デジカメは精密機器だから、過酷な環境にはおいそれと持ち出せない。一般人でもよく行く「過酷な環境」は、主にビーチと雪山だろう。砂浜の細かな砂ぼこりは精密機器の天敵だし、水は言わずもがな。雪山の低温と雪による水ぬれも危険だ。
こういうときに使い勝手がいいのが、防水・防塵機能を備えたタフネスデジカメだ。オリンパスの「μTOUGH」シリーズ、ペンタックスの「Optio W」シリーズが2大巨頭だ。以前はソニーも「サイバーショットDSC-U60」なんていう防水デジカメを出していて、筆者も現役で使っていたりもするのだが、さすがに1.0型液晶モニター、有効200万画素CCD、単焦点レンズなどといったスペックはいい加減つらい。
そこで、特に海に行くときに使えるデジカメを探していたのだが(あまり雪山には行かない)、この春モデルで、いきなりキヤノン、パナソニック、富士フイルムの3社が新たにタフネスデジカメを投入してきた。
このタイミングの一致は面白いところだが、いずれにしてもμTOUGH、Optio W(春モデルは出ていないが)を含めて、選ぶ楽しみが増えたのはいいことだ。
そこでチョイスするためにいろいろ検討してみた。地上でも普通に使いたかったので、ちょっと大きめのPowerShot D10は今回はパスして、まず考えたのがレンズ。水の中では屈折率の違いから、地上よりもレンズの画角が狭くなる。実際にシュノーケリングなどの際に水の中で撮ってみると、あんまり広く撮れないなあという印象があるので、できれば広角レンズを搭載したカメラがほしい。
タフネスデジカメで広角レンズ(28mmスタート)を搭載したのは、μTOUGH-8000、μTOUGH-6000、DMC-FT1の3モデル。FinePix Z33WP(とPowerShot D10)は35mmスタートだ。μTOUGH2モデルとDMC-FT1を比べると、大きさはいずれも許容範囲で、タフネス性能はμTOUGH-8000が一番高い。
ただ、DMC-FT1には、この春の新機能として「個人認証」機能と「AVCHD Lite」によるHD動画撮影機能を搭載しており、これはちょっと興味深い。また、光学倍率が3.6倍のμTOUGH-8000に比べ、4.6倍とわずかに長い。
もちろんキヤノンも富士フイルムも初物なのでどれも興味深いが、レンズのズーム倍率が最も長く、28mmスタートの広角レンズ搭載、HD動画の撮影機能、という3点でDMC-FT1に軍配が上がった。
実はスペックだけ見ると、4m・2時間までの防水性能、28~140mmの光学5倍ズーム、HD動画撮影機能を備える「Optio W60」(2008年6月発売)は十分対抗馬になり得るのだが、動画はHDとはいえ15fpsである点、光学式/センサーシフト式いずれかの手ブレ補正機能がない点、そもそも春モデルではないという点から、やはりDMC-FT1をチョイスすることにして、発売日に購入した。
まだ夏は遠いが、早速いろいろ使ってみたい。
■ まずはレンズをチェック
|
屈曲光学系を採用したため、レンズが飛び出さない。起動時間も不満のないレベル
|
DMC-FT1は、パナソニック初の屈曲光学系を採用した「DC VARIO-ELMAR(バリオエルマー)」レンズを搭載する。非球面レンズ5枚6面、EDレンズ1枚を使ったレンズだが、さらに手ブレ補正レンズも採用している。
レンズの焦点距離は35mm判換算で28~128mm、F値はF3.3~F5.9。撮影可能範囲は通常で30cmから、マクロでワイド端5cm、テレ端30cmから、となっている。
開放F値はワイド端、テレ端とも、パナソニックとしてはやや暗いが、初めての屈曲光学系で、手ブレ補正も入れ、しかも耐衝撃機能を備えたDMC-FT1は、とりあえずレンズの性能が気になるところ。
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。
|
|
広角端
DMC-FT1 / 約6.7MB / 4,000×3,000 / 1/500秒 / F4.2 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 7.4mm
|
望遠端
DMC-FT1 / 約6.5MB / 4,000×3,000 / 1/500秒 / F5.9 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 22.8mm
|
|
|
広角端
DMC-FT1 / 約6.6MB / 4,000×3,000 / 1/160秒 / F3.3 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 4.9mm
|
望遠端
DMC-FT1 / 約6.5MB / 4,000×3,000 / 1/40秒 / F5.9 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 22.8mm
|
広角端はよく写り、制約の多いタフネスデジカメのレンズとしてはシャープ。コンパクトデジカメ全般と比べても、不満のないレベルだ。それに対して望遠端は、ややしゃっきりしない感じ。シーンによって印象は違うが、特に低照度の被写体でもう少しくっきりとした描写だと良かった。また、AF枠は緑に変わってピントが合っているようなのだが、実際は合っていないこともあって、できれば何枚か撮っておいた方がいいような感じだ。
