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【新製品レビュー】ニコン COOLPIX8800
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Reported by
小山 伸也
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今年はフォトキナ開催年(1年おきにドイツ・ケルン市で開催)にあたり、9月に多くのデジタルカメラの新製品が発表された。ニコンからはこのフォトキナに一眼レフのD2Xをはじめ、COOLPIXシリーズなどが発表された。その一翼を担うCOOLPIX8800が11月から発売される。
デジタルカメラを分類すると、従来からあるフィルム一眼レフカメラが装着可能なレンズ交換のできる一眼レフタイプと、単焦点あるいは2~4倍程度のズームレンズを搭載した小型軽量のコンパクト、さらにその中間ともいえる高倍率ズームを搭載したレンズ一体型がある。
■ COOLPIXシリーズの最高峰
COOLPIX8800はこのレンズ一体型のグループに入るもので、重さは一眼レフとコンパクトの間の600g(バッテリー、メモリカード除く)ながら、2/3型の有効800万画素CCD、光学10倍ズームレンズなど一眼レフとほぼ同等の性能をもっており、これにレンズシフト方式の手ブレ補正機能が搭載されている。別売りだがワイドコンバーターやテレコンバーターも用意されている。
背面にある液晶モニターは1.8型13.4万画素。フリーアングル機構で上下左右に回転させることができる。光学ファインダーはなく、視野率ほぼ100%のEVFを搭載する。
もちろんスピードライトも内蔵されている。スピードライトは使用時に高く立ち上がるリトラクタブルタイプで、レンズと離れており赤目現象の軽減に大いに役立つはずだ。ISO感度設定をAUTOにしておけば、広角側で6m望遠側で3mまで調光可能となっている。
メディアはCF。電源は専用のリチウムイオンバッテリーを使うが、別売オプションのバッテリーパック「MB-CP11」を装着すれば、単3電池も使える。
ファイル形式は、非圧縮のRAWとTIFF-RGB、JPEGは圧縮率1/2、1/4、1/16の3通りがあり、また最長40分の動画撮影と音声記録が可能だ。連写機能は最高2.3コマ/秒で5枚まで、露出制御はプログラム、シャッター優先、絞り優先とマニュアルがある。性能、機能ともに一眼レフタイプと肩を並べるスペックを持つ。
デザインは今までのCOOLPIX8700とほぼ同じで、レンズの大きさと右側に操作部を集中させているのが特徴。撮影しやすく、簡単操作も従来からあるCOOLPIXシリーズと同じだ。
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リトラクタブルタイプのスピードライト
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液晶モニターはフリーアングルで回転する
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バッテリールーム
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CFカードスロット
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■ ニコンらしいメリハリの効いた画質
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国分寺駅にて。今年は暑かったためか、ススキが少し遅いような気がする。光線の具合もあるが、細いススキが際だって見えるのは絵づくりのためだろうか。バックのボケ形も綺麗だ
3,260×2,448 / 絞り優先AE / 50 / 1/299(秒) / 5.2 / -0.7 / オート / 350mm
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※作例のリンク先は、特に記載がない限り、撮影した画像データそのものです。縦位置のものは、サムネイルのみ回転していますが、拡大画像はあえて回転せずに掲載しています。クリックすると撮影したの画像が別ウィンドウで表示されます。
※キャプション内の撮影データは画像解像度(ピクセル)/露出モード/ISO感度/露出時間/絞り/露出補正値/ホワイトバランス/35mm判換算焦点の距離です。
画質はニコンらしいというか、メリハリが効いているのが特徴。
