デジカメ Watch

オリンパスE-620【第1回】
購入に至ったポイント

Reported by 北村智史


 遅ればせながらの感もないではないが、E-620の長期レポートである。手に入れたのは発売当日だったのに、あれやこれやでばたばたしているうちにもう5月。少々心苦しいスタートである。

 夏にはオリンパスからもマイクロフォーサーズ機が登場するのはわかっているのだから貯金しといたほうが、とも考えたけれど、E-420に負けない小さなボディに手ブレ補正とフリーアングル液晶モニターが搭載されていて、そのうえAFもよくなっていて、アートフィルターにマルチアスペクトの“全部入り”ときたら、我慢しろというほうが無理。ボディだけなら9万円くらいだし、まあ守備範囲ですよ、うん。意味不明だけど。

 もっとも、景気がよろしくないのと夏への期待もあるので予算はひかえめ。ゲットしたのはボディと予備のバッテリーだけで、縦位置グリップもレンズもとりあえずはおあずけである。例によってお友達価格での購入なので、ここでは金額は伏せさせていただくが、大手量販店のネットショップでは8万9,800円のポイント10%還元である(今はもうちょっと安くなってるけど)。

 さて、いちばんの期待はAFである。E-520までの3点測距は測距点を切り替えて使おうという気にもなれなかったが、E-620のは7点測距。全点千鳥配列のツインセンサーで、そのうち5点はクロスタイプという、エントリークラスとしてはとってもぜいたくな構成だ。測距点選択が十字キー単独操作で行なえることもあって、中央以外の測距点も使ってみたい気になれる。やっとこさですけどね。これがひとつ。

 それと、新製品レビュー用の撮影でも感じたことだが、AF制御を受け持つソフトウェアもけっこう進化しているっぽいこともある。以前は、平凡なシーンなのになぜかピントが合ってくれていない(もちろん、合焦マークは点灯していたのに、である)なんていう現象にちょくちょくお目にかかったのが、そういう不可解なピンボケがずいぶん少なくなった気がするのである。縞模様や格子パターンに弱いところはいまだに残っているものの、AFまわりの不満と不安がかなり減っているのはたしか。これなら買ってもよさそうだと思えたわけである。


 とりあえずだが、E-620では“親指AF”を使わないことにしようと考えている。新製品レビューの時点では“親指AF”を使っていたし、ニコンD700はこれからも“親指AF”を使うつもりでいるが、“人差し指AF”のほうがオリンパスには合うのではないかという意見もあったりして、ちょっと試してみようかと思った次第である。“親指AF”と“人差し指AF”のどちらがいいかを検証する方法があるかどうかはわからないが、そういうのも含めて、従来の3桁シリーズのAFからの進化ぶりも見ていきたい。

 もうひとつ。液晶モニターがフリーアングル化しているのもぐっときたポイント。しかも、ハイパークリスタルIII液晶にグレードアップしているのも見逃せない。同じ価格帯のキヤノンEOS Kiss X3が92万ドットなのを思うと、23万ドットのままというのはいまいち物足りないが、ライブビューで撮るときに、見やすい向きに画面を動かせるのはやっぱり便利なのである。ニコンも最新モデルのD5000にフリーアングル液晶モニターを採用したのを見ると、エントリークラスではフリーアングル化が進むかもねぇ、という気もする。

 もちろん、ISO200以上でハイライト側のダイナミックレンジが広くなっていたりするのも見どころだ。ISO100では飛んでしまうハイライトが、ISO200だと飛ばずにトーンが残ってくれる。へたなAPS-Cサイズ機よりもよっぽどいいのではないかとさえ思えてしまうほどなのだ。

 さらには、アートフィルターやらマルチアスペクトとかの遊べる機能もある。ということで、E-520とリプレースしようと決めたわけである。ただ、E-520ももうしばらくは手もとに置いておくつもりなので(アドビのソフトがE-620のRAWにはまだ対応してくれていないから)、2機種の比較なんかもできたら面白いかなぁ、などと考えている。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。
  • 仕上がりはNATURAL、階調は標準、長秒時ノイズ低減はオフ、高感度ノイズ低減は標準で撮影。


遠目には同じにしか見えない瓦の表情がひとつひとつ違っているのが面白い。それにしても、この青空がオリンパスらしい
ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4-5.6 / 4,032×3,024 / 1/1,250秒 / F8 / 0EV / ISO200 / WB:太陽光 / 64mm(128mm相当)
コンクリートの壁に描かれた壁画の一部分。パイプとかの外皮のいたみ具合からすると、けっこう前に描かれたものなのだろう
ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 4,032×3,024 / 1/80秒 / F8 / 0EV / ISO200 / WB:太陽光 / 42mm(84mm相当)

