デジカメ Watch

【新製品レビュー】コシナ ノクトン・クラシック40mm F1.4

~エプソンR-D1で新旧Mマウント40mmレンズを比較
Reported by 根本 泰人

 コシナがたいへんに元気である。新型銀塩カメラ、ベッサR3AとR2Aの新発売に先行し「ノクトン・クラシック40mmF1.4」を発表、驚いたことにマルチコーティングとシングルコーティングの2種類を同時に発売という。昔シングルコーティングだったレンズが、'70年代からのマルチコーティングの一般化によりコーティングが変更になったという例は多々あるが、最近のレンズでシングルコーティングというのは有名メーカーでは例をみないし、そもそもマルチコーティングとシングルコーティングを一緒に発売というのは、私の知る限りない。

 こんなにわくわくする面白いカメラやレンズを次々に出してくるコシナの底力には感心するしかないが、その上いよいよ今月下旬に発売される見込みの夢のカールツァイスMマウントレンズも来年春頃登場予定のツァイスイコンカメラもコシナが製造するわけで、写真好きもカメラ好きもいまやコシナの動向から目を離すことはできない状況だ。


ノクトン・クラシック40mm

ノクトン・クラシック40mm F1.4。左がマルチコーティング、右がシングルコーティング
 10月に発売が開始されたノクトン・クラシック40mm F1.4は、クラシックレンズの描写の味が楽しめるように、あえてMTF曲線などの設計データにこだわらず、実写を繰り返して設計を決めたという。'50~60年代のレンズの味を再現するため、6群7枚構成の中にあえて非球面を使用しなかったとある。描写については、絞り開放ではフレアや収差を適度に残しており描写が柔らかく、絞るとシャープになるという。

 大口径レンズに対しては、従来コシナは積極的に非球面(アスフェリカル)レンズを採用している。35mmレンズで世界最高の明るさを誇る孤高のノクトン35mm F1.2や、ノクトン50mm F1.5、ウルトロン35mm F1.7、ウルトロン28mm F1.9など、いずれも感心するほど絞り開放からよく写る。

 これに対しF値の暗いレンズは球面レンズを採用したコンパクトな造りで、カラースコパー50mm F2.5、同35mm F2.5 PII、同28mm F3.5などがあり、こちらもユーザーの評判は上々である。こうしたコンセプトに対し今回のノクトン・クラシック40mm F1.4は、大口径だが非球面を採用せず、非常にコンパクトということで、従来の大口径路線とは直交する軸に位置するレンズだ。

 ノクトン・クラシック40mm F1.4はその外観など、ライツのズミルックス35mm F1.4(旧型)によく似ており、あきらかに意識していると言えよう。このズミルックスはF1.4という大口径にも関わらず大変にコンパクトだ。F1.4開放では背景のボケに特有の癖があらわれ、このため好き嫌いがはっきり分かれることでも有名である。

 さて、ノクトン・クラシック40mm F1.4レンズのもうひとつの話題は、先にも述べたようにマルチコーティングとシングルコーティングの2種類のレンズが同時発売されたことであろう。私が運営しているフォクトレンダー・サービスルームにも、この2本の違いは何かという問い合わせがとても多い。コシナからは明確なコメントは出ておらず、実写して比べてみてくださいということのようである。

 ただしシングルコーティングは500本限定ということで、すでにコシナでは完売となっている。またマルチコーティングもよく売れていて、初回生産分はまもなくなくなり、しばらく品切れになる恐れもある。したがって手にしたい方は、早めの購入をおすすめする。なおコシナからは、来春ごろシングルコーティングを追加生産する予定という連絡を受けている。

 ノクトン・クラシック40mm F1.4(シングルコート、マルチコート共に52,500円)は直径55mm、マウント基準面からレンズ先端まで29.7mm、重量175g、最小絞りF16、絞り羽根10枚、最短撮影距離0.7m、専用フードとしてライツのフードによく似たLH-5(4,725円)が用意されている。


