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【新製品レビュー】コダック EasyShare P880 Zoom

~ワイド端24mmの光学5.8倍ズームを搭載する800万画素機
Reported by 大浦タケシ

 コダックからP850 Zoomの上位機種「EasyShare P880 Zoom」が登場した。35mm判換算でワイド端24mmの光学5.8倍ズームを搭載するレンズ一体型800万画素機である。2.5型の大型液晶モニターを採用し、同シリーズのプリンタードックとの連携も当然可能。量販店での実勢価格は69,800円前後である。


一眼レフを意識したデザイン

 ボディはP850同様、光学一眼レフを意識したもので曲面と曲線で構成されたデザインだ。カメラトップの滑らかなラインはグラマラスで、背の高めのボディとストロボ下部に付く外部測距用の窓が個性的。日本でのデザインということだが、やはりどことなくエキゾチックな顔立ちである。デザインが売り上げを大きく左右するクラスではないかもしれないが、インパクトのあるデザインだけにその結果が気になるところだ。





 大きさは実測で115×107×99mm(幅×奥行き×高さ)。クラスを考えれば大柄ともいえるボディである。重量は専用のリチウムイオン充電池、SDメモリーカード込みで実測約550gと重くも軽くもないといったところ。大柄のグリップが備わり持ちやすそうに思えるが、レンズ鏡胴とのスペースは思ったほどなく、ホールドすると指が窮屈。グリップの握り方にもよるが、個人的には右手薬指の第一関節が常にズームリングに当たっていることが多かった。手の大きいユーザーでは、指がすんなり入らないこともありそうである。せっかくマニュアルのズームリングや大型のピントリングを採用し操作性を向上させているだけに、ちょっと残念。


グリップとレンズ鏡胴のスペースには余裕が少ない。そのため、手の小さな筆者でも薬指を中心に窮屈に感じることが多かった カメラ下部のドッグコネクター。プリンタードックとはプリントだけでなく充電も可能だ

プリンタードックとの連携も、もちろん可能。シェアボタンであらかじめ画像を選択しておけば、ボタンひとつでプリントが可能である EasyShareシリーズのカメラ、すべてに付属するインサート。カメラによって形状が異なる

P850よりも背が高くひと回り大きいP880。レンズ鏡胴周辺のつくりはP880だが、全体的なデザインならP850のほうが勝っているように感じられる
 P880は、1/1.8型800万画素CCDを搭載する。記録解像度は3,264×2,448 / 3,246×2,176 / 2,560×1,920 / 2,048×1,536 / 1,024×768ピクセルで選択が可能。なかでも3,246×2,176ピクセルはアスペクト比が35mm判と同じ3:2となるため、日頃デジタル一眼レフやフィルムカメラを使っているユーザーには馴染みやすく使いやすい。ファイルタイプはJPEGのほかTIFFおよびRAW(3,264×2,448ピクセルのみ)となる。またISO800および1600での撮影は、記録解像度が1,024×768ピクセル時のみとなる。

 搭載するレンズはシュナイダーブランドのクロイツナッハ バリオゴン 5-29.4mm F2.8-4.1。35mm判換算で約24~140mmの焦点距離を持つ5.8倍ズームレンズである。装着の面倒なワイドコンバーターで24mmの焦点距離が得られるカメラは多いが、デフォルトでこのワイド端の焦点距離はありがたい。ディストーションも抑えられているほうで、一眼レフよりもコンパクトである分スナップ撮影などに出番が多そうだ。なおP850で採用されていた手ブレ補正機能の搭載は見送られている。


ワイド端。プリミティブだが、いわゆる電動ズームよりはるかにマニュアルズームのほうが使い勝手はよい。焦点距離表示は35mm判換算値 こちらはテレ端時の状態

ワイド端で撮影 テレ端で撮影

 液晶モニターは2.5型を採用。明るいところでも比較的見やすいハイブリッドタイプで、画素数は11.5万。撮影時もプレビュー時も情報表示は充実している。一方、視度調整付きの電子ビューファインダー(EVF)には23.7万画素を採用。カタログを見ると「クラス最高レベル」、「高精細EVF」と記されてはいるけれど、見慣れた光学ファインダーにはやはり及ばない。マニュアルフォーカス時ではピントリングを回すと画面の中央部が自動的に拡大するものの、正確なピント調整となると正直難しいものである。技術的なものやコスト的なものが大きいとは思うのだが、メガピクセルクラスのEVFの搭載を期待したいところだ。

 メニュー表示による設定は国内メーカー製と概ね似たようなもの。液晶モニターの左側にはストロボ、測光、ISO、WBの設定ボタンが並びダイレクトにそれぞれの設定画面を呼び出すことも可能である。この4つの設定はジョイスティックもしくはコマンドダイヤルと「SET」ボタンのどちらでも使用できて便利。ちなみにジョイスティックはスティックを押し込むと確定するもので、直感的な操作を実現している。

 撮影時の絞り値やシャッタースピードの設定、露出補正などの設定は、コマンドダイヤルで設定する項目を選んだ後、「SET」ボタンで確定。コマンドダイヤルに戻り設定変更を行なった後、再び「SET」ボタンで確定と非常に面倒である。ジョイスティックでこの一連の操作を行なえば速そうだが、撮影時、素早い設定変更が必要なところだけにコダックには再考してほしい。


