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オリンパスE-520【第3回】
E-420になくてE-520にあるもの

Reported by 北村智史


 E-520とE-420の違いはというと、外見上ではグリップの大きさと形だし、機能面では手ブレ補正の有無がもっとも大きい。撮像素子や画像処理だとかはまるっきり同じだから写りには差はない。メカパーツもかなりの部分は共通化されているし、操作系も大きくは変わらない。

 ただ、E-3のサブカメラとして考えた場合、E-420では使い勝手が悪い部分がいくつか出てくる。

 ひとつは、以前にも書いたとおり、バッテリーが共用できるかどうかという問題。それに加えて、「ワンプッシュ消去」や「実行優先設定」といった、操作時の気分を左右する機能があるかどうかの違いも見逃せない。

「ワンプッシュ消去」は消去ボタンを押すだけで1コマ消去を可能にするものだ。

 通常、再生時の画像を1コマだけ消去したいときには、消去ボタンを押す→十字キーの上キーで「中止」から「実行」を選ぶ→十字キー中央のOKボタンを押す、という手順を踏む必要がある。

 露出決定に悩むような条件では、とりあえず撮ってから考える、というのをよくやる。撮った画像を液晶モニターで再生してみて、もう少し明るいほうがいいかねぇ、とかつぶやきながら撮りなおしたりするわけだ。


「ワンプッシュ消去」をオンにすると、消去ボタンを押すだけで消したい画像を素早く消せる。当たり前だが、消したくない画像もワンプッシュで消えてしまうので注意が必要
 昔は、白いものを撮るときはプラス補正と決まっていて、これくらいの条件なら補正量はいくつくらいとか、メーカーによって多少の差はあるにせよ、だいたいは同じでよかった。それが多分割測光が当たり前になって、フィルムからデジタルに移り変わった今はというと、少々ややこしくなってしまっている。

 なにしろ、最近の多分割測光はお利口である。白いものが白く写るようにカメラが自動でやってくれる。それはそれでいいことなのだけれど、天気のいい日の順光条件で白い花だとかを撮ろうとすると、白トビを防ぐためにマイナス補正をしなくちゃいけないなんてケースもあったりする。白いものを撮るのにマイナス補正。ひと昔、ふた昔前の常識がちゃぶ台返しなのだ。ややこしくないはずがない。

 最近はそれなりにオリンパスの49分割デジタルESP測光のクセがつかめてきてはいるが、それでもやはり微妙なところで悩んだりもする。で、やっぱり最初の1コマはテスト感覚で撮ることになる。もちろん、それでOKなときもあるし、露出を変えて撮りなおすこともある。撮りなおすときには露出が合っていないカットをあえて残しておく必要はないわけで、だからさっくりと消してしまいたいのだが、筆者が最初に買ったE-410は、不要な画像を消したいときの操作がとっても面倒だった。

 RAW+JPEG同時記録で撮っていると、1コマ消去で消えるのはJPEG画像だけで、RAW画像は残ってしまう。誰がどう考え出したのかはわからないが(きっと誰かにとってはメリットがあったのだろう)、RAW画像を消すにはもう一度同じ操作を繰り返さなくてはならない。前もってOKボタンを押して画像を選択した状態で消去作業を行なう「選択コマ消去」の場合は、RAWとJPEGの両方を同時に消せるのだが、OKボタンを押し忘れることもよくあって、そうすると溜め息をつきながら1コマ消去の作業を繰り返すことになるのである。


Fnボタンに割り付けられる「試し撮り撮影」機能。Fnボタンを押しながらシャッターボタンを押すと、撮った画像がカードに保存されない。つまり、テスト撮影の画像を消す手間がいらない。好みに合いさえすれば便利な機能。
 一方、E-410から少し遅れて登場したE-510はというと、RAW+JPEG同時消去が可能だった上に、「ワンプッシュ消去」機能も備えていた。消去ボタンを押すと1コマ消去が可能というもので、文字どおりのワンプッシュ操作である。すんごくラクチンなのである。

 その後に買ったE-3も、やはり「ワンプッシュ消去」をオンにして使っている。後継モデルのE-420はRAW+JPEG同時消去は可能になったものの、残念ながら「ワンプッシュ消去」は入れてもらえなかった。

 まあ、シャッターは切るけど保存はしない「試し撮り撮影」機能を使う手もあるのだが、こちらはどうも性に合わない。さっきも書いたように、最初に撮った1コマがよければそれでOKなわけだし、だから積極的に「試し撮り撮影」機能を使おうという気になれないのである。

