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【新製品レビュー】カシオ EXILIM ZOOM EX-Z60

~コストパフォーマンスが高いニューエントリークラス
Reported by 本誌:折本 幸治

 EXILIM PRO、EXILIM ZOOM、EXILIM CARDの3ラインが存在するカシオのラインナップ。今春は「EXILIM ZOOM EX-Z850」を筆頭に、「同EX-Z600」、「同EX-Z60」と、ZOOM系に3機種を投入している。このうちZ850は、EXILIM PRO系並みの撮影機能を持ったフラッグシップ。実売40,000円弱のZ600は、ボリュームゾーンに対応するミドルクラスとなる。また、薄型スタイリッシュモデルの「EXILIM CARD EX-S600」も2005年末から45,000円前後で推移している(掲載時は4万円前後まで低下)。

 そんな中、EX-Z60はその位置付けが面白い。店頭予想価格は35,000円前後。エントリーというには高額で、Z60より下位のモデルはない。また、3万円台はある意味空白地帯といえる微妙なレンジだ。新機種では松下電器の「DMC-LZ5」、キヤノンの「PowerShot A700」ぐらいだろう。これらの機種にはプラボディながら高倍率ズームレンズという魅力があるが、対するZ60は平凡な3倍ズーム、600万画素CCDだ。

 価格的にエントリークラスでもなく、売れ筋のミドルクラスでもない。不思議な位置付けのEX-Z60を試してみた。


外観

 外観はS600を思わせる薄型ボディで、6面とも金属。前面にはヘアライン仕上げもあり、レンズ周りはスピンドル加工と高級感は高い。EX-Z600と比べても質感に遜色はなく、デジタルカメラに詳しい人ほど「3万円台」といわれると反論したくなるかもしれない。もっとも、薄いといってもEX-S600の奥行き16.1mm(最薄部13.7mm)にはかなわないし、よく見ると操作ボタンも樹脂製で、一部にZ600やS600に比べると若干安っぽい箇所も認められる。

 液晶モニターは2.5型。このあたりもしっかりとトレンドを抑えている。ただし画素数は低めの11.5万画素。ちなみに、S600は2.2型8.5万画素、Z600は2.7型15.4万画素だ。




 また、同じ春モデルのZ600やZ850は、約1,200cd平方mという強力なバックライトを新たに搭載している。省電力化のおかげで電池寿命を落とすことなく、屋外での視認性が驚くほど高い。一方、Z60は従来と同等の明るさに抑えられている。利用者によっては大きな差に感じるかもしれない。

 ボタン配置は、EX-Z600とEX-S600の“いいとこどり”といった印象。EXILIMの場合、撮影モードと再生モードを切り替える「RECボタン」と「PLAYボタン」をよく使うが、EX-S600のそれらは液晶モニター上の遠い場所にあり不便だった。EX-Z60は十字ボタンのすぐ上にあるので使いやすい。シャッターボタンはS600を思わせる横長タイプ。S600ほど軽快なタッチではなく、押し心地は可もなく不可もなく、平凡な印象だ。

 少し変わっているのは、ボディ底面の金色にメッキされた端子。形状はZ600のクレードル端子と同じに見えるが、Z60にクレードルは付属しない。代わりに、付属のAVケーブルを挿すことができる。
AVケーブルを底面に接続する機種は珍しい。

 カシオに取材してみると、やはり本来はクレードル用端子で、海外モデルにはクレードルが付属するとのこと。国内ではオプションでも用意されない。


シャッターボタン周り バッテリーはS600と共通

比較的小型の充電器 AV出力端子は底面に装備

基本仕様

 撮像素子には1/2.5型の有効600万画素CCDを採用。サイズと有効画素数こそZ600と同じスペックだが、総画素数がZ600の618万画素に対し、637万画素となっている。別の素子なのだろう。春モデルでは一般的なCCDサイズと画素数なので、このあたりにもエントリーらしさはない。

 感度設定もZ600と同等。2005年6月発売の「EX-S500」から続く「アンチシェイクDSP」を採用し、高感度での撮影にも対応している。具体的には、撮影設定の「ブレ軽減オート」をONにする、またはBSの「ブレ軽減」、「高感度」を選択することで、最大ISO800まで自動的に増感。シャッター速度の上がり方も早く、室内でもガシガシ撮れるのはありがたい。さらに、エントリークラスで省略されがちなISO感度の固定機能も備えている。

 ただしノイズはそれなりに目立ち、さらにISO800になると手ブレしたかのように輪郭線が崩れる。このあたりもZ600に近い印象を受ける。ちなみにS600は最大ISO1600だ。

 ISO固定と並び、エントリーモデルでよく省略されているのが測光モードだ。分割測光のみ、あるいは中央重点のみという形式が多いが、Z60では、マルチパターン、中央重点、スポットと一通りを揃えている。また、同じく省かれがちなワンプッシュホワイトバランスも搭載。シャッター速度も最高1/2,000秒、BSを組み合わせれば最長4秒と、一般的な撮影に問題はないだろう。

 そのほか、ストロボを連続3回発光しながら連写する「フラッシュ連写」、ストロボの発光を抑える「ソフト発光」、3回連続でレリーズする「トリプルセルフタイマー」など、EXILIM春モデルの新機能を装備。静止画用BSの数も計33と、機能面で上位機種との違いを見つけるのが難しいくらいだ。

