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【那和秀峻の最新デジカメレビュー】ニコン D70s

~18-70mmを使い新旧両機を実写比較
Reported by 那和 秀峻

 D70sはその名称通りD70の改良版であり、後継機である。D70から変わった点は、(1)液晶モニターを1.8型から2型へ、(2)新デザインメニューの採用、(3)AFの合焦精度および動体追従能力の向上、(4)内蔵ストロボの照射角のカバー範囲が焦点距離20mmから18mmに拡大、(5)リモートコード「MC-DC1」への対応、(6)バッテリーの大容量化、(7)アイカップの改良、(8)外観デザインの一部改良、である。 ただし、実際に見比べてみると、外観上の大きな差はない。筆者のD70と比較実写してみたところ、実写では多少の向上が見られた。

 なお、今回は使用レンズをAF-S DXニッコール 18-70mm F3.5-4.5G(IF)に限定した。これ1本でいつもの定点観測は全部カバーできるからである。また、記録メディアはレキサーメディアの80倍速2GBを使用した。


目を凝らさなければ違いがわからないボディ

 外観はD70と大きな差はない。6面写真でわかるように、ちょっと見ただけではどこが変わっているかわからない。正面から比べてみて、そっくりである。

 いちばん大きく変わったのは液晶モニターが2型になったことだ。また、シャッターレリーズボタンが銀色から濃い灰色になった。さらに、接眼部のアイカップもデザインが変わっている。もちろん、ボディ前面のロゴはD70sに変わっている。外観上はこれだけしか変化していない。





D70s(左)とD70。外観で違いを見つけるのは難しい エンブレムはより高級感のあるものに変わった

 ボディ上面右手側には大型の液晶パネルがあり、その前方に測光モードと露出補正のボタンがある。また、パネル右側にはイルミネータがあり、これはFORMAT(初期化)ボタンを兼用している。

 ボディ上面左手側にはモードダイアルがあり、P・S・A・Mの露出モードのほかに、イメージプログラム(全自動を含む7種類)がある。また後方にはブラケット(BKT)と連写切替(FORMATを兼用)もある。このあたりもD70とまったく同一といっていい。


ボディ上面右手側。液晶パネル周りはD70と共通 シャッターボタンは濃いグレーになった

ボディ上面左手側。モードダイヤルのデザインはD70と同じ 液晶モニター周り。大型化よりもメニューデザインの変更が視認性に貢献している

ファインダー周り。アイカップのデザインが変わった 新型のリチウムイオン電池はより大容量になった。D70の電池と互換性がある

 電池は新タイプのリチウムイオン「EN-EL3a」で、形状はD70用と同じである。容量が大きくなったことは前述した通りだ。

 メニュー関連では、文字の大きさがわずかに大きくなっただけではなく、色、書体などが変わった。D70ではかなりカラフルだったが、D70sでは黒地をベースにした色の少ないものになった。視認性がよくなったことは確かである。


●D70sのメニュー画面





●D70のメニュー画面




 なおD70については、5月16日のファームアップ(A・Bファームともバージョン2.0)を実行することで、メニューがD70sと同様になる。

 さらにファームウェアをアップデートすると、AFがD70s並(特にダイナミックAF、至近優先ダイナミックAFの性能向上)になるという。ほかに、PictBridgeでカメラ側からの用紙選択が可能となり、RAWの撮影枚数表示も圧縮RAWでの残り撮影枚数を表示できるようになり、撮影可能枚数が増加した。このように差が縮まると、実写でどのような違いがあるか、いつもよりも一段と興味のあるところだ。


確かにAWBとAFは少しレベルアップ

 では、実写比較ということで、D70sとD70それぞれに18-70mm F3.5-4.5を装着してテストした。1本で定点撮影の画角をまかなえることもあり、今回のような複数台の比較撮影でも比較的スピーディーに撮影できた。

 なお、D70はファームアップ前である。


※以降に掲載する作例のリンク先は、撮影した画像データそのものです(ファイル名のみ変更しています)。縦位置のものは、サムネールのみ回転していますが、拡大画像はあえて回転せずに掲載しています。クリックすると撮影した画像が別ウィンドウで表示されます。