こちらも同じ建物の壁。パイプになんか負けないもんね的元気さが楽しい。立体感もよく出ていてきれい
ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 4,032×3,024 / 1/125秒 / F8 / +0.7EV / ISO200 / WB:太陽光 / 42mm(84mm相当)
ボディ内手ブレ補正の弱点のひとつが、望遠レンズでのファインダー像のブレ。でも、E-620とED40-150mmの軽さならフレーミングも楽
ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4-5.6 / 4,032×3,024 / 1/320秒 / F11 / +0.3EV / ISO200 / WB:オート / 150mm(300mm相当)

150mmの最短撮影距離付近で1/100秒。わりときびしい条件だと思うが、3コマ中1コマの成功率ならまあまあ
ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4-5.6 / 4,032×3,024 / 1/100秒 / F6.3 / -1EV / ISO200 / WB:太陽光 / 150mm(300mm相当)
コインパーキングからその隣の建物の壁。広角端だと歪曲が目立つので、25mm付近で。でも、ちょっとタル型
ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 4,032×3,024 / 1/400秒 / F8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 25mm(50mm相当)

今までなら白トビが気になって避けていたはずのフレーミング。ハイライトのトーンが少しだけれど残ってくれている
ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4-5.6 / 4,032×3,024 / 1/80秒 / F8 / -0.7EV / ISO200 / WB:オート / 79mm(158mm相当)
まだ、塗ってる途中の壁。職人さんがひと休みしている隙に撮ったカット。微妙な凹凸の表情が面白い
ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 4,032×3,024 / 1/160秒 / F8 / +0.3EV / ISO200 / WB:オート / 31mm(62mm相当)

何度も書いてることだけど、このED 14-42mmはキットで買うと実質1万円というローコストレンズなのに、写りがいいのがすごい
ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 4,032×3,024 / 1/800秒 / F5.1 / -1EV / ISO200 / WB:オート / 31mm(62mm相当)
今までのEシリーズなら+1.7段補正なんて怖くてできなかったが、ハイライト側のダイナミックレンジが広がったおかげで、露出の自由度がアップした
ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 4,032×3,024 / 1/80秒 / F5.6 / +1.7EV / ISO200 / WB:オート / 25mm(50mm相当)

斜めに入った陽光がラフに仕上げた白壁の表面の凹凸を強調してくれた。今までは白トビが怖くてもう少し切り詰めた露出にしていた条件だ
ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 4,032×3,024 / 1/200秒 / F9 / +0.7EV / ISO200 / WB:オート / 42mm(84mm相当)
細い路地から見上げた空。シャドーの粘り強さは今までどおりで、ハイライトも伸びるのだから、へたなAPS-Cサイズ機よりもよさそうなくらい
ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 4,032×3,024 / 1/800秒 / F11 / -1.7EV / ISO200 / WB:オート / 34mm(68mm相当)

壁にカメラを押しつけるようにして、ライブビューで撮ったカット。フリーアングル液晶モニターだとこういうときに便利
ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 4,032×3,024 / 1/50秒 / F4.9 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 27mm(54mm相当)
開店前の沖縄料理店のドア。ノブは使い込まれてて傷だらけだが、ぴかぴかに光っていた
ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 4,032×3,024 / 1/500秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 42mm(84mm相当)

船名から調べてみたら油槽船(小型のタンカー)というものらしい。気づくのが遅れたせいで、S-AF+MFのまま撮ったうちのピントが合っていた1コマ
ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 4,032×3,024 / 1/320秒 / F11 / -0.3EV / ISO200 / WB:オート / 18mm(36mm相当)
オリンパスのAFは、こういう格子パターンに弱い傾向があったが、E-620はかなりマシ。というか、ずいぶんよくなっていると思う
ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 4,032×3,024 / 1/1250秒 / F11 / -0.3EV / ISO200 / WB:オート / 14mm(28mm相当)

近くのビルの窓からの反射光で照らされている壁面。光のアタリ方にムラがあって、それがちょっと面白い効果になってくれた
ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 4,032×3,024 / 1/400秒 / F8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 21mm(42mm相当)
あまり美しくない異名で知られるホールのモニュメント。こういうアングルから撮ると、すごく不思議な物体に見える
ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 4,032×3,024 / 1/1600秒 / F8 / -1EV / ISO200 / WB:オート / 42mm(84mm相当)

【2009年5月11日】D5000の液晶モニターについて92万ドットと説明する箇所がありましたが、正しくは23万ドットのため該当箇所を削除しました。



URL
  オリンパスE-620関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2009/02/25/10280.html



北村智史
(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。最初に買ったデジタルカメラはキヤノンPowerShot S10。 ブログ:http://ketamura08.blog18.fc2.com/

2009/05/11 00:11
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