また広角端、ワイド端とも若干歪曲収差は見られる。ワイド端のタル型収差は個人的に気になるレベルなので、もう少し補正されていると良かった。ピントが合う範囲は、テレ端で30cmからとなっているが、これも30cmではちょっと合いにくいようだ。このあたりも少し残念なところ。
ところでDMC-FT1は、防水・耐衝撃を実現するため、これまでのLUMIXシリーズとは異なる操作系になっている。すでに新製品レビューでも述べたとおり、ズームレバーやシャッターボタン、電源ボタン、モードダイヤル、十字ボタンなど、ボタンの位置や形が変更されている。
その中でも一番違和感があるのがズームレバー。左右に動かす形だが、動作が堅めで、力を入れてレバーを操作しなければならないのはちょっと気になった。ズーム速度もゆっくりでつい力を入れてしまうのだが、ズームレバーの引っかかりが鋭角なので、頻繁にズーム動作をすると、ちょっと指の腹が痛くなる。
ひとまず、レンズ周りで気になったのはこのあたり。μTOUGHのようなレンズカバーがあった方が良かったとか、Q.MENUでインテリジェントISO感度と通常のISO感度が排他利用だとか、「個人認証」をオンにしておくと顔認識以外のAF方式を選べないとか、細かい点で気になる部分はある。
|
|
やけにギザギザのズームレバー。グローブを付けていても滑らずに操作できるように、だと思われる
|
今のところ気になっているのは、インテリジェントISO感度のオン・オフと個人認証のオン・オフがメニューからしかできない点。Q.MENUの左から2番目はAF方式の変更だが、個人認証がオンだと選択できなくなる
|
とはいえ、コンパクトデジカメとして期待していた描写はクリアしているし、タフネスデジカメでありながら普段の使用にも困らないコンパクトさと使い勝手は十分満足できるレベル。現時点で気になっている部分も、我慢できないほどではないし、工夫次第で何とかなりそう。
まだ、本当の意味での実力は発揮できていないが、これからもうちょっと詳しくチェックしていきたい。
|
|
DMC-FT1 / 約6.4MB / 3,000×4,000 / 1/250秒 / F5.9 / -1.3EV / ISO80 / WB:オート / 22.8mm
|
DMC-FT1 / 約6.6MB / 3,000×4,000 / 1/80秒 / F5.9 / -2.0EV / ISO80 / WB:オート / 22.8mm
|
|
|
DMC-FT1 / 約6.9MB / 3,000×4,000 / 1/400秒 / F3.3 / -2.0EV / ISO80 / WB:オート / 4.9mm
|
DMC-FT1 / 約6.9MB / 4,000×3,000 / 1/800秒 / F3.3 / -1EV / ISO80 / WB:オート / 4.9mm
|
|
|
DMC-FT1 / 約4.6MB / 4,000×3,000 / 1/400秒 / F3.3 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 4.9mm
|
DMC-FT1 / 約7.0MB / 4,000×3,000 / 1/100秒 / F3.3 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 4.9mm
|
|
|
DMC-FT1 / 約5.6MB / 4,000×3,000 / 1/13秒 / F5.9 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 22.8mm
|
DMC-FT1 / 約4.2MB / 4,000×3,000 / 1/400秒 / F3.3 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 4.9mm
|
|
DMC-FT1 / 約4.2MB / 4,000×3,000 / 1/500秒 / F3.3 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 4.9mm
|
■ URL
パナソニック
http://panasonic.co.jp/
製品情報
http://panasonic.jp/dc/ft1/
■ 関連記事
・ パナソニック、12倍ズームレンズ搭載の「DMC-TZ7」(2009/01/28)
小山 安博 某インターネット媒体の編集者からライターに転身。無節操な興味に従ってデジカメ、ケータイ、音楽プレーヤー、コンピュータセキュリティなどといったジャンルをつまみ食い。軽くて小さいものにむやみに愛情を感じるタイプ。デジカメ、音楽プレーヤー、PC……たいてい何か新しいものを欲しがっている。 |
2009/04/06 11:12
・記事の情報は執筆時または掲載時のものであり、現状では異なる可能性があります。
・記事の内容につき、個別にご回答することはいたしかねます。
・記事、写真、図表などの著作権は著作者に帰属します。無断転用・転載は著作権法違反となります。必要な場合はこのページ自身にリンクをお張りください。業務関係でご利用の場合は別途お問い合わせください。
|
|