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【新製品レビュー】リコー Caplio R1V

~広角28mmからの4.8倍ズームを搭載した502万画素機
Reported by 安孫子 卓郎

 Caplio R1Vは、昨年秋に発売された「Caplio R1」の本体デザインはそのままに、CCDを有効400万画素から有効502万画素に高画素化した製品。35mm判換算で28mmからの光学4.8倍ズームや、起動約0.8秒の高速動作など、R1のよき伝統は受け継いでいる。実勢価格は37,000円前後。すでに2.5型液晶モニター搭載の「Caplio R2」も発表されているが、今回はシリーズの基調モデルとして併売されるR1Vを取り上げたい。


外観

 本体色は「ゴールド」と「ブラック」の2種類。貸出機はゴールドの方で、ゴールドとシルバーの中間的な色合いだ。フォルムは直線基調のスクエアなデザインである。

 ボディ前面のスライド型スイッチで電動のレンズカバーが開き、起動する。このスイッチはしっかりした動きで気持ちよいが、カメラバッグの中でほかのものと接触し、知らないうちに起動していることがあった。レンズが傷ついてしまう可能性もある。安全性を考えると、押しボタン型や手動のレンズバリア型も一長一短だ。また、この製品も最近の他社製品と同様、USBとAV出力のコネクター部にカバーがなく、むき出しのままである。ほこりまみれの鞄に放り込まなければ問題ないのかもしれないが、AV出力はともかく、USBにはカバーを付けて欲しい。USBは1.1に対応している。

 ボディ上部には横長のシャッターボタンがあるのみ。最近、この手の横長ボタンを良く見るが、筆者の好みとしては丸い方が押しやすい。背面にはシーソー型のズームレバー。おしゃれなデザインだが、指がかりがもう少し欲しいところ。液晶モニターの右隣には「ADJ.」、「MENU」、「削除&セルフタイマー」、「DISP」の各ボタンがある。DISPボタンで通常表示、通常+ヒストグラム、撮影ガイド用の格子、スルー画のみ、液晶モニターOFFの切替が可能だ。






 十字型ボタンにはシーン、マクロ、ストロボの各設定モードが割り付けられており、中央にOKボタンがある。特徴的なのは背面の一番上、光学ファインダーの隣に、動画、静止画、音声記録を切り替えるレバーがあり、そのレバーの内部に再生ボタンが付いていること。アイデアとしてはよいのだが、実際に使っていると知らない間にレバーが動くことがあった。もうひと工夫の余地はあるだろう。

 ADJ.ボタンとは、よく使う機能をアサインできるボタン。露出補正、ホワイトバランス、ISO感度が固定で割り振られており、押すたびに項目を切り替えることができる。このあと4つ目として画質モード、AF/MF、シャープネス、測光方式を付け加えられる。なお、ホワイトバランスの手動設定は十字ボタン右を押すだけで、簡単に設定できるようになっており、使い勝手はよい。

 露出補正はADJ.ボタン1回で呼び出せる。その後は上下ボタンによる1/3EVステップ、±2EVの露出補正が可能だ。露出補正を呼び出したまま撮影でき、この状態にしておくと、上下キーでダイレクトに露出補正が行なえる。シャッター半押しで補正値のバー表示は消えるが、撮影を終えればまた表示される。ADJ.ボタンで呼び出すほかの機能、例えばホワイトバランスやISO感度も同様で、複数の機能を切り替えて個別に設定する場合は面倒だが、露出補正など単機能を調整するには操作性がよい。こうした割り切りによる試みは必要だろう。


CCDとレンズ

 CCDは原色フィルタータイプの1/2.5型有効502万画素。最大出力は2,560×1,920ピクセルだ。また、リコーは高感度の設定を特に取り入れているメーカーで、1/2.5型の撮像素子ながら最大ISO800の設定ができる。ISO400でノイズが目立ち始め、ISO800になると荒れてくるが、1/2.5型でここまで増感できるのはリコーの特徴といえよう。晴天時や三脚使用時は低感度を、ブレずに撮りたいときには高感度と、使い分けられるのは良い。

 静止画はJPEG(Exif Ver.2.21)で、FineとNormalの2種類。記録データ容量は2,560×1,920ピクセルのFineが約1.81MB、Normalで約1.03MB。シーンモード中の「文字」で撮影すると、TIFFで記録される。動画はAVI(Motion JPEG)で、320×240ピクセルの30fpsと160×120ピクセルの30fpsで記録できる。今年はVGAで30fpsが主流となりそうであり、その点では物足りないが、Web掲載用など、小さい方が取り回しが良い場合もある。音声はWAV形式で記録される。

