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【那和秀峻の最新デジカメレビュー】富士写真フイルム FinePix S3 Pro

〜フィルムメーカーならではのデジタル一眼
Reported by 那和 秀峻

 富士写真フイルムはフィルムメーカーとしてのイメージが強いが、デジタルカメラでもパイオニアだ。'88年には世界初の完全デジタルカメラ、DS-1Pを開発。さらに、'93年にはニコンと共同で、Fujix DS-515(ニコンE2)を発売している。そして、'00年にはFinePix S1 Proを発売。S2 Proを経て、最近S3 Proを発売した。

 このS3 Proは、フィルムメーカーとしての富士フイルムのこだわりが随所に見られるデジタル一眼レフだ。とくに、画素をハニカム(蜂の巣)状にして、集光効率を高めた点。ダイナミックレンジを広げるR画素と感度を高めるS画素の2つを混在させた点。さらに、フィルムシミュレーションモードがある点。そして、有効画素数が1,234万画素と、10Mピクセルを超える高解像度である点。いろいろな意味で画質にこだわった富士フイルムらしいデジタル一眼レフだ。

 今回はメーカーから借りたFinePix S3 Proに、自前のニッコールレンズ、とくにDX 18-70mm F3.5-4.5と、VR 70-200mm F2.8Gを使った。


独特の操作系だが、わかりやすいレイアウト

 富士FinePix S3 Proはニコンの中級向け銀塩一眼レフカメラF80をベースにしながら、外装デザインや操作系などをまったく新規にしている。同じようにF80をベースにしたニコンD100とはまったく違う印象を受ける。

 操作系のレイアウトは6面写真でわかる。目立つのは背面液晶が左側にオフセットされている点だ。ニコンD100などはアイピースの真下にあり、S3 Proの背面はニコンとはまったくちがうレイアウトだ。





 ボディー右手側上面には液晶パネルがあり、各種情報が表示される。その前にはシャッターボタンの周囲に電源スイッチ、その後ろに露出補正と調光補正のボタンがある。このあたりの操作系はニコンD100などに近いから、ニコンユーザーにもとっつきやすい。

 ボディー左手側上面にはモードダイアルがある。P・S・A・Mのほかに、CSM(カスタム機能)とISO感度設定が独立している。ISO感度設定はわかりやすいが、うっかりこの位置にしたままだとシャッターが切れない。この方式はニコンD100でもそうだが、良し悪しである。なお、モードダイアル周囲にはドライブモード、そして背面にはオートブラケットとストロボモードのスイッチがある。


右手側上面には液晶パネル、シャッターボタン、電源スイッチ、露出補正、調光補正などがある。なじみやすいレイアウトだ 左手側上面にはモードダイアルがあり、露出モードのほかに、ISO感度の設定やカスタム機能の設定ができる。また、ドライブモードの切り替え、オートブラケット、ストロボモードのセレクタがある。これはニコンD100に近く、わかりやすい

 背面の十字キーはかなり大きいので、操作しやすい。その下にはMENU/OKボタンとBACK(キャンセル)ボタンがある。さらに、その下に記録メディアの収納部が配置されている。こういうレイアウトのために、液晶モニタが左にオフセットされているのだ。なお、十字キーの上方にはAF・AE同時ロックボタンと、その周囲に測光モード(マルチパターン測光・中央重点測光・スポット測光)のセレクタもある。

 液晶モニタは6面写真のように、透明プラスチックカバーで保護されている。それを外すと、液晶モニタと背面液晶表示パネルがはっきりわかる。ほかのデジタル一眼レフでは、液晶モニタの左側に操作ボタンがずらりと並んでいる。しかし、このS3 Proでは、再生のPLAYボタンしかない。これは上方の表示パネルで各種設定を行なうようになっているからだ。この設定には左側のFUNCボタンと、下に並んだ4つのボタンを使う。この基本的なレイアウトはS1 Proから踏襲されている富士独特のもの。最初はとまどうが、慣れてしまえばわかりやすい。


背面はまったく富士オリジナルのレイアウトで、十字キーが大きい。その下にメニューとOKボタン、キャンセルボタンがある。また、上方にはAE・AFロック、測光モード切り替えもある 液晶パネルは左側にオフセットされている。上方には液晶表示パネルがあり、ファンクションが4つのボタンで選べる。ここも富士独特の操作系だ