ズミクロンC、Mロッコールとも比較

上段左から時計回りにノクトン・クラシック40mm F1.4(マルチコーティング)、同シングルコーティング、Mロッコール40mm F2、ズミクロンC 40mm F2
 試写にあたっては、新型ノクトン2本に加え、同じく焦点距離40mmとしてよく知られるズミクロンC 40mm F2と、Mロッコール40mm F2を加えて、この4本を同一条件で比較した。

 ズミクロンCとMロッコールについても、少し解説をしておく。これらの設計は当時ライカを開発および製造していたエルンスト・ライツ社の手によるものである。'71年にライツとミノルタの技術協力が結ばれた結果、日本国内で'73年10月にレンジファインダー機のライツミノルタCLが発売される。ボディはミノルタが製造したが、国外ではライカCLという名でライツが販売した。ライツミノルタCLの標準レンズがMロッコール40mm F2、ライカCLはズミクロンC 40mm F2である。この両者のレンズ設計は同一で、繰り返しになるがライツが行なった。製造はそれぞれで行なったためズミクロンはドイツ製、Mロッコールは日本製である。ドイツと日本で同じレンズが別のメーカーで作られたという例は非常に珍しい。コンタックスRTSシリーズのレンズがドイツ製から日本製に変更された例はあるが、これは製造の移管であり同時並行製造ではない。

 ライツミノルタCLは'79年に製造が終了するが、その後ミノルタはAE機構内蔵のミノルタCLEを'81年2月に発売し、その標準レンズがまったく同じMロッコール40mm F2であった。

 ズミクロンC 40mm F2もMロッコール40mm F2も同じガウス型4群6枚構成で、写真でわかるようにとてもコンパクトなレンズである。ズミクロンC 40mmF2は実測で126g、最小絞りF16、絞り羽根10枚、最短撮影距離0.8m、どちらも専用ラバーフードなどが用意されていた。

 今回この2本もテストするわけだが、新ノクトン40mm F1.4の2本と同様に、ミノルタとライツでレンズ設計は同じでもコーティングやガラス材が異なることなどが考えられ、実写で差が認められるか興味があるところである。

 なお、今回のテストはあくまでもエプソンR-D1との組み合わせにおける結果であり、銀塩フィルムで撮影した場合の結果との相関は保証できない。


R-D1にノクトン・クラシック(マルチコーティング)を装着 さらに専用フード「LH-5」を付けたところ

ズミクロンCを装着したR-D1 Mロッコール40mm F2装着時

遠景

 実写にあたっては、R-D1の設定は初期設定とし、その他の条件は一切変更していない。フィルムは標準設定、ISO200、ホワイトバランスはオート、画質はJPEGのFINE、露出はカメラまかせの絞り優先AEである。撮影は三脚を使用して、可能な限り同一の条件をとった。ピント合わせと構図はカメラのファインダーを使用した。

 F1.4開放では日中の撮影は困難であるため、夕方日が落ちてからビルを撮影した。それぞれ開放からF4まで、ひとつずつ絞っていった。

 ノクトンはいずれもF1.4開放で四隅の光量が落ちている。これはF2でもやや残り、F4まで絞るとほぼ解消する。開放では画面中心部でもやや甘く、周辺部ではにじんでいる。Lサイズのプリントでも、この画質の甘さがわかる。絞るにしたがい、まずF2で中心部の描写が良くなり、周辺部の画質も向上する。F4まで絞るとほぼ画面全体に良好なイメージとなる。さらに絞ることで均質性が増す。マルチとシングルの違いは、わずかにシングルのほうが黄色が強い印象があるが、レンズそのものの描写に違いは認めがたい。

