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【新製品レビュー】ソニーDSC-T7

~厚さ1cmを切った極薄のサイバーショット
Reported by 塙 真一

 ソニーの「サイバーショット DSC-T7」は、薄型スタイリッシュモデルとなるTシリーズの最新モデルだ。本体最薄部9.8mmという超スリムなボディを持つのが最大の特徴である。薄型モデルの代表ともいえる「DSC-T3」でも最薄部は17.3mmだったことを考えると、大幅な薄型化に成功している。

 画素数は有効510万画素と従来モデルと同じだが、CCDサイズを1/2.5型へと若干小さくしている。液晶モニターは2.5型と大きく、高輝度、高コントラストがウリの「クリアフォト液晶」を採用する。

(製品撮影:清水勝一)


新開発のメイン基板により極限まで薄型化を図る

 何といっても最大の特徴はわずか9.8mmという極薄ボディを実現していることだろう。「カード型デジカメ」という言葉はまさにこのカメラのためにあるようなものだ。

 この薄さを実現するためにメイン基板を新開発し、従来モデル(DSC-T3)の約2分の1の体積になっているという。また、折り曲げレンズの機構内のレイアウトにも変更が施され、より薄いボディに光学3倍ズームを内蔵することに成功している。





 さらに、バッテリーが小型化した点も見逃せない。新開発の「インフォリチウム Eタイプバッテリー」により約150枚の撮影が可能となっている。同社のインフォリチウムバッテリーは残量表示が分単位で表示されるのだが、DSC-T7でもこれは継承されている。概算とはいえ、あとどの程度撮影が可能なのかが時間で表示されるというのはありがたい。

 ただし、撮影可能枚数が約150枚というのは最新のコンパクトデジカメとしては決して多いとはいえない。泊まりがけの旅行などでは充電器を忘れないようにしたいところだ。充電はバッテリーを本体から取り外して単体で行なうタイプのものだ。充電器自体はコンパクトだが、できることなら本体に電池を入れたまま充電できるのが望ましい。

 記録メディアはメモリースティックDuoを採用する。パッケージに32MBのメディアが付属するが、最高画質モードとなる5M/ファインで約12枚しか撮れないため、できれば256MB以上のメモリースティック PRO Duoを用意したいところだ。


バッテリーは薄型化の新タイプ インフォリチウムなのでバッテリー残量表示も可能 記録メディアはメモリースティックPRO Duo/Duo

動作は軽快だが、操作性ややに不満

 本体の前面にはスライド式のレンズカバーが設けられている。電源スイッチを兼ねているため、カバーを下げると自動的に電源が入り撮影が可能となる。撮影を使用とするときには大変便利なのだが、逆にポケットの中に入れて持ち歩いている時などにカバーが開いて電源が入ってしまうこともあった。もう少し、カバーの開閉に節度があっても良いのではと感じた。

 また、レンズカバーとは別に本体側面に電源スイッチが用意されている。再生時などはこれを押すことでレンズカバーを閉じたまま画像の閲覧などができるわけだが、ボタンが小さくあまり押しやすいとはいえない。モード切換えスイッチを「再生」にしておけば、レンズカバーを開けても自動的に再生モードとして起動してくれるので、実使用においてはレンズカバーが電源スイッチと考えておけば良いだろう。


レンズカバーを閉じたところ 本体側面の電源スイッチ シャッターボタン周り

 レンズカバーを開けると約1.1秒で撮影スタンバイとなる。レンズがボディから飛び出さない折り曲げレンズを採用するため、思いのほか軽快な起動に仕上がっている。もちろんレンズカバーを閉じると電源がOFFになるので、撮りたいときに電源を入れて、撮り終わったらすぐにカバーを閉めて電源OFFといった使い方がよく似合う。

 レンズは非球面レンズ3枚を含む8群11枚のカール ツァイス バリオ・テッサー光学3倍ズーム。F値はワイド側でF3.5、テレ側でF4.4とこのクラスとしては標準的。起動時間は短くて軽快と書いたが、ズーミングのスピードはややもったりとしている。ワイド端からテレ端までの移動は3倍とは思えないほど待たされる印象だ。また、ズーム操作のためのレバーが小さいのも気になるところ。薄さとデザインを重視するためにこうなったのだと思われるが、もう少しズーミングのしやすいレバーが欲しかったところだ。

