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【特集】フォトプリンタレビュー
エプソン E-200

2.4型カラー液晶と拡張性の高さが魅力のフォトプリンタ
Reported by 多和田 新也

 エプソンが今年の4月12日に発表した、インクジェットタイプのダイレクトフォトプリンタ。QXGAの解像度を持つ2.4型カラー液晶ディスプレイやカードリーダーを搭載するフォトプリンタ自体の高機能さに加え、外部ストレージやBluetoothアダプタ、バッテリーなど、外部機器との組み合わせでさらに機能を増す面白さも秘めた1台になっている。


オプション類を使って機能拡張が可能

 エプソンが2003年3月に発表したダイレクトフォトプリンタ「カラリオ ミー」シリーズの第2弾としてリリースされたのが「E-200」だ。本製品は今年4月に発表されたものだが、今年9月には下位モデルとなる「E-150」も発表され、このラインナップの拡充が進んでいる。

 E-200の外観はダイレクトフォトプリンタとしてはわりと大ぶりながら、給排紙トレイがそれほど大きくせり出さないおかげで、実際の使用時には極端に大きなサイズにはならないのが特徴的。

 排紙側となる前面部には、排紙トレイの脇にもうひとつカバーあり、その中にCF/スマートメディア/SDメモリーカード/メモリースティック/xDピクチャーカードに対応するメモリーカードリーダーが搭載されている。


背面給紙、前面排紙となる。高さがわりとあるが、実使用時の奥行きは標準的。給紙トレイには写真用紙で最大20枚をセットできる
前面部は排紙トレイと各種カードリーダーが並ぶ。CFスロットに赤外線モジュールを装着することで携帯電話からのダイレクトプリントにも対応
本体背面にはデジカメや外部ストレージ、Bluetoothアダプタを装着できるUSB Aポート、PCと接続するUSB Bポート、ACアダプタの接続口、インクカートリッジ装着口が設けられる

 このCFスロットは、CFタイプの赤外線モジュール「PMPTIR1」を接続することで携帯電話からのダイレクトプリントも行なえるようになる。加えて、背面に設けられたデジカメと接続するためのUSB Aポートを備えているが、ここにはBluetoothアダプタの「PMDBU3」を接続することもできる。

 もうひとつ、拡張できるという面では、バッテリー駆動に対応している点も挙げられる。本体背面にオプションのバッテリー「MEALB1」を装着することができる。このように、それほど必要とされていない(とエプソンが判断したであろう)機能はオプションで機能追加できる、という姿勢を取っている点が本製品の面白いところだ。もちろん、標準で搭載または付属しているに越したことはないものの、そのぶんがコストダウンに繋がっていならば、こうした本体機能充実よりも拡張できる柔軟性を持たせる方向性もありだと思う。

 ちなみに、持ち歩きについてだが、本製品の重量は約2.8kgとされており、実際には車などでの運搬が主になるかと思うが、移動して利用するという点にはこだわりがあるのか、ACアダプタにもケーブルを結束するベルクロテープが付いているのも興味深い点となっている。

 さて、背面部に関してもう1点だが、インクカートリッジの装着口も用意されている。インクカートリッジはE-100と同じく、PX-Eインクと呼ばれる6色顔料インクを一体型にした「ICCL34」を利用する。カートリッジを挿し込み、下部のレバーで固定するだけのシンプルな脱着が可能となっている。


背面部のカバー内にオプションのバッテリーを装着できる。バッテリー駆動時間は公称で90分、L判印刷で60枚とされている 付属のACアダプタには、ノートPCのACアダプタで見られるような、ケーブルを束ねるベルクロテープが付けられている インクカートリッジは6色一体型となっており、背面から装着する

見映えの良い2.4型カラー液晶を搭載

 本製品と先代のE-100を比較して、もっとも大きく変わったといえるのが液晶ディスプレイだ。E-100では白黒の液晶ディスプレイが搭載されていたが、当然画像の確認などは行なえず、インデックスプリントを併用して画像の指定を行なうスタイルとなっていた。

 しかし、本製品では2.4型のカラー液晶ディスプレイを搭載。メモリーカード内の画像も参照できるようになり、ダイレクトプリントの操作性は格段に増している。しかも、その液晶ディスプレイが他社の競合製品に比べると明らかに見映えがよく、しかも画像の切り替え等も速い。こと液晶ディスプレイの視認性・操作感は随一といっていい。一方で、E-100が備えていたテレビ出力は廃止されてしまった。液晶ディスプレイが付いたとはいえ、これも、あるに越したことはない機能のひとつなだけに、残念に思う。