 もうひとつの「実行優先設定」も操作の手順を簡略化できる機能だ。こちらは、カード初期化などのダイアログ画面で、通常は「中止」が選択された状態で表示されるところを、「実行」が選択された状態で表示されるようにする機能である。通常、カード初期化などではOKボタンを押して、確認のダイアログ上で上キーを押して「中止から「実行」に切り替えて、OKボタンを押すことになる。つまり、OKボタン→上キー→OKボタンという手間になる。これが「実行優先設定」をオンにすると、OKボタンを2回押すだけの操作ですむことになる。


「実行優先設定」をオンにすると、ダイアログ画面が表示されたときの初期設定のボタンが「中止」から「実行」に切り替わる 普通なら、ここで「中止」が選ばれているので、上キーを押してからOKボタンを押すという手間が必要になる。が、「実行優先設定」をオンにしておけば、「実行」が選ばれた状態で表示されるのでOKボタンを押すだけでいい。ラクチンなのだ

「ワンプッシュ消去」にしても「実行優先設定」にしても、安全性を重視する慎重派にはおすすめできないし、そそっかしい人には事故のもとでしかないが、一度慣れてしまうともう手放せない。だから、この機能が2つともないE-420は、筆者には使いづらいのである。

 メーカーが違うカメラであれば、操作が違っていて当然だから気にしたりなどしないが、同じメーカーのカメラで操作が微妙に違っていると変に引っかかってしまうことがある。

 ちょっとした違いと言えばそうなのだが、その“ちょっと”にイライラさせられることがある。E-520ならそういうイライラはないわけで、E-520を選んだのは、E-3のサブとして使うことも考えた結果なのである。

 さて、E-520にはE-3にない「ダイヤル方向」という機能がある。コントロール(電子)ダイヤルの回転方向を逆転させられるものだ。

 通常、コントロールダイヤルを右手親指で左から右に動かす(ダイヤルを左回転させる)操作をすると、絞りは絞り込まれる方向、シャッター速度は速くなる方向に変化する。つまり、露出レベルがマイナスになる方向だ。が、マニュアル露出のときのインジケーター(バーグラフ)は右がプラスで左がマイナスだ。ダイヤルを左から右に動かすと、バーグラフの指標は左に動くという不自然なことが起きてしまう。

 E-510の長期リアルタイムレポートのときとかにも書いたのだが、これだとバーグラフの指標を見ながら露出調整を行なうメータードマニュアル撮影のときに混乱してしまうのだ。

 と、筆者が文句を言ったのが効いたのかはわからないが、E-420に装備されたのが「ダイヤル方向」である。これを従来方向の「ダイヤル1」から、逆方向の「ダイヤル2」に切り替えると、ダイヤルの回転方向とバーグラフの指標の動きがばっちり一致する。ダイヤルを右に動かすと指標も右に動くし、指標を左に動かしたければダイヤルを左に動かせばいい。視覚的にも自然でわかりやすい。


「ダイヤル方向」を「ダイヤル2」に設定すると、コントロール(電子)ダイヤルの回転方向が通常と反対になる マニュアル露出時の表示。「ダイヤル2」にしておくと、ダイヤルを右に動かすと、バーグラフの指標も右に動く。素直でよろしい

 ただし、絞り優先AEなどのときにも従来と逆方向の操作となるし、E-3と併用するときにややこしい。6月にE-3のファームウェアがアップデートされたときに、もしかして、と思って期待したのだが、残念ながらオートホワイトバランスの安定性向上をはかったものだった。世の中、思いどおりにはいかないものなんである。

  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 作例下の撮影データは、使用レンズ/記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。


梅雨の合間の1日だけの晴れ間。やっぱり、空が青いと気持ちがいい。で、次の日はほかの仕事でロケ。ばっちり曇りでした
ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,648×2,736 / 1/250秒 / F9 / -0.7EV / ISO100 / WB:オート / 14mm
E-520の手ブレ補正は最高約4段分。300mm相当なら1/20秒くらいまでいける計算だ。でも、実際に1/40秒とかで手持ちで撮れちゃうのを見ると、やっぱりすごいよなぁと思ってしまう
ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4-5.6 / 3,648×2,736 / 1/40秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 150mm

