDメモリーカードはATP ProMax 1GBで、これも5回計測した平均値。「フォトストレージは遅い」といわれ続けたスロットからの転送速度が、ここまで改善されたのはうれしい。

 もっとも、実際の運用では複数枚のメディアを所持し、画像で一杯になったメディアをストレージに吸い出している間、別のメディアで撮影を続行していることが多いと思う。そのため利用スタイルによっては、画像取り込み時の転送速度はさほど問題にならないかもしれない。


CFとSDメモリーカードのダブルスロットを搭載 バッテリー。P-4000と共通だが、コピー時の駆動時間が延びた

 しかし、この種の製品は、コピーに要する時間が短いほどバッテリー寿命が伸びる関係にある。同社の製品情報ページによると、フル充電でHDDに転送できる総容量は、P-4000が約16GB、対してP-4500は約50GBと大幅に増加している。

 実際に撮影に持ち出し、バッテリーがなくなるまでコピーし続けてみたところ、先にデジタル一眼レフカメラのバッテリーがなくなった。撮影スタイルにもよるが、2~3泊の撮影旅行なら充電器は必要ないだろう。

 また、コピー中にほかの動作を受け付けないP-4500/4000にとって、コピーに要する時間が短いほど利用機会が高まる。特に動画再生や音声再生を利用するユーザーなら、少しでも早く再生機能を利用できるのはメリットだ。

 転送関連ではもう1点、転送終了を音で知らせる機能が便利。「短い(音量小)」、「短い(音量大)」、「長い(音量小)」、「長い(音量大)」、「なし」の5種類から選ぶことができる。


新たにタグ機能を搭載

 新機能として、P-4500に保存した画像にタグを付けることが可能になった。メニューから選択可能な「音楽再生時の壁紙」のほか、計10種類のタグを設定できる。タグごとにフィルターをかけて表示したり、全HDD内から同じタグ画像をまとめて表示できる。

 これはP-4000にあった「アルバム」に相当するもので、タグ名の編集も可能。うまく設定できれば、10種類のアルバムが作れることになる。タグを付けるといっても、画像にIPTCやxmpなどの付加情報をつけているわけではなく、PCに転送しても、タグをキーにした検索は行なえないようだ。

 個人的には、「P-4500内でのレーティング、またはキーワード付加」→「PCへ転送」→「Adobe BridgeなどのソフトでP-4500と同じ状態で管理」という流れを望んでいたが、的外れな期待だった。

 そのほか、RAWデータの拡大表示倍率が上がっている。P-4000/2000で要望の多かった機能で、エプソンによるとJPEGとほぼ同等、最大で等倍の表示に対応するという。ただし、P-4500から対応を謳うニコンD200のRAWデータの場合、貸出機のP-4500では一切の拡大表示が行なえなかった。

 Exifなど画像の情報表示は秀逸。本体のDispボタンを押すことで、ヒストグラムと同時に機種名など各種の情報を確認できる。動画対応タイプのフォトストレージの情報表示が貧弱な中、P-4500はさすがフォト機能を主体とした製品だけあって、このあたりの仕様は充実している。


デフォルトで選択できるタグの一覧。名称変更も可能 タグ設定。画像右上のカラーバーが各タグの付加を表す

画像情報の表示 パスワード設定も行なえる

まとめ

 唯一、スペックダウンしたのが起動時間。計測すると、P-4500が10秒07、P-4000が5秒47とP-4500が劣勢だ(ともに5回計測しての平均値)。フォトストレージ用途だと頻繁に起動/シャットダウンを繰り返すことはないが、プレーヤーとしての利用を主体に考えている人には、残念なスペックダウンといえる。フォトストレージ用途としても、せわしない撮影の途中でコピーするとなると、起動は速いに越したことはない。その後のコピーでP-4000との差を取り戻すことは可能だが……。

 ともかくP-4500は、HDD容量、転送速度、電池寿命、対応RAWファイルの豊富さなど、基本仕様において隙がない。ペンタックス*ist Dシリーズユーザーをはじめ、SDメモリーカードスロットの装備もありがたいところだろう。加えて、P-4000/2000の不満点をまじめに対策した印象を受ける。動画再生も楽にこなす上、動画の一部分をダイレクトプリントするといった変わった機能もある。今後は、よりキビキビした動作、本体の軽量化、Ethernetの搭載などに期待したい。


しっかりしたポーチが付属する

 また、現在の日付昇順、日付降順、ファイル名昇順、ファイル名降順に加えて、ファイル形式別に並び替える機能があれば、サムネイル表示でRAW+JPEG同時記録の画像を管理する際に便利なはずだ。

 購入にあたって気になるのは、実売75,000円前後という価格だろう。そこそこ高性能ないまどきのレンズが買える値段なので、撮影用品としては少々高価に感じる。とはいえ、HDDフォトストレージに興味があるデジタル一眼レフカメラユーザーなら、検討に値する製品だろう。



URL
  エプソン
  http://www.epson.co.jp/
  製品情報
  http://www.i-love-epson.co.jp/products/colorio/photoviewer_digitalcamera/p4500/

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エプソン、高機能フォトストレージ「P-4500」(2006/03/15)



本誌:折本 幸治

2006/04/28 01:16
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