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【新製品レビュー】松下電器 LUMIX DMC-FX9

〜手ブレ補正付きヒットモデル「FX8」の高画素版
Reported by 安孫子 卓郎

 松下電器「LUMIX DMC-FX9」のレポートをお届けする。テストした個体は製品版ではないので、今後改善される可能性がある。サンプル画像も参考程度と思われたいが、A4サイズにプリントいただくと、600万画素の精密な描写が見て取れるだろう。なおFX9はFX8の上位機種となり、FX8は併売される。


 基本的な部分は6月発売のDMC-FX8と変わらず、さかのぼればDMC-FX7とも大きな違いはない。薄型ボディ、2.5型液晶モニター、光学式手ブレ補正付き3倍ズームレンズを主な特徴とする機種である。





 FX8からの大きな変更点は、撮像素子が600万画素化されたことと、液晶モニターの表示画素数が11.4万画素から20.7万画素へと向上したことが挙げられる。撮像素子が変われば大きな変更だと思いがちだが、この点については後述したい。

 液晶モニターは表示画素数だけではなく、一見してきれいになった。再生では、従来9コマのサムネイル表示が可能だったが、16コマや25コマのより小さい表示も行なえるようになった。画素数がアップしたから小さなサムネイル画像でも使えるという判断なのだろうが、むしろ4コマ表示を入れたほうが、1コマ再生の代わりに使えたのではないかと思う。

 極めてきれいな液晶だが、実は困ったところもある。きれいに見えすぎるのだ。


 右の画像は、周辺に黒い岩が存在し、水も暗い。そのため多少マイナス補正をかけるべきシーンであると判断したのだが、液晶モニターで再生してみたところ実にきれいに表示されたため、そのままでもよいと判断したものである。実際にPCで開いてみると、露出は周りに引っ張られており、オーバー気味の画像になっていた。

 今回テストしたのは試作機だが、他メーカーの製品でもきれいになった液晶モニターが撮影者の判断を狂わせるケースが起きている。きれいに見えるのはプラス材料だが、表示の仕方によっては液晶モニターのもうひとつの役割である「撮影の参考」という部分で不具合も出てくるわけだ。

 液晶モニターの明るさはセットアップで調節でき、プラスにもマイナスにもできる。さらに、DISPLAYボタンを1秒間長押しすると液晶が明るくなる「パワーLCD」機能が搭載されている。屋外での視認性が向上するものだが、撮影結果の参考として使うのなら、むしろ暗くする機能をワンタッチで入れたほうがよかったのではないかと考える。

 そのほかの変更点としては、起動時間がFX8の3秒から2秒へと短縮された。現在、起動3秒というのはかなり遅い部類なので、改善されて使い勝手は向上している。また、シーンモードに星空とキャンドルが加わっている。星空では15/30/60秒の長時間露光が行なえる。

 長時間露光といえば、夏場は特に花火の撮影だが、シーンモードの「花火」は今ひとつである。花火モードにするとシャッター速度が1/4秒に設定されるようで、スローシャッターの限界を1秒に設定しても、明るい場所でもみな1/4秒になってしまう。打ち上げ花火の場合、だいたい2秒から8秒くらいの範囲で撮影することが一般的で、1/4秒では短すぎて花火がきれいに流れない。それでは星空モードで花火を撮ろうとすると、15秒も露光してしまうので次の花火と重なるほか、周辺の明かりを拾ってしまったりと不都合がおきやすい。

 このあたりはカメラを作る側に撮影に対するノウハウが不足しているように感じられる。花火モードは家庭で行なう花火を手持ちで撮影するための設定としてはよさそうだが、松下電器の製品情報ページを見ると、打ち上げ花火の撮影を行なうためのように参考写真が載っている。

 なお、夜景モードにすると8秒までの間で長時間露光が可能となるので、打ち上げ花火なら夜景モードがお奨めだ。簡単に撮影するためのシーンモードなのに、これだけ込み入ると、よほど詳しい人がじっくり研究しないと適切な使い方はできないだろう。


シーンモード(星空、自分撮り) シーンモード(赤ちゃん、美肌、キャンドル) シーンモード(パーティ、花火、雪)

 FX8のアスペクト比はCCDの撮像カ所をフルに使う4:3と、ハイビジョンサイズの16:9があった。FX9ではそれに3:2が加わった。もっともこれは上下をトリミングする形での横長フォーマットなので、便利と見るかもったいないと見るかは微妙なところだ。こういったトリミングも、上級者にとっては必ずしも無意味な設定ではない。フォーマットがあらかじめ定まっていることによって、撮影時にはそれにふさわしい構図を考えるからだ。撮影後にトリミングするのとは絵作りの考え方が変わってくる。

 モノクロやセピアなども同じで、始めからモノクロモードで撮影することで、モノクロにふさわしい被写体の選び方や光の使い方を覚えられるのだが、いずれもそれなりの上級者にとっての話。多くのユーザーにとっては、後からモノクロにしても、後からトリミングしても、大きな違いはでないだろう。逆にもっと上手になりたいと修行をのぞむ人は、始めからフォーマットや色を固定して撮ってみるのも、よい試みである。

