デジカメ Watch

【西川 和久のポートレート インプレッション】

ニコンD2Xの使いこなしに悩み中!
Reported by 西川 和久

七生奈央@MARACHE
 今回は筆者が待ちに待ったニコンD2Xの登場だ。2001年春に同社のD1Xを使い出してから約4年間。修理に出す間隔もだんだん短くなり、そろそろマズイ状態になってきた。後釜をいろいろ考えた結果、その直系にあたるD2Xに決定!数日前に購入したのが届いたので、早速実験を兼ね撮影した。

 掲載した写真は、はじめの1枚のみ1,200万画素モード(レンズ:85mm F1.4)、他は全て600万画素モード(レンズ:35mm F2.0)である。またカメラは、JPEGファイン、輪郭強調弱、カラー設定I、色合い補正0、WB:Daylightに設定。補正後のデータには、UnsharpMask 100/1.0/1を施している。AdobeRGBで撮った写真のサムネイルに関してはsRGBへ変換し掲載した。予めご了承頂きたい。


どのモードを使うか!?それが問題だ

 仕様の詳細はメーカーの製品情報弊誌記事などをご覧頂きたい。

 基本的にボディ性能は向上しているので、D1Xから切り替えるにあたって一番気になるのは色だ。事前にサンプルなどを調べたところ、やはり筆者が何時も書いている「CMOSっぽい絵」になっているようだ。これをどう料理するか!? が最大のキーポイントとなる。いらぬ心配を避けるにはCCD RAWで撮影し、現像すれば、後でどうにでも調整可能であるものの、1GBのメディアを使って49枚しか撮れないのでは、実質仕事としては厳しい。従ってJPEGでいかに好みの色を作るか!? に注力することになる。

 これまでD1及びD1Xでは、コントラスト:LOW、シャープネス:LOW、色空間:AdobeRGB、圧縮:JPEG/Normalで使ってきた。ただサンプルと言うこともあり、今回圧縮はFineで撮影している。1,200万画素のサンプルが1枚なのは、現実問題として仕事で使うのは圧倒的に600万画素が多いからだ。とは言え、筆者もその解像力を見たいので、少しだけ撮って、ここに1枚掲載した。

 各サンプルは、左側にオリジナル、右側にトーンカーブとシャープネスを施した写真になっている。また、トーンカーブ用のACVファイルも添付したので、興味のある人はPhotoshopでRGB 16bitモードへ変更後、試して欲しい。AdobeRGBで撮影したものに関しては、最後にsRGBへプロファイル変換を行っている。

 はじめに試したのは、D1Xでお決まりのパターンからだ。


コントラスト弱め, AdobeRGB, ISO100(F4.0 1/160秒)
液晶モニタ上ではもっと薄く表示される。これをみて、補正後の上がりを想像するのは困難なため、撮影中は不安になる。ヒストグラム表示だけが頼りだ
補正後(ACVファイル)
トーンカーブでγを変えたところマズマズの色になった。一般的にはこれでOKかも知れないが、筆者的にはあまり好きな発色ではない。アイドル系ならOKかも!?

トーンカーブRGB
ご覧のように上下のγをかなり立てることになる
トーンカーブR
D1Xも明るくすると赤が若干強くなる傾向があった
トーンカーブB
ホワイトバランスの問題もあるが、青を少し加える

 掲載した他にもいろいろこの設定で撮ってみたものの、どうも補正後の色が好きになれない。また、キャプションにも書いたように、再生される絵から、補正後の上がり具合が想像付き難い。もちろん露出に関してはヒストグラムで確認すれば大丈夫であるが、撮りたい色になっているか? が解らないのだ。慣れの問題もあると思う。いずれにしてもD1及びD1Xとは全くデータの構造が違うことだけは判明した。

 次は、全て標準の設定。メーカーが考えている標準値なので、それなりの絵になることが予想される。昼頃撮っているので、先の作例よりもともと全体的に黄色くなる。


コントラスト標準, sRGB, ISO100(F4.5 1/160秒)
コントラスト標準とは言えけっこう眠い絵だ。好みとしてはもっと硬くしたい。また見た目より黄色っぽいのも気になる。従ってこの2点を補正する
補正後(ACVファイル)
撮った状況に近い感じだ。ただ絵全体に高級感(?)が無い。コンパクト型の画素数がそのまま大きくなったような雰囲気になってしまった

トーンカーブRGB
先の作例程ではないが、若干上下のγを立てている
トーンカーブR
Rの補正度はコントラスト弱めの時より多くなる
トーンカーブB
全体的に黄色いのが気になるので青を加えた

 撮影時の再生画面だけで補正後の色が想像付くので安心感は高い。補正後は無難な感じに仕上がった。しかし、この上がりも筆者的にはNGだ。絵が安っぽい。発色だけならD1Xの方が上である。イメージャがCCDからCMOSへ変わったこともあり、もともと多少の差は仕方が無いと思っていたものの、予想以上の差に「これは困ったな……。」と、しばし考え込んでしまった。JPEGで撮る限りこのままでは正直仕事に使えない。

