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【新製品レビュー】オリンパス「Photo Creator」

~初心者向けインターフェイスの画像編集ソフト
Reported by 佐藤 希以寿

 オリンパスからグラフィック系のソフトとして手ごろな価格のソフトが発売になった。名前は「Photo Creator」。デジタル一眼レフ用のソフトとして「OLMPUS Studio」もあるのだが、「Photo Creator」はどのような位置づけになるのだろうか?


主な機能と特徴

●画像データの取り込み
 Photo Creatorではまず、デジタルカメラから画像を取り出すことが可能だ。ただし、カメラの設定として「ストレージ設定(カメラをハードディスクとして認識する)」が可能であることが前提。スキャナからの取り込みも「TWAIN」接続として認識が可能だ。保存されていた画像データももちろん読み込める。

 デジタルカメラのRAWデータは、現バージョンではオリンパスのカメラのみ読み込みが可能。今回の作例に使用した写真は同社のE-1を使用して撮影した画像のRAWデータから展開をして使用している。

●画像の調整
 画像の明暗、コントラストなどを調整できる。Photo Creatorでは「暗室」と「修正」という項目に分かれて分類、表示される。

●画像の加工
 Photo Creatorでは「効果」として表示される中にエフェクト、3次元化、合成の機能が配置されている。

●文字・イラストの追加
 「ペイント」のパートで写真に文字を入れたり、手書きで絵を書き足したりと言ったグラフィック的お遊びが可能だ。ポストカードを作りたいと言う方には重要な道具が収められているパートがここだ。

 E-1を使用して撮影したRAW画像を読み込み、展開して画像に調整を加え、エフェクトを掛けたりイラストを重ねたりしてプリント直前までの作業を想定しながら上記の4つの具体的内容を紹介してみよう。


画像を開く

読み込みが可能なファイル形式の画像は一覧として表示ができる。表示サイズの変更も可能だ
 コンピュータの内部、外部を問わずに、保存された画像は一覧として表示が可能だ。作例ではオリンパス製のデジタルカメラのRAWデータが入った外付けHDDを指定し、該当するフォルダを表示している。同じオリンパスの「OLMPUS Studio」に比べると少々あっけないほど、パラメーターの変更指定のウインドウもなく、ストレートに開いてしまう。

 もちろんソフトの作られた目的が違うので扱いが違っても当然だろう。OLMPUS Studioは「現像処理」に目標があり、こちらのPhoto Creatorは画像を開いた後の処理にポイントが置かれている。もし満足行くまでの現像設定を行なった画像を使用してPhoto Creatorに持ち込みたい場合は、OLMPUS Studioとの併用で、RAW現像処理→保存→読み込みの行程を経る必要がある。


シンプルだが作業の内容に沿った仕訳の表示が並ぶ 『暗室』のパート用のツールが並ぶ。ツールの下方ほぼ半分近く占めている。『選択用ツール群』は各パートに共通 蔦の絡まる写真を選んでみた、この写真を使用してグラフィック的なお遊びをしてみたい

明るさの調整

 「焼き込み」、「覆い焼き」と言う名前でシャドウを明るく、または明るすぎた絵を暗めに調整をするためのツールがある。


色温度の調整

日中に撮影した写真を、夕日色に変えてしまうこともできる
 写真全体を青味の強い写真にしたり、電球色のような色合いにしたり、光の色の偏り具合を調整するツール。


写真全体の雰囲気を調整する、カメラ効果

強調したい色合いをプリセットの選択で従来はフィルターを使用しなくてはいけなかった状況を簡単に再現してくれる
 従来のフィルムを使用した撮影では撮影時点で考慮すべき要素だった「フィルムを選ぶ」、「フィルターを選ぶ」と言った撮影の「ねらい」に類する事柄を、「効果」として選択できる。ネガに反転、セピアの写真にする、モノクロの写真にする、緑を強調する、紅葉を強調……といった内容の選択肢が用意されている。


必要な部分のみ取り出す

実際に切り取った様子が表示されるので構図の把握が容易に出来る
 広く写りすぎてテーマが散漫に成ってしまった場合、不要部分を切り捨てるための「トリミング」を行なう。このPhoto Creatorの場合、他のソフトと違いトリミング枠の表示の他に「プレビュー」の画面が別に表示される。本画面上のトリミング枠を変化させるとプレビューのための画面上に小さくなった状況が表示される。周囲が見えては実感がつかめないという方向きの設定だ。


