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【新製品レビュー】富士フイルム FinePix V10

ノンストロボ&ストロボの2枚撮り機能を搭載する500万画素機
Reported by 大浦タケシ

 富士フイルムのFinePix V10は、1/2.5型スーパーCCDハニカムHRを搭載する512万画素機だ。FinePix Z2と同様にISO1600までの高感度撮影を可能にし、液晶モニターはコンパクトデジとしては最大の3型を搭載。ユニークなノンフラッシュ&フラッシュの2枚撮り機能を新たに採用する。大型量販店での実勢価格は44,800円前後である。





高級感のあるボディ

 ボディは正面から見ると、スクエアに近い感じ。青いイルミネーションが印象的だった富士フイルムの初代スタイリッシュコンパクトデジカメ「FinePix F401」の末裔であることを知らしめてくれるものである。

 サイズは幅83×23.3×63.5mm(幅×奥行き×高さ)で、同じ撮像素子を搭載するFinePixの“スリム”担当であるZ2とくらべ幅で7mmほど小さいものの、高さで8.5mm、奥行きで4.7mm上回る。実際手に取ってみても、ちょっと大きく感じられるものだ。ちなみに重量はバッテリー、メモリーカード(xDピクチャーカード)込みでZ2より20g重い170gである。

 カメラ前面部は横に走るヘアライン処理がなされれる。この部分は焼き付け塗装が施され、高級感あるものだ。カラーバリエーションは全部で3色。掲載した写真のガンメタリックのほか、定番的なシルバーとインパクトのあるオレンジが用意される。


バッテリーはリチウムイオン充電池を使用。容量は750mAhとやや少なめ。メディアはxDピクチャーカードを使用する 光学3.4倍フジノンズームレンズを搭載。焦点距離は35mm判換算で38~130mmに相当する 充電はACアダプタから直接カメラ本体に接続して行なう。これはこれで便利

 レンズは光学3.4倍ズームを搭載。焦点距離は6.3~21.6mm、F2.8~5.5で、35mm判換算では38~130mmに相当する画角だ。コンパクトデジカメではいつものことだが、ワイド端がやっぱりもの足りない。テレ側をデジタルズームに任せてでも、ワイド側に光学的な焦点距離を振ったほうがよいと感じるのは私だけではないと思う。

 だが、フィルムカメラも含めて過去にそのようなコンパクトカメラがいくつかリリースされたが、一部を除きさほど人気が出なかったことを考えると、どうしても望遠側に重きをおくものとなってしまうのは致しかたないところ。なお起動時のレンズの繰り出しが速く、素早い撮影スタンバイを可能にしている。

※作例のリンク先は撮影画像をコピーしたものです。
※キャプション内のデータは画像サイズ(ピクセル) / シャッタースピード(秒) / 絞り値 / 露出補正値 / ISO感度 / ホワイトバランス / 実焦点距離(mm)です。


広角端
2,592×1,944 / 1/800 / F2.8 / -0.67 / ISO64 / AWB / 6.3
望遠端
2,592×1,944 / 1/400 / F5.5 / -0.67 / ISO100 / AWB / 21.6

大きな液晶モニターと操作性を両立

 背面の3型液晶モニターには、明るい屋外での使用でも見やすい「微反射タイプ」を採用する。再現される画質は色のかぶりや彩度が高すぎることがなく、ニュートラル。23万画素と高精細でたいへん見やすい。文字表示やアイコンも適度な大きさで視認性の高いものである。ビュアーとしての機能も充実しており、画面の大きさを活かして最大30コマの一覧表示ができたり、多彩なスライドショー機能も搭載。さながら手のひらにのる写真アルバムといった感じである。

 しかも「パズル」、「ブロック崩し」、「迷路」、「シューティング」の4つのゲームまで内蔵しており、撮影以外も楽しめるカメラに仕上がっている。撮影中は、カメラを構えると右手親指によって液晶モニターの一部が隠れていまうこともあったが、大きくて見やすいことの恩恵の方がはるかに大きいのである。


30コマの一覧表示が可能 ゲームのひとつである「パズル」は、撮影した画像をパズルの絵にすることができる シューティングゲーム

 液晶モニターで占められるカメラ背面部にわずかに残されたスペースにボタン類がレイアウトされる。そのため、操作の中心となる十字キーは横一列に並ぶものに変更されている。最初は戸惑うこともあるものの、各メニューの階層が浅いこともあって操作性はさほど悪くない感じだ。ボタン類への機能の割り当てはZ2をはじめとする他のFinePixと同様なので、デジタルカメラに慣れているユーザーならば初見でも迷うことは少ないと思う。

 使用するメディアはxDピクチャーカード。デジタル一眼をはじめとする他のメーカーのデジタルカメラを所有しているのであれば、メディアの使い回しに不満がないわけでもないが、このカメラがターゲットとするユーザーを考えるとさほどの問題はないだろう。むしろ、最近のコンパクトデジタルカメラにしては珍しく、緊急時にはありがたい内蔵メモリが搭載されていなほうがちょっと気になるといえる。


背面部は液晶モニターに占められ、操作ボタン類はわずかなスペースに追い込められる。中央部の3つのボタン類が従来の十字キーに代わるものだが、個人的には使い勝手は悪くないと思う シャッターボタン部のリングボタンがズーム用だが、ボディの割には大きく操作しやすい。「F」と書かれたボタンがファインピクスフォトモード用のもの 静止画と動画の選択ボタンはカメラ側面部にレイアウトされる。設置されている場所のためか、いつの間にか動いてしまっていることも多かった

