デジカメ Watch

【伊達淳一のレンズが欲しいッ!】シグマ 18-50mm F2.8 EX DC

〜コンパクトで明るい標準ズーム
Reported by 伊達 淳一

 デジイチ(デジタル一眼レフ)の大半は、35mm判フィルムよりも撮像素子サイズが小さい。つまり、同じ焦点距離のレンズを装着しても画角が狭くなってしまう(望遠になってしまう)ので、35mm一眼レフと同じ画角で撮影するためには、より焦点距離の短いレンズが必要となる。

 ほんの1年ちょっと前までは、28mm相当の画角をカバーする標準ズーム代わりに、高価な17-35mmクラスのワイドズームを買うしかなかったが、最近はデジタル専用の標準ズームが手ごろな価格で登場してきたので、最初のレンズ選びで苦労せずに済むようになってきた。

 ただ、キットとして売ることを前提に開発された標準ズームは、コストパフォーマンスが命だ。モニタで等倍鑑賞されることも多いデジイチ用標準ズームだけに、画質(主として解像力)に手を抜いたレンズはほとんどなく、画面のごく周辺部を除けばそこそこシャープな描写が得られるが、残念ながら開放F値が暗い(特にズームテレ端)。

 まあ、35mm一眼レフでセット販売される廉価ズームも開放F値が暗いので、デジイチに限った話ではないものの、これまで作りのいい17-35mmクラスのワイドズームを買ってデジイチの標準ズーム代わりにしてきたユーザーからしてみれば、不満がつのるのも致し方ないところだ。


コストパフォーマンスとコンパクトさが強み

 そんな開放F値の暗さに不満を持つこだわりのユーザーにピッタリのデジイチ専用標準ズームが、「シグマ18-50mm F2.8 EX DC」だ。APS-Cサイズのデジイチ装着時には、約28-75mm相当の画角が得られ、ズーム全域でF2.8の明るさを誇る。希望小売価格(税込)は73,500円で(シグマブランドのレンズとしては)決してお安くはないが、ニコンAF-S DX Zoom Nikkor ED 17-55mm F2.8Gの231,000円と比べれば、焦点距離や開放F値がほぼ同じで価格は1/3なので、かなりコストパフォーマンスの高いレンズだ。

 最短撮影距離はズーム全域で28cm。フィルター径は67mmで、ズーム全域でF2.8の開放F値を維持しているレンズとしては小さめで、ピント合わせの際にフィルター枠が回転しないのでPLフィルターに快適に使用できる。花形フードも標準で付属し、デジタルの画角に合わせて作られているので、懐は深めだ。ズームリングやフォーカスリングの回転方向はキヤノンと同じだが、フォーカスリングとズームリングの前後関係は逆だし、AF時にはフォーカスリングも回転してしまう。

 このあたりは、メーカー純正の高級レンズと比べ、安っぽく見えてしまう部分だ。といって、HSM(超音波モータ)仕様にすると、確かに操作性は改善され、高級感も出てくるかもしれないが、今よりレンズが太くて重くなるのは必至だし、価格も高くなってカメラメーカー純正レンズに対する割安感が薄れてしまう。そういう意味では、(純正レンズに対して)コンパクトで軽量、低価格という強みを優先したということだろう。


ズームワイド端(左)とテレ端 18-50mmF3.5-5.6DC(左)とのサイズ比較

テレ端では開放からシャープ

 では、写りはどうなのだろう? 画角と絞りを変えて撮影した比較写真を見てみよう。

 ズームワイド端の18mm域では、絞り開放時には周辺部ほど描写が甘くなり、わずかに色もにじんでいる。しかし、画面中央はキリッとシャープな描写で、F5.6まで絞れば周辺部も十分安定した描写になる。歪曲収差は少しタル型が目立つのが惜しい。

 ズーム中域の28mm域も絞り開放ではちょっと甘めの描写だが、F4まで絞るとかなり画質が向上する。テレ端の50mmは、ごく周辺部を除けば絞り開放からシャープな描写が得られ、歪曲収差もほとんど感じられない。

 以上のように、ワイド端からズーム中域にかけては、シャープな描写を期待するなら1段から2段絞って撮影したいところだが、ズームテレ端ではF2.8開放からシャープな描写が得られる。廉価版ズームのズームテレ端は開放F値がF5.6と暗く、低照度のシーンではシャッタースピードが遅くなって手ブレしやすいが、このレンズならズームテレ端で2段速いシャッタースピードが切れるのが強みだ。

