デジカメ Watch

【特集】フォトプリンタレビュー
日本HP HP Photosmart 475

1.5GB HDDを内蔵する多機能フォトプリンタ
Reported by 多和田 新也

 日本HPが9月28日に発売したインクジェット式のダイレクトフォトプリンタ「HP Photosmart 475」。2.5型液晶ディスプレイやカードリーダーを搭載するほか、1.5GBのHDDを内蔵し写真をストックできる点、多彩なレイアウト印刷など、極めて多機能な製品だ。また、このジャンルの製品では葉書サイズまでの対応が一般的だが、本製品は2L判まで対応。従来のフォトプリンタの概念を打ち破る意欲的な製品だ。


高機能なメニューだが操作は複雑

 日本HPの「Photosmart 475」は、同社のコンパクトフォトプリンタラインナップのフラッグシップとなる製品で、その多機能さが特徴の製品だ。

 まず、上面部に2.5型の液晶ディスプレイを搭載する。フォトプリンタに搭載された液晶ディスプレイの用途といえば、カードリーダーからの画像確認や選択、簡単なレタッチ機能などが多いが、本製品は、そうした基本的な機能はもちろん、画像の品質指定や自動補正の設定、フレームを付けたりパスポート用写真サイズへのトリミングなど多彩な機能が提供される。


上面に2.5型液晶ディスプレイを搭載。カードリーダーや内蔵HDDの画像選択などを行なう操作パネルも持つ 個々の画像に対して明るさ補正やトリミングなどの簡単なレタッチが可能。回転だけは独立したキーが用意されている 赤目除去機能は写真内で赤目が発生している場合に自動的に修正してくれる

基本設定として赤目除去やシャープネス処理のSmartFocus、暗部を持ち上げるデジタルフラッシュの有効/無効、日付印刷の有無を切り替えられる。この設定は全画像に対して有効になる 「クリエイティブな印刷」メニューからは、フレームやクリップアート、あいさつ文を貼り付けたり、特定用途に向けたトリミング/レイアウト印刷を指定できる

 さらにユニークなのが、本製品は1.5GBのHDDを内蔵している点だ。このHDDについては、Seagateより同社のHDDを採用されていることが発表されている。このHDDには、カードリーダーから読み出した画像を保存しておくことができるほか、本製品にUSB接続でCD-Rドライブなどを接続すれば、内蔵HDDからCD-Rへの書き込みも可能で、PCを使わずにライブラリを作っていくこともできる、一種のフォトサーバー的な使い方ができるのだ。


HDDを搭載するのも本製品の特徴。内部への転送でカードリーダーなどからHDDへのコピー、外部への転送で内蔵HDDから外部ストレージへのコピー、コンピュータへの転送で内蔵HDDからPCへのコピーが行なえる(PCにはドライバとモニタリングソフトをインストールしておく必要がある) 内蔵HDDの画像削除やフォーマット、空き容量の確認など、メンテナンス機能も簡易なものながら用意されている

 また、ローカルでストレージを持っている点のメリットとして、画像ごとに「お気に入り」などのキーワードを指定しておくことができ、キーワード別に指定して画像を選別することもできる。

 一方で、製品単体で行なえることが多いため、1つ1つの操作が面倒というデメリットは感じられる。例えば、本製品の画像選択画面ではメモリーカードやHDD内の画像が自動的に月別にまとめらてフォルダ分けされて表示される。その状態からズームボタンを押すことで、フォルダ内画像のサムネイル表示や1枚表示へと切り替えていく。当然、各表示別にユーザーが実行するであろう操作は異なるが、1枚表示させている状態でもフォルダ表示させている状態でも、メニューボタンを押すとまずメインメニューが表示されるのである。

 これで困るのは、例えばフレーム追加などの各画像に対して行なう操作は、1枚またはサムネイル表示画面にしておいて、操作の対象となる画像を選択しておく必要がある。つまり月別のフォルダを表示している状態では画像の選択ができないので、こうした操作も実行できないことになるのだが、メインメニューからは選択可能となっている。しかも、月別のフォルダ表示状態でフレームの追加などを選ぶと、警告が表示されるでもなく、無言で操作がキャンセルされてしまうのだ。

 このほかにも、[OK]ボタンを押して印刷対象の画像を決めるのだが、もう一度[OK]を押すと、都度「すべてのチェックを外すか」、「1つのチェックを外すか」といったチェック外しメニューが表示される。つまり、多くの操作が物々しいメニューを経由して実行しなければならない仕様になっているため手軽さが損なわれてしまっているのだ。しかも、メニューの表示や処理が高速かといえば、メニューの移り変わりには一拍の呼吸が入り、ストレスも溜まる。