 ズミクロンとロッコールも開放では四隅の光量が落ちる。また中心部はわずかに甘く、周辺部はにじむ。ノクトンをF2に絞った時と比較すると、あきらかにノクトンのほうがすべての面でよい。つまり画面中心部のシャープや、周辺光量の低下など明確に違う。発色の違いは、ノクトンに比べズミクロンはやや青が強く、ロッコールは赤が強いように見える。こちらもF4まで絞るとほぼ画面全体に良好なイメージとなり、この条件ではノクトンと甲乙つけがたいように思う。

 もうひとつ、これは作例を見ていただければ気がつくと思うが、ノクトンとズミロクンおよびロッコールは焦点距離がわずかに異なっている。ノクトンがわずかに画角が狭い。つまり焦点距離が長い。どちらがより正確であるかは、今回測定できなかった。

※画像のリンク先は、特に記載がない限り、撮影した画像データそのものです。縦位置のものは、サムネイルのみ回転していますが、拡大画像はあえて回転せずに掲載しています。クリックすると撮影した画像が別ウィンドウで表示されます。

※キャプション内のレンズ名は、「ノクトンMC」=ノクトン・クラシック40mm F1.4 (マルチコート)、「ノクトンSC」=ノクトン・クラシック40mm F1.4 SC(シングルコート)、「ズミクロンC」=ズミクロンC 40mm F2、「Mロッコール」=Mロッコール40mm F2です。

※キヤプション内の撮影データは、画像解像度(ピクセル)/ISO感度/露出プログラム/絞り値/露出時間/露出補正値/ホワイトバランスです。

※作例は個人での鑑賞用です。写真などの著作権は著作者に帰属します。無断転用、無断転載は著作権法違反となります。


●絞りF1.4


【F1.4(開放):ノクトンMC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F1.4 / 1/631(秒) / 0 / オート 【F1.4(開放):ノクトンSC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F1.4 / 1/500(秒) / 0 / オート

●絞りF2


【F2:ノクトンMC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F2 / 1/416(秒) / 0 / オート 【F2:ノクトンSC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F2 / 1/500(秒) / 0 / オート

【F2(開放):ズミクロンC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F2 / 1/338(秒) / 0 / オート 【F2(開放):Mロッコール】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F2 / 1/250(秒) / 0 / オート

●絞りF2.8


【F2.8:ノクトンMC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F2.8 1/223(秒) / 0 / オート 【F2.8:ノクトンSC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F2.8 1/194(秒) / 0 / オート

【F2.8:ズミクロンC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F2.8 / 1/239(秒) / 0 / オート 【F2.8:Mロッコール】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F2.8 / 1/181(秒) / 0 / オート

●絞りF4


【F4:ノクトンMC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F4 / 1/111(秒) / 0 / オート 【F4:ノクトンSC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F4 / 1/97(秒) / 0 / オート

【F4:ズミクロンC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F4 / 1/125(秒) / 0 / オート 【F4:Mロッコール】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F4 / 1/90(秒) / 0 / オート

中景

 晴天時の日中、浅草寺雷門を手持ち撮影したが、絞りF2.8、シャッター速度1/2,000秒で1/2EVほど露出オーバーになるぎりぎりの露出である。したがってF2.8以下の画像で比較した。

 ノクトンはF2.8では中心部はシャープだが、周辺部で像が流れてにじむ。F4でかなり改善し、F5.6では最周辺部まで大変良好な描写といって良いだろう。

 ズミクロンCとMロッコールでは描写に違いが生じた。いずれもF2.8ではノクトン同様、中心部はまあまあだが周辺部が流れる。ロッコールはF5.6でほぼ最周辺部まで良好だが、ズミクロンはもう一息といったところで、F8まで絞るとほぼ良好であった。これは微妙なピント合わせの問題も影響しているかもしれない。

 ノクトンは他の2本に比べて、同一絞りでの描写はより良好であった。発色の傾向は遠景と同様で、特にロッコールとノクトンSCを比べるとかなりその違いがわかる。


●絞りF2.8


【F2.8:ノクトンMC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F2.8 / 1/2,000(秒) / 0 / オート 【F2.8:ノクトンSC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F2.8 / 1/2,000(秒) / 0 / オート