 次は駄目元で他のデジカメでも実験したことのないコントラストハイに挑戦した。試しに何枚か撮ったところ、液晶モニタの再生画面で見る限りいい感じだったからだ。


コントラスト強め, AdobeRGB, ISO100(F4.0 1/320秒)
赤が凄く強くなる。これまで傾向を見るとγを立てる程、赤が強くなるようだ。ただ全体的な雰囲気は高級機っぽい写りになる。補正で赤さえ何とかなれば行けそうだ
補正後(ACVファイル)
よく雑誌のグラビアなどで見掛けるフィルムっぽい写りになった。これは筆者が求めている発色の一つであり、D1Xでは出なかった色だ

トーンカーブRGB
更にハイライトとシャドウを詰めてコントラストを上げた
トーンカーブR
強烈に赤被りするので、それを補正し色を整える
トーンカーブB
肌色を調整。事前にホワイトバラスを工夫すればOKかも知れない

 好みもあるだろうが、筆者としてはこれまで試した中では一番良い結果となった。また液晶モニタで再生した画像を見れば上がりも容易に想像できる。ただ、このコントラスト強めは、理屈上、後でデータを触る余裕は無く、露出に関しては非常にシビアだ。アンダーに撮るとシャドウが汚く、オーバーで撮ると直ぐに白トビ。ある意味、JPEGになった時点で絵が完成している必要がある。


コントラストハイで仕事を意識して撮る!

 予想外にコントラストハイの写りが良かったので、実際の仕事を意識してちょっと撮ってみた。モデルも七生奈央ちゃんということもあり、Hっぽい空気感も出し易い。シャドウとハイライトを意識したもの、暗いところで感度を上げ銀レフを使って光を当てたもの、素でそのまま撮ったもの、明るい場所の逆光で思いっきりレフを当てたもの……。ありがちなパターンをシュミレーションした。以降4枚に関しては補正後のみを掲載する。手順は上記と全く同じである。


ISO100(F4.5 1/160秒)
この奥行き感はD1Xでは出なかった
ISO200(F3.5 1/100秒)
暗いながらもディテールがよく出る

ISO100(F4.0 1/125秒)
肌の生っぽさがいい感じだ
ISO100(F4.5 1/320秒)
肌の感じとフィルムっぽさが魅力

 いかがだろうか? 時間的に照明を使ったパターンとISO400でのチェックはできなかったが、この写りは従来D1Xでは出なかった色であり、筆者が求めていたもののひとつだ。D2Xならではの発色と言えよう。

 ただ、まだまだ問題は山積みだ。ひとつはコントラスト強めは露出的にかなりリスキーなこと。そうでなくてもフィルムよりラチチュードが狭いのに、更にその中へジャストで合わせなければならなくなる。できれば標準と強めの中間(より少し強め寄り)の特性を持ちつつ、赤を抑え、青を少し乗せたオリジナルのカスタムトーンカーブを作り、上下に余裕を持たせ補正も無しにしたい。

 もうひとつは、この発色は色っぽい写真にはOKであるが、元気なアイドル系ではちょっと使えない。別途このポイントを探す必要がある。また、今回実験出来なかったISO400とホワイトバランスがタングステンの時、どうなるのか? は未知数。カラー設定と色合い補正も試さなければならない。当面、これらの問題がクリア出来るまではD1Xと併用になるだろう。


結論

 D1XからD2Xへの乗り換え組はかなり多いと思われる。しかし、正直ここまで色や特性が違うとある意味パニックだ。早速明日からD2Xで撮影しよう! とはなれない。自分が出したい色をあれこれ模索する時間が必要だ。そう言った意味ではDIGICでおおまかな発色がコンパクトからハイエンドまで統一されているキヤノンは安心である。多少の違いはあるものの、上位機種へ買い換えてもここまでの違いは無い。

 現在、カスタムトーンカーブに関しては、別売のソフトウェア、Nikon Captureを使わなければ扱えない。メーカーで何種かトーンカーブセットを公開し、Nikon Captureからカメラへそのデータを転送するところだけ切り出した形でフリーにすると助かる人が大勢いるのではないだろか!?

 もうひとつ、技術的にどうクリアするかが問題であるが、できれば800万画素と600万画素のCCD RAW(もどき!?)が出るようになれば使い易くなる。このクラスのカメラを使う現場で1,200万画素のCCD RAWが必要なのは、逆にレアケースだと思われる。1GBのメディアに49枚では現状いろいろな面でコストがかかり過ぎるからだ。もし技術的に可能であれば検討して頂けるとありがたい。



URL
  製品情報
  http://www.nikon-image.com/jpn/products/camera/digital/slr/d2x/index.htm

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西川 和久
(にしかわ かずひさ) 1962年11月生まれ。もともとPC系のライター&プログラマーであったが、周辺機としてデジカメを使い出してから8年。気が付くとグラビアカメラマンになっていたと言う特殊な経歴の持ち主。初めて使った一眼レフはCanon EOS DCS 1c。現在、いろメロ待受@DWANGOのグラビアマガジン、着エロ系DVDのジャケ写などで活躍中! http://www.cfc.co.jp/knishika/index.html

2005/03/16 00:15
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