 もう一点、本体自体にも残念に思う点がある。1つは、本製品は収納時には液晶パネルやフロントカバーなどをすべて閉じておくことができ、上面の電源スイッチを押すと、電源オンとカバーオープンが同時に行なわれるというギミックを持っている。このアイデアは良いのだが、電源オンとカバーオープンのタイミングが異なっているため、カバーが開いたのに電源が入らないというケースが何度もあった。

 また、運搬用の手すりが付いているのだが、これが液晶パネルと干渉する高さしかない。手すりを使って設置場所に置いた後、手すりを戻してから電源オン&カバーオープンボタンを押す必要があるし、電源をオンにした後に少し置き場所を移動したいといったケースでは手すりを有効に使えない。このように、ユーザーの運用や慣れに依存する部分が多いのは、本来は手軽な存在であるはずのダイレクトフォトプリンターとしては残念に思う点だ。

 そういう意味では、この製品はPCレスで手軽なダイレクトフォトプリンタという性格ではなく、従来のフォトプリンタでは行なえなかったような多彩な作業が単体で行なえるダイレクトフォトプリンタ、という新しい見方をしたほうが良いのだろう。


収納時は液晶パネルと前背面カバーを閉じておき、電源スイッチを押したときに一斉にオープンするギミックを盛り込んでいる 液晶と手すりが干渉してしまう。運搬と印刷時のメリハリをつけた使い方が求められる

テレビ出力やバッテリ駆動も可能

 では、ここまでに紹介できていない個所のチェックをしていきたい。まず前面カバー内だが、ここには排紙口のほか、CF/スマートメディア/SDメモリーカード/メモリースティックに対応するカードリーダーやUSBポートなどを備えている。USBポートにはPictBridge対応のデジカメのほか、先述したCD-Rドライブ等のストレージ類、オプションのBluetoothアダプタを接続できる。

 また、インクカートリッジも前面からセットする。3色カラー一体型の#134または#135のほか、白黒写真等に利用するダークグレー/ライトグレー/フォトブラックを一体化したフォトグレーカートリッジを使用可能だ。


本体前面カバー内。CF/スマートメディア/SDメモリーカード/メモリースティックに対応したカードリーダー、PictBridge対応のデジカメや外部ストレージを接続するUSB Aポート、リモコン用の赤外線受光部などを備える インクカートリッジも前面から装着。3色一体型カートリッジの#134/#135、フォトグレーインクの#100が利用可能

 ちなみに、本製品は前面に排紙口を持つが、給紙は背面カバーが最小限のみ開き、そこから行なわれる。無駄に奥行き方向のスペースを必要としない点は好印象だ。また、本製品の大きな特徴となっているのが、2L判にも対応する点だ。このジャンルの製品では、最大で葉書サイズへの対応となるのが一般的だが、“写真”を大きく残したいというニーズに、コンパクトな本体サイズで応えられる製品といえる。

 その背面部には、ACアダプタの接続口、PCとの接続に利用するUSB Bポート、テレビ出力端子を備えている。また、テレビ出力したときに便利なリモコンも付属。自宅で家族や友達など大勢で写真を選びながら印刷するといった用途にも耐え得る機能といえる。


本体背面から給紙を行うが、このカバーは最低限しか開かない。この給紙トレイには、写真用紙なら最大20枚をセットできる 本体背面部。ACアダプタの接続口、PCと接続するUSB Bポート、テレビ出力端子を備える。テレビ出力はミニジャックタイプになっており、付属の変換ケーブルを介してコンポジットへ変換する テレビ出力時に便利なリモコンも付属。用意されるボタンや操作方法は本体上面パネルに準拠する

 一方で、電源が取れない外出先でも本製品が使えるように、オプションのバッテリーを本体底面に装着することもできる。利用するシチュエーションを問わず利用できる点からも、本製品の多機能さを感じ取ることができるだろう。

 最後にPCからの印刷についてだが、本製品用のドライバは同社製インクジェットプリンタに基づいたもの。「印刷機能のショートカット」タブから基本的な設定が行なえ、他のタブを選べばさらに細かい設定が行なえるほか、補正機能のHP Degital Photography Real Lifeも利用可能となっている。


本体底面部にはバッテリも装着可能で、外出先で利用するモバイルフォトプリンタとしても活用できる Windows用ドライバの設定画面。印刷機能のショートカットから基本的な設定が可能