【F2.8:ズミクロンC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F2.8 / 1/2,000(秒) / 0 / オート 【F2.8:Mロッコール】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F2.8 / 1/2,000(秒) / 0 / オート

●絞りF4


【F4:ノクトンMC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F4 / 1/1,449(秒) / 0 / オート 【F4:ノクトンSC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F4 / 1/1,449(秒) / 0 / オート

【F4:ズミクロンC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F4 / 1/1,664(秒) / 0 / オート 【F4:Mロッコール】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F4 / 1/1,449(秒) / 0 / オート

●絞りF5.6


【F5.6:ノクトンMC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F5.6 / 1/724(秒) / 0 / オート 【F5.6;ノクトンSC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F5.6 / 1/724(秒) / 0 / オート

【F5.6:ズミクロンC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F5.6 / 1/832(秒) / 0 / オート 【F5.6:Mロッコール】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F5.6 / 1/724(秒) / 0 / オート

近距離

 浅草寺で菊花展が開かれていたので、三脚を立ててすべて同一位置で撮影した。撮影距離は約1mで、ほぼ中央に位置する菊の右端にピントを合わせている。前後の菊のボケ方で、前ボケと後ボケの絞りによる変化がわかることを目的とした。なお絞りF1.4、シャッター速度1/2,000秒ではこれも1~1/3EVほど露出オーバーで、途中で天候により光線の状態が変わったこともあり、色味の比較は難しい。

 ノクトンは、F1.4開放の中心部では前後のボケが大変になめらかで美しい。変な癖がなく、元の形を保ったままで崩していった印象である。周辺部では像の流れによりすこし乱れるが、イメージを損なうほどではない。絞るにつれて当然ボケの量が小さくなっていくので、撮影者の意図したボケ具合を示す絞りを選んで撮影したい。こういう時には撮影結果を即座に確認できるR-D1での撮影は、大変便利である。

 ズミクロンCとMロッコールも、一見するととてもなめらかなボケで悪くない。ただし大きく拡大すると、像の輪郭が認められわずかに二線ボケ気味であることがわかる。ノクトンのほうがボケ方がなめらかである。


●絞りF1.4


【F1.4(開放):ノクトンMC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F1.4 / 1/2,000(秒) / 0 / オート 【F1.4(開放):ノクトンSC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F1.4 / 1/2,000(秒) / 0 / オート

●絞りF2


【F2:ノクトンMC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F2 / 1/2000(秒) / 0 / オート 【F2:ノクトンSC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F2 / 1/1,783(秒) / 0 / オート

【F2(開放):ズミクロンC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F2 / 1/1,783(秒) / 0 / オート 【F2(開放):Mロッコール】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F2 / 1/1,553(秒) / 0 / オート

●絞りF2.8


【F2.8:ノクトンMC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F2.8 / 1/1,098(秒) / 0 / オート 【F2.8:ノクトンSC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F2.8 / 1/955(秒) / 0 / オート

【F2.8:ズミクロンC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F2.8 / 1/1,098(秒) / 0 / オート 【F2.8:Mロッコール】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F2.8 / 1/955(秒) / 0 / オート

●絞りF4


【F4:ノクトンMC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F4 / 1/549(秒) / 0 / オート 【F4:ノクトンSC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F4 / 1/478(秒) / 0 / オート

【F4:ズミクロンC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F4 / 1/588(秒) / 0 / オート 【F4:Mロッコール】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F4 / 1/478(秒) / 0 / オート

逆光(その1)

 浅草寺の五重塔を、太陽がほぼ背面にある薄曇りの状態で撮影した。R-D1の露出はF11まで絞っても1/2,000秒となってしまう。中央部重点測光ではやむを得ない。逆光補正したとしてもF1.4では露出オーバー状態だが、レンズのフレアの出方などを見るために厳しい条件とした。色味などの判別は困難である。