 また、連写コマ数がやや増えて、ファインで6コマ、スタンダード画質で8コマまで撮影できるようになった。画素数とともにバッファも増えているのは歓迎するべき事柄だ。しかし、連写速度は秒3コマのままなので、こちらを上げてくれるとさらによかったろう。ファインでもスタンダードでも、パナソニック製20MB/secの512MB SDメモリーカードを使ってみたところ、連写終了後すぐにバッファは空く。メモリーカードいっぱいまで連写を繰り返しても、まったく問題はない。

 画素数の増加や液晶モニターの改善のためか、バッテリーの持ちはCIPA基準で約270枚とやや落ちている。FX8の約300枚より10%ダウンだ。ただ、270枚でも1日の撮影としては十分であろう。

 好ましいのは充電器が直接コンセントに差し込むコードレスタイプでコンパクトなこと。最近はクレードルが流行だが、持ち運ぶことを考えるとこのタイプがかさばらないのでベスト。充電にはバッテリーを取り外す必要があるため、充電しながらの再生はできないが、旅行用としては、かさばらないことのほうがより重要だろう。


撮影設定1 撮影設定2 撮影設定3

撮像素子について

 今回、FX9では撮像素子が1/2.5型有効600万画素となっている。FX8の500万画素から100万画素増えたわけで、自動車で言えばエンジンの変更であり、メカ的には大きな変更であるといえる。ただし、ユーザービリティという観点からみると、もはや画素数アップはマイナーチェンジと評価される項目になったようだ。

 その昔、自動車の広告で「プラス100ccのゆとり」というキャッチコピーがあった。ライバル会社の車よりも100cc大きいエンジンを積んでいるから、走りにゆとりがあるというコピーである。そのときはインパクトのあるコピーだったわけだが、現在ではエンジン性能は大きく向上し、100cc程度の差で困ることはない。そのため、このようなコピーで消費行動が左右されることはなくなり、現在はデザインや静粛性、燃費などが重要視されている。

 デジタルカメラも同じではないだろうか。100万画素から200万画素へ、200万画素から300万画素への変更は大きな変革であり、プリントしたときの画質には一見してわかる差があった。しかし多くのユーザーが最大サイズとして利用するA4までなら、画素数は400万から500万で十分であり、画素数がそれ以上あっても肉眼で判別できないレベルになる。500万画素から600万画素へと20%の画素数アップは、ほとんどのユーザーにとって重要ではないといえるだろう。

 もし500万画素で不足という場合は、2/3型800万画素CCD搭載機や、デジタル一眼レフカメラを選択するほうが好ましく、あるいは1/1.8型の700万画素や800万画素という選択もある。1/2.5型のままで600万画素化することに、どれほどの意味があるのかは疑問である。そのため冒頭で「FX8から大きな変更はない」と述べたのである。

 薄型ボディ、2.5型液晶、光学式手ブレ補正という要素を盛り込むことでFX7の大ヒットを生み出し、画素数以外の要素が大切であると証明して見せた松下電器だが、今回のFX9では、画素数をアップすることで上位機種とし、FX8より5,000円ほど高くなる見込みの上級機種として設定をしている。ユーザーがこれをどのように判断し、受け入れるのか、大変興味深いところでもあり、見守りたいと考えている。


作例

※作例のリンク先は、撮影した画像データそのものです(ファイル名のみ変更してあります)。クリックすると撮影した画像が別ウィンドウで表示されます。

※キャプション内の撮影データは、画像解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値(F)/露出補正値(EV)/ISO感度/焦点距離(35mm判換算、mm)です。


●画角


【広角端】
2,816×2,112 / 1/400(秒) / 5.6 / 80 / 0 / 35
【望遠端】
2,816×2,112 / 1/160(秒) / 10 / 80 / 0 / 105


●ISO感度


【ISO80】
2,816×2,112 / 1/30(秒) / 2.8 / 80 / -0.3 / 35
【ISO100】
2,816×2,112 / 1/30(秒) / 2.8 / 100 / -0.3 / 35

【ISO200】
2,816×2,112 / 1/60(秒) / 2.8 / 200 / -0.3 / 35
【ISO400】
2,816×2,112 / 1/125(秒) / 2.8 / 400 / -0.3 / 35


●彩度


【標準】
2,816×2,112 / 1/400(秒) / 2.8 / 80 / 0 / 35
【ナチュラル】
2,816×2,112 / 1/400(秒) / 2.8 / 80 / 0 / 35
【ヴィヴィッド】
2,816×2,112 / 1/400(秒) / 2.8 / 80 / 0 / 35


●カラーエフェクト


【ウォーム】
2,816×2,112 / 1/200(秒) / 5.6 / 80 / 0 / 35
【クール】
2,816×2,112 / 1/200(秒) / 5.6 / 80 / 0 / 35