 さて、この液晶ディスプレイを使ったメモリーカードからのダイレクトプリントについてだが、カード内画像の全印刷や、画像を見ながらの選択印刷、範囲指定印刷、特定の日付に撮られた写真を全印刷、インデックス印刷、フレーム付き印刷といったモードが用意されている。


主にメモリーカードからの印刷に利用する2.4型液晶ディスプレイと操作パネル
印刷のメインメニューは各種印刷メニューとスライドショーで七つの項目が用意される。画面上は3項目ずつが表示され、左右キーでカーソルを移動する

 これらの印刷方法を行なうとき、メインメニューから実行したいモードを選択→モードによっては写真や日付を選択→必要に応じて用紙等設定→印刷実行、という流れで統一されており、どの操作を行なうにしても違和感なく作業できるユーザーインターフェイスが良い。

 この流れの中に示した用紙や補正の設定を行なうには、本体の[設定]ボタンを押すことで画面が表示される。ここからレイアウト印刷やモノクロ・セピアなどのフィルタ、明るさ・鮮やかさ・シャープネスといった画質調整なども行なえる。


印刷実行直前に[設定]ボタンを押すことで用紙や印刷品質の設定画面が表示される。この設定は2ページに渡っており、レイアウト、補正の指定などが行える
設定画面の2ページ目。画質調整では明るさ・あざやかさ・シャープネスを-2~+2まで5段階に調節できる

 ちなみに、メニューの中にトリミングに関する項がないが、これは写真選択画面が出ているときに本体のズームボタン(虫眼鏡のプラスマーク)を押すことで、オレンジ色の枠が表示され印刷範囲を指定することができる。これはマニュアルを見るまで機能の存在に気が付かず、分かりにくさも感じたのだが、とりあえずトリミングのために独立したボタンが用意されていることにはなる。

 また、電源投入時の初期設定を自分でアレンジできる点も便利な機能だ。これはセットアップメニューのなかに用意されている「ユーザーお好み設定」という機能だ。ここでは、用意サイズ・レイアウト・フィルタ・日付印刷の有無・時刻印刷の有無・電源投入時にカーソルを合わせておくメニュー、の6項目を設定しておける。基本的には同じ設定で利用しているが、ちょっと設定を変更して印刷を実行することもある、という人は多いと思う。本製品のこの仕組みなら、電源を切ったら設定がリセットされたり、一時的に施した設定も都度直さなければならないということがなくなるわけだ。

 ただ、唯一「自動画質補正」だけは初期設定/一時設定と関係なく、一度印刷を実行すると「なし」に戻ってしまう。なぜ、こういう仕様にしているかは不思議なのだが、ひょっとすると後述する印刷時間の絡みもあるかも知れない。できれば、この設定もユーザーお好み設定で指定しておけるとありがたいように思う。

 さて、本製品にもう一つ便利な機能がある。それが外部記憶装置へのデータ転送機能だ。セットアップメニューに用意された「バックアップ」機能を利用すると、背面のUSB Aポートに接続したフラッシュメモリやCD-R/DVD-R、MOなどへ、装着したカードリーダー内の画像データを転送することができるのだ。これも先に触れた本製品の機能拡張の一面と捉えているが、PCレスで使える別メディアへのブリッジデバイスとして魅力的だ。

 最後にWindows用のドライバについてだが、これは同社のインクジェットプリンタと同等の画面だ。細かい色補正やレイアウト印刷なども用意され、機能面の不足は感じない作りだ。


電源投入時の初期設定をカスタマイズできる「ユーザーお好み設定」。本文中に示した6項目をウィザード形式で設定する
画質自動補正はユーザーお好み設定に含まれておらず、印刷を実行するたびに「なし」にリセットされてしまう
USB Aポートに接続したCD-Rドライブなどへ、メモリーカード内の画像をバックアップする機能も備える