※使用レンズはすべてAF-S DXニッコール 18-70mm F3.5-4.5G(IF)です。

※キャプション内の作例データは、画像解像度(ピクセル) / 露出時間 / 絞り値(F) / 露出補正値(EV) / ISO感度 / レンズ焦点距離(mm) / その他です。



 最初は新橋駅前ビルである。18mmの広角側では、D70sは狙ったポイントに合焦し、しかもシャープである。また、D70にあった、わずかな青カブリが取れている。ただし、色モアレはやや目立つ。さらに開放から2段絞りで画質はよくなる。

 D70の方はほぼ合焦しているが、全体的にD70sよりごくわずかにシャープネスが低下し、また青カブリがある。半面、色モアレはそれほど気にならない。開放から2段絞りでシャープネスも向上する。左上の白看板を比べると、白飛びの具合からダイナミックレンジは同程度と判断したい。


【D70s / F3.5】
絞り開放から良い
3,008×2,000 / 1/1,250秒 / 3.5 / 0.3 / 200 / 18
【D70 / F3.5】
やや描写が甘い
3,008×2,000 / 1/1,600秒 / 3.5 / 0.3 / 200 / 18

【D70s / F6.3】
2段絞り込むとさらに画質が良くなる
3,008×2,000 / 1/500秒 / 6.3 / 0.3 / 200 / 18
【D70 / F6.3】
3,008×2,000 / 1/500秒 / 6.3 / 0.3 / 200 / 18

 70mm望遠側の絞り開放ではD70sとD70の見分けがつきにくいぐらいだ。両方とも合焦精度が良く、シャープネスも高い。色モアレや色収差も目立たない。

 ただ、わずかな差だがD70sの色再現が実際に近い。開放から2段絞り込むと、D70sもD70もさらに良い画質になる。


【D70s/F4.5】
3,008×2,000 / 1/800秒 / 4.5 / 0.3 / 200 / 70
【D70/F4.5】
3,008×2,000 / 1/1,000秒 / 4.5 / 0.3 / 200 / 70

【D70s/F9】
3,008×2,000 / 1/320秒 / 9 / 0 / 200 / 70
【D70/F9】
3,008×2,000 / 1/320秒 / 9 / 0 / 200 / 70

 次はポートレートである。これは近距離でのAF精度、AWB精度、肌の調子などをチェックするテストだ。

 D70sはAWBだとわずかに青っぽい。しかし合焦精度は高い。従来、このマルチCAM900モジュールを使用したニコンの中級から普及クラスのデジタル一眼レフはわずかに合焦精度が甘かった。しかし、このD70sではそのあたりも改良されているものと思われる。


【D70s / AWB】
絞り開放から目にぴったりピントが合っている。AWBはわずかに青っぽい
3,008×2,000 / 1/400秒 / 4.5 / 0.3 / 200 / 70
【D70 / AWB】
ほんのわずかにピントが甘い。やはりAWBは少し青っぽい
3,008×2,000 / 1/400秒 / 4.5 / 0.3 / 200 / 70 / コントラストソフト

 晴天モード(デーライト)にすると、D70s、D70とも肌色は自然となる。D70はごくわずかだが、測距精度がD70sよりも劣る。


【D70s / WB晴天】
3,008×2,000 / 1/320秒 / 4.5 / 0.3 / 200 / 70
【D70 / WB晴天】
3,008×2,000 / 1/400秒 / 4.5 / 0.3 / 200 / 70

 木陰での人物撮影はどうだろうか。いつもどおり、7分身撮影で比べてみた。これも傾向としてはAWBでわずかに青く、晴天モードで自然な発色となる傾向は同じだ。ただし、D70のAWBの方が青みがさらに強くなった。


【D70s / AWB】
3,008×2,000 / 1/500秒 / 4.5 / 0.3 / 200 / 70
【D70 / AWB】
3,008×2,000 / 1/500秒 / 4.5 / 0.3 / 200 / 70

