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【新製品レビュー】エプソン P-2000

〜RAWデータ表示に対応したフォトストレージビューワー
Reported by 伊藤 大地

 エプソンが10月に発売したフォトストレージ・ビューワー「P-2000」。2.5インチ40GBのHDDを内蔵し、CF Type 2スロットとSDメモリーカードスロットからデジカメで撮影した画像データなどをバックアップできる。 イベント取材時などに大量の撮影を行なう筆者にとっても興味深い一品だ。

 また、従来のフォトストレージ製品と比べると、MP3またはAAC形式のオーディオファイル、MPEG-4、Motion JPEGの動画ファイルを再生可能で、プロ向けの硬派な製品というよりは、いろいろな楽しみ方ができるデジタル機器、といった印象も受ける。


液晶の表示品質は高い

 まず目を引くのが3.8型、VGAサイズ(640×480ピクセル)、約26万色表示の透過型低温ポリシリコンTFT液晶ディスプレイの美しさだ。表面にはコーティングが施されており、AVパソコンなどで採用されている「ツルピカ液晶」のようになっている。

 発色の印象としては、黒の沈みがよく、やや赤が強めといった感じ。人肌よりは風景や静物に向いているかもしれない。きめ細かさや斜線の表現、輝度はともに申し分なく、液晶の表示品質はこの手の製品のなかでは一歩抜け出した印象だ。ただし、表面がかなり反射するのは好みが分かれそうだ。蛍光灯下や日射の強い屋外では反射してしまい、見にくいケースもある。






わかりやすい操作体系

 起動してから最初に表示されるHOME画面はアイコン形式になっている。P-2000にためたデータを取り込んだセッションごと分類された状態で閲覧できる「保存データ」、保存されたデータのなかからセレクトした画像だけをアルバム形式で見られる「アルバム」、メモリーカード内のデータを閲覧したり、取り込むことができる「メモリーカード」、直近に取り込んだデータを閲覧できる「最新データ」、各種設定を行なう「設定」の合計5つのアイコンが操作の基本となる。本体の「HOME」ボタンを押せば、この画面に戻れるようになっている。また、最大3つまで、自分の好きなアルバムなどをショートカットとして置くことが可能だ。

 また、設定のメニューでは、メモリーカードを挿入したとき、自動でコピーを始めるか否か、メモリーカード内の画像を消去するか、画像の管理方法を時間軸で行なうか、メモリーカード単位で行なうかを指定できる。


HOME アルバム

レスポンスのよいJPEG表示

 レビューにあたって、EOS 20Dで撮影したJPEGおよびRAWをP-2000に転送してみた。

 EOS 20DでRAW画像、JPEG画像をメモリーカードいっぱいまで撮影し、合計148個、491MBのファイルが保存された512MB、10MB/secの松下電器製SDメモリーカードと、ほぼ同じ内容のサンディスク製CFカード「Ultra II」をP-2000に読み込ませ、読み込みボタンとストップウォッチの計測ボタンを同時に押し、タイムを計った。結果はSDメモリーカードが3分17秒(197秒)、CFが3分46秒(226秒)となり、メーカー公表値の約200秒とほぼ同一のタイムとなった。

 サムネイル表示画面では、横4列、縦3行の合計12枚を一度に表示できる。EOS 20Dの最大サイズ、最高画質で撮影した画像を拡大表示するのにかかる時間はおよそ2〜3秒。個人差もあるが筆者はストレスを感じないスピードだと思う。フルスクリーンでの表示時に、ディスプレイボタンを押すと、カメラのモデルやシャッタースピード、F値、撮影時刻などEXIFをもとにした撮影情報を閲覧できる。また、メニューボタンを押すと、メモリーカードへのコピーや、アルバムへの登録、データの保護などが行なえるようになっている。

 フルスクリーン表示からは8段階、最大12.42倍まで部分拡大が可能だが、ズームの一段階目、つまり100%から112%への拡大時のみ3秒強の時間がかかるのが若干気になるところ。また、拡大表示からはダイレクトに次の写真には写れず、必ず100%まで戻さなければならない。このあたりはファームウェアでの改善を期待したいところだ。

 バッテリーの持続時間の測定も行なった。転送時間の測定に使ったサンディスク製のCFカード「Ultra II」を使って、約500MB分のデータを繰り返しP-2000に転送した。14回目の読み込み終了時にバッテリーサインがひとつ分減り、さらに続けると22回目でACアダプタに接続するか、新たなバッテリーを装着するよう残量警告が表示された。25回目までは警告を出しながらも転送可能だったが、26回目の転送の途中で電源が切れてしまった。フル充電の状態から25回、およそ12GB分を転送できた。

 また、読み込んだデータをBGMなし、エンドレスでスライドショー再生したところ、188分間の再生が可能だった。カタログ値では3.4時間となっているのでほぼそれに近い実測値を出したことになる。


RAW表示はサムネイルとスクリーンのみ

 P-2000の最大のウリになっているのが主要機種のRAWファイルに対応していることだ。現在のところ対応機種は9月28日現在のデータで、ニコンのD2H/D1H/D1X/D100/D70、キヤノンのEOSシリーズ、1D Mark II/10D/20D/D30/D60/Kiss Digital、そしてエプソン製のR-D1の合計11機種となっている。