 ノクトンはどの絞りでも画面全体に白いフレアがかかる。絞るにしたがい軽減される。マルチとシングルで、出方もほぼ同じようだ。開放ではシングルのほうがフレアが多く、絞るとシングルのほうがフレアがやや少ないように見えるが、露出制御の影響かもしれず断定はできない。

 ズミロクンCとMロッコールも同様であるが、Mロッコールのほうがフレアの出方がやや少ないように見える。

 各レンズとも撮影イメージはそれなりに得られているのは立派であろう。


●絞りF1.4


【F1.4(開放):ノクトンMC】2,000×3,008 / 200 / 絞り優先AE / F1.4 / 1/2,000(秒) / 0 / オート 【F1.4(開放):ノクトンSC】2,000×3,008 / 200 / 絞り優先AE / F1.4 / 1/2,000(秒) / 0 / オート

●絞りF2


【F2:ノクトンMC】2,000×3,008 / 200 / 絞り優先AE / F2 / 1/2,000(秒) / 0 / オート 【F2:ノクトンSC】2,000×3,008 / 200 / 絞り優先AE / F2 / 1/2,000(秒) / 0 / オート

【F2(開放):ズミクロンC】2,000×3,008 / 200 / 絞り優先AE / F2 / 1/2,000(秒) / 0 / オート 【F2(開放):Mロッコール】2,000×3,008 / 200 / 絞り優先AE / F2 / 1/2,000(秒) / 0 / オート

●絞りF2.8


【F2.8:ノクトンMC】2,000×3,008 / 200 / 絞り優先AE / F2.8 / 1/2,000(秒) / 0 / オート 【F2.8:ノクトンSC】2,000×3,008 / 200 / 絞り優先AE / 1/2,000(秒) / 0 / オート

【F2.8:ズミクロンC】2,000×3,008 / 200 / 絞り優先AE / F2.8 / 1/2,000(秒) / 0 / オート 【F2.8:Mロッコール】2,000×3,008 / 200 / 絞り優先AE / F2.8 / 1/2,000(秒) / 0 / オート

●絞りF4


【F4:ノクトンMC】2,000×3,008 / 200 / 絞り優先AE / F4 / 1/2,000(秒) / 0 / オート 【F4:ノクトンSC】2,000×3,008 / 200 / 絞り優先AE / F4 / 1/2,000(秒) / 0 / オート

【F4:ズミクロンC】2,000×3,008 / 200 / 絞り優先AE / F4 / 1/2,000(秒) / 0 / オート 【F4:Mロッコール】2,000×3,008 / 200 / 絞り優先AE / F4 / 1/2,000(秒) / 0 / オート

逆光(その2)

 フォクトレンダー・サービスルームの展示ケースを撮影した。照明の蛍光灯の直接光や、背面の鏡に反射した光などがレンズに直接はいる、これも厳しい条件である。ガラス1枚ごとに発色も異なり、オートホワイトバランスでは色味の統一は難しいようだ。

 ノクトンの絞り開放では、蛍光灯の光の筋にそって青い色のにじみが表れる。特に右端の蛍光灯で非常にはっきりとわかる。F2に絞るとこれは激減するが、まだごくわずかに認められる。F2.8で解消する。マルチとシングルの差は、ほとんどわからない。同様の傾向である。

 ズミクロンもF2開放では、蛍光灯に青い色の筋が若干あらわれ、それはノクトンをF2に絞った時よりかなり多い。MロッコールはF2開放でもこの青い筋はごくわずかで、ノクトンをF2に絞った時とほぼ同等である。


●絞りF1.4


【F1.4(開放):ノクトンMC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F1.4 / 1/338(秒) / 1.3 / オート 【F1.4(開放):ノクトンSC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F1.4 / 1/388(秒) / 1.3 / オート