PCのディスプレイでみてもプリントでみても、初めは「お~っ」といった感じでここまで写し出してくれるかと思うのだが、しばらく見ていると何を主役にして何を背景としたのかわからなくなってしまう。もちろんCCDの大きさからボケは期待していないのだが、画面内すべてが主役のように見えてしまい、悪くいえば「うるさい」ということになってしまう。小さなCCDなので画素サイズは小さく、大きく伸ばすとノイズが目につくが、A4サイズで手を伸ばした程度の距離でみればまず問題ない。
画質については好みがあるので評価が難しいが、作品を撮るというよりも、スナップを楽しんだり、撮影そのものを楽しむのにはいいだろう。そしていい1枚が撮れたら少し大きく伸ばせばいい。
■ やはり10倍ズームが魅力
やはり魅力はこの10倍ズームレンズであろう。35~350mm(35mm判換算、以下同じ)の10倍ズームは我々がよく撮影に使う範囲をほぼカバーしており、画角で表すと最広角側の35mmは約62度、最望遠側350mmは約8度で、人間の目が注意して見る範囲に近い。
もちろん最広角側のパースティクテブな感じも馴染みやすく、もしこれより短い28mm以下の焦点距離が要求される室内撮影などは、ワイドコンバージョンレンズを使えばいいだろう。
前玉は大きいが有効口径は計算上17mm程度と、それほど大きくない。ちょっと「はったり」が効きすぎているのではないかと思ったが、この前玉の部分がフードの役目を果たしているようで、意外にも逆光に強いのが印象的だった。
沈みゆく太陽を画面内に入れて撮影すると、ゴーストイメージが出てしまったりフレアが発生することが多いが、このCOOLPIX8800では、ちょっとアングルを変えて撮影するとゴーストイメージやフレアが消える。レンズを小型化すると、レンズ内に不要な凹凸を残すことになり、特にデジタルカメラではゴーストイメージやフレアの発生につながるのだが、ボディ部分に不釣り合いなこの大きなレンズがこれを抑えてくれているようだ。
高倍率ズームレンズであっても歪みなどの発生は少なく、800万画素CCDに十分な性能をもったレンズではないだろうか。
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高田馬場駅にて。35mm判換算で350mmまでのズームレンズは、鉄道撮影に十分な撮影範囲を持つ。最近、電車の前面や側面にある行き先表示は発光ダイオードを使ったタイプに変えられており、シャッター速度が速いと写らなかったりするので1/60秒くらいで撮影するとよい
3,260×2,448 / 絞り優先AE / 50 / 1/67(秒) / 7.4 / -0.7 / オート / 350mm
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西国分寺にて。何の変哲もない、35mm判換算で35mm側の写真。なぜ変哲がないかというと、人間が注意して見る範囲に近く、遠近感がほどよいからではないだろうか。鉄道写真では、自然な雰囲気で列車全体を入れるのに適している
3,260×2,448 / 絞り優先AE / 50 / 1/598(秒) / 4.0 / -0.7 / オート / 35mm
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新宿区内。ちょっと厳しい写真なのだが、太陽を画面に入れて撮影したもの。ゴーストイメージが出るのは計算済み。しかし、そのゴーストも目立つものは1点に抑えられ、フレアが少ない
3,260×2,448 / 絞り優先AE / 50 / 1/40(秒) / 7.1 / -0.3 / オート / 253mm
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太陽が画面内に入る厳しいものでも、少しアングルを変えるとゴーストイメージもフレアも発生しない。レンズを無理に小型しなかったためか
3,260×2,448 / 絞り優先AE / 50 / 1/241(秒) / 7.1 / -0.3 / オート / 253mm
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ちょっと大きく感じるレンズだが、この大きさが意外にも画質に貢献している
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■ 手ブレ補正を積極的に使おう
ブレは写真の失敗の9割を占めるともいわれるが、その原因は大きく分けてふたつある。ひとつは、一眼レフカメラなどにあるシャッター機構(主にミラーショック)の動作時に発生させる振動が原因となるカメラブレと、カメラを手持ち撮影で使うときに発生する手ブレがある。
