デジカメ Watch

【新製品レビュー】コダック EasyShare V570

〜超広角23mmをカバーする「二眼」デジカメ
Reported by 中村 文夫

EasyShare V570。価格はオープンプライス。店頭予想価格は5万円前後の見込み
 コンパクトデジカメ市場も成熟期を迎え、どのメーカーも他社との差別化が必至になっている。こんな中で誕生したのが、コダックEasyShare V570だ。最大の特徴は通常の撮影用レンズのほかに超広角撮影専用レンズを装備したこと。35mm判の39〜117mmに相当するズームレンズに加え、23mm相当する超広角レンズを1台のボディに搭載している。さらに屈曲光学系の採用によりクラス最薄ボディも実現。いうなれば、松下電器「LUMIX DMC-LX1」に続く個性派デジカメの誕生である。

 レンズを2つ搭載したカメラと聞くと、今から20年以上も前に流行った銀塩の2焦点コンパクトカメラを思い出す。このカメラは1台のボディに標準と望遠レンズを内蔵。スイッチの切り替え操作で異なった画角の撮影ができることから、ちょっとしたブームになった。しかし間もなくズームレンズを搭載したコンパクトカメラが登場。あっという間に姿を消した。いわばズームコンパクトが登場するまでの過渡期に現れた繋ぎ的な商品だったわけだ。

 V570のコンセプトは、昔の2焦点コンパクトとはまったく違う。要するにコンパクトデジカメが苦手とする超広角域をカバーするため、専用レンズを新たに追加したのがこのカメラなのだ。

 やみくもにズーム域を広げるのではなく、デュアルレンズという道を選んだ点がとてもユニークだ。また銀塩の2焦点コンパクトと大きく違う点は、CCDを含む独立した光学系を2つ内蔵したこと。デジカメならではの特性を活かした優れたアイデアといえるだろう。


23mm相当の画角を誇る超広角レンズ

 カメラを正面から見て、上にあるのが超広角撮影専用のウルトラワイドレンズだ。焦点距離は3.8mmで開放F値は2.8。35mm判に画角を換算すると23mmに相当する。対角線画角は86度で、これまで一眼レフタイプのカメラでしか体験できなかった超広角撮影が手軽に楽しめる。レンズ構成は4群5枚で描写力も高い。

 ただひとつ残念な点は、ピントが固定式のパンフォーカスレンズであることだ。とりあえず80cm以遠はシャープに写るが、近距離だとピンボケになってしまう。さらにウルトラワイド時はマクロモードも利用不可能。狭い室内で記念写真を撮ったり、旅行先でのスナップなら十分だが、思い切り被写体に近づいてパースペクティブを強調した撮影ができない。上級者にとっては不満が残る部分だ。

 なお、超広角レンズには直線が彎曲して写るディストーションが付き物だ。だがV570の場合、カメラ内に歪みを補正するソフトを内蔵。これを利用すれば歪みを軽減した超広角撮影ができる。また、この機能をOFFにすれば、わざと歪みを残すこともできる。






実用的な通常撮影用ズームレンズ

 下側のレンズが通常の撮影用で、焦点距離は6.4〜19.2mm。35mm換算で39〜117mmに相当する使いやすいズームレンズだ。最短撮影距離は60cmだがマクロモードを利用すれば、広角側で5cm、望遠側で30cmの接写ができる。

 また両レンズともプリズムを使用した屈曲式光学系の採用により、スイッチをオンにしてもレンズはフラットな状態に保たれるうえ、ズーミングしても光学系の外から見える部分は移動しない。レンズの堅牢性やカメラの小型化には非常に有利だが指紋が付きやすいのが難点だ。さらに広角時はカメラを構えた自分の指が写り込みやすいので注意が必要だ。

 通常撮影用レンズのワイド端の焦点距離は6.4mmで、ウルトラワイドレンズとの間には焦点距離2.6mmのブランクがある。だがデジタルズームをONにすれば、この間を埋めることができる。ただしこの場合はウルトラワイドレンズの画像をトリミングする形となり、ピントは固定焦点になってしまう。

 なお、レンズ周りには「シュナイダーCバリオゴン」の表記が見え、搭載するデュアルレンズの技術には「コダック レチナ デュアルレンズテクノロジー」の名称が与えられている。ちなみにレチナ(Retina)とは、ドイツコダックが1930年代から1960年代まで発売していた35mmコンパクトカメラの名前で、このカメラには主にシュナイダー製レンズが付いていた。コダックはV570にかつての栄光を見出そうとしているのだろうか。


下のレンズが通常撮影用のズームレンズで、上が3.8mm(23mm相当)の超広角レンズ ボディ上面。右からシャッター、電源ON/OFF、シーンモード、動画モード、お気に入りモードの各ボタン