●絞りF2


【F2:ノクトンMC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F2 / 1/208(秒) / 1.3 / オート 【F2:ノクトンSC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F2 / 1/239(秒) / 1.3 / オート

【F2(開放):ズミクロンC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F2 / 1/223(秒) / 1.3 / オート 【F2(開放):Mロッコール】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F2 / 1/194(秒) / 1.3 / オート

●絞りF2.8


【F2.8:ノクトンMC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F2.8 / 1/137(秒) / 1.3 / オート 【F2.8:ノクトンSC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F2.8 / 1/119(秒) / 1.3 / オート

【F2.8:ズミクロンC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F2.8 / 1/125(秒) / 1.3 / オート 【F2.8:Mロッコール】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F2.8 / 1/104(秒) / 1.3 / オート

●絞りF4


【F4:ノクトンMC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F4 / 1/60(秒) / 1.3 / オート 【F4:ノクトンSC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F4 / 1/60(秒) / 1.3 / オート

【F4:ズミクロンC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F4 / 1/60(秒) / 1.3 / オート 【F4:Mロッコール】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F4 / 1/60(秒) / 1.3 / オート

夜景

 ライトアップされている浅草寺境内を撮影した。ピントは画面中央の軒先に合わせた。露出はオートでもよく合っている。低照度でCCDには厳しい条件だが、ノイズがたいへん少ないのはR-D1の美点であろう。

 ノクトンのF1.4開放では、今まで同様中央部でもわずかに甘く、周辺部ではさらにややにじむという傾向は同じである。またF1.4では周辺光量が落ちる。F2に絞ると周辺光量の低下は目立たなくなり、F4まで絞ると周辺部まで画質が良くなる。

 もうひとつ、画面右下部の屋根の下にある照明光の形の崩れと、ゴーストの現れ方をみて欲しい。照明光の強い光芒の周りに紫色のにじみが認められる。これはF2.8まで絞るとほぼ解消する。また、F2以上に絞ると、絞り羽根の影響を受けて光条があらわれる。この照明光のまわりの光芒の広がり方に、マルチとシングルの違いが現れている。マルチのほうが広がりがやや少ない。

 ズミクロンCとMロッコールについても、ノクトン同様遠景の時と同じ傾向で、さらにF2開放では画面右下部の屋根の下にある照明光の強い光芒の周りに紫色のにじみが認められる。F2.8ではこの色のにじみは解消する。F2.8以上では絞り羽根の影響を受けて、光条があらわれる。


●絞りF1.4


【F1.4(開放):ノクトンMC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F1.4 / 1/13(秒) / 0 / オート 【F1.4(開放):ノクトンSC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F1.4 / 1/15(秒) / 0 / オート

●絞りF2


【F2:ノクトンMC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F2 / 1/11(秒) / 0 / オート 【F2:ノクトンSC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F2 / 1/9(秒) / 0 / オート

【F2(開放):ズミクロンC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F2 / 1/10(秒) / 0 / オート 【F2(開放):Mロッコール】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F2 / 1/8(秒) / 0 / オート

●絞りF2.8


【F2.8:ノクトンMC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F2.8 / 1/5(秒) / 0 / オート 【F2.8:ノクトンSC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F2.8 / 1/5(秒) / 0 / オート

【F2.8:ズミクロンC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F2.8 / 1/6(秒) / 0 / オート 【F2.8:Mロッコール】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F2.8 / 1/5(秒) / 0 / オート

●絞りF4


【F4:ノクトンMC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F4 / 1/3(秒) / 0 / オート 【F4:ノクトンSC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F4 / 1/2(秒) / 0 / オート

【F4:ズミクロンC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F4 / 1/3(秒) / 0 / オート 【F4:Mロッコール】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F4 / 1/3(秒) / 0 / オート