画像の画質を調整する

『暗室』のツールに比べ劇的な変更を行なえるツールが揃う
 写真のコントラスト、色合い、形のゆがみなどの補正を行なうパート。「暗室」と比べるとかなり積極的に変化させるツール群がそろっている。プロのカメラマンが行なうように撮影時点で踏み込んだ設定ができていればこのパートはいらないのかもしれないが、歪みの補正などはチルトやシフトができる専門的なカメラが無い場合は表現上重要なツールとも成りうる。


不要な部分を消す、または同じモノを増やす

コピー元とコピー先の位置関係を設定すると後は絵を描くように複製が作られる
 他のソフトでは「スタンプツール」などの名称で呼ばれているツール「クローンブラシ」。Photo Creatorの場合は少々独特な設定がなされている。「どの部分をコピーするのか」を設定するのではなく、「どの部分を、どのくらい離れた場所にコピーするのか」という位置の設定を行なう。このスタート位置の設定で、後は一旦マウスを放してしまってもコピー元とコピー先の相対的位置関係は変わらない。


変形を行なう道具たち

 3つのツールがひとまとまりになっているのは目的が類似しているから。変形の1番手は画面の回転を行なうツール。

 2番手は「レンズ補正」、これはたとえ高価なレンズでも見受けられる「レンズのわい曲収差」、つまり四角い物を撮っても何となく丸みを帯びた形に写ってしまうといったレンズのクセをうち消すツール。まっすぐにのびているはずの柱が画面の端の方に写すと外側に曲がって見えるという場合にまっすぐに見えるように矯正してくれる。

 3番目は「変形補正」、高層ビル群を見上げる状態で撮影するとビル群が頭を寄せ合うように写る。この状態をまっすぐ空に向かうビルに矯正したければこのツールの出番だ。写真の上部を、扇を開くように広げると意外なくらいに簡単に補正ができる。この場合上部が拡大されてしまうのでその分を考慮して全体を小さめに撮っておく必要がある。

 この様な効果を得るためにプロの写真家は、レンズ部、フィルム部の各部が自由に向きを変えられるカメラを使用して形を矯正し、撮影をするのだが、その効果と同等のことがこのツールでできる。


ワイドレンズに起こりがちな周辺の歪みの補正には最適 プレビュー画面を変形させることでストレスのない早い操
作が可能だ

色合いの補正

画像のコントラストや強調したい色、色かぶりの除去等がここで可能だ
 色かぶりがある、またはこんな色合いにしたいという場合に使用したいツールが2つ用意してある。「Auto」は全自動で全体の色バランスを調整する。設定画面が出ずにいきなり結果が出てしまうがこれは「Auto」である以上ご容赦を願いたい。

 これではチョット……と言う方はもう一方の「色調補正」を使用して自分の目で確認しながら調整していただきたい。


写真のクッキリ感、ボケ感を調整したい

クッキリ感の強弱と粒子の演出のふたつの設定が出来る
 「フォーカス」を使用するとシャープな画面、ソフトな画面のコントロールができる。風景はクッキリとさせ、ポートレートは少々柔らかいピントにして……と、絵に合わせた調整を行なえる。また、画面に粒子感を追加できるので、フィルムで撮影したような「粒子」の雰囲気を演出もできる。


写真のコントラストを調整

 「トーンカーブ」でコントラストとハイライト、シャドウのバランスをコントロールすることが可能だ。Photo Creatorのトーンカーブは少々扱いが他の物とは異なる。直接カーブをコントロールするのではなく、「代理人」とも言うべき「関節」のようなポイントを動かすとその動きに合わせて「カーブ」が描かれる。このカーブは画像のどの情報に掛けるのかという選択も可能だ。カーブの変化を大きくすると色合いの「彩度」にも影響してしまう、という場合は「チャンネル」を「明度」に指定すれば色合いは影響を受けない。