【D70s / AWB】
3,008×2,000 / 1/640秒 / 4.5 / 0 / 200 / 70
【D70 / AWB】
3,008×2,000 / 1/500秒 / 4.5 / 0.3 / 200 / 70

 いつものタングステン照明下の人物撮影では、カラーメーターで測ったところ、今回は約3,400Kと、AWBの追尾範囲(約3,500~8,000K)をわずかに下回った。

 実際に撮影してみると、AWBではやはり赤系統のカブリが残っている。白熱電球モード(約3,000K)にするとわずかに補正過剰でシアン味が出た。


【D70s / AWB】
3,008×2,000 / 1/5秒 / 4.5 / 0 / 200 / 46
【D70s / AWB】
3,008×2,000 / 1/5秒 / 4.5 / 0 / 200 / 46

【D70s / WB電球】
3,008×2,000 / 1/5秒 / 4.5 / 0.3 / 200 / 46
【D70 / WB電球】
3,008×2,000 / 1/5秒 / 4.5 / 0.3 / 200 / 46

 蛍光灯(実測値は約4,200~4,600K)での撮影では、不思議な結果になった。AWBではD70s、D70ともカットによって、色傾向が変わるのだ。蛍光灯のフリッカーに影響されたものだろう。その中で多数派のほうのカットを選んでみた。

 すると、D70sはAWBではややオレンジ系統になり、蛍光灯モード(約4200K)ではややマゼンタがかっているが、AWBよりは自然である。ところが、D70のAWBはD70sの蛍光灯モードに近い。そして蛍光灯モードでも、D70sの蛍光灯モードに近い発色になった。D70sのAWBは全体的に精度が高くなっているが、この蛍光灯だけは予想とは違った。


【D70s / AWB】
3,008×2,000 / 1/40秒 / 4.5 / 1.3 / 200 / 70
【D70 / AWB】
3,008×2,000 / 1/50秒 / 4.5 / 1 / 200 / 70 / コントラストソフト

【D70s / WB蛍光灯】
3,008×2,000 / 1/40秒 / 4.5 / 1.3 / 200 / 70
【D70 / WB蛍光灯】
3,008×2,000 / 1/40秒 / 4.5 / 1 / 200 / 70

 次は特急列車の通過を連写するテストだ。D70sはD70と同様に、初期設定はAF-S(シングルAF)である。ただ、カスタム設定で変更でき、さらにスポーツモード(動体撮影モード)にすることでもAF-Cになる。今回はスポーツモードを使ってみた。

 D70sはダイナミックAFが改良されているということなので、中央1点を選んで撮影した。連写速度は両方とも毎秒約3コマで、実写の結果もほぼ同じだった。予測駆動フォーカス(動体予測)もきちんと働いていて、まずまずのピント精度である。


●D70s

 12コマ切れたうちの最後の5コマ。動体予測は普及機にしてはいい。


3,008×2,000 / 1/800(秒) / 4.5 / 0 / 200 / 105 3,008×2,000 / 1/800(秒) / 4.5 / 0 / 200 / 105 3,008×2,000 / 1/800(秒) / 4.5 / 0 / 200 / 105

3,008×2,000 / 1/800(秒) / 4.5 / 0 / 200 / 105 3,008×2,000 / 1/640(秒) / 4.5 / 0 / 200 / 105

●D70

 D70で別の特急列車を撮影。こちらも12コマ切れたうちの最後の5コマ。


3,008×2,000 / 1/1,000(秒) / 4.5 / 0 / 200 / 105 3,008×2,000 / 1/1,000(秒) / 4.5 / 0 / 200 / 105 3,008×2,000 / 1/1,000(秒) / 4.5 / 0 / 200 / 105

3,008×2,000 / 1/800(秒) / 4.5 / 0 / 200 / 105 3,008×2,000 / 1/800(秒) / 4.5 / 0 / 200 / 105

 感度別のノイズはISO200~800を比べた。多くの人にとって常用感度だからである。これはD70とD70ではほとんど差がない。両方とも許容できるノイズレベルである。なお、D70sでは右上にホコリが付いてしまったが、これは筆者のミスである。