 レンズは35mm判換算で28~135mmをカバーする4.8倍ワイドズーム。レンズの一部をスウィングさせるリトラクティングレンズシステムを採用し、コンパクトな本体を実現している。比較的常用する焦点域をカバーしており、好ましい。

 35~200mmなどの望遠寄りのズームも良いが、28mmから始まるズームにも捨てがたい魅力がある。ただ明るさがF3.3~4.8ともう一歩。F2.8より開放が1/2段ほど暗いため、せっかくISO800の設定があっても効果が落ちてしまう。レンズの暗さは増感の必要につながり、撮像素子の小ささが大きく出てしまう。薄型コンパクトも大切だが、明るいレンズの大切さも踏まえてほしいものだ。

 ズームの音はやや大きくうるさいし、もう少し滑らかさも欲しい。また、デジタルズームのキャンセルができないのも困る部分。ワイド端からズーミングするとテレ端で止まり、そのままデジタルズーム域に入ることはない。ところがテレ端からうっかりズームレバーをテレ側に押してしまうと、気がつかずにデジタルズームに入ってしまう。テレ側ではもっとズームしないかと、ついレバーを押してしまいがちになるものなので、キャンセル機能は是非欲しい。

 また、28/35/50/85/135mmの各焦点距離にズーム位置を固定する「ステップズーム」機能もある。面白いし、筆者のような作例を撮る立場の者にも便利だ。ただし、この機能をONにしてしまうと連続したズーミングができなくなり、4回押さないと端から端まで行かなくなる。常用するものではないが、50mmに固定して撮りたいなど、思い入れのある人には良いだろう。

 マクロはリコーの得意とするところで、ワイド側で1cm、テレ側で13cmまで接近できる。またマクロモードでも無限遠までの撮影が可能で、マクロでのAF性能も向上している。さらに、マクロに切り替えなくても30cmまで対応できるのは便利だ。ただし搭載レンズの焦点距離は28~135mm(35mm判換算、以下同)だが、マクロモード時には広角端で35mm相当になる。


高速な起動と終了

 電源ONから撮影可能までは約0.8秒、半押しからのレリ-ズタイムラグは約0.003秒と高速。特に起動はスライド式パワースイッチの音がやや大きいこともあり、キビキビとした印象で気持ちが良い。終了は起動よりは長くかかるが、1秒強といったところか。どちらも問題なく高速で軽快だといえよう。

 AFとMFの切替はメニュー内から行なう。「AF」、「MF」、「スナップ」、「無限遠」を切り替え可能で、スナップにすると2.5mにピントが固定される。望遠側では向かないが、広角側ではコンパクトデジカメの深い被写界深度を活かせるので問題ない。パンフォーカスレンズ的な使い方ができるので、子どもなどを撮る場合に活用できるだろう。またMFモードではズームレバーをフォーカス距離切り替えに兼用することができる。これもなかなか使いやすい。

 マクロモードでは、通常の状態でADJ.ボタン4度押し(または5度押し)でAFポイントの移動設定が可能になる。マクロモードを解除すると、ターゲット移動が行なわれていても中央部に戻る。便利だが、ADJ.ボタン4回(5回)押さないといけないのは面倒でもある。OKボタンの長押しでターゲット移動に入っても良かっただろう。

 連写は3コマまで。速度は遅めで、連写というよりは、連続撮影モードといった方がしっくりくる。一般的にいうところの「マルチ連写」もあり、2.2秒間で16コマの画像を1画像に記録する。シャッターを押したときから16コマ記録するS(ストリーム)連写と、シャッターを離したときからさかのぼって記録するM(メモリー逆戻り)連写がある。おもしろいのはこの16コマを1組にして1つの画像ファイルにできること。ただし連写中は液晶モニターが消えてしまうので、光学ファインダーを使用する。連写モードはパワーOFFで解除できる。


メニューの使い心地

 メニューは「撮影設定」と「セットアップ」の2つに大別され、撮影設定の下の階層に撮影設定「1」、「2」、「3」を設け、それぞれに各機能を配置している。例えば「1」には「画質・サイズ」、「フォーカス」などが集められており、「撮影設定」から十字ボタンの下を押して「1」に入る。

 通常はこれで使いやすいわけだが、比較的良く使うオートブラケットや長時間露光は「1」の下、「2」の中にある。「1」から十字ボタン左で「1」、「2」、「3」を集めたエリアに移動し、それから十字ボタン下で「2」に行く。さらに十字ボタン右でようやく「2」内部のオートブラケットに到達する。操作回数にするとたった4回だが、実際にやってみると紛らわしく、何度も間違えてしまった。前回使った項目を記憶して、そこからスタートしてくれればベストであったろう。