HP Degital Photography Real Lifeも利用可能だ

4,800×1,200dpi印刷はPCからのみ利用可能

 それでは、実際に印刷したサンプルを紹介したい。ここでは、すべてニコンD70(JPEG/Fine/L)で撮影した画像を使用。印刷結果をエプソンの「PM-A850」を使い600dpiでスキャンし、余白をトリミングした上で提示している。この際のトリミングには多少余りを持たせているので、本製品によるトリミング量の参考にしてほしい。なお、テストに使用した画像は下記に掲載した。

http://dc.watch.impress.co.jp/cda/special/2005/12/20/2928.html

 なお、印刷結果は2種類提示している。1つはCFからダイレクトプリントしたもの。これは本体メニューから「高画質」を選んで実行したもので、解像度を最適化するPhotoREt技術で印刷された結果となる。もう1つはPCから最大解像度を指定して印刷したものである。こちらは本製品の最大解像度である4,800×1,200dpiに指定している。このほか、SmartFocus、デジタルフラッシュといった自動補正機能は有効にして印刷。また、印刷には純正のプレミアムプラスフォト用紙 L判(光沢)を使用した。


印刷結果(1,200dpi)



印刷結果(4,800dpi)



 では、まずは解像度による違いについて触れておくと、これはかなり差が感じられる。人物の髪の毛、自販機の文字、ススキの穂の先端部といった細かい個所で解像度の違いがよく表れている。

 色合いについては、コントラストのはっきりした色合いではあるが、派手でこてこてするほどではない。筆者個人の感覚としては、写真を撮ったときに残っている印象に近い自然な色合いになっている。

 また、デジタルフラッシュ(明るさ調整)等の自動補正が効果的に働いているようで、暗部の持ち上げも大胆だ。プログラムAE等で気軽に撮ってきた写真をレタッチなしで印刷したしても、それなりの見映えになる印刷を期待できそうである。
 ただ、全体に粒状感が大きめである点は否めない。L判をパッと見たときは気になるレベルではないものの、細かいディテールを確認したいと思って目を近づければ一目瞭然だし、ボケの部分はザラつきも目立つ。もう少し、滑らかな写真らしさが欲しい。
 ちなみに、L判印刷時の所要時間は下記のとおり。

内蔵HDDからの印刷(高画質):1分41秒
内蔵HDDからの印刷(きれい):1分6秒
D70のPictBridgeを利用して印刷:1分38秒
PCから印刷(最大dpi):2分23秒
PCからの印刷(高画質):1分23秒
PCからの印刷(きれい):57秒


 内蔵HDDを使用した場合とCFから印刷した場合では、差はほとんどなかったため割愛しているが、印刷時間に関しては及第点といったところだろう。ただし、画質面で好影響が見られた最大dpiの印字では一気に所要時間が増してしまうため、利用においては注意が必要といえる。


フォトプリンタに求められる機能を詰め込んだ多機能さが魅力

 以上のとおり、本製品はその多機能さ、シチュエーションを選ばない柔軟性が大きな魅力だ。また2L判に対応する点も魅力で、従来の手軽さを追求したフォトプリンタは機能面で不満を感じていた人にお勧めできる。この製品なら、文書は価格が落ち着いてきたレーザープリンタ、写真印刷用に本製品といった組み合わせも便利そうだ。

 一方で、本文中でも触れたとおり操作面に難がある。多機能な本製品の良さを活かしつつ、今後はユーザーにストレスを感じさせないような操作性のアップを期待したい。



URL
  製品情報
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/accessories/2005/09/28/2365.html

関連記事
日本HP、HDDを搭載したコンパクトフォトプリンタ(2005/09/28)



多和田 新也
1976年岐阜県生まれ。2002年より,主に自作ユーザー向け記事を中心にライターとして活動している。野鳥を中心に自然に親しむのを趣味とするが,写真撮影に使っているNikon D1H+Nikkor 500mm/F4P(と三脚)に押し潰されそうになる程度の体力しか持たないあたりが 悩みの種。

2005/12/27 00:40
デジカメ Watch ホームページ
・記事の情報は執筆時または掲載時のものであり、現状では異なる可能性があります。
・記事の内容につき、個別にご回答することはいたしかねます。
・記事、写真、図表などの著作権は著作者に帰属します。無断転用・転載は著作権法違反となります。必要な場合はこのページ自身にリンクをお張りください。業務関係でご利用の場合は別途お問い合わせください。

Copyright (c) 2005 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.