人物

 カメラ全般に造詣が深い友人の松原貞弥氏の協力を得て、人物撮影を行なった。なおこの時にはまだノクトンのシングルコーティング仕様が手に入らなかったため、それ以外の3本の比較である。蛍光灯下の撮影なので、やや緑色かぶりがある。ピントは眼鏡の鼻で合わせた。人物の描写と、背景のボケ方を見て欲しい。

 ノクトンはF1.4開放では周辺部の減光とピントの浅さで、人物が浮き上がって見える。やや甘さがあるが、これはこれで悪くない。絞るとシャープ感が出て画質がよくなる。背景のボケがどの絞りでもなめらかなのは素晴らしい。画質とボケのバランスを考えると、F2.8あたりの描写がベストのように思う。

 ズミクロンCもMロッコールも、F2開放ではノクトン同様に周辺減光がある。またノクトンをF2にしぼった時より、画質は良くない。背景のボケをノクトンと比べると、ラックの金属のラインのボケがよりはっきりして、二線ボケ傾向があることがわかる。とはいっても、決して悪い描写ではない。この二線ボケが目立たなくなるF4あたりが、この2本のレンズについてはベストに思える。


●絞りF1.4


【F1.4(開放):ノクトンMC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F1.4 / 1/111(秒) / 0 / オート

●絞りF2


【F2:ノクトンMC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F2 / 1/74(秒) / 0 / オート

【F2(開放):ズミクロンC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F2 / 1/60(秒) / 0 / オート 【F2(開放):Mロッコール】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F2 / 1/52(秒) / 0 / オート

●絞りF2.8


【F2.8:ノクトンMC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F2.8 / 1/39(秒) / 0 / オート

【F2.8:ズミクロンC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F2.8 / 1/39(秒) / 0 / オート 【F2.8:Mロッコール】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F2.8 / 1/37(秒) / 0 / オート

●絞りF4


【F4:ノクトンMC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F4 / 1/20(秒) / 0 / オート

【F4:ズミクロンC】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F4 / 1/21(秒) / 0 / オート 【F4:Mロッコール】3,008×2,000 / 200 / 絞り優先AE / F4 / 1/17(秒) / 0 / オート

比較テストを終えて

 今回のテストであるが、モニターやプリントを目を皿のようにして観察して、その違いをどうにか見つけるという状況で、正直大変疲れた。4本のレンズの描写性能はいずれも大変良好で、ノクトンのマルチとシングルの違いと、ズミクロンCとMロッコールの違いは、それぞれ本当に極めてわずかだ。結局、光学設計が一緒であり、そして製造技術が高ければ差はほとんど現れないということである。ノクトンのレンズ描写の違いのなさは予想以上で、コシナの製造技術のレベルの高さには感心するしかない。

 ノクトンとズミクロンC、Mロッコールの違いについては、ノクトンのほうが同一絞り値での総合的な描写性能は良い。クラシックな描写を追求したというノクトンだが、たしかに同じコシナ製なら非球面を使用したレンズの方が開放絞りではシャープであろうが、球面レンズのみのこのレンズならではの描写の味が魅力的だ。特にボケのなめらかさは特筆モノである。


R-D1について

 エプソンR-D1は、今回のテストでの使用が2回目である。今年の早春に試作機の段階で試写した時には、画像の色がとんでもなく黄色に偏っていて、その補整が大変だった。今回の量産機ではその問題は見事に解消しており、標準設定でもとても色バランスの良い画像が得られる。また画質の良さはなかなかのもので、600万画素級のデジカメでもトップクラスにランクされるものだろう。同クラスのコンパクトデジカメとは一線を画す、階調の再現性が豊かで魅力的な画像である。

 A3ノビサイズにプリントして、ごく至近距離からの観察に十分に耐える解像力もある。これはひとつにはAPS-CサイズのCCDの良さと画像処理技術の巧みさ、もうひとつは装着されるレンズが単焦点の最上位クラスのものであることが効いていると思う。であるから、装着したレンズの性能が悪いと明確に画質が劣化することがわかり、それはそれでたいへんおもしろい。また絞り値での画質の変化もよくわかる。