 レンズマウントはボディ前面に書かれているとおり、ニコンFマウント。富士ではレンズを供給していない。大判カメラ用や引伸レンズで有名なフジノンもぜひ出して欲しいところだ。なお、マウント部にはフォーカスモードのセレクタ(AFのCとS、MF)がある。また、上部にはAFの補助光の投光部もある。このあたりは概略、ニコンD100に近い。

 記録メディアはCFカードのほかに、xDピクチャーカードのダブルスロット。ダブルスロットはいいのだが、xDピクチャーカードの大容量化が遅れている(1GBが今春発売予定)。このカメラのファイルサイズ(RAWで最大約25MB)を考えると、現状ではCFカードを使わざるを得ない。


レンズマウントはニコンF。富士ではレンズを供給していない。ニッコールレンズを使用するようになっている 記録メディアはCFカードとxDピクチャーカードのダブルスロット

 電源は入手しやすい単3型電池で、これは富士フイルムのこだわりである。同梱されているのはニッケル水素電池である。

 内蔵ストロボの発光部はかなり高い位置にポップアップする。これならレンズ鏡胴によるケラレは少ない。


電源は単3電池4本。同梱されているのはニッケル水素電池だ 内蔵ストロボの発光部はかなり上方にアップする。このため、鏡胴によるケラレはよほど近距離でないと発生しない

 液晶モニタまわりでこのカメラならではの機能はスルー表示だ。つまり、EVF(電子ビューファインダー)と同じような機能がある。MENUで選び、OKボタンを押すだけで、撮影前の確認ができる。ただし、画像はモノクロで、30秒までである。この機能はハイエンドのデジタル一眼レフにも搭載していない機能だ。いずれはこの機能がデジタル一眼レフでは重要な機能になるかも知れない。

 液晶モニタの再生ではヒストグラムを表示することができる。しかし、撮影情報も表示できるようにして欲しかった。

 機能をFUNCに割り付けたので、MENU画面は比較的シンプルである。その代表例を示しておこう。


再生画面にはヒストグラムを表示できる。もう少し情報の表示が欲しいところだ メニュー画面はかなりシンプルだ。5ページあるが、そのうちのひとつ。視認性はいい

ダイナミックレンジの広さと色の鮮やかさ

 実写はビルの定点観測からだが、これにはAF-S DX 18-70mm F3.5-4.5Gを使用した。18mm側の絞り開放だと、わずかに前ピンだった。しかし、全体としてはいい画質である。ただ、偽色がやや目立った(ビルの上部)。絞り開放から2段のF6.7に絞ると全体がいい描写になる。さすがに高画素のカメラであることが実感させられる。また、左上の真っ白な看板の線がほんのわずかだが出ている。ダイナミックレンジの広さを示すものだ。なお、今回の撮影はこのカメラの特長を生かすために、すべてD(ダイナミック)レンジをワイドで行なっている。


※作例のリンク先は、特に記載がない限り、撮影した画像データそのものです(ファイル名のみ変更)。縦位置のものは、サムネールのみ回転していますが、拡大画像はあえて回転せずに掲載しています。クリックすると撮影した画像が別ウィンドウで表示されます。

※撮影データは特に記載がない限り、撮影モードは絞り優先AE、画像サイズ・画質はラージ・ファイン、ホワイトバランスはオート、ISO感度は100です。

※作例は個人での鑑賞用です。写真などの著作権は著作者に帰属します。無断転用、無断転載は著作権法違反となります。


18-70mm標準ズームの18mm側で、絞り開放F3.5 開放から2段絞りのF6.7。わずかに前ピン気味だが、描写はいい

 18-70mmズームの70mm側ではどうだろうか。70mmの絞り開放F4.5ではほんのわずかに合焦位置よりずれている。しかし、全体としては高画質である。絞り開放から2段のF9.5にすると、素晴らしい画質になる。このクラスの高画素機なら、レンズによって描写が向上する可能性がある。