【白黒】
2,816×2,112 / 1/200(秒) / 5.6 / 80 / 0 / 35
【セピア】
2,816×2,112 / 1/200(秒) / 5.6 / 80 / 0 / 35


●マクロ


2,816×2,112 / 1/60(秒) / 5 / 80 / 0 / 105 2,816×2,112 / 1/80(秒) / 2.8 / 80 / -0.7 / 35

2,816×2,112 / 1/100(秒) / 2.8 / 80 / 0 / 35 2,816×2,112 / 1/250(秒) / 2.8 / 80 / -0.7 / 35


●シーンモード(風景)


【標準】
2,816×2,112 / 1/320(秒) / 2.8 / 80 / 0 / 35
【風景】
2,816×2,112 / 1/250(秒) / 5 / 80 / 0 / 105

【風景】
2,816×2,112 / 1/200(秒) / 5.6 / 80 / 0 / 35
【風景】
2,816×2,112 / 1/320(秒) / 2.8 / 80 / 0 / 35


●逆光


2,816×2,112 / 1/800(秒) / 5.6 / 80 / 0 / 35 2,816×2,112 / 1/1,000(秒) / 5.6 / 80 / 0 / 35

2,816×2,112 / 1/400(秒) / 5 / 80 / 0 / 105 2,816×2,112 / 1/250(秒) / 5 / 80 / 0 / 105


●一般作例


白いビルに青い空。ビルの白さで極端に空が落ちることを期待していたのだが、それほどでもない。このケースでは結果的に適正だが、どちらかというと露出がややオーバー目に出る
2,816×2,112 / 1/640(秒) / 5.6 / 80 / 0 / 35
倉庫の中にしまわれていたもの。1/4秒でISO400。荒れているが、肉眼でもほとんど真っ暗なのにここまで写る。手ブレ補正の価値は大きい
2,816×2,112 / 1/4(秒) / 2.8 / 400 / -0.3 / 35

マイナス補正をしつつ手前をストロボで明るくして両立させた。コンパクト機ならではの深い被写界深度で、ワイド側ならこんな使い方も可能となる
2,816×2,112 / 1/500(秒) / 2.8 / 80 / -0.7 / 35
オートのままで撮影するとややオーバー気味で、ハイライトが滲む。製品版でもこのままならば、マイナス補正をして撮影することを心がけるとよいだろう
2,816×2,112 / 1/80(秒) / 2.8 / 100 / -0.7 / 35
A4にプリントすると、ひげの一本までしっかり描写されており、画素数が多くなったことの価値は見て取れる。コントラストはやや高めの設定で、背景にメリハリがついたものの、陽の当たる部分はオーバー気味になるようだ
2,816×2,112 / 1/125(秒) / 2.8 / 80 / 0 / 35


●手ブレ補正

 基本的に補正モードとして「Mode2」を使用し、1/8秒、1/4秒、1/2秒で撮影。参考までに「Mode1」と、手ブレ補正OFFでも1/8秒で撮影してみた。もたれかかることなく起立しての撮影で、風はほとんど無く、撮影コンディションとしては良好である。5〜6枚撮影して、その中からもっともブレていないコマを選んだ。


【MODE2 1/8秒】
2,816×2,112 / 1/8(秒) / 2.8 / 80 / 0 / 35
【MODE2 1/4秒】
2,816×2,112 / 1/4(秒) / 2.8 / 80 / 0 / 35
【MODE2 1/2秒】
2,816×2,112 / 1/2(秒) / 2.8 / 80 / 0 / 35

【MODE1 1/8秒】
2,816×2,112 / 1/8(秒) / 2.8 / 80 / 0 / 35
【手ブレ補正OFF 1/8秒】
2,816×2,112 / 1/8(秒) / 2.8 / 80 / 0 / 35

 結果的に1/8秒はブレが少なく、1/4秒でも1/2秒でも、あるいは手ブレ補正なしでも1/8秒なら似たような結果が得られた。手ブレ補正の効果が疑問視されそうだが、実際の撮影の中では1/20秒などでもかなりブレることがある。

 この時はいわばベストコンディションでの撮影だったが、夜店や室内のペットなどを撮影する場合には、もう少しラフな撮影になるだろうし、5〜6枚撮影して当たりを選ぶのではなく、1枚しか撮れないこともあるだろう。1/8秒までなら手ブレ補正付きが好ましいのではないかと思う。



URL
  松下電器
  http://panasonic.jp/
  製品情報
  http://panasonic.jp/dc/fx9/

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松下、600万画素のコンパクト手ブレ補正機「DMC-FX9」(2005/07/21)



安孫子 卓郎
(あびこたくお) きわめて頻繁に「我孫子」と誤変換されるので、「我孫子ではなく安孫子です」がキャッチフレーズ(^^;。大学を卒業後、医薬品会社に就職。医薬品営業からパソコンシステムの営業を経て脱サラ。デジタルカメラオンリーのカメラマンを目指す。写真展「デジタルカメラの世界」など開催。現在パソコン誌、写真誌等で執筆中。

2005/08/09 00:35
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