 また、本体が非常に薄いだけに、カメラとしての強度なども気になるところだ。だが、メタル外装を採用していることや液晶モニターの前面にポリカーボネイドのパネルを装着していることなどにより、想像以上にしっかりとした作りに感じた。ポケットやバッグの中に入れてラフに持ち歩くことの多くなりそうなカメラだけに、このあたりの作りがしっかりしていることは高く評価したい。


独特の操作性とボタンレイアウト

操作部は裏面左側に集中する
 撮影機能は比較的シンプルで、オートのほかプログラムオート、10種類のシーンセレクションが搭載される。スリムボディを採用するため、モードダイヤルの搭載は見送られており、撮影モードの変更はメニューから行なう。メニューの構成は従来機と同等で、同社のデジカメを使い慣れたユーザーなら違和感を感じることはないだろう。

 だが、撮影モードの変更や、ISO感度、ホワイトバランス、連写モードの設定など多くの撮影機能をメニューから行わなければならないのはあまり使い勝手がよいとはいえない。本来、撮影機能の設定とその他のセットアップメニューは別の項目となっているはずなのだが、すべてがメニューボタンから横方向に移動して行かないと設定できないのである。このため、頻繁に設定変更を行なうユーザーにとっては煩雑な動作が強いられてしまう。

 また、従来機や多くのコンパクトデジカメとは違い、液晶モニターが背面の右側に位置し、操作系のボタン類が左側に装備されている。このため、各種ボタン操作を左手で行わなければならならい。これも慣れの問題かもしれないが、あまり使いやすいとはいえないのが気になったところだ。

 さらに注意しておきたいのが、レンズの位置である。正面から見て右上部にレンズが装備されるため、左手でしっかりとカメラをホールドしようとするとレンズ面に手が被ってしまうことがある。このため、手のひらでホールドするというよりは、指先でつまむようにしてカメラを構えなければならない。これはカード型デジカメ全般にいえることなのだが、もう少ししっかりとカメラを構えられるように設計してほしいと感じる。

 また、本体に三脚穴がなく、三脚使用時には付属のスタンドを取り付けなければならない。最薄部9.8mmという薄型ボディのためいたしかたないのだが、スタンドを装着して三脚に取り付けても、少し遊びが大きくブレやすいのが気になった。やはりスタイル重視のモデルとしての妥協が必要だということだろう。


再生時の画面例 カメラ設定(カメラ1) 露出補正メニュー

AFの自由度は高くないが、能力には満足

 肝心の画質についてだが、比較的誇張が少なく、ナチュラルな発色が得られる。500万画素クラスのコンパクトモデルとしては十分に満足できる画質といってよいだろう。ISO感度はオートのほかISO64からISO400までが選択可能だ。ISO100まではほとんどノイズも見られず、実用性は高い。基礎感度はISO64だが、通常のスナップ撮影ではISO100で使っていて不満に感じることは少ないはずだ。また、ISO200と400ではかなりノイズは目立つ。特に、シャドー部の偽色が目につくため、画質を気にするならISO100以下での使用をお奨めしたい。

 AFについては、5点の測距点を自動判別するマルチポイントAFと中央重点AFが選択可能。さらに中央重点には、スポットAFと中央重点AFの2種類が用意されている。願わくば5点の測距点を任意選択できるようにしてほしいと感じた。とはいえ、AFの合焦速度は速く、比較的暗いシーンでもピント合わせに苦労することは少ない。カメラの性格を考えれば、良くできたAFといってよいだろう。

 とにかく、このカメラの最大の魅力はポケットの中に入れていることすら忘れてしまうほど薄いボディだ。これだけ薄いボディのカメラにあまり多くの機能を望むよりは、フルオートでの使いやすさや絵のきれいさを期待したい。その点では十分に満足できるクオリティだし、また所有する喜びも感じられる。とにかく毎日カメラを持って歩きたい人にはぜひともオススメしたい1台といえそうだ。


作例

※作例のリンク先は、撮影した画像データをファイル名のみリネームしたものです。クリックするとオリジナル画像が別ウィンドウで表示されます。

※キャプション内の撮影データは、画像解像度(ピクセル) / 露出時間 / 絞り値(F) / 露出補正値(EV) / ISO感度 / ホワイトバランス / 焦点距離域(mm)です。