18-70mm標準ズームの70mm側で、絞り開放F4.5 開放から2段絞りのF9.5。さすがに高画素機の描写である

 人物撮影にはVR 70-200mm F2.8Gを使用。さらに、屋外だが、実験的にフィルムシミュレーションをスタジオポートレートで撮影してみた。そうすると、トーンがやわらかくなり、一見ピントが甘いように見える。しかし、拡大するとちゃんと手前の目にピントが合っている。AFの合焦精度も高い。ほかのデジタル一眼レフとはひと味ちがう撮影ができるのだ。オートホワイトバランス(AWB)でも、昼光モードでもほとんど差はなかった。


70-200mm望遠ズームの70mm側で、絞りF2.8開放、AWBで撮影。スタジオポートレートモードで撮ったため、やわらかい描写だ。合焦精度も高い 昼光モード。AWBと昼光モードの差はほとんどない

 場所を変えて、背景が変わるシーンでも、AWBと昼光モードの差はほとんど見られない。このAWBはデーライトに関しては信頼性が高い。


70-200mm望遠ズームの70mm側で、絞りF2.8開放、AWB。これもスタジオポートレートモードのまま。やわらかい描写になっている 昼光モード。やはりAWBと昼光モードの差はほとんどない

 いつもどおりのタングステン照明(約3,000K)で撮影。AWBでは追尾を打ち切っているので、当然赤くなるが、素直な発色である。白熱電球モードではほぼ完全に補正された。


白熱電球の照明で撮影。AWBだと当然赤くなるが、素直な発色だ
18-70mm F3.5-4.5、絞りF4.2
白熱電球モードではほぼ完全に補正される
18-70mm F3.5-4.5、絞りF4.2

 いつもの蛍光灯の撮影では全体にやや露出アンダーになってしまった。このシーンでは+0.5EVでほぼ適正になるのがふつうなのだが。このため、完全な判定はむずかしいが、傾向はわかる。AWBまかせだと、やや黄色みがかかる。蛍光灯モードの昼光色を選ぶと、ややアンバーがかる。昼白色でほぼ自然な色になった。冷白色ではマゼンタがかる。このように、蛍光灯のモードが選べるのはいいが、やはりAWBでもう少し追い込んで欲しい。


いつもの蛍光灯下で撮影。どういうわけか露出アンダー気味だ。AWBではやや黄色い
18-70mm F3.5-4.5、絞りF4.5、+0.5EV
昼光色ではややアンバー
18-70mm F3.5-4.5、絞りF4.5、+0.5EV

昼白色で自然な感じに補正された
18-70mm F3.5-4.5、絞りF4.5、+0.5EV
冷白色だとややマゼンタ寄りになる
18-70mm F3.5-4.5、絞りF4.5、+0.5EV

夜景の定点撮影。30秒の露出だが、ノイズもほとんどなく、またAWBがよく効いている
18-70mm F3.5-4.5、絞りF19
 夜景の撮影もいつもどおりのレインボーブリッジ。30秒の露出だが、長時間ノイズはほとんど見られない。また、AWBだが、照明がかなりよく補正されていて、見た目に近く、色の偏りもない。

 特急列車の通過の撮影はしなかった。このカメラの連写は最高でも1枚約0.4秒、つまり毎秒約2.5枚だから、結果は目に見えているからである。このカメラは動体撮影用ではなく、じっくり撮影するためのカメラである。ただ、最大撮影枚数は12枚と多めだ。ただし、Dレンジをワイドにすると、連写は毎秒約1枚、最大撮影枚数は6枚となってしまう。

 また、レンズの歪曲のテストもしなかった。これはレンズ性能の問題だからであり、カメラの性能とは直接関係がないからだ。

 感度別によるノイズテストもいつものとおり。ノイズがわかりやすいように、わざとホワイトバランスの調整はしていない。ISO100〜1600と変えてみたが、それほど大きな変化はない。ISO1600でもいやな感じのノイズはない。


【ISO100】感度を変えて、ノイズの出方を見た。ISO100とISO1600を比べてみて、それほど大きな差がないことがわかる。ISO1600も十分実用範囲だ
18-70mm F3.5-4.5、絞りF8、オートブラケット
【ISO200】18-70mm F3.5-4.5、絞りF8、オートブラケット