 ただ逆光時には、光源の位置やズームポジションによっては盛大なゴーストが発生する場合があり、同社の18-50mm F3.5-5.6DCよりも逆光での使用には注意が必要だ。画面内に強い光源を入れれば常に盛大なゴーストが発生するわけではなく、光源の位置やズームポジションを変えれば回避できることも多い。粗を探して蔑むよりも、うまく粗をカバーして長所を活かすことが大切だ。


※作例のリンク先は、特に記載がない限り、撮影した画像データそのものです(ファイル名のみ変更)。縦位置のものは、サムネールのみ回転していますが、拡大画像はあえて回転せずに掲載しています。クリックすると撮影したの画像が別ウィンドウで表示されます。

※撮影に使用したカメラはすべてキヤノンEOS20Dで、キャプション内の撮影データは露出プログラム/F値/露光時間/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/レンズの焦点距離です。


※作例は個人での鑑賞用です。写真などの著作権は著作者に帰属します。無断転用、無断転載は著作権法違反となります。


絞りによる映りの変化

【F2.8/18mm】絞り優先AE / F2.8 / 1/400(秒) / 0 / 200 / AWB / 18.00(mm) 【F4.0/18mm】絞り優先AE / F4.0 / 1/200(秒) / 0 / 200 / AWB / 18.00(mm) 【F5.6/18mm】絞り優先AE / F5.6 / 1/100(秒) / 0 / 200 / AWB / 18.00(mm)

【F2.8/28mm】絞り優先AE / F2.8 / 1/400(秒) / 0 / 200 / AWB / 29.00(mm) 【F4.0/28mm】絞り優先AE / F4.0 / 1/200(秒) / 0 / 200 / AWB / 29.00(mm) 【F5.6/28mm】絞り優先AE / F5.6 / 1/100(秒) / 0 / 200 / AWB / 29.00(mm)

【F2.8/50mm】絞り優先AE / F2.8 / 1/400(秒) / 0 / 200 / AWB / 50.00(mm) 【F4.0/50mm】絞り優先AE / F4.0 / 1/200(秒) / 0 / 200 / AWB / 50.00(mm) 【F5.6/50mm】絞り優先AE / F5.6 / 1/100(秒) / 0 / 200 / AWB / 50.00(mm)

画角による絞り開放時の周辺光量チェック

【18mm/F2.8】絞り優先AE / F2.8 / 1/800(秒) / 0 / 100 / AWB / 18.00(mm) 【35mm/F2.8】絞り優先AE / F2.8 / 1/1,000(秒) / 0 / 100 / AWB / 35.00(mm) 【50mm/F2.8】絞り優先AE / F2.8 / 1/640(秒) / 0 / 100 / AWB / 50.00(mm)

作例

F5.6まで絞れば、周辺までキリリとシャープな描写が得られる。大口径ズームを絞って使えば、開放F値の暗い廉価版ズームと同じじゃないか、と思うかもしれないが、開放F値が明るいほうがAF時のピント精度もそれだけ向上するし、周辺部の描写性能も余裕が感じられる
絞り優先AE / F5.6 / 1/800(秒) / 0 / ISO100 / AWB / 18(mm)
43mm域での絞り開放のボケ描写。コスモスは、かなりアップで撮影しないとボケがうるさくなりがちだが、F2.8開放で写すことで背景が大きくボカすことができた。柔らかいボケではないが、二線ボケが出やすいコスモス畑でこれだけの描写が得られれば満足だ
絞り優先AE / F2.8 / 1/2,500(秒) / 0 / ISO100 / AWB / 43(mm)

もっとも盛大にゴーストが発生する位置を探して撮影したイジメのカット。かなり大きめのゴーストが発生しているが、ゴーストほどフレアはひどくないので、シャドーのディテールもしっかり描写されている。ただ、全体に発色はやや渋めだ
絞り優先AE / F5.6 / 1/500(秒) / +0.7EV / ISO100 AWB / / 18(mm)
28mm相当の広角での撮影だが、絞り開放で撮影距離も短いこともあって、かなり背景がボケている。ボケ味も自然だ。カリカリに全体にピントが合った写真と違って、やかんの丸みがよく再現されている
絞り優先AE / F2.8 / 1/200(秒) / +0.7EV / ISO100 / AWB / 18(mm)