 ●画角


【6.33mm(35mm版38mm相当)】2,592×1,944 / 1/125(秒) / 3.5 / 0 / 64 / オート / 6.33 【19mm(35mm版114mm相当】2,592×1,944 / 1/60(秒) / 4.4 / 0 / 64 / オート / 19

 ●歪曲収差


【広角端】2,592×1,944 / 1/80(秒) / 3.5 / 0 / 64 / オート / 6.33 【望遠端】2,592×1,944 / 1/50(秒) / 4.4 / 0 / 64 / オート / 19

 ●ノイズ


【ISO64】2,592×1,944 / 1/30(秒) / 4.4 / 0 / 64 / オート / 19 【ISO100】2,592×1,944 / 1/50(秒) / 4.4 / 0 / 100 / オート / 19

【ISO200】2,592×1,944 / 1/100(秒) / 4.4 / 0 / 200 / オート / 19 【ISO400】2,592×1,944 / 1/200(秒) / 4.4 / 0 / 400 / オート / 19

【ISO64】2,592×1,944 / 1/1(秒) / 3.5 / 0 / 64 / オート / 6.33 【ISO100】2,592×1,944 / 1/2(秒) / 3.5 / 0 / 100 / オート / 6.33

【ISO200】2,592×1,944 / 1/4(秒) / 3.5 / 0 / 200 / オート / 6.33 【ISO400】2,592×1,944 / 1/8(秒) / 3.5 / 0 / 400 / オート / 6.33

 ●コントラスト


【マイナス】2,592×1,944 / 1/125(秒) / 4.4 / 0 / 64 / オート / 19 【標準】2,592×1,944 / 1/125(秒) / 4.4 / 0 / 64 / オート / 19 【プラス】2,592×1,944 / 1/125(秒) / 4.4 / 0 / 64 / オート / 19

 ●彩度


【マイナス】2,592×1,944 / 1/10(秒) / 3.5 / 0 / 64 / オート / 6.33 【標準】2,592×1,944 / 1/10(秒) / 3.5 / 0 / 64 / オート / 6.33 【プラス】2,592×1,944 / 1/10(秒) / 3.5 / 0 / 64 / オート / 6.33

 ●一般作例


逆光状態でもメインとなる被写体の明るさをほどよい明るさに仕上げている。
2,592×1,944 / 1/160(秒) / 3.5 / 0 / 64 / オート / 6.33
510万画素とはいえ、さすがに遠景の解像力は厳しいものがある。
2,592×1,944 / 1/160(秒) / 5.6 / 0 / 64 / オート / 6.33

マクロモードではワイド端で約8cmまで近づくことができる。花の発色は極めてナチュラル。
2,592×1,944 / 1/200(秒) / 5.6 / 0 / 64 / オート / 6.33
強い光源が入るシーンではさすがにゴーストやフレアが盛大に発生する。
2,592×1,944 / 1/160(秒) / 5.6 / 0 / 64 / オート / 6.33

シーンセレクションを「夜景」にセットすると1秒以上の長時間露光が可能となる。
2,592×1,944 / 1/1(秒) / 3.5 / 0 / 64 / オート / 6.33

近景ならば、線の細い被写体でもそれほど解像力不足を感じることはないはずだ。
2,592×1,944 / 1/80(秒) / 3.5 / 0 / 64 / オート / 6.33
最低感度のISO64とはいえ、さすがにノッペリとしたビルの壁面などには偽色が多く見られる。
2,592×1,944 / 1/160(秒) / 5.6 / 0 / 64 / オート / 6.33


URL
  ソニー
  http://www.sony.co.jp
  製品情報
  http://www.sony.jp/products/Consumer/DSC/DSC-T7/

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塙 真一
(はなわ しんいち)スナップや風景写真、ペット、人物撮影のほかに、最近ではグラビアアイドルのDVDパッケージ写真やカレンダー撮影も精力的にこなす。ほとんどすべてのデジカメをテストする強者テスターというキャラクターでカメラ雑誌に好評連載を持つほか、パソコンやレタッチソフトなどの造詣も深くパソコン誌などの各誌にも連載を持つ。カメラ好きが高じて購入したデジカメの数は数十機にも登る。

2005/05/18 00:13
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