逆光などにも生かせる2枚撮り機能

 FinePix V10は最高感度ISO1600での撮影を実現している。コンパクトデジタルカメラの中には、最高感度を選択すると電気的に画素を統合し、有効画素数を減らすことで不足する光量を補填するものも多い。だが、本機は同社の「リアルフォトテクノロジー」技術により512万画素の有効画素数を維持している。最高感度での画質はさすがに解像感が劣りノイジーではあるものの、まったく使いものにならないようなレベルではない。ノイズレベルから画質を求めるのであれば、実用となるのはISO800までなのだが、定常光でのアベイラブル撮影では手ブレを抑えた撮影を可能としている。


ISO64
2,592×1,944 / 1/26 / F2.8 / -1.33 / ISO64 / AWB / 6.3
ISO100
2,592×1,944 / 1/38 / F2.8 / -1.33 / ISO100 / AWB / 6.3

ISO200
2,592×1,944 / 1/75 / F2.8 / -1.33 / ISO200 / AWB / 6.3
ISO400
2,592×1,944 / 1/150 / F2.8 / -1.33 / ISO400 / AWB / 6.3

ISO800
2,592×1,944 / 1/300 / F2.8 / -1.33 / ISO800 / AWB / 6.3
ISO1600
2,592×1,944 / 1/600 / F2.8 / -1.33 / ISO1600 / AWB / 6.3

 新しい機能であるノンストロボとストロボの2枚撮り機能は、高感度撮影に強いV10ならではのものだ。1回シャッターを押すと、まず「ナチュラルフォトモード」で撮影。このモードはまず手ブレや被写体ブレを抑えたISO感度とシャッタースピードが設定され、定常光を活かした撮影を行なう。直後に、今度はストロボを発光しブレを確実に抑える撮影を行なうというもの。

 「ナチュラルフォトモード」での撮影でブレが発生した際の“保険”となるばかりか、定常光とストロボ光による雰囲気の異なる写真が同時に得られる。また薄暗いようなシーンばかりではなく、逆光での撮影のようなシーンでも使うことは可能だ。

 なお、従来どおり「ナチュラルフォトモード」だけによる1カットの撮影も可能。ストロボ光によるぎらついた感じや背景が暗くなってしまうことが好きでないなら、常時このモードにセットしておいてもよさそうである。


自動的にノンストロボとストロボの2枚撮りを行なう「NP&フラッシュ」モードが新しく装備された 従来どおりストロボを使わない「ナチュラルフォト」モードもある

NP&フラッシュモードの作例。1枚目はナチュラルフォトモードでストロボを使わずに撮影する
2,592×1,944 / 1/60 / F2.8 / 0 / ISO400 / AWB / 6.3
NP&フラッシュモードの作例。2枚目はストロボを発光
2,592×1,944 / 1/60 / F2.8 / 0 / ISO400 / AWB / 6.3

 FinePixシリーズでは定番ともいえる「ファインピクスフォトモード」も当然搭載する。ファイルサイズ、ISO感度のほかカラー設定に特化した設定機能だが、これが定番化するだけあって意外と便利だ。いわゆるファンクションボタンに該当するもので、作画意図に応じフィルムを選択するような感覚で設定が行なえる。メニューボタンとは別に、カメラ上部に専用のボタンを備える。ちなみにカラー設定ではデフォルトの「F・スタンダード」、同社のリバーサルフィルム、ベルビアに準じたビビッドな色調の「F・クローム」、モノクロの「F・B&W]が選べる。


F・スタンダード
2,592×1,944 / 1/850 / F2.8 / -0.67 / ISO64 / AWB / 6.3
F・クローム
2,592×1,944 / 1/125 / F7.4 / -0.67 / ISO64 / AWB / 6.3
F・B&W
2,592×1,944 / 1/850 / F2.8 / -0.67 / ISO64 / AWB / 6.3

F・クローム
2,592×1,944 / 1/85 / F3.5 / -0.33 / ISO200 / AWB / 10
F・クローム
2,592×1,944 / 1/180 / F7.4 / 0 / ISO64 / AWB / 6.3

F・クローム
2,592×1,944 / 1/100 / F4.9 / -0.67 / ISO200 / AWB / 17.6
F・クローム
2,592×1,944 / 1/450 / F2.8 / -0.33 / ISO64 / AWB / 6.3

 あくまでも私見だが、コンパクトデジタルカメラは性能的にも成熟が進み、そろそろ頭打ちに近い状態だといえるだろう。新しいカメラがリリースされても、ライバルに対し明確なアドバンテージとなるようなものを持つものは少ないように感じられる。そんな中で登場したFinePix V10はいくつかの特徴ある機能を携えたカメラといえる。ぜひ一度店頭で手にとってみることをオススメする。



URL
  富士フイルム
  http://fujifilm.jp/
  ニュースリリース
  http://www.fujifilm.co.jp/news_r/nrj1461.html
  製品情報
  http://fujifilm.jp/personal/digitalcamera/finepixv10/

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大浦タケシ
(おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に写真雑誌等の記事を執筆する。プライベートでは写真を見ることも好きでギャラリー巡りは大切な日課となっている。カメラグランプリ選考委員。

2006/03/31 01:13
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