電源は専用リチウムイオン充電池。カメラに収納したまま充電ができるので、取り出す必要はほとんどない 記録メディアはSDメモリーカードあるいはMMCカードを使用。カバーのヒンジが華奢で気になるが、フォトフレームドック2の使用をメインに考えれば、これで良いのだろう

カメラの前面が真っ平らなので、カメラを構えた自分の指が画面に写り込みやすい。三脚ネジ穴を利用して市販のグリップを取り付けると、これを防ぐことができる 超広角レンズ使用時に最短撮影距離を短くする裏技。クローズアップレンズをレンズ前面に手で押さえ付けて撮ると接写ができる

起動は速いがメニューは再考の余地あり

 V570に使われているCCDは1/2.5型で画素数は500万。画質と記録サイズのバランスが適切で、コンパクトデジカメとして実用的な画素数である。また聞くところによると、V570はこのクラスとしては高速なDSPを積んでいるという。そのため起動速度が非常に速く、使っていてとても気持ちがよい。

 背面の液晶モニターは2.5型で画素数は23万。スペック的には申し分ないが、画像は少しザラツキが目立つ。またV570は22種類にも上る多彩なシーンモードを搭載している。シーンモードボタンを押すとモニター上にアイコンがズラリと並び、シーン数の多さに圧倒されるが、液晶モニターの大きさに比べアイコンがとても小さい。

 さらにモニターの両脇にレイアウトされたボタン類は英語表記中心で、シンボルマークがあまり使われていない。恐らくシルバーユーザーからは、かなり厳しい意見が寄せられるのではないだろうか。液晶モニターの両脇に操作部を振り分けるなど、従来のコダック製品に比べ操作性は確実にアップしているのに残念である。

 V570は商品名の“EasyShare”が示す通り、shareボタンを押すだけで、画像を電子メールで送ったりプリントするなどの機能を備えている。

 またACアダプターとUSBケーブルを接続したフォトフレームドック2にカメラ本体を乗せるだけでカメラ側のバッテリー充電やPCへの画像転送ができるほか、別売のプリンタードックシリーズ3と組み合わせれば、簡単な操作で高画質のプリントが可能。さすが感材メーカーの製品だけあって、撮影後の配慮も行き届いている。


付属のフォトフレームドック2にカメラ乗せた状態。PCへの画像転送やバッテリー充電ができる フォトフレームドック2は後部にACアダプターとUSBケーブルを接続する仕様になっている

フォトフレームドック2のカメラ接続用コネクター。ガイドピンが三脚ネジ穴にはまるので安定性が良い フォトフレームドック2を使わなくても、カメラ本体にACアダプターをじかに接続できる

超広角の魅力がどこまで理解されるか

 オートのみの撮影モード、EasyShareシステムへの対応など、V570のメインターゲットは、カメラマニアではなく一般ユーザーであることは明らかだ。そこで気になるのは、V570の最大のセールスポイントである超広角レンズの魅力を、一般ユーザーがどこまで理解してくれるかだ。写真に関する知識がある程度あれば、超広角レンズの魅力はすぐに理解できる。しかし、一般ユーザーにこの魅力を伝えるのは難しい。

 銀塩カメラの時代からこれまで多くのカメラメーカーが広角レンズを搭載したコンパクトカメラを発売してきたが、広角レンズの魅力を十分にユーザーに伝えることができず、ことごとく失敗してきた。V570の未来は、広角レンズの良さをどう訴求するかという、セールスプロモーションに掛かっているといってもいい過ぎではないだろう。

 コダックの狙いから逸れるが、V570の超広角レンズの魅力は、リコーGRデジタルに通じるものがある。コダックのターゲット外であるカメラマニアたちも、V570のデュアルレンズには多大な興味を示すはずだ。ただ心配なのは、スペックがあまりにも初心者に寄りすぎていること。例えば撮影モードがオートのみ、ホワイトバランスのマニュアルプリセットができない、スイッチをONにすると絶えずストロボが自動発光モードになってしまうなど、上級者にとって不満に感じる部分が意外と多い。

 このあたりの問題をクリアすれば、新しいマーケットが開拓できるのでは、と感じる。せっかく、デュアルレンズという面白いカメラを開発したのだから、シリーズ化を期待したい。例えば“エクトラ”(コダック製オールド35mmカメラの最高峰)などという名前が付いた高級機が出たら、私などは真っ先に飛びついてしまうだろう。


作例

※パノラマ以外の作例のリンク先は、撮影画像をコピーしたファイルです。

※作例下のデータは、記録解像度/露出時間/レンズF値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/35mm判換算での焦点距離を表します。


上部の超広角レンズで撮影
2,576×1,932 / 1/30秒 / F2.8 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 23mm

下部ズームレンズの広角端
2,576×1,932 / 1/25秒 / F3.9 / 0EV / ISO160 / WB:オート / 39mm
同じく下部ズームレンズの望遠端
2,576×1,932 / 1/13秒 / F4.4 / 0EV / ISO160 / WB:オート / 117mm