通常撮影時 露出補正 ホワイトバランス

撮影設定1 撮影設定2 撮影設定3

通常撮影 ポートレート スポーツ

高感度 マクロ オン

 なお、オートブラケットは0.5EV単位で3枚の撮影が可能だが、ブラケット幅を変更できないのは残念。また、ホワイトバランスのブラケット撮影も可能で、こちらは1枚撮影したものをホワイトバランスをずらして3枚出力する方式。通常の連写、3枚分より若干記録に時間がかかるようだが、日陰や室内での撮影など、ホワイトバランスに悩む場合には便利である。

 また、長時間露光は2/4/8秒で設定可能。というより、メニューで設定しないと長時間露光ができないのはやや不便。打ち上げ花火などは始めから露出時間を決めて撮るが、夜景の場合は絞り優先で露出時間は成り行きということも多い。三脚座は金属製でしっかりしている。


液晶モニター

 液晶モニターは、約11万画素の1.8 型透過型アモルファスシリコンTFT。屋内では問題ないが、屋外での視認性は今一歩。昔の液晶のように、全く見えないようなことはなく、ファインダーとしての役割を果たすには十分だが、屋外での視認性を謳う最新の製品と比べると、もうひとがんばり欲しいところ。なお、再生ボタンを長押しすると、再生モードで起動する。

 光学ファインダーはかなり小さく、一応見えるという程度。視度補正などはなく、撮影情報も表示されない。ここでシャッターを半押ししてピントを合わせると、液晶モニターが自動的にONになる。「構図は液晶モニターで確認してほしい」ということらしい。視野率は80%程度。ズームのワイド側にすると光学ファインダーの隅がレンズでケラレるが、もちろん写り込むことはない。


バッテリー

 付属のアルカリ電池(2本)はいわゆる「金パナ」で、連続1時間33分で146枚の撮影が行えた。オキシライド乾電池やニッケル水素充電池ではさらに多くの撮影が行なえるだろう。

 専用リチウム充電池も使用可能で、R1Vからは充電器とリチャージブルバッテリー(DB-50)が付属するようになった。これが実に良く持つ。CIPA規格準拠でDB-50使用時、通常撮影で約490枚。単3形アルカリ電池使用時が約200枚となっているが、実感としても相当撮れる。途中まで撮影枚数をカウントしていたが、思わず断念したほどだ。450枚ほど撮影したところ、バッテリーの残量表示がやや減った状態になっていた。この間、本レビュー執筆のために起動・終了・メニュー操作などを行なっている。フル充電すればまず困ることはないだろうし、万が一の時はアルカリ乾電池を出先で購入すればよい。


書込速度

 筆者の所有しているSDメモリーカードから、3枚連写での書き込み時間を測定した。2,560×1,920ピクセル、Normalの場合、SanDiskの256MBが1枚当たり2~3秒。Panasonicの256MB(10MB/sec)では1秒程度。KingMax 2004 SD 512MBで40倍速と表示されていたが、やはり1枚1秒程度で終了した。リコーのデジタルカメラは書き込みの遅さがネックとなっていたが、問題ないレベルまで改善されており、現在のSDメモリーカードならどれを使っても支障ないレベルと思われる。


作例

※作例のリンク先は、撮影した画像データそのものです(ファイル名のみ変更してあります)。縦位置のものは、サムネールのみ回転していますが、拡大画像はあえて回転せずに掲載しています。

※クリックすると撮影した画像が別ウィンドウで表示されます。

※キャプション内の撮影データは画像解像度(ピクセル)/露出時間/レンズF値/ISO感度/露出補正値/焦点距離です。



●ISO感度


【ISO64】2,560×1,920 / 1(秒) / F4.6 / 64 / 0 / 10.1(mm) 【ISO100】2,560×1,920 / 1(秒) / F4.6 / 100 / 0 / 10.1(mm) 【ISO200】2,560×1,920 / 1(秒) / F4.6 / 200 / 0 / 10.1(mm)

【ISO400】2,560×1,920 / 1/3(秒) / F4.6 / 400 / 0 / 10.1(mm) 【ISO800】2,560×1,920 / 1/6(秒) / F4.6 / 800 / 0 / 10.1(mm)