これを撮る前に暗めの条件で撮っていて、そのまま感度を下げ忘れてた。まあ、ISO400くらいまでなら画質的には不満はない
ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4-5.6 / 3,648×2,736 / 1/125秒 / F5 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 40mm
昔の常識だったらむしろプラス補正を考えるべき条件だけれど、マイナス補正をしていたりする。こんなふうに、最新式のカメラはややこしいんである
ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4-5.6 / 3,648×2,736 / 1/30秒 / F5.6 / -0.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 150mm

背景が暗めで主要被写体が明るい条件のときは、大幅なマイナス補正をしないと白トビが起きるケースが多い。これはどこのメーカーのカメラにも総じて言える
ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4-5.6 / 3,648×2,736 / 1/80秒 / F5.6 / -1.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 150mm
キット同梱のED 14-42mmは最短撮影距離が0.25m。安くて軽くてよく写上に寄れて便利なレンズだ
ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,648×2,736 / 1/40秒 / F5.6 / -0.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 42mm

0EVで撮ったら赤がベタ塗りになっていたので-0.3EVと-0.7EVの両方を撮って、これは-0.7EVの方
ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4-5.6 / 3,648×2,736 / 1/100秒 / F5.6 / -0.7EV / ISO100 / WB:晴天 / 150mm
望遠端の至近距離付近で撮影したカット。最大撮影倍率は0.14倍、35mm判に換算すれば0.28倍相当。このくらいまで寄れるとけっこう楽しい
ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4-5.6 / 3,648×2,736 / 1/30秒 / F5.6 / -0.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 150mm

普通に撮ったら絞り開放で1/1.3秒なんていう素敵な条件。ISO400までなら実用上十分な画質が得られるし、シャドー側の階調もよく出てくれるし、と思って撮ってみた
ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,648×2,736 / 1/20秒 / F5.6 / -2EV / ISO400 / WB:オート / 42mm
変な顔(なぜかムスメにはこういうのが好評だったりする)シリーズ第3弾。F3.5-5.6の暗いレンズで屋内で、それでも撮れるんだから、シャッター数が増えるわけだ
ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,648×2,736 / 1/60秒 / F5 / -0.7EV / ISO400 / WB:オート / 28mm

球体をぶった切ったようなデザインにするというアイディアがどこからきたのか知らないけれど、それを実現するには強度やらメンテナンス性やらコストやらいろいろ考えなきゃいけないんだろうなぁとか思いつつ
ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,648×2,736 / 1/200秒 / F9 / -0.7EV / ISO100 / WB:晴天 / 14mm
この角度から見ると、多面体なのがよくわかる。にしても、窓拭きとかはどうやるんでしょうか
ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,648×2,736 / 1/500秒 / F8 / -0.7EV / ISO100 / WB:晴天 / 14mm

こちらは葛西臨海公園の物件。歪曲収差があまり目立たない焦点距離を選んで撮るのもテクニックのひとつ
ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,648×2,736 / 1/160秒 / F8 / +0.7EV / ISO100 / WB:晴天 / 24mm
歪曲収差の大きさがバレないようにわざと画面を傾けて撮るという、さらにこそくな技を使ってみた
ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,648×2,736 / 1/320秒 / F8 / +0.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 14mm

空の青さがオリンパス。ほかのメーカーのカメラでも同じ場所から撮ったけど、仕上がりが全然違ってた
ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,648×2,736 / 1/500秒 / F8 / -0.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 14mm

●以下はE-3で撮影


今回はE-3も持っていったんだよ、という証拠写真。橋の欄干でカメラを支えながらの手持ち。で、1/5秒。E-520も合わせて20枚くらい撮って、止まってると言えそうなのはこの1コマだけ(E-3で撮影)
ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4-5.6 / 3,648×2,736 / 1/5秒 / F5.6 / -1.7EV / ISO100 / WB:オート / 79mm
E-410やE-510とE-3とでは、白の飛びやすさに差があるので割と簡単に見分けられたけど、E-420、E-520のはE-3とほとんど同じレベル。これなら併用するときに困らない(E-3で撮影)
ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,648×2,736 / 1/320秒 / F8 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 14mm


URL
  オリンパス
  http://www.olympus.co.jp/
  製品情報
  http://olympus-imaging.jp/product/dslr/e520/
  気になるデジカメ長期リアルタイムレポートバックナンバー(E-520)
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm2008.htm#e520
  オリンパスE-520関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2008/05/20/8468.html



北村智史
(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。最初に買ったデジタルカメラはキヤノンPowerShot S10。 ブログ:http://ketamura08.blog18.fc2.com/

2008/07/02 00:53
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