 はっきりと異なるのがレンズだろう。Z600およびS600は、どちらも焦点距離38~114mm相当(35mm判換算)、F2.7~5.2のレンズを採用し、見た目もほぼ同じ。一方、Z60は焦点距離こそ同じだが、開放F値がF3.1~5.9と暗い。増感するので問題ないかも知れないが、ノイズの面で不利なのは確か。また、歪曲収差がワイド端、テレ端とも比較的目立つのが気になった。

 とはいえ、マクロの最短距離は約10cmと、Z600およびS600の約15cmより被写体に近づけるのはうれしい。他社のコンパクト機に比べると10cmでも物足りないが、マクロに弱い最近のEXILIMシリーズのことを考えると、白眉といってよいだろう。

 またエントリーユーザーを意識してか、Z60だけ「タイムスタンプ」という機能が利用できる。いわゆる日付写し込みだ。


テレ端がF5.9と暗いレンズ。コストダウンのしわ寄せだとすると悲しい 「ブレ軽減」をオートにすると、プログラムモードでもISO800まで増感する

ベストショット(BS)でも「ブレ軽減」を選択可能 同じくISO800まで増感する「高感度」

メニューと操作性

 メニューデザインもS600、Z600などとほぼ同じ。タブで「撮影設定」、「画質設定」、「設定」の3メニューに分けられたタイプで、シリーズ共通のものだ。MENUボタンを押すとカーソルがタブに戻ることを覚えておくと快適に操作できる。BSの新規登録も可能で、自分好みのパラメーターの組み合わせを保存して呼び出せる。また、撮影中の情報表示もZ600などとほとんど同じで、RGBリアルタイムヒストグラムも表示できる。

 十字ボタンの左右に機能を割り当てられる「左右キー設定」も利用できる。EXILIMシリーズ共通の機能で、フォーカス方式、EVシフト(露出補正)、ホワイトバランスなどを直接左右キーで変更できる。これも上位機種にある機能だ。

 メニュー周りで大きく違うのが、「easyメニュー」の存在だろう。設定内容を「フラッシュ」、「セルフタイマー」、「画像サイズ」に限定して表示するもので、他社でいう「かたんモード」などの初心者向けモードにあたる。各項目を選択すると説明文を表示する。

 操作感も問題ない。EXILIMシリーズのよき伝統を受け継ぎ、起動、AF、撮影間隔などでストレスを感じることはないだろう。なお、S600だと撮影後に拡大表示が可能になるまで、わずかに待たされることがある。Z60ではほとんど瞬時に拡大できる。

 バッテリーはNP-20。S600のバッテリーと同じものになる。薄型のため、CIPA規格基準の撮影枚数は約180枚と少ない。同じバッテリーのS600が約300枚。Z600はより大型のバッテリーを使用するだけあって、約550枚とダントツに多い。


「左右キー設定」で各種機能を左右キーに割り当てられる 多くの機能で電源OFF時の設定を保存するかリセットするかを選択可能

easyモードへの切り替えは通常モードのメニューから行なう easyモードのトップメニュー

easyモードのフラッシュ設定 同じくeasyモードの画像サイズ設定

まとめ

 3万円台という価格ながら上位モデルと遜色ない機能と、何より高い質感がすばらしい。正直、とてもエントリーモデルを手にしているとは思えなかった。人前で出すのに躊躇することはないだろう。

 上位機種のZ600の立場がないくらいだが、Z600の売りである2.7型液晶モニターや約550枚のバッテリー寿命はあきらめなければならない。レンズも暗いので、若干増感する機会が多くなるだろう。そのあたりをどう判断するかで、購入者の評価は変わるはずだ。


作例

※作例のリンク先ファイルは、撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
※写真下の作例データは、記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。


◆ISO感度


2,816×2,112 / 5秒 / F3.1 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 38mm 2,816×2,112 / 1/4秒 / F3.1 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 38mm

2,816×2,112 / 1/8秒 / F3.1 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 38mm 2,816×2,112 / 1/15秒 / F3.1 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 38mm

2,816×2,112 / 1/25秒 / F3.1 / 0EV / ISO800 / WB:オート / 38mm

◆歪曲収差


2,816×2,112 / 1/200秒 / F3.1 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 38mm 2,816×2,112 / 1/125秒 / F5.9 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 114mm

◆一般作例


2,816×2,112 / 1/200秒 / F3.1 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 38mm 2,816×2,112 / 1/100秒 / F3.6 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 51mm

2,816×2,112 / 1/640秒 / F6.4 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 75mm 2,816×2,112 / 1/200秒 / F5.7 / -0.3EV / ISO50 / WB:オート / 63mm

BS「夕日を写します」
2,816×2,112 / 1/100秒 / F8.4 / 0EV / ISO50 / WB:晴天 / 114mm
2,816×2,112 / 1/400秒 / F4.4 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 38mm

2,816×2,112 / 1/400秒 / F5.9 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 114mm 2,816×2,112 / 1/400秒 / F5.9 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 114mm

2,816×2,112 / 1/200秒 / F5.9 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 114mm 2,816×2,112 / 1/250秒 / F3.1 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 38mm

ソフト発光
2,816×2,112 / 1/320秒 / F7.7 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 100mm
BS「夜景と人物を写します」
2,816×2,112 / 3秒 / F4.5 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 75mm


URL
  カシオ
  http://www.casio.co.jp/
  製品情報
  http://dc.casio.jp/product/exilim/ex_z60/

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本誌:折本 幸治

2006/04/11 00:05
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