●ホワイトバランス


【オート】2,560×1,920 / 1(秒) / F4.6 / 64 / 0 / 10.1(mm) 【屋外】2,560×1,920 / 1(秒) / F4.6 / 64 / 0 / 10.1(mm)

【曇天】2,560×1,920 / 1(秒) / F4.6 / 64 / 0 / 10.1(mm) 【白熱灯】2,560×1,920 / 1(秒) / F4.6 / 64 / 0 / 10.1(mm)


●シャープネス


【シャープ】2,560×1,920 / 1(秒) / F4.6 / 64 / 0 / 10.1(mm) 【ソフト】2,560×1,920 / 1(秒) / F4.6 / 64 / 0 / 10.1(mm)


●一般作例


ISO感度はオートで100に増感されている。路地に咲く最後の菊だ。冬にふと見つけた彩りを、簡単に撮影できるのがコンパクトデジカメのうれしいところ
2,560×1,920 / 1/189(秒) / F3.6 / 100 / -1 / 5.6(mm)
川の中に流れ着いたのか流木があった。ワイド端で撮影しているが、ほとんど歪みがない
2,560×1,920 / 1/203(秒) / F3.3 / 100 / -0.3 / 4.6(mm)

道ばたの看板を撮影しただけだが、大変鮮やかで鮮明に写る。日陰で色合いのないものを撮影すると、かなり見栄えがするだろう。そのぶんコントラストは高めで、弊害もある
2,560×1,920 / 1/97(秒) / F3.3 / 100 / -1 / 4.6(mm)
ISO感度は154まで自動増感。レンズが暗いため気をつけないとブレてしまう。この時1/79秒。高倍率コンパクトは、便利な反面注意も必要になる
2,560×1,920 / 1/79(秒) / F4.8 / 154 / -1.3 / 22.2(mm)

-1.3EVでこれくらいの露出なので、積極的にマイナス補正して撮影する方が良好な結果になるようだ。レンズが小さく隙間からでも撮影できるのは面白い
2,560×1,920 / 1/64(秒) / F3.3 / 100 / -1.3 / 4.6(mm)
オートブラケットの中から+0.5EVのカット。逆光気味だが、空は少し飛びすぎ。メニューにコントラスト設定はない。もう少し抑え気味のほうが使いやすい
2,560×1,920 / 1/153(秒) / F5.4 / 100 / +0.5 / 4.6(mm)

カメラ側で-0.7EVの露出補正を行なったが、Exifには-0.8EVと記録されている。花の色はやや明るめに出ているが、こうした背景が入るのはコンパクトデジカメの面白さだ
2,560×1,920 / 1/64(秒) / F3.6 / 100 / -0.8 / 5.6(mm)
-0.7EVの露出補正だがやや明るめに出ている。さらにマイナス補正を行なう方が良さそうで、より積極的な補正の必要が感じられる
2,560×1,920 / 1/64(秒) / F4.8 / 154 / -0.7 / 22.2(mm)

-0.3EVの露出補正。望遠側の22.2mmで撮影しているが、背景までピントが深く、ごちゃごちゃした中に猫がいる姿がよくわかる
2,560×1,920 / 1/153(秒) / F9.3 / 100 / -0.3 / 22.2(mm)
ギリギリ飛ばずにすんだ1枚。この時ヒストグラムも注意しながら撮影を行なったが、それでも白飛びしたカットがかなりあった。コントラストの高いカメラなので、日差しのあるときには慎重に露出補正を行ないたい
2,560×1,920 / 1/90(秒) / F3.3 / 100 / -0.7 / 4.6(mm)

木更津の干潟とアクアライン。28mmの広さがありがたい場面だ
2,560×1,920 / 1/570(秒) / F5.4 / 100 / -1.0 / 4.6(mm)
梅の花でもここまで寄れる、という意味での作例。花が白いので、露出が引っ張られてアンダーになり、おかげで空も印象的な青になっている
2,560×1,920 / 1/620(秒) / F5.9 / 100 / 0 / 5.6(mm)


URL
  リコー
  http://www.ricoh.co.jp/
  製品情報
  http://www.ricoh.co.jp/dc/caplio/r1v/

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安孫子 卓郎
(あびこたくお) きわめて頻繁に「我孫子」と誤変換されるので、「我孫子ではなく安孫子です」がキャッチフレーズ(^^;。大学を卒業後、医薬品会社に就職。医薬品営業からパソコンシステムの営業を経て脱サラ。デジタルカメラオンリーのカメラマンを目指す。写真展「デジタルカメラの世界」など開催。現在パソコン誌、写真誌等で執筆中。

2005/03/10 00:11
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