これもワイド端での近距離撮影。最短撮影距離が28cmと短いので、ワイドでググッと寄ってアップで撮影できるのが魅力だ。絞り開放ながらピントの合った部分はエッジ立って偽色が出るほどシャープな描写だ
絞り優先AE / F2.8 / 1/80(秒) / 0 / ISO100 / AWB / 18(mm)
屋内でかなり暗いシーンだったのでISO800まで増感。F2.8開放でも1/60秒がやっとのシーンだ。傘の手前部分にピントを合わせているが、非常に被写界深度が浅いので、傘の柄の部分はもはやボケ始めている
絞り優先AE / F2.8 / 1/60(秒) / +0.7EV / ISO800 / AWB / 26(mm)

これもかなり暗いシーンでISO800まで増感。ワイド端でググッと寄っての絞り開放撮影だが、背景はかなりボケている。遠近感が強いので、カメラアングルに気を付け、上下のパースが強調されすぎないように注意して撮影した
絞り優先AE / F2.8 / 1/50(秒) / +0.7EV / ISO800 / AWB / 18(mm)
1段絞っただけだが恐ろしくシャープな描写だ。倍率色収差もよく抑えられていて、建物の輪郭を見てもあからさまな色づきは発生していない。ごく四隅でわずかに画質劣化は認められるが十分許容範囲ではないだろうか?
絞り優先AE / F4.0 / 1/500(秒) / +0.7EV / ISO100 / AWB / 18(mm)

大口径ズームだからといって、何が何でも絞り開放で撮らなければならないわけではない。被写界深度が深いワイド端とはいえ絞り開放ではピントが合って見える範囲は極めて狭いので、奥行きのある被写体はある程度絞って撮影しないとかえって不自然になってしまう
絞り優先AE / F5.6 / 1/60(秒) / 0 / ISO100 / AWB / 18(mm)
ズームテレ端でパスの後部プレートを撮影。プレートに厚みがあるので1段絞って撮影してみたが、それでもバスの車体部分はわずかながらボケてしまった。感度を2段上げてその分絞って撮影したほうが良かったかもしれない
絞り優先AE / F4.0 / 1/80(秒) / 0 /ISO100 / AWB / 50(mm)

色収差が非常に目立ちやすい被写体だが、モニター等倍でチェックしても問題となるような色づきは見られない。ワイド端ではF5.6あたりがもっともキレの良い描写が得られるようだ
絞り優先AE / F5.6 / 1/250(秒) / 0 / ISO100 / AWB / 18(mm)
樹木から漏れる光や、光を反射している街灯部分は、パープルフリンジが発生しやすい場所だが、このレンズはパープルフリンジとは無縁だ。背景の樹木の葉っぱがしっかり解像している点にもビックリだ
絞り優先AE / F5.6 / 1/250(秒) / 0 / ISO100 / AWB / 18(mm)

キヤノン純正のレンズに比べると、色が浅めでしっとり感に欠ける感じがするが、トーンカーブや色相・彩度でレタッチすればカバーできる程度の差。EOS20Dの場合はパラメータ1で撮影するというのも手だ。
絞り優先AE / F3.5 / 1/100(秒) / -0.3EV / ISO200 / AWB / 18(mm)
ワイドでググッと寄って、遠近感を活かしつつ、背景をボカす。開放F値が明るいと、ピントの山が掴みやすいので、廉価版ズームと同じF値で撮影したとしても、撮影時の気持ちよさは大口径ズームのほうが上だ
絞り優先AE / F3.5 / 1/125(秒) / 0 / ISO200 / AWB / 18(mm)

絞り羽根は7枚で、多少絞ってもボケの形はキレイだ。50mm域でF3.5ともなると、被写界深度はかなり浅いが、ピントの合った部分のキレの良さが際立って見える。紅葉の葉脈がにじみなくクッキリ写っている
絞り優先AE / F3.5 / 1/800(秒) / 0 / ISO100 / AWB / 50(mm)
かなり強烈な輝度差があるシーンでは、ハイライトからの光の回り込みが起こり、パープルフリンジが発生してしまう。ただ、逆光に光るススキの穂程度では発生していないので、レンズのせいなのか、カメラのせいなのかは微妙なところだ
絞り優先AE / F4.0 / 1/500(秒) / 0 / ISO100 / AWB / 40(mm)