歪曲収差


収差補正ON
2,576×1,932 / 1/8秒 / F2.8 / -0.67EV / ISO160 / WB:オート / 23mm
収差補正OFF
2,576×1,932 / 1/8秒 / F2.8 / -0.67EV / ISO160 / WB:オート / 23mm

ISO感度

 ISO400を越えると急にノイズが増える。ISO200までが実用範囲だ。なおISO800のときは、画像サイズが自動的に1.8メガになる。露出がオートのときはシャッタースピードが1/8秒より遅くならないため、低感度時は露出不足になってしまった。


2,576×1,932 / 1/8秒 / F2.8 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 23mm 2,576×1,932 / 1/8秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 23mm

2,576×1,932 / 1/8秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 23mm 2,576×1,932 / 1/8秒 / F2.8 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 23mm

1,552×1,164 / 1/8秒 / F2.8 / 0EV / ISO800 / WB:オート / 23mm

パノラマ

 超広角レンズと組み合わせて、威力を発揮するのがパノラマモードだ。V570の場合、ウルトラワイドレンズを使えば、水平方向で180度の広い範囲を1枚の画面に合成できる。

 またパノラマモードというと、PCを使って後から合成することが多いが、V570はカメラ側に合成ソフトを内蔵。パノラマアシスト機能を使って撮影した2枚あるいは3枚の画像を撮ったその場で繋ぎ合わせられる。

 完成した画像は、4,720×1,228ピクセル(3枚合成時)に縮小されるが、カメラ側の処理スピードや記録サイズのことを考えると妥当な選択といえるだろう。


4,720×1,228 / 1/30秒 / F2.8 / 0EV / ISO64 / WB:オート / ―

4,656×1,220 / 1/10秒 / F2.8 / 0EV / ISO160 / WB:オート / ―

全般

引きのない室内でも広い範囲を写すことができる
2,576×1,932 / 1/30秒 / F2.8 / -1.33EV / ISO64 / WB:オート / 23mm
左写真と同じ位置から下部ズームレンズの広角端で撮影
2,576×1,932 / 1/60秒 / F3.9 / 0EV / ISO125 / WB:オート / 39mm

超広角レンズの特徴を活かし遠近感を強調した撮影ができる
2,576×1,932 / 1/30秒 / F2.8 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 23mm
2,576×1,932 / 1/50秒 / F2.8 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 23mm

2,576×1,932 / 1/400秒 / F4.4 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 117mm シーンモードで「夕景」を選び、夕焼けの赤を強調した
2,576×1,932 / 1/30秒 / F3.9 / 0EV / ISO64 / WB:昼光 / 39mm

輝度差の激しい条件だが、金色の質感がよく再現されている
2,576×1,932 / 1/100秒 / F4.4 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 117mm
暗い場所でISOオートで撮影したところ、ISOが160になった。ノイズは思ったより少ない
2,576×1,932 / 1/10秒 / F2.8 / 0EV / ISO160 / WB:オート / 23mm

ズームレンズのワイド端で撮影。ディストーションは良く補正されている。
2,576×1,932 / 1/40秒 / F3.9 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 39mm
クローズアップレンズを使いウルトラワイドで接写を試みた。画角は少し狭くなるが、広角レンズの接写も意外と面白い
2,576×1,932 / 1/30秒 / F2.8 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 23mm

ストロボOFF
2,576×1,932 / 1/10秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 23mm
ストロボON。超広角でも光が周辺までまわっている。近いため露出は飛び気味に
2,576×1,932 / 1/30秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 23mm

※初掲載時、電源は「専用ニッケル水素充電池」との記述を行いましたが、正しくは「専用リチウムイオン充電池」です。お詫びして訂正いたします。



URL
  コダック
  http://wwwjp.kodak.com/
  製品情報
  http://wwwjp.kodak.com/JP/ja/digital/digitalcamera/stylish/v570/

関連記事
コダック、2つの光学系とCCDを搭載したコンパクトデジカメ「V570」(2006/01/05)



中村 文夫
(なかむら ふみお) 1959年生まれ。学習院大学法学部卒業。カメラメーカー勤務を経て1996年にフォトグラファーとして独立。カメラ専門誌のハウツーやメカニズム記事の執筆を中心に、写真教室など、幅広い分野で活躍中。クラシックカメラに関する造詣も深く、所有するカメラは300台を超える。1998年よりカメラグランプリ選考委員。

2006/01/19 02:04
デジカメ Watch ホームページ
・記事の情報は執筆時または掲載時のものであり、現状では異なる可能性があります。
・記事の内容につき、個別にご回答することはいたしかねます。
・記事、写真、図表などの著作権は著作者に帰属します。無断転用・転載は著作権法違反となります。必要な場合はこのページ自身にリンクをお張りください。業務関係でご利用の場合は別途お問い合わせください。

Copyright (c) 2006 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.