カメラブレは、メーカーの設計時に抑える工夫が主で、ユーザー側の対策は少ない。手ブレを防ぐには速いシャッター速度で撮影するか、三脚を使うかしかなく、一般的に個人差はあるものの「1/焦点距離」以上の速いのシャッター速度で切るのがよいといわれている。したがって、このCOOLPIX8800のズームレンズの最望遠側350mmで撮影する場合は、1/350秒以上の速いシャッター速度で撮影するのがお勧めとなる。もし夕方以降の暗い時間帯に焦点距離350mmを使おうとすると、とうてい1/350秒以上の速いシャッター速度を使うことはできない。かといって三脚を常に使うというのも大変だ。そこで登場したのが手ブレ補正機能だ。
手ブレ補正にはいろいろな方法があるが、COOLPIX8800の手ブレ補正はセンサーでブレを瞬時に検知して、ブレ速度(方向と速さ)と同じ速度でレンズを逆側に移動させて補正している。この方法は画質には影響を与えることがほとんどなく積極的に使えるものだ。ニコンの説明によれば、手ブレ補正をONにすると、個人差はあるものの約3段分、つまり350mmで撮影するときの推奨値1/350秒が、1/90秒まで遅くできるという。
今回、まず試したのは夜間撮影。念のため、しっかりカメラを構えてシャッター速度は1/4秒で停車中の列車を広角側で撮影したが、問題はなかった。一般に言われる1/焦点距離のシャッター速度は広角側にはあてはまらないのだが、1/35秒の3段分は約1/4となりあてはまってしまった。
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左側面に手ブレ補正のON/OFFスイッチとAFの切り換えスイッチがレイアウトされている。この位置のスイッチ類は使いやすいので、もう2~3個追加してもいいかもしれない
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今回の撮影で一番驚いたのがこの写真。手ブレ補正が効くかなと思いつつ撮ったらうまくいった。もちろんまぐれではなく、数枚のカット全部が手ブレしていなかった。ピントは手前のライトの上にあるホイッスルカバーに合わせてあり、拡大すれば手ブレしていないのがわかるはずだ。また背景として写っている電車の流れかたでシャッター速度が遅いのがよくおわかりいただけるだろう
3,260×2,448 / 絞り優先AE / 54 / 1/4(秒) / 2.9 / -0.3 / オート / 40mm
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■ 流し撮りに使えるか
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高田馬場駅にて。“山貨”といってピンとくる人はかなり「鉄」な人。今は埼京線や湘南新宿ラインの列車が走りまくる。ここ高田馬場はもちろん通過だが、池袋と新宿の直線区間のちょうど中間で、電車は80~90km/hで通過していく
3,260×2,448 / 絞り優先AE / 50 / 1/253(秒) / 4.0 / -0.3 / オート / 35mm
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被写体が動いているもので、流し撮りをするときはどうであろうか? 結果から言えばこれも問題はなかった。列車の速度は推測だが80km/h前後で、撮影距離10m、広角側の35mmを使って今回は撮影した。アングルは列車の進行方向に対して45度であったが、手ブレ補正をONにしても上手く撮影できた。
■ その他の性能や機能はどうだろうか
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シャッターレリーズボタンをはじめとして、いろいろなスイッチが配置されているが、使いやすく、迷うことはなかった
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AFの測距点は縦横3×3の9点で、この9点の中から撮影者が任意の1点を選んで測距点とする手動選択と、十字型に配置された5点についてはカメラが自動的に選んで測距点とする自動選択が可能だ。この測距点において、フォーカスロック可能なシングルAFと、動いているものに追随する常時AFが切り替えられる。9点ある測距点は画面中央部に集中しており、もう少し外側にまで拡大したほうが便利かもしれない。
ファインダーは0.44型23.5万画素と高精細。視野率も97%(撮影時)とあってフレーミングには不足なく、静物を撮影するのには問題はない。リフレッシュレートも速くなってはいるものの、高速で走る列車などを撮影するにはまだ慣れが必要で、マニュアルフォーカスでピントを合わせるのにも一抹の不安が残る。一眼レフカメラと同じ光学式ファインダーとするにはコストもかかり、またスペースも必要で不可能に近いのはわかっているのだが、何とかならないかと思う。