 ただし使用していて気に障る点が多いカメラではある。まず操作性が一般的なデジタルカメラとは大きく違うため、使い始めにマニュアルを良く読まないと基本的な操作も困難である。撮影した画像はいちいちモニター表示ボタンを押さないと確認できないため、撮影中はイライラしどうしだ。液晶モニターを使用するとバッテリーの持ちもあまり良くない。またファインダーのフレームが実際に撮影範囲に比べてかなり小さく、フレームにしたがって構図を決めると撮影画像には撮影したくない余計なものがいろいろ写り込む。600万画素を最大限有効に使いたいのに、これまた不愉快な気分にさせられる。おもしろいことに今回使用した40mmレンズで撮影すると、35mmレンズのフレーム枠と撮影範囲がだいたい一致するので、今回の撮影は構図に関しては狙い通りだった。


 もうひとつ、ファインダー下部に表示されるシャッタースピード値の高速側が、フレームを見渡せる位置に目を置くと眼鏡をかけた私にはまったく見えない。表示を見える位置に目を置くと、かなり左斜めからファインダーをのぞく必要がある。

 なによりこのカメラでは一番困ったことは、シャッターが切れないことがたびたびあることだ。スイッチをONにした直後や、節電モードから復帰した直後にすぐにシャッターボタンを押すと、シャッターが切れないことがあるのだ。実は今回のテストにあたり手元にR-D1が2台あったのだが、どちらもまったく同じであるから、個体差ではないだろう。試作機の時も同じ症状に悩まされた。その上カメラが節電モードに切り替わっていることに気がつかず、いきなりシャッターを切ろうとしてもこれは当然シャッターが切れない。ライカM系やベッサR系あたりの銀塩カメラのように、いつでもシャッターボタンをおせば写真が撮れるつもりでいると、大事なシャッターチャンスを逃し本当にがっかりする。

 それでも、もしかするとこのカメラは大ブレイクして新しいジャンルを作り得たかもしれない。新旧様々なライカマウントレンズを使い分ける撮影の楽しさと、非常に画質の良いプリントで鑑賞する楽しさは、このカメラの魅力として多大に賞賛できるものだ。それを価格設定の問題だけで、写真愛好家の関心を失わせてしまったのは実に残念と言わざるを得ない。600~800万画素デジタル一眼レフと同じ15~20万円程度なら買ったのにと語ったカメラ好きの知人はたいへん多い。

(機材協力:大川 貴之)



URL
  コシナ
  http://www.cosina.co.jp/
  製品情報(ノクトン・クラシック40mm F1.4)
  http://www.cosina.co.jp/seihin/voigt/v-lens/v-l-m/40-1.4/
  エプソン
  http://www.epson.co.jp/
  製品情報(R-D1)
  http://www.i-love-epson.co.jp//products/rd1/rd11.htm
  【7月7日】エプソン R-D1 レンズ47本イッキ撮り【広角レンズ編】(PC)
  http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0707/rd1.htm
  【7月7日】エプソン R-D1 レンズ47本イッキ撮り【標準/望遠/特殊レンズ編】(PC)
  http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0707/rd2.htm



根本 泰人
(ねもと やすひと)クラシックカメラの収集が高じて有限会社ハヤタ・カメララボを設立。天体写真の冷却CCD撮影とデジタル画像処理は約10年前から、デジカメはニコンE2/E900から。趣味は写真撮影、天体観測、ラン栽培、オーディオ(アンプ作り)等。著書「メシエ天体アルバム」アストロアーツ刊ほか。カメラ雑誌、オーディオ雑誌等に寄稿中。 http://www.otomen.net
http://www.hayatacamera.co.jp

2004/12/03 01:57
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