 なお、RAWではなくTIFF画像となるが、同社のフィルムスキャナ「F-3200」のScan to Memoryで作成した画像も表示できる。

 さっそく大量のRAWデータをP-2000に格納し、使用してみた。誰しも気になるのは表示スピードだろう。これがなかなかのスピードである。EOS 20Dで撮影した7.8MBのRAWファイルを約3秒ほどで開く。前述の通りJPEG画像がおよそ2秒から3秒であることを考えると、ほぼ同等のスピードといってよい。撮影画像を順に見ていくような使い方をした場合、JPEGとRAWが混ざっていても、「あ、今はRAWを開いてるんだな」とか「お、JPEGだとやっぱり速いな」というような、感覚的な差はほぼなく、RAWファイルもJPEGも同じ種類のファイルであるかのようにパラパラと閲覧できる。これは日常的にRAW撮影をするユーザーにとっては大きなメリットになるだろう。

 ただし、RAW表示時はJPEGと違って部分拡大ができないので、1枚の写真の細部を確かめたり、厳密なピントチェックをするのは難しい。JPEGと同等に扱えるのは、あくまでも、どんな写真を撮ったのか確認がてらザッピング感覚で見る用途に限られるだろう。RAWファイルの保存を目的に購入を考えている人は注意したいポイントだ。


充実したPCレス機能

 フォトストレージで重要なのは、溜めたデータをいかに活用できるかだと筆者は考えている。つまり、ただフォトストレージからPCに転送するだけならば、はじめから軽量のPCを持ち歩き、PCに転送すればいい。最近ならば1kg台前半のノートパソコンならいくらでもある。もちろんその、数百gの重量の差に投資する価値を見いだせる人ならば、なんら問題はない。だが、私のような庶民には、わざわざ数万円する機器を新たに導入するからには、明確なメリットがないとなかなか踏み切れない。そういった意味で見るとこのP-2000、プリンタと直接接続してのプリント機能や、NTSCに加えてPALにも対応したビデオ出力機能など、データの活用法にはなかなか気を配っている。

 一番評価したいのはスライドショー機能や動画再生の機能だ。スライドショー機能では、MP3データをBGMにしたり、画像の入れ替わり時のトランジション効果を選べたりと、なかなか楽しい。ビデオ出力もあるので、テレビで楽しむこともできる。本体にもスピーカーを搭載しているため、本体のみでも音声付き動画やスライドショーが楽しめる。

 本来、この手の製品はまずヘビーなデジカメユーザーをターゲットに作られ、エンターテイメント的な要素は削られるはず。しかしこの製品ではそれとは逆に、PCを持って行かなくても旅先で撮った写真をみんなで楽しんだり、あるいはあらゆるシーンでPCなしのデジタルフォトを楽しむ――つまり自宅にPCがなくても、ひたすらこの機械に撮った写真をためていく――ことを考えているように思う。複合機を中心に据えた今年のプリンタ戦略からもわかるとおり、デジカメの脱PC周辺機器化をもくろむメーカーの姿勢が垣間見えるようで、興味深い仕様だ。


拡大表示できないのが惜しい複数枚印刷時の設定画面
 だが、なんというのか、もうちょっとがんばって欲しかったのである。たとえば、プリント機能。複数をまとめてプリントする場合、画面上段に写真が横方向に並べられ、下半分にはプレビュー画像と、印刷指定した画像の枚数が表示されるようになっている。これは確かにPCレスで印刷できるので便利だ。

 しかし、せっかく高精細、豊かな発色の液晶があるというのに、このモードで操作している間は画像の拡大表示ができないのである。つまり、3.8型のディスプレイのわずか1/4程度の画面でプレビューしながら印刷指定をしなければならない。これなら2型サイズの液晶を持った複合機でプリントするのとなんら変わらない。つまり、フルスクリーンで確認するという作業と、印刷指定のタスクを別々に行なわなければならないのである。

 厳密にいえば、フルスクリーンでの確認時に、サブメニューから印刷予約ができることはできる。だが、メニューの下部に配置されているためアクセスが悪い。おそらくこの製品を求めるであろうレベルのユーザーなら、フルスクリーンで確認しながら、なおかつさくさくと印刷指定したいはず。高品質の液晶と、PCレスでの操作性、少なくともプリントに関してはこの2つがうまくかみ合っていないのが残念だ。


まとめ

 筆者としては、ぜひコイツは旅行に持っていきたいと思っている。今は国内であれ、海外であれ、仕事であれ、プライベートであれ、どこに行くのにでも外泊する場合は必ずPCを持ち歩いている。だがこうした習慣はもう辞めたいのだ。仕事ならともかく、プライベート時にPCを開くとパンドラの筺よろしく、溜まった仕事のことを一気に思い出してしまう。1週間くらいPCなしで、仕事も忘れて撮影旅行……RAW撮影を考えれば、いくらMicrodriveでも1日で一杯になってしまう。もう、P-2000にお出ましいただくしかない。現実味の薄いハナシだが、そんな甘い妄想を抱かせる、キュートな1台だ。



URL
  エプソン
  http://www.epson.co.jp/
  ニュースリリース
  http://www.epson.co.jp/osirase/2004/040928_5.htm
  製品情報
  http://www.i-love-epson.co.jp/products/photofine/p2000/p20001.htm

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伊藤 大地
1978年横浜市生まれ。元ケータイWatch編集部員。現フリーライター。携帯電話から、パソコン、デジカメ、オーディオまで、ムダ遣い趣味が高じてこの職業に。エンゲル係数ならぬ「IT係数」は負ける気がしません。

2004/11/18 00:41
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