キノコをローアングルで撮影してみた。後ボケ、前ボケともに自然で、ボケの形も口径食の影響もなく美しい。最短撮影距離が28cmと短いので、本格的なマクロ撮影は無理でも、この程度のクローズアップ撮影は可能だ
絞り優先AE / F4.0 / 1/200(秒) / 0 / ISO100 / AWB / 31(mm)
28mm相当の画角でF5.6まで絞ればかなり被写界深度は深くなると思われるが、実際には手前のクルマにピントを合わせると後ろの白いクルマはすでにボケている。コンパクトデジカメの深い被写界深度に慣れると、ピントの浅さに驚かされる
絞り優先AE / F5.6 / 1/500(秒) / 0 / ISO100 / AWB / 18(mm)

このレンズはピントをしっかり合わせてF5.6まで絞って撮影すれば、カメラメーカー純正の高級ズームレンズに優るとも劣らないシャープな描写が得られるのが魅力だ。28-300mmズームあたりとダブルズーム体制を組むのがお薦めだ
絞り優先AE / F5.6 / 1/160(秒) / -0.3EV / ISO100 / AWB / 26(mm)
セスナ機のディテールが克明に描写されている。輪郭強調で見せかけのシャープネスを高めなくても十分シャープな描写で惚れ惚れとする。この描写が実売6万円前後で手に入る時代に感謝だ
絞り優先AE / F5.6 / 1/250(秒) / -0.3EV / ISO100 / AWB / 21(mm)

絞り開放ではワイド側でわずかに周辺光量の低下が認められる。APS-Cサイズの撮像素子に合わせたイメージサークルしか確保していない割には、十分な周辺光量が確保されている
絞り優先AE / F2.8 / 1/2,500(秒) / -0.3EV / ISO100 / AWB / 20(mm)
夜景撮影ではそれなりに絞り込まないと点光源が流れてだらしない描写になりがちだが、このレンズはF4.5でこの高描写。あまり絞り込む必要がないので、シャッタースピードが遅くなりすぎず、屋形船も止めて写すことができた
絞り優先AE / F4.5 / 2.5(秒) / 0 / ISO100 / AWB / 18(mm)

「なんだ、ザラザラのピンぼけ写真じゃないか!」と思われるかもしれないが、これは出港していく遊覧船を手持ちで撮影したもの。ピントはもちろん遊覧船に合わせているが、背景のレインボーブリッジはすでに被写界深度から外れている
絞り優先AE / F2.8 / 1/20(秒) / -0.7EV / ISO1,600 / AWB / 18(mm)
デジタル一眼レフでは、ワイドでわずかにピントが外れた部分の描写が流れたように写るレンズも多いが、このレンズは自然な感じでボケていく。穏やかなボケではないが嫌みなボケになることは少なめだ。
絞り優先AE / F3.5 / 1/500(秒) / 0 / ISO200 / AWB / 18(mm)

F8まで絞って撮影してみた。F5.6とさほど変わりのない描写で、周辺までパキパキにシャープだ。20Dのキットレンズは利便性に富んだレンズだが、20Dの描写力を引き出すには力不足。画質にこだわるならこのレンズを選ぶというのも悪くない選択だ
絞り優先AE / F8.0 / 1/500(秒) / 0 / ISO200 / AWB / 18(mm)
多摩センターのクリスマスイルミネーション。絞り開放で撮影したので、もっと流れたような描写になるかと思いきや、撮影した画像をパソコンでチェックしてみてビックリ。雪だるまの顔にしっかりピントの芯があり、背景のボケも小さいながらキレイだ
絞り優先AE / F2.8 / 1/20(秒) / +1.0EV / ISO200 / AWB / 18(mm)


URL
  シグマ
  http://www.sigma-photo.co.jp/
  製品情報
  http://www.sigma-photo.co.jp/lens/digital/18_50_28.htm
  関連記事
  シグマ、デジタル専用大口径ズーム「18-50mm F2.8 EX DC」(PC)
  http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0720/sigma.htm



伊達 淳一
1962年生まれ。千葉大学工学部画像工学科卒業。写真、ビデオカメラ、パソコン誌でカメラマンとして活動する一方、その専門知識を活かし、ライターとしても活躍。黎明期からデジタルカメラを専門にし、カメラマンよりもライター業が多くなる。自らも身銭を切ってデジカメを数多く購入しているヒトバシラーだ。

2004/11/29 00:05
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