Windows用ドライバの設定画面。同社のインクジェットプリンタ製品と同等の画面構成
詳細設定では細かい色補正も手動調節でき、もう少しこだわった写真印刷も可能だ

やや緑被りが気になるが粒状感の少ないなめらかな印刷

 それでは、実際に印刷したサンプルを紹介したい。ここでは、すべてニコン D70(JPEG/Fine/L)で撮影した画像を使用。印刷結果をエプソンの「PM-A850」を使い600dpiでスキャンし、余白をトリミングした上で提示している。この際のトリミングには多少余りを持たせているので、本製品によるトリミング量の参考にしてほしい。なお、テストに使用した画像は下記に掲載した。

http://dc.watch.impress.co.jp/cda/special/2005/12/20/2928.html

 印刷結果は2種類を提示している。ひとつはCFからのダイレクトプリントを行なったもので、この場合は解像度が1,440×720dpiに制限される。もうひとつはバンドルされている「EPSON Easy Photo Print」を利用してPCから印刷を実行し、本製品の最高解像度となる5,760×1,440dpiで印刷したものだ。なお、用紙は同社の写真用紙<光沢>を使用。画質自動補正はスーパーフォトファイン!6に設定している。


CFからダイレクトプリント(1,440×720dpi)



PCからプリント(5,760×1,440dpi)



 結果を見ると、とくにダイレクトプリントを行なったものに顕著だが、やや緑被りが多いのが目に留まる。これは掲載用にスキャンしたために生じたものではなく、印刷物そのものにも感じられる色合い。しかも、PCで赤味を強くして印刷をかけるとわりと自然な雰囲気に仕上がることから、インクカートリッジの目詰まり等が起きているわけでもなく、本製品による補正のクセだと考えている。その意味では、ちょっと好みが分かれそうな色合いではある。

 ただ、インクジェット特有の粒状感に関しては、あまり感じられない。1,440×720dpiの印刷でも目をこらさなければ気になるレベルではなく、アルバム等に収めて観賞するには十分に感じられるが、5,760×1,440dpiとの差は歴然である。こちらの品質を一度目にしてしまうと、気に入った写真はPCから印刷してしまうのではないかと思う。

 粒状感のなさの一方で、解像感という面では甘い印象も受ける。印刷時設定でシャープネスを少しかけておくと、もう少しキリッとした描写が得られるので、好みに合わせて利用するといいだろう。このシャープネスもそうなのだが、暗部の持ち上げもそれほど極端でないし、画質自動補正をかけているとはいっても全体に元画像に忠実な印象を受ける。


随所に盛り込まれたギミックが魅力

 ちなみに、印字に要する時間は、

CFからの印刷(自動補正なし):1分26秒
CFからの印刷(スーパーフォトファイン!6):2分8秒
D70からPictBridgeを利用して印刷:1分35秒
PCからの印刷(きれい、自動補正なし):3分43秒
PCからの印刷(きれい、スーパーフォトファイン!6):3分41秒
PCからの印刷(はやい、自動補正なし):1分18秒
PCからの印刷(はやい、スーパーフォトファイン!6):1分21秒


と、標準的な所要時間といえる。ただ、PCから5,760×1,440dpiで印刷する場合は3分半以上もかかっており、常用はしずらい印象だ。

 もうひとつ気になるのは、スーパーフォトファイン!6に設定した場合、本体からのダイレクトプリントでは30秒以上も所要時間が増す点だ。ExifPrintやP.I.M.に設定しても、印刷時間は2分を越えることから、本体内の処理に難があるという印象だ。印刷枚数が多い場合は、この点も気に留めたほうがよさそうである。

 本製品の魅力をまとめると、周辺機器との連携による拡張性/柔軟性、ダイレクトプリント時の液晶ディスプレイの見やすさと操作性の分かりやすさ、粒状感のない印刷、の3点になるかと思う。

 最大解像度における印刷速度の遅さと、本体サイズがやや大ぶりな点に難は感じるものの、ユーザビリティと印刷品質のバランスは優れている。かなり広いユーザー層に受け入れられそうな1台だ。



URL
  製品情報
  http://www.i-love-epson.co.jp/products/colorio/printer/e200/

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エプソン、2.4型液晶モニター搭載の「カラリオミーE-200」(2005/04/12)



多和田 新也
1976年岐阜県生まれ。2002年より,主に自作ユーザー向け記事を中心にライターとして活動している。野鳥を中心に自然に親しむのを趣味とするが,写真撮影に使っているNikon D1H+Nikkor 500mm/F4P(と三脚)に押し潰されそうになる程度の体力しか持たないあたりが 悩みの種。

2005/12/22 00:42
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