独特な動きという感のある特徴的カーブのコントロール トーンカーブによる制御の対象になる情報を選択できる

特殊補正

 コンパクトカメラで撮影した場合などに、時折起こる現象として「赤目」の現象がある。暗い場所でストロボを使用すると起こりやすいのだが、その赤目を補正するツール。


合成や特殊効果を狙ってみたい

大項目としては3つのツールしかないが、エフェクトの中に大量の要素が詰まっている
 デジタル処理ならではという事で合成や、クリックひとつで絵が変化する画像エフェクトを行なってみるのも面白い。「エフェクト」を使用すると写真を「絵画風」に変質させることが可能だ。写真を写真としてのみ楽しむのでは無く、グラフィックの素材として扱う事でこの後の「ペイント」のパートが面白くなる。


変身道具がいっぱい

絵の具ではなく、絵の手法がぎっしり詰まった感じの道具だ
 「エフェクト」の中には写真をグラフィック素材として変身させる道具が盛りだくさんだ。水彩風にしたり、浮き彫り風にしたり、モザイク状にしたりとさまざまな手法が使用できる。


まるでカンバッチのように

丸みと厚みの感じとしてはやはりカンバッチだろう。このような立体効果が手軽に得られる
 「3D効果」と言っても三次元グラフィックを行なうわけではない。写真を立体的な用紙に作り替える感じだ。言うならば平面の写真をカンバッチにプリントしたような感じに作り直すツールなのだ。名札などをこの様な形で作っても面白いと思う。


画像合成

 画像を2点読み込んであれば、そのふたつが同じ画面に重ね合わされる。先ほどパステル調にエフェクトを使用して変化させた画像とそのオリジナルの写真を重ね合わせ部分的に片方の画像を強く表示することも可能だ。


写真が呼び込まれてしまえばその表示の仕方、濃度をコントロールできる 先ほどパステル風にした画像とオリジナルを重ね合わせてみた。中央部分はオリジナルが強く出るような効果を選んでいる

写真を手書きの絵のように

ツールとして用意されている物の数ではこのパートが一番多い。ただし塗りの道具という点では共通だ
 このソフトを使用した流れで言うと、前半は写真を綺麗にする作業、次は写真がグラフィックに変わるための作業、そして最後がこれから紹介する写真を絵画調にする作業だ。

 純粋に写真を写真のままで楽しめる人は途中までの作業でプリントして十分な満足を得られるだろう。もうひとつひねりが無いと……と言った欲張りな方にはこれから紹介する「ペイント」パートで遊んでみよう。文字入力ツールで文字入れもできるが手書きのブラシツールを使用してイタズラ書き気分で「お絵かき」、しかも写真が下地にあるから「塗り絵」気分とも言える。絵心が有っても無くてもそれなりの絵に仕上がる。


ブラシ各種

 特徴はあるが「塗る」という点ではほぼ共通の道具類が並ぶ。代表の「ブラシ」で紹介をしよう。「テクスチャ」として用意してある「絵の具」を使用すると柄のある背景やイラストのスタンプで楽しいお絵かきが体験できる。


これらの絵柄はブラシで手軽に塗ることが出来 桜の花のイラストをペイントブラシでスタンプしてみた

まとめ

 はじめに紹介したように、デジタル一眼レフ用にはOLYMPUS Studioが既に出ているわけで、今回登場してきたPhoto Creatorは競合するような仕様には作られてはいない。価格は一般家庭用と言うべき価格でもあり、大人も子どもも一家で楽しめるグラフィックソフトという位置付けで作られたと推測する。

 「ペイント」のツールはまさに親子で行なうお絵かきには最適だ。お父さんが写真を撮って、お母さんと子供で絵に作って……こんな写真をプリントして飾ったら楽しいことだろう。新開発のソフトのために発展途上と感じられる部分もあるが、必要最小限度の道具のみと言うことは、逆説的に言えば初心者にとって覚えることが少ないというメリットでもある。こんな点も含めて新規に出会うソフトとして面白いと思う。



URL
  オリンパス
  http://olympus-imaging.jp/
  製品情報
  http://olympus-imaging.jp/lineup/digicamera/soft/photo_cre/
  関連記事
  オリンパス、画像ソフト「OLYMPUS Master」と「Photo Creator」(PC)
  http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0914/olympus2.htm



佐藤 希以寿
(さとう けいじゅ)広告写真家としてモデルから商品・建築まで広範囲な撮影を行なう。業務用デジタルカメラが登場した直後からデジタル撮影を開始。広告写真撮影の業務のほか、デジタルセミナー、写真学校などの講師も。

2004/12/21 01:08
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