【ISO400】18-70mm F3.5-4.5、絞りF8、オートブラケット 【ISO800】18-70mm F3.5-4.5、絞りF8、オートブラケット

【ISO1600】18-70mm F3.5-4.5、絞りF8、オートブラケット

 いつものお台場小香港での超高感度定点撮影でも、ISO1600で目立ったノイズはない。このカメラはダイナミックレンジだけでなく、ノイズに関しても優秀である。

 ISO800だと完全に実用範囲である。このため、かなり暗い場所でも手持ち撮影ができる。


【ISO1600】これも超高感度の定点観測。ISO1600でも、シャドー部から中間部にかけて、ノイズは目立たない
18-70mm F3.5-4.5、絞りF3.5、AEロック
【ISO800】かなり暗い場所で、ISO400では完全に手ブレしてしまう条件。ISO800でも1/6秒だが、ブレていない。ピントは車体の後部に合わせてある
18-70mm F3.5-4.5、絞りF3.8、オートブラケット

 このS3 ProのフィルムシミュレーションはRAW現像すると、さらに幅が広がる。フジクロームモードで撮影したものと、RAW現像してベルビア調にしたものではあきらかに色調やコントラストがちがう。なお、RAW現像ではスタジオポートレートEXも選べる。


フィルムシミュレーションモードの違い。こちらは撮影時にフジクロームモードで撮影したもの
18-70mm F3.5-4.5、絞りF5.6
RAW現像のときにベルビア調にしたもの。フジクロームモードとは色調やコントラストがはっきりちがう
18-70mm F3.5-4.5、絞りF5.6

 もうひとつ、フィルムシミュレーションの実例を掲載する。RAWでフジクロームモードで撮ったものをそのまま現像、RAW現像のときにベルビア調を選択、JPEGでフジクロームモードで撮影。このように同じ条件でも、色調やコントラストが変わる。さすがにフィルムメーカーのデジタル一眼レフである。


フィルムシミュレーションモードのちがい。撮影時にスタジオポートレートモードで撮影したもの
70-200mm F2.8、絞りF2.8、+0.5EV
同じファイルからRAW現像のときにベルビア調
70-200mm F2.8、絞りF2.8、+0.5EV

JPEGでフジクロームモードで撮影したもの。このように、色やコントラストをすぐに変えることができるのはいい
70-200mm F2.8、絞りF2.8、+0.5EV

 コントラストの強い被写体でも、ハイライトからシャドーまできれいに描出された。やはりDレンジをワイドにしておくとこのカメラの威力が発揮される。

 最後に内蔵ストロボの配光特性を調べた。18-70mmズームレンズを使い、撮影距離約1.5メートルで18mm側で撮影。鏡胴によるケラレはなかったが、周辺光量は少し低下している。


強い太陽光の当たっている横浜煉瓦館。ハイライトからシャドーまできれいに描出されている。Dレンジをワイドにしてあるため、ダイナミックレンジが広い
17-55mm F2.8、絞りF2.8、オートブラケット
夕日をAWBまかせで写してみたが、かなりよく赤い色が出た。また、ISO400だが、描写はISO100とほとんど変わりないぐらいだ
17-55mm F2.8、絞りF2.8、オートブラケット、ISO400

内蔵ストロボの配光特性を調べた。約1.5mの撮影距離だが、ケラレはない。周辺光量は少し低下している
18-70mm F3.5-4.5、絞りF8、1/60秒、内蔵ストロボ使用

 以上のように、富士FinePix S3 Proは動体撮影にはあまり向かないが、じっくり風景、接写、人物などを撮影するのには最適のカメラだ。そして、これだけの機能を持ちながら、中級機の価格帯であるから、コストパフォーマンスは高い。フィルム派にもすすめたいデジタル一眼レフである。



URL
  富士写真フイルム
  http://fujifilm.jp/
  製品情報
  http://www.finepix.com/lineup/s3pro/

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富士フイルム、FinePix S3 Proの発売日を11月30日に(2004/11/19)



那和 秀峻
(なわ ひでたか)写真家およびテクニカルライター。1976年以来、カメラ雑誌を中心に活動。現在はほとんどデジカメ関係の仕事が多い。PC Watchに「那和秀峻の最新デジカメレビュー」を2003年より不定期連載。PCは自作Pentium 4機が主力だが、Mac G4もときどき使用。モバイルはInterlinkだが、そろそろ電池がだめになってきた。1989年よりMS-DOS 3.3CでPC入門。趣味のウェブサイトもあります( http://www.nawa-jp.com )。

2005/01/06 00:00
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