【D70s / ISO200】
3,008×2,000 / 1/40秒 / 4.5 / 0 / 200 / 70
【D70 / ISO200】
3,008×2,000 / 1/40秒 / 4.5 / 0 / 200 / 70

【D70s / ISO400】
3,008×2,000 / 1/80秒 / 4.5 / 0 / 400 / 70
【D70 / ISO400】
3,008×2,000 / 1/50秒 / 4.5 / 0.3 / 400 / 70

【D70s / ISO800】
3,008×2,000 / 1/160秒 / 4.5 / 0 / 800 / 70
【D70 / ISO800】
3,008×2,000 / 1/160秒 / 4.5 / 0.3 / 800 / 70

 ISO1600はいつものお台場小香港を撮影した。D70sとD70とは見分けがつかないぐらいだ。両方ともノイズは少ない。十分実用レベルである。


【D70s / ISO1600】
3,008×2,000 / 1/160秒 / 3.5 / 1 / 1600 / 18
【D70 / ISO1600】
3,008×2,000 / 1/160秒 / 3.5 / 1.3 / 1600 / 18

 レインボーブリッジの夜景もいつも通りの条件だが、曇っているので空の調子が違う。両方ともノイズ除去をONにしているためか、長秒時ノイズが非常に少ない。ただし、ノイズ除去をONにしておくと、露出時間と同じだけノイズ除去時間がかかるのは、ほかのデジタルカメラと同様だ。また、D70sは絞り込んでいるために、気づかなかったゴミが写り込んでしまった。D70の方はヘリコプターの航空灯の軌跡であり、ゴミではない。



 青空を入れたシーンも撮ってみた。これもAWBではD70sが自然で、D70はほんのわずかだが青い。ただ、露出傾向などはよく似ていて、反射の強い光にも大きく影響はされていない。



 最後は内蔵ストロボのテスト。約1.5mの距離で、焦点距離18mmで撮影した。D70sのストロボポップアップ位置は18mmまで完全カバーするようになったということだが、なるほどD70と比べると、わずかだが配光特性が良くなっている。また、D70の青カブリがD70sではなくなっている。AWBで撮っているためだと思われる。



 ほかにもさまざまなシーンを撮影してみたが、ごくわずかにD70sの方がAWBやAFなどが優れていた。

 結論としては、現在D70のユーザーであれば、ファームアップをすれば、D70sを購入する積極的な動機が見当たらない。しかし、これから新規にこのクラスを買おうとするユーザーや、2台目のD70を買いたい人、あるいは他メーカーからの乗換えユーザーにはD70sをおすすめできる。

【お詫び】D70の掲載画像を、AWBの設定が+1のまま掲載してしまいました。このため、D70の色再現が青みに寄っていますが、実際にはわずかな青み寄りで、AWB+1の誤設定のために青みが強調されています。各方面にご迷惑をかけたことをお詫びいたします。

 なお、コントラストがソフトに表示され、またAFがMFに表示されるのは、誤設定ではありません。理由は不明ですが、Exif情報が誤って書き込まれている可能性があります。この点もご了承いただければ幸いです。


【2005年5月30日追記】コントラストがソフトになる点について、「仕上がり設定」をデフォルトの「標準」にしているためとのご指摘をいただきました。「標準」では被写体の条件に応じてカメラがコントラストなどの設定を変更します。

また、AFがMFと表示される点については、AF後にフォーカスリングを動かしたものと思われます。

ご指摘いただきました皆様にお礼を申し上げるとともに、ご迷惑をおかけした皆様にお詫び申し上げます。

  ニコン
  http://www.nikon.co.jp/
  製品情報(D70s)
  http://www.nikon-image.com/jpn/products/camera/digital/slr/d70s/
  製品情報(AF-S DXズームニッコールED 18-70mm F3.5-4.5G[IF])
  http://www.nikon-image.com/jpn/products/lens/dx/zoom/af-s_dx_ed_18-70mmf35-45g_if.htm
  レンズ交換式デジタルカメラ機種別記事リンク集(D70s)
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/link/dslr.htm#d70s




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