P850よりもボタン類は増えているが、レイアウトのためか使い勝手はこちらのほうがよい ジョイスティックは直感的な操作ができ良好だが、コマンドダイヤルによる操作は、その下のSETボタンをいちいち押さねばならず煩雑

マニュアルズームにより軽快な操作が可能

適度なトルク感のあるズームリングとピントリング。操作性はどちらも良好だ
 ズーミングは前述したとおりマニュアルとなる。ズームレバーによるものは、なかなか思ったところに止まらないばかりかズーミングが遅いものがほとんどであるが、マニュアルであれば思った焦点距離にピッタリ止めることができる。なお焦点距離の表示は35mm判に換算したときのもので、フィルムからのユーザーにはたいへん分かりやすい。ズームリングよりもわずかに太めのピントリングは、幅は狭いものの適度なトルク感のあるもの。ズームリングとともにゴム貼りでホールドしたときの感触もよい。


小さいながらもフードが附属する バヨネットにより装着し、収納時はひっくり返してレンズに付けられる。フィルター径は52mm

 測距にはTTL-AFのほかストロボ下部に備わる外部測距センサー(パッシブAFセンサー)を備えるデュアルAFシステムを採用。高速で精度の高いAFを実現している。内蔵ストロボは指でつまんで発光部を起こすフリップアップ式で、ガイドナンバーは9(ISO100・m)。さすがにワイド端では画面周辺部の光量が不足気味となるが、28mm(35mm判換算)をほぼカバーする。ストロボ機能としては、専用の「P20ズームフラッシュ」も用意されている。P880のアクセサリーシューに装着するとバウンス発光も可能としている。ストロボ接点も備えており、本格的なストロボ撮影も可能にしている。


内蔵ストロボは指で引き出すフリップアップ式 さすがにワイド端では周辺が光量不足となる。ガイドナンバは9(ISO100・m)

外部ストロボ用の接点も備える。スタジオでの撮影や特殊な撮影の際、重宝しそうだ。カバー付き 記録メディアにはSDカードもしくはMMCを使用する。約32MB分の内蔵メモリも搭載

リチウムイオン充電池の容量は1,800mAh。向きを間違えて入れると取り出しにくくなるので、電池の方向には注意が必要だ

 撮影モードにはAUTO、プログラム、絞り優先、シャッター優先のほか、SCN(シーンモード)、ポートレート、遠景、フラワー、動画およびカスタムを搭載する。シーンモードにはスポーツ、サンセット、逆光など8種類より選択が可能で多彩な撮影に対応。カスタムはメニュー設定も含めユーザー独自の設定が可能だ。カラーモードはデフォルトとなるナチュラルカラーと白黒およびセピアのほか、P850にも搭載されていたビビッドカラーとシックカラーも用意される。色調は全体に色のりがよくコクのあるもの。ビビッドカラーはいうに及ばず、ナチュラルカラーでも彩度は高めだ。


カラーモード

カラーモード:ナチュラル カラーモード:白黒

カラーモード:セピア カラーモード:ヴィヴィッド

カラーモード:シック

 国内のメーカーのカメラにくらべ操作性などにクセのあるものではあるが、ワイド端が24mmに相当する画角を持つ5.8倍ズームレンズやシンクロ接点を備えるなどベテランでも十分魅力的に思えるカメラだ。価格的にはコンパクトクラスとして考えた場合やや高価だが、デジタル一眼レフのサブカメラに十分成りうるといえる。デザインや色調が気にいれば、買っても損はないだろう。


ISO感度

ISO50 ISO100

ISO200 ISO400

ISO400(0.8メガピクセル) ISO800(0.8メガピクセル)

IS1600(0.8メガピクセル)

ホワイトバランス

オート 昼光

曇り 晴天日陰

サンセット 白熱灯

蛍光灯

作例

※作例のリンク先は撮影画像をコピーしたものです。

※作例下のデータは、露出時間(秒)/レンズF値/撮影モード/ISO感度/露出補正値/ホワイトバランス/焦点距離を表します。


1/800 / F2.8 / プログラムAE / 50 / 0 / 自動 / 24 1/640 / F2.8 / プログラムAE / 50 / 0 / 自動 / 24

1/320 / F4 / プログラムAE / 50 / 0 / 自動 / 140 1/160 / F4 / プログラムAE / 50 / -0.7 / 自動 / 76

1/320 / F2.8 / プログラムAE / 50 / -0.3 / 自動 / 24 1/640 / F2.8 / プログラムAE / 50 / 0 / 自動 / 24

1/250 / F4 / プログラムAE / 100 / -0.3 / 自動 / 115 1/500 / F3.2 / プログラムAE / 50 / -0.7 / 自動 / 42

1/160 / F4 / プログラムAE / 64 / -0.3 / 自動 / 140 1/60 / F4 / プログラムAE / 100 / -0.7 / 自動 / 88

1/320 / F4 / プログラムAE / 50 / -0.7 / 自動 / 85 1/160 / F4 / プログラムAE / 50 / -0.7 / 自動 / 125

1/160 / F4 / プログラムAE / 64 / -0.3 / 自動 / 140 1/200 / F4 / プログラムAE / 50 / -0.7 / 自動 / 120



大浦タケシ
(おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に写真雑誌等の記事を執筆する。プライベートでは写真を見ることも好きでギャラリー巡りは大切な日課となっている。カメラグランプリ選考委員。

2005/11/30 00:53
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