操作ボタンやダイヤルの配置はボディの右側に集中し、撮影時に補助的に左側のボタンを操作するレイアウトになっており使いやすい。液晶モニターもフリーアングルで見やすく、使わないときは液晶面を内側にしておくこともできるので便利だ。
気になるバッテリーのもちについては、約200枚程度撮影したのだが、使用前にフル充電しただけで、追加充電はしなかった。内蔵のスピードライトは使わなかったので公称値との単純比較はできないが、フレーミングのためにズームレンズやAFはかなり煩雑に作動させ、液晶モニターでの画像確認も多かったので、バッテリーのもちはよいほうだと思う。
■ レスポンスはどうだろう
デジタル一眼レフカメラD70を使ったときの第一印象は、「速い」だった。この速さを知ってしまうと、どのデジタルカメラのレスポンスも遅く感じてしまい、もちろんCOOLPIX8800も例外ではない。レンズ一体型は電源OFF時にはレンズを収納しておき、電源ON時に撮影可能位置に繰り出すので、どうしても時間がかかってしまう。このCOOLPIX8800では電源をONにしてから約1秒強で撮影可能になるが、レンズが繰り出したり、EVFが見えるようになったりする「動き」があるのでストレスを感じることはない。
撮影時のシャッターレリーズラグは、シャッターボタンを押してから撮影されるまでの時間は標準的なものだが、列車など動いているものを撮影するときは、「カメラを向けフォーカスフレームを選択して、フレーミングしながらレリーズボタンを半押しにしてピントを合わせ、タイミングを見計らってシャッターを切る」と一連の動作をするので、「速くしてくれ」と感じるときもあったが何枚か撮影するうちに感じなくなった。撮った画像はすぐに見たくなるのが人情で、撮影から再生に切り換えて確認するのは、操作性がよいためか画像がスムースにでてくる感じだ。
レスポンスはD70のように「速い」と感じるものではないが、ほんの少しの撮影で慣れてしまったので、けっして遅いものではない。
■ デジタル一眼レフとの違いは?
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新宿駅にて。7番線から撮影した夜景で、まさかと思われるかもしれないがこれも手持ち撮影。23時7分発の快速「ムーンライト」号の前照灯に照らし出された駅構内と新宿駅北側のビルの夜景。手前の銀色のコンテナらしきものや夜空にノイズが出ている。D70などの一眼レフであればこれほどノイズは目立たないであろう。COOLPIX8800のようなレンズ一体型で手ブレ補正を手にいれるか、一眼レフタイプでノイズが少ないものとするか悩んでしまう
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インターネットやいろいろな広告を見ると、デジタル一眼レフカメラD70の実売価格は12万円前後で、3倍程度のズームレンズをつけて14万円前後で購入できる。それに対してレンズ一体型の多くは、10倍前後のズームレンズを搭載したもので10万円前後で購入できるので、単純に見ると価格差は4万円となる。
比較すべき性能のポイントは、撮像素子の画素数と画素サイズ、レンズのズーム比、光学式と電子式ファインダーの違い、大きさと重さなどだ。撮像素子の画素数と画素サイズの違いは大きく伸ばしたプリントで差が出る。画素数は一眼レフが600~800万画素、レンズ一体型が700~800万画素なのでA4サイズ程度では画素数の違いは出にくいが、一体型の撮像素子は画素サイズが小さいので、多少だがノイズが目立つ。
レンズは一眼レフカメラで、COOLPIX8800と同じ35-350mmの10倍のものを購入するには、実売価格で25万円前後かかってしまう。ファインダーの違いや大きさ、重さの違いは金額では比較できない。
インターネットや広告などで目立つ部分を見ると約4万円の差だが、ほんの少しだが掘り下げてみると価格差は大きく、性能や機能面でも単純に比較できない。COOLPIX8800は11月の発売でまだ実売価格はわからないが、他の10倍ズームレンズ付きのものと大差ない価格に落ち着くと思われる。この違いをよく見極めたうえで評価をしてほしい。
小山 伸也 中央大学理工学部卒業後、オーディオメーカー、カメラメーカーを経て2002年春にフリーになる。カメラ雑誌で写真やカメラの解説、鉄道や航空雑誌で車両や航空機の解説など幅広く活躍している。カメラメーカー勤務時には日本カメラショーなで講師を務めていた。1955年生まれ東京都